ラブライブ!サンシャイン!!~BUILD the Rainbow~ 作:白銀るる
梨子)一方、ダンスの練習をしていたわたし達Aqoursに、新理事長である小原鞠莉さんが、スクールアイドル部を設立する為のライブを開くことを提案し、わたし達はライブを開くことになった。
龍輝)俺達の前に立ちはだかる謎の戦士の出現、そして新生Aqoursのファーストライブ!そしてスクールアイドルに憧れを持つ少女達の物語は、真の始まりを迎える!さあ、どうなる第6話!?
ここは、今は使われていない体育館にある部室の一つ。
完全に物置と化していて、山積みの本と何に使うのか分からないようなものが散乱し、更にその上から埃をかぶっていた。
だが、それ以外はほとんどあの時のまま。
まるで、この部室だけ時間が止まってしまっているかのようだ。
「戦兎くん、どうしたの?何か遠い目してたけど」
「え?あ、いや、何でもねーよ」
「そう?何かあるなら相談に乗るからね」
「そうだな。その時はそうさせてもらう。ありがとな、曜」
礼を言うと、曜はニカッと笑って敬礼する。
今はこれからのことを考えることが先決だ。
「まずはこの部屋、掃除しなきゃな。てか、万丈の奴はどこだよ?」
「龍輝くんなら、『用事があるから一旦家に帰る。すぐに戻る』だって」
「仕方ない……アイツ抜きでやるか」
俺は、本に被っていた埃を落とす。そしてその本の束を持ち、千歌達と図書室に向かった。
「失礼します」
扉を開けて図書室に入ると、当然ながら図書委員の生徒がカウンターに腰掛けて、本を読んでいた。
そしてその顔には、見覚えがあった。
「花丸か、久しぶりだな」
「あ、戦兎先輩。お久しぶりです」
本を置きながら挨拶を交わす俺と花丸。
扇風機の向こうにも一人隠れてるな。あれは……。
「ルビィも一緒か、久しぶり」
「ひ、久しぶりです……戦兎お兄ちゃ……先輩」
「お兄ちゃん」と言いかけたルビィだったが、すぐに「先輩」と訂正する。
この二年の間で、ルビィとの距離が空いてしまったことを実感する。
そんな俺達のやり取りを、千歌は目を点にして呆然と見ていた。
「え?え?ええええ!?ど、どういうこと、戦兎くん!ルビィちゃん達と知り合いだなんて、わたし聞いてない!!」
風の止まない街の探偵事務所にいそうな女所長のように叫ぶ千歌。
あまりの声のボリュームに、俺は耳を塞ぐ。
「千歌ちゃん、ここ図書室だよ?」
「あ、ごめんなさい……」
図書室を利用する生徒達の視線が千歌に向けられるも、彼女達はすぐに本の世界に戻っていった。
「前にダイヤと幼なじみだって話をしたろ?」
「あ、そっか。ルビィちゃんのお姉さん、生徒会長が戦兎くんと幼なじみってことは、妹のルビィちゃんも戦兎くんと幼なじみってことだね」
「そういうことだ」
曜の的確な分析に俺は頷く。
「あ、何か龍輝くんからメッセージが来た」
「どうした?今日はサボるってか?」
「えーっと……『何か、ハーレムラノベみたいな展開が、戦兎に起こってる気がする!』だって」
「誰がハーレム野郎だ。くだらないことやってないで、さっさと戻って来いって送っとけ」
「いや、そこまで言ってないでしょ」
「分かった」
万丈へのメッセージを打ち始めた千歌を尻目に、俺は持ってきた本を花丸に見せる。
「これって全部図書室の本か?」
「えっと……はい、そうですね。ありがとうございます」
本を彼女に引き渡し、図書室を去ろうとすると、
「ねえねえ、二人とも。やっぱりわたし達と一緒にスクールアイドルやらない?」
メッセージを送り終わったらしい千歌が、花丸のルビィをスクールアイドル部への勧誘を始めた。
「い、いやオラは……」
「オラ?」
「じゃなくてマルはそういうの苦手だし……」
「ルビィも……」
「大丈夫だよ!二人とも可愛いから、きっとすぐに人気出るよ!」
乗り気でない二人に強引に迫る千歌。
「こら」
そんな千歌の頭に軽めのチョップを食らわせた。
「痛っ!?戦兎くん、何するの!?」
「無理に誘おうとするんじゃありません。あんまり強引に迫ってたりしたら、ダイヤになんて言われるか分からないぞ」
「はーい……」
しょぼんとアホ毛まで落ち込ませる千歌。
直後、千歌はしまっていたスマホを再び取り出してロックを解除する。
どうやら、万丈からメッセージの返信が来たらしい。
「『もう着いたから、早く戻ってきてくれー』だって」
「よし。それじゃあ戻るか……ってあれ?万丈って部室の場所……」
「あ!そう言えば、さっき鍵貰った時には、もういなかったから教えてないよ!」
「それじゃあ早く迎えに行ってやるか」
「うん。あ、でもその前に、どこにいるのか場所を聞かなくちゃ」
またメッセージを打ち始めた千歌。
それが送られると、すぐに既読がつき、返事が返ってきた。
「『もう部室にいるよ』って……」
「「え?」」
***
「ハッピーバースデー!スクールアイドル部!!」
俺達四人が部室に戻ると、既に埃が落とされたテーブルの上に大きな箱とその横に小さな箱が置かれていた。
「何の真似だ万丈……。まさかこれを取りに行く為に……」
「ああ。めが……神子さんに頼まれてな。浦の星のスクールアイドル部の誕生を祝ってやれってな」
「「わあああ!!」」
万丈が大きな箱を開けると、デフォルメされた千歌達の絵が描かれたチョコが飾られたホールケーキが姿を現した。
「凄い!甘ーいみかんの香りはするー……」
「これ、本当に良いの!?」
「おう!『みんなで仲良く食べなさい』って」
ケーキを前にしてキラキラと目を輝かせる千歌達。
そんな姿を見ると、やはり普通の女の子なんだと思わされる。
「で、戦兎。お前にはこれだ」
ケーキの隣に置かれていた箱を取り、手渡してきた万丈。
その箱を開けると、妙な形のスマホが入っていた。
「……なあ、俺もうスマホ持ってるんだけど……」
「それがただのスマホだと思ったら、大間違いだぞ。これはビルドフォンって言って、ビルド専用、つまりお前専用のアイテムってわけだ」
「ビルドフォン……」
手に取って見れば見るほど、奇怪な形をしている。
なんかボトルが挿せそうなスロットがあるし。
「ちょっと待て。ここでやるのは危ないから、一旦外に出よう」
俺がフルボトルを一本取り出し、スロットに挿し込もうとすると、万丈に制止される。
そして言われるがまま、俺達は外に出た。
「この辺りなら大丈夫だろ」
生徒や先生すらも通らないような建物の陰。
「こんな所で何をするつもりだ?」
「まあ見てろって」
万丈は、ビルドフォンにライオンフルボトルを挿し、それを投げた。
するとどうだろう。
「ビルドチェンジ」
ビルドフォンは巨大化し、バイクに変形した。
「「おお!!!」」
「なにこれすげえ!?」
「へっへっ、驚いたみたいだな。こいつはマシンビルダー。お前専用のマシンだ」
「マシンビルダー……」
フロント部分に歯車がついた赤いバイク。
ボディには、ビルドのライダーズクレストと呼ばれるエンブレムも描かれている。
「本当に良いのか?俺が貰って……」
「良いんだよ。それは神子さんからのプレゼントなんだから」
ハンドルに取り付けられたコンソールやら何やらを操作すると、ヘルメットが現れる。
「それから、新しく見つけたフルボトルも葛城先生の研究所に送ってあるから、あとで見に行くといい。新装備も完成してる頃だしな」
「新装備?」
「ま、それはあとでのお楽しみっつーことで、さっさとケーキ片付けて、練習しようぜ!」
「「おおー!」」
***
その日の夜。
俺は、早速マシンビルダーを起動し、葛城先生の研究所に行こうとしていた。
「どこ行くの?」
果南が、バイクにまたがった俺を呼び止める。
「葛城先生の所に行ってくる。新しいフルボトルと装備が出来たらしいんだ」
「そうなんだ」
「そういや、今日鞠莉が来たんだって?」
「……」
鞠莉の名前を出した直後、果南の表情が険しくなる。
今の二人が出会えば、あまり良くない雰囲気になるのは予想は出来ていた。
そして恐らく……いや、俺と「アイツ」も顔を合わせれば、間違いなく険悪なムードになってしまうだろう。
「……まあ、
「余計なお世話。それより、わたしも行っていい?」
道路交通法違反なんだけど……まあ良いか。見つからなきゃ大丈夫だろ。
「ちょっと待ってろ」
コンソールを操作して、新たなヘルメットを創り出して果南に渡す。
果南はそのヘルメットを被り、後ろに乗って俺の体に手を回す。
「しっかり掴まってろ」
「うん」
ちゃんと掴まっているのを確認し、俺はバイクを動かした。
バイクを走らせること十分程。
エンストすることもこけることもなく、無事研究所まで辿り着いた。
「こんばんは、葛城先生」
『おや、随分遅い訪問だね』
インターホンを鳴らすと、葛城先生が小さなモニター越しに出迎えてくれた。
『少しだけ待っていてくれ。すぐに片付けるから』
それから数分、葛城は玄関を開け、俺達を中に招き入れてくれた。
研究室の方は相変わらずごちゃごちゃしているが、俺の目当ての物はすぐに見つかった。
「新しいフルボトル!それも五本も!」
「もう龍輝くんから聞いていると思うけど、島村さんが持ってきたんだ。それから先日手に入れたボトルを最大限活かせる武器も完成したよ」
いくつものコードが繋げられたケースに納まっていたのは、データにあったビルドの武器一つ、四コマ忍法刀だった。
「え……何この刀……」
忍法刀を見て唖然とする果南。
当然だよな、こんなにカッコいい武器は人類史上類を見ない。
「設計図の通りに作成したから、ビルドドライバーを介して換装することが出来る。是非、スマッシュとの戦いに役立ててくれ」
先生の言葉に、俺は先日の戦いのことを思い出す。
「ありがとうございます、先生!あ、戦いと言えば、以前謎の黒い戦士と戦ったんです」
「謎の黒い戦士?」
「はい。スマッシュと戦っていた時に現れて、スマッシュの加勢に入って来たんです。まあ、自分が標的になった途端、スマッシュを盾にして万丈の技から逃げたんですけど……」
「スマッシュ以外の未知の敵ということだね」
「そうです。恐らく、今の万丈と同等か、それ以上。そして俺より強いのは確実です」
「え!?戦兎より強いの!?」
「ああ。俺が苦戦したスマッシュを圧倒した万丈の攻撃を難なく防いでみせただけじゃなく、カウンターまで決めたんだからな」
一度、俺の戦いを目の当たりにしているからこそ、果南は驚きを隠せないのだろう。
だが、葛城先生はそれをあっさり否定した。
「何を言っているんだ。ビルドの強さはその戦略の幅広さだ。今ここにあるボトルだけでも、かなりの数の戦略が立てられる。良いかい、戦兎くん。力とは、何も物理的なものだけじゃない。君の最大の武器がその頭脳であるようにね。そういった点では、君とビルドは、まさにベストマッチなんだよ」
「ベストマッチ……」
葛城先生の言葉で、俺は気付かされた。
初めて万丈が変身した時──あの時から、俺は今より強い力を欲していたことを。
強くなければ、何かを守ることが出来ないから。
「それに、君は十分頑張っている。焦る必要は無いよ」
「そうだよ、戦兎。戦兎は千歌達のことをちゃんと見ていてくれてるし、みんなのことを守ってあげてる。もっと自信を持って!」
「葛城先生……果南……ありがとう」
そうだ。焦る必要は無いんだ。
俺を支えてくれる人がいて、俺の力になるボトルもこれだけある。
俺は俺のやり方で強くなる。
***
明くる日の放課後。
花丸とルビィが、スクールアイドル部の部室までやって来た。
「どうかしたのか?」そう尋ねると、二人の答えは、俺の中にあった疑問を吹き飛ばした。
「なるほど、体験入部か」
「はい。まずはそこから始めようかなって」
曜や梨子、万丈が「いいと思う」と了承する中、千歌だけが頭の上に疑問符を浮かべていた。
「体験入部って何?」
「つまり仮入部とか、お試しみたいな感じね。それで続けたい!と思ったら入部するし、合わないな……と思ったらやめるし」
そんな千歌に、梨子が分かりやすく説明する。
これなら流石に理解しただろう。
「でもルビィちゃんは大丈夫なの?生徒会長のこと」
「ですから、このことはどうか内密に……」
誰にも言うな、ということか。
まあ、体験入部のうちはそれでもいいだろう。
「それじゃあ早速だけど、これを見てくれる?」
二人の話がひと段落すると、梨子がホワイトボードに張り紙を張る。
描かれていたのは円グラフのようなもの。
さらにその中に「準備運動・基礎体力訓練・ボイストレーニング・ダンスレッスン」の文字が書かれていた。
「この練習メニュー、もしかして梨子ちゃんが!?」
「うん。色んなスクールアイドルのブログなんかを参考にして考えてみたの」
梨子はスクールアイドルにあまり積極的でない印象だったが……千歌の影響を受けたらしい。
本当は俺も考えてきたんだが、ひとまずは見守ることにしよう。
「すげえよ梨子さん!マジすげえ!!」
「そ、そんなことないよ……」
べた褒めする万丈と顔を赤らめて照れる梨子。
……この構図、前にも見たことあるぞ。
「俺はこういうの全然出来ないからな」
「おい万丈。こういう仕事は、本当はマネージャーである俺達がやらなきゃいけないんだからな。あと、褒め殺しにするのはいい加減止めてあげなさい」
とにかく、これで部員と部室が揃った。
「それじゃ、早速練習しようぜ!」
「「はい!!」」
万丈の号令に、みんなが元気よく返事する。
いよいよ、部活動として初めての練習が開始された。
……かと思いきや。
「そういや、練習ってどこでするんだ?」
万丈以外の全員が、肩口をずらしながら盛大にコケた。
「練習場所かあ……」
今までは砂浜なんかで練習していたが、移動する時間を考えれば校内が良いだろう。
しかし、運動が出来る場所は他の部活が使っているから使えない。
一つだけ当てはあるが……。
「あの……!屋上とかどうでしょうか?」
頭を悩ませていると、ルビィがそう提案してきた。
「屋上か……」
「はい!μ'sも練習には屋上を使っていたって」
「うん、それじゃあ一度行ってみようか」
ルビィの案を採用し、俺達は屋上に足を運んだ。
運動をするには十分な広さがあり、使っている人も誰もいない。
雨が降ってしまったらどうにもならないが、今日の天気は快晴。そんな心配は無い。
「それじゃ、始めるか」
練習場所も無事確保出来、体験入部の花丸とルビィも加えて千歌達は練習を開始した。
練習している五人を見ていると、不意にあの時のことを思い出した。
果南とダイヤと鞠莉と……放課後は五人で、この場所で練習をしていた。
鞠莉と果南とアイツが一緒になってふざけて、俺とダイヤで注意する。
あの日が来るまで、毎日が楽しかった……。
それからあっという間に時間は過ぎていった。
現在、俺達は学校を離れ、淡島神社に来ている。
この神社の階段はかなりの長さがあり、体力作りにはもってこいの場所だ。
「かなり険しいから、あまり無理しないで自分のペースで登れよ」
「「はい!」」
「それじゃあ、μ's目指して、レッツゴー!」
千歌の号令と共に全員が駆け出す。
走り始めてからしばらく時間が経った頃。
「あれ?花丸は?」
気が付けば、花丸の姿が見えなくなっていた。
「本当だ。さっき少し休んでから追いつくってルビィちゃんと言ってたんだけど……」
それにしては遅過ぎる。
ルビィはもうそこまで見えているし……。
「悪い、俺ちょっと見てくる」
「そんじゃあ俺も……」
「万丈はここにいてくれ。もしスマッシュやあの戦士が現れた時の為に」
「分かった。無茶すんなよ」
俺は一度五人と別れ、元来た道を下っていった。
だが、花丸は一向に見つからない。
代わりに、途中にあった休憩所でダイヤを発見した。
「ダイヤ!?どうしてここに……」
「呼び出されたのですわ。ルビィと一緒にいた一年生の子……確か国木田さんと言いましたわね」
「花丸に?それでその花丸は今どこに?」
「降りていきましたわ」
降りた!?どういうことだ……。
練習が思った以上に辛くて、やっぱりやめようと思った、というのはさっきまでの花丸を見ていると考えにくい。
花丸はスクールアイドルがやりたくて、体験入部を申し出たんじゃなかったのか?
もしそれ以外に理由があるとすれば一体……。いや、今は考えるより、花丸を見つけるのが先だ。
「……分かった。教えてくれてありがとうな」
ダイヤに礼を言い、また階段を降りようとした時だった。
「お待ちなさい」
俺はダイヤに呼び止められた。
「何だよ?なんて聞く必要ないか……。千歌達の……スクールアイドルのことだろ?」
「忘れたわけではないのでしょう?わたくし達が
「……ああ。忘れるわけない、忘れられるはずない」
「ならどうして!?」
「……それと同じくらい……いや、それ以上に忘れられないんだよ。あの時感じたものが。お前だってそうだろ?」
「………」
俺の言葉は的を射ていたのか、ダイヤは黙ってしまう。
返事を求めるつもりはない。
とはいえ、その沈黙は問いに対する答えそのものだった。
「それじゃあな」
悲しげな顔をするダイヤに背を向け、今度こそ俺は下った。
***
スタート地点の鳥居まで戻って来た。
しかし、そこで俺を出迎えたのは、花丸ではなく例の黒い戦士だった。
「今は取り込み中なんだ。後にしてくれないか?」
戦士は聞く耳を持たず、銃口をこちらに向けてくる。
俺はビルドドライバーを装着してフルボトルを装填し、レバーを回した。
「変身!」
「ラビット!タンク!ベストマッチ!鋼のムーンサルト!ラビットタンク!!イエーイ!!」
赤と青の鎧、兎と戦車の力を使う形態であるラビットタンクフォームに変身し、ドリルクラッシャー:ガンモードを構える。
次の瞬間、俺と奴は同時に引き金を引いた。
互いの弾丸は干渉し合い、軌道をずらして俺達の装甲を掠る。
地面を強く踏み込み、拳を突き出しながら接近。
すぐさま奴は次の攻撃に移行、蹴りで俺の追撃を阻みながら、奴自身のペースに入ろうとしていた。
攻撃の一撃一撃はとても重く、俺が考えていたように俺と奴とでは、スペックに明らかな差が開いていた。
俺の攻撃が当たらないわけではないし、効いていないということも無い。
だが、攻撃の当たる回数、威力は断然奴の方が上だ。
「お前の目的は何なんだ?!やっぱり、フルボトルが狙いなのか!?」
「………」
戦士は何も答えない。
攻撃で装甲が削れる音と銃撃、斬撃の音だけが響き渡る。
強い……。やっぱりコイツは、今の俺では勝てない……。
分かってはいたが、やはり悔しい。
俺では奴には及ばない。
そんな半ば諦めのような感情がこみ上げてきた。
『良いかい、戦兎くん。力とは、何も物理的なものだけじゃない。君の最大の武器がその頭脳であるようにね。そういった点では、君とビルドは、まさにベストマッチなんだよ』
『戦兎は千歌達のことをちゃんと見ていてくれてるし、みんなのことを守ってあげてる。もっと自信を持って!』
不意に昨晩のことを思い出した。
葛城先生の研究所を訪れて、先生と果南に言われた言葉を。
「はあ……最悪だ。どうしてこういう時に、よく
俺は、既に挿し込んでいたボトルを抜き取り、新たな二本のボトルを取り出して振る。
そしてそのボトルのキャップを回してスロットに挿し込んだ。
「忍者!コミック!ベストマッチ!」
「……!」
レバーを回転させると、ビルドライダーが形成されて、黄色と紫色の成分からアーマーが形創られていく。
「Are you ready?」
「ビルドアップ!」
「忍びのエンターテイナー!ニンニンコミック!!イエーイ!!」
前後で創られた鎧が俺の体を挟み、煙が噴き出る。
ビルドのベストマッチフォームの一つ、ニンニンコミックフォームへ変身した。
「4コマ忍法刀」
葛城先生が作ってくれた4コマ忍法刀を召喚して、逆手に持って構える。
「いくぞ!」
「……っ!」
俺に合わせたのか、奴も剣を構える。
先に動いたのは俺だ。
素早く黒い戦士の懐に潜り込み、胸部に斬撃を食らわせる。
一撃、二撃と確実に攻撃はヒットする。
しかし、相手もただやられている訳では無い。
四撃目の攻撃をブレードで防がれ、銃でゼロ距離銃撃を受けてしまう。
「うぐ……そっちがその気なら、俺だって!」
柄のトリガーを引き、忍法刀の刀身に描かれている技の一つを選択する。
「分身の術」
「っ!?」
すると、
突然の出来事に、奴からは動揺の色が伺える。
「俺には万丈みたいな力はない。けど、それを補える物は持ってる!」
「風遁の術 竜巻斬り!」
「火遁の術 火炎斬り!」
分身が放った炎と竜巻が合わさり、炎の渦が戦士を襲った。
流石にこの攻撃は効いたらしく、奴は膝をつき、肩で息をしていた。
「………」
戦士は銃を取り出し、銃口を明後日の方向に向ける。
また逃げるつもりか!?
「待て!」
俺はこのまま奴を逃がすまいと、大声で呼び止める。
「お前は何者だ!?どうして俺達と戦う!?」
戦士は銃を下ろした。
「……わたしはナイトローグ。ビルド、君を倒す者」
「ナイトローグ……」
黒い戦士が発した声は女性……というより、果南や千歌達とほぼ同世代程の女子の声だった。
そしてナイトローグと名乗った彼女が告げた言葉、仮面ライダーを倒す者。
どういうことだ?仮面ライダーの名前を知っているのは、神子さんと俺、果南と葛城先生と万丈と千歌達だけ。だが、その誰もが秘密を漏らすような人間とは思えない。
「今回はわたしの負け。けど、次は必ず……!」
ナイトローグはそう捨て台詞を残し、黒い翼を展開して空に消えてしまった。
***
黒い戦士──ナイトローグと再び交戦してから一日が経った。
ルビィは「スクールアイドルがやりたい」という自分の気持ちをダイヤに伝え、ルビィはスクールアイドル部に入部することになった。
今頃、千歌達に入部届を渡しに行っている頃だろう。
一方俺はと言うと、花丸がいるであろう図書室の前まで来ていた。
理由は一つ。彼女の真意と意思を確かめる為だ。
「失礼します」
「戦兎先輩?部活は良いんですか?」
「千歌達には遅れるって伝えてある。少しお前に聞きたいことがあってな」
「マルにですか?」
「なあ花丸、どうしていきなり体験入部したいって俺達のところに来たんだ?前に図書室に来た時は、あまり気乗りしてなかったのに」
「それは……それはルビィちゃんの為です」
「ルビィの為?」
「ルビィちゃんは、何でも人に合わせちゃうところがあるんです。戦兎先輩は知ってると思いますけど。だから、スクールアイドルのことも、『お姉ちゃんが嫌いな物を好きになれない』って……」
なるほど、それでルビィは、好きなはずのスクールアイドルの勧誘を断ってたってことか。
そして花丸は、そんなルビィの為にきっかけを作った、ってところだな。
花丸が考えていたことが分かったところで、俺は次の質問を投げかける。
「じゃあ、花丸はどうなんだ?」
「え?」
「ルビィと一緒にやらなくていいのか?」
「マルは……」
自分はスクールアイドルには向いていない、そう言いたげな顔を、悲しそうな顔をしていた。
つい最近、同じような顔を見たからすぐに分かった。
そんなことはない、そう声をかけようとしたが、思わぬ乱入者によってそれは遮られた。
「花丸ちゃん!」
「「ルビィ(ちゃん)!?」」
そこにいたのは確かにルビィだ。
だが、いつものようなあの弱々しい雰囲気はない。
「ルビィね……!ルビィね、花丸ちゃんのこと見てた!ルビィに気を遣って、スクールアイドルやってるんじゃないかって。ルビィの為に無理してるんじゃないかって……心配だったから……。でも、練習の時も、屋上にいた時も、みんなで話してる時も、花丸ちゃん……嬉しそうだった……!!それ見て思った。花丸ちゃん好きなんだって……!ルビィと同じくらい好きなんだって!スクールアイドルが!!ルビィね、花丸ちゃんと一緒にスクールアイドル出来たらって、ずっと思ってた!一緒に頑張れたらって!」
「……オラには無理ずら……体力無いし、向いてないよ……」
「そんなことない。体力なんて、やってれば自然とついてくる」
「そうだよ。それにね、そこに写ってる凛ちゃんも、自分はスクールアイドルに向いてないってずっと思ってたんだよ」
花丸が読んでいた本の一ページを示すルビィ。
「でも好きだった。やってみたいと思った。最初はそれで良いと思うけど?」
「うお!?お前らいつの間に……」
本当にいつの間にか
その中でも、今の花丸と同じような悩みを抱えていた梨子が、花丸に言葉を贈る。
そして……。
「ルビィ、スクールアイドルやりたい!花丸ちゃんと!!」
たったそれだけのこと。
大切な人と一緒に大好きなことをしたい。
そんな想いが、涙となってルビィの瞳から溢れる。
「マルに出来るかな……」
「わたしだってそうだよ?一番大切なのは、出来るかどうかじゃない。やりたいかどうかだよ!」
「千歌先輩……」
「もし何か困ったことがあったら、俺やコイツも相談に乗るよ。これでも俺達はマネージャーだからな。それっぽいことは、まだ一切できてないけど」
俺に合わせて、万丈は拳を手のひらで打つ。
「戦兎先輩……!」
差し伸べられた千歌の手。
梨子が、曜が、万丈が自分の手を重ねていく。
俺とルビィも手を乗せ、そして最後は、花丸もそこに加わった。
こうして、新生Aqoursは一年生の二人が新たに加入し、五人となった。
そしてもう一人──Aqoursの新メンバーになる生徒がいることを、俺達はまだ知らない。
龍輝)ルビィさんて花丸さんも入部してくれて、メンバーが五人になったな!
戦兎)そうだな。てか、お前ルビィや花丸にまでさん付けなんだな。俺は呼び捨てなのに。
龍輝)仕方ねえだろ。これは昔っからのクセみてーなもんなんだから。そういや、早速マシンビルダーに乗ったんだな。しかも果南さんと二人乗りで。
戦兎)何ニヤけてんだよ、気持ち悪い。さっさと次回予告するぞ!
龍輝)へいへい。次回「第7話 ヨハネ降臨」
戦兎)ヨハネって何だ……?
はい。ここからは少しだけ大事な話になります。
実はリアルで忙しくなってしまい、投稿頻度がかなり落ちてしまうと思います。
しかし、失踪するつもりはありませんし、時間に空きがあれば出来る限り執筆はしたいと思っているので、気長にお待ちください。