ラブライブ!サンシャイン!!~BUILD the Rainbow~ 作:白銀るる
戦兎)体育館でのファーストライブを成功させ、無事に部として承認されたスクールアイドル部。
龍輝)そんなアイドル部に、花丸さんとルビィさんの二人が体験入部という形で参加することになる。
戦兎)何やら深い事情がありそうな二人。そして練習の最中に、花丸は一人姿を消してしまう。花丸が心配になり、彼女を探すことにした俺は、なんとあの黒い戦士──ナイトローグと再び交戦することになる。苦戦を強いられる俺だったが、新たなベストマッチ、ニンニンコミックフォームの力を使い、ローグを退けたのだった!!
紆余曲折を経て、浦の星学院スクールアイドル部:Aqoursは、花丸とルビィという二人を加え、メンバー五人、マネージャー二人の計七人となった!
龍輝)おい、何か今回のあらすじ紹介お前だけ長くないか?
戦兎)当然だろ?何たって俺が活躍した話なんだからな!
龍輝)なるほど……じゃあ次は俺が……
戦兎)悪いな万丈。次の主役も俺だ!!さあ、どうなる第7話!?
龍輝)な!?ずりーぞ戦兎!!
「うーん……」
スクールアイドル部の部室にて、千歌達はノートパソコンとにらめっこをしていた。
「今日も上がってないね……」
彼女達が見ているのは、スクールアイドルのランキングサイト。
名前の通り、全国のスクールアイドルをランキング形式でまとめられていて、ルビィと花丸の加入時にAqoursもそれに登録したのだ。
が、あれから数日たっても順位が伸びず、今の状況になっている。
「ライブのPVの方は見てもらえてるみたいなんですけど……」
ルビィが動画サイトを開いて、その動画を俺に見せてくれた。
確かに再生数は伸びているし、コメント数も多い。
しかし、ランクが上昇しないというのもまた事実だった。
「仕方ないさ。誰もが初めから凄いわけじゃない。大事なのはこれからどうしていくかだ。てか、万丈の奴はどこに行ったんだよ?またアイツだけいないじゃんか」
「龍輝くんなら、ご両親への近況報告を忘れたから、ちょっと遅れていくって言ってたよ」
「近況報告?アイツ一人暮らししてんのか?それなら仕方ないか。それじゃ、今は
「うん!特に花丸ちゃんは凄い人気なんだよ!『花丸ちゃん、応援してます!』とか『早く花丸ちゃんが歌ってるところ見てみたい!』とか」
曜がそう言ったので、コメント欄を注視すると、本当に花丸に関するコメントがたくさんつけられていた。
美少女と呼ばれる部類に入るとは思っていたが、まさかここまでとは……。
俺が少々驚いていると、花丸がじわじわと背後から迫って来た。
「これがパソコン!?」
「そこ!?」
花丸が興味を持ったのは、自分の評判ではなく、
「もしかして、これが知識の海に繋がっているというインターネット!?」
「ま、まあ間違っては無いな。うん、間違っては無い……多分」
花丸は、驚嘆の声をあげながらパソコンを見回す。
「花丸ちゃんって、パソコン使ったこと無いの?」
「実は、お家が古いお寺で、電化製品とかほとんど無くて。この前沼津行った時も……」
曰く、自動水栓やエアータオルにすら感動していたという。
彼女の家のことを考えれば、こうなることは何となく想像がついていたらしい。
「ずら!」
色々な家庭があるんだな、などと考えていると、パソコンの画面が真っ暗になる。
「今何をしたの!?」
「えっと……一個だけ光るボタンがあったから、何だろうなーと思って……」
……つまり、「電源スイッチに触れて強制シャットダウンしてしまった」と花丸は告げた。
途轍もない速さでパソコンに向かった曜と梨子。
「衣装のデータ保存しておいたかな?」とパソコンを再び起動させる。
「ま、マルは何かいけないことをしてしまったずら……?」
「あはは……大丈夫だよ」
千歌は苦笑しながら、花丸にフォローを入れる。
……部室に俺のノートパソコンを持ってくるのは止めよう、俺はそう心に誓った。
データの無事が確認されたことで、改めてAqoursの練習はスタートした。
「おお!こんなに弘法大師空海の情報が!」
「うん。ここで画面切り替わるからね」
……スタートしたはずだったのだが、何故か曜による花丸の為のパソコン教室が始まっていた。
「もう……これから練習なのに……」
「まあまあ、少しくらい良いじゃない」
「それよりランキングをどうにかしないと……」
「毎年スクールアイドルの数も増えてますから……」
そんな花丸達とは別に、千歌達がランキングの話を進める。
ルビィの言う通り、全国のスクールアイドルの数は年々右肩上がりになっていることが見受けられる。
実際、千歌がこのAqoursを再誕させたわけで……。
ともかく、五千以上のスクールアイドルの中からのし上がっていくのには、相応の努力や創意工夫をしなければならない。
「始めたと言っても、地味アンド地味アンド地味!なスクールアイドルだしね……」
自分を卑下するように評価する千歌。
その千歌に、梨子は「やっぱり目立たなくちゃダメなの?」と問いかける。
「人気は大切だよ」
「曜の言う通りだ。それなりに目立ったことをしなきゃ、人目にはつかない。ランキングも上がらないってわけだ」
「何か目立つことか……」
「名前をもっと奇抜なのにしてみるとか?」
「奇抜って言えば、スリーマーメイド?あ、今はファイブマーメイドか」
梨子が奇抜な名前と言ったタイミングで、それをほじくり返すのか、千歌……。
わめいている千歌達を眺めていると、自然と頬が緩む。
が、いつまでもこうしているわけにもいかない。
今は出来ることからやらなければと、練習を始めるよう声をかけた。
「そろそろ練習始めるぞ。ランキングのことも気になるだろうけど、技術の向上も大事だからな」
「戦兎君の言う通りよ!とにかく今は練習に集中しましょう!」
千歌達にそう言い聞かせる梨子は、いじりから解放されたことで一瞬だけ安堵の表情を浮かべていた。
ふと梨子達から視線をそらすと、花丸が明後日の方向を向いていることに気付いた。
「花丸?」
話しかけるが返事は無い。
彼女が見つめる場所に何があるかと言えば、
それ以外には何もない。
「おーい、花丸?」
「え?あ、戦兎君、何かあったの?」
「さっきからぼーっとしてるように見えたんだが……何か見えたのか?」
「えっと……さっきまでそこに善子ちゃん、友達がいて……」
「花丸の友達?」
どうして屋上に?
入部したくて来た……ってのは可能性としては無くはないが、かなり低いな。
屋上で練習していることは、部員以外では鞠莉やダイヤ、果南と葛城先生しか知らないからだ。
ということは、屋上で何かしらやりたいことがあった、と考えるのが妥当だろう。
そうだとすると、屋上は俺達が陣取ってしまっている為、彼女は自分のやりたいことが出来ないという事だ。
俺は少々罪悪感を感じ、彼女に謝罪すべきだと考えた。
「花丸、その善子ちゃんとやらがどこにいるか分かるか?」
「え?えっと……多分」
「それじゃあ案内してもらえるか?」
「うん」
俺と花丸は千歌達に断りを入れ、少しばかりこの場を離れて、件の「善子ちゃん」を追ったのだった。
……結論から言うと、彼女はあっさり見つかった。
が、その場所がかなり特殊過ぎる。
「なんでこんな所に……」
誰が廊下のロッカーの中に隠れてるなんて思うだろうか……。というか、花丸は何で分かったんだ……。
疑問は尽きないが、ロッカー少女がチラチラと俺のことを気にしている。
当然か、まだ名乗っていないのだから。
「善子さん、だったか。俺は桐生戦兎。花丸達のマネージャーをしてる。よろしく」
「えと……津島善子です……」
俺が挨拶すると、彼女も縮こまり気味だが返事をくれた。
「俺の思い違いかもしれないんだけど、もしかして屋上で何かしようとしてたのか?花丸が君のことを見たって言ってたから、もしそうだったら悪い事をしたから謝ろうと思ってたんだけど……」
「あ、えっと、それはその……その、そ、そう!ずら丸に……花丸に頼みがあってきたんです!」
「……ずら?」
***
日付は変わり、今日の授業もあっという間に終わった。
そしてやってきた放課後。
「うーっす!……あれ?人数増えてね?」
脳天気な挨拶とともにやってきた万丈が、頭の上に疑問符を浮かべる。
それもそのはず。
今アイツが言ったように、この部室にいる人数が増えているのだ。
千歌、梨子、曜、花丸、ルビィ、俺、今来たばかりの万丈。
この七人に加え、もう一人、机に項垂れている少女──津島善子だ。
「またやってしまった……」
そう呟く善子。
その様子を見るに、昨日の花丸への頼み事は失敗に終わってしまったのだろう。
「うん?なあ戦兎。その人って……」
「一年生の津島善子だ。ま、少し訳ありでここにいるんだ」
「そうじゃなくてよ。いや、そうなんだけども」
質問と回答の訳が分からなかったが、万丈はその答えを見せてきた。
スマホで再生される一本の動画。
そこに映っていたのは津島善子、その人だった。
「動画配信者の“堕天使ヨハネ”さんだろ?」
「「堕天使ヨハネ?」」
声を揃えて万丈の言葉を反芻する俺、千歌、曜、梨子。
この動画をアップロードしているチャンネルを見ると、確かにそこには「堕天使ヨハネ」という名前があった。
「……こういうのなんて言ったっけか?」
「中二病って言うんじゃなかったか?」
俺の静かな問いに、これまた万丈も静かに答える。
今こうしているのも、教室でこの動画のようなことをしてしまったからなのか……。
花丸に「わたしが暴走する前に止めて!」と必死な表情で頼み込んでいた理由がようやく分かった。
「こんなものまで持って来てるとは、さすがに思わなかったずら」
ロウソクに黒い羽根、さらに黒いローブまで。
本当に何持ってきてんのよ。
「何でこんなもの持ってきてるのよ……」
「これがわたしのアイデンティティっていうか、これがないとわたしでいられないというか……は!?」
またあの動画のような痛い発言をしてしまった善子さん。
長年の癖は、そう簡単に払拭できるものではないから当然だ。
苦笑する者、呆れる者、そして頭を悩ませる者。
そしてその中にただ一人……
「これだ……これだよ!!」
輝く瞳はパソコンの画面から善子さんへとシフトする。
「「は?」」
「津島善子ちゃん!ううん。堕天使ヨハネちゃん!スクールアイドル、始めませんか!?」
善子さんをスクールアイドル部に誘ったのは、やはりこいつ……高海千歌だった。
早速始まった堕天使衣装でのPV撮影。
用意された衣装は、悪くは無いデザインだった。
ある一点を除いては。
「うう……この前の衣装よりもっと短い……」
そう、スカートの丈だ。
辛うじて見えない程度のそれは、踊ったり風が吹いたりすれば、いとも容易く浮き上がってしまうだろう。
「おい、千歌。本当にこれでやるのか?」
「うん!この衣装でライブをして、みんなに堕天使の魅力をアピールするんだよ!!」
「堕天使の……魅力……!」
「協力……してくれるみたいです」
善子さんは蹲って不気味な笑みを零し、周囲は若干引き気味になる。
力を貸してくれるって言うのは有り難いが……中二病を治したいんじゃなかったっけか……。
「しょうがないわね……」
そんな彼女を尻目に、梨子は一人部屋を出る。
「うわあああああああああ!!!?」
それから数十秒後、梨子の悲鳴が響き渡り、障子越しに梨子としいたけのものと思われるシルエットがチェイスを開始。
「こらっ!しいたけっ!!」
美渡姉の言うことも聞かず、しいたけは梨子を追い回す。
まあ全力疾走で逃げる梨子も悪いと言えば悪いのだが。
「来ないでええええええ!!」
「梨子さん!走ると犬は余計興奮して追いかけてくるぞ」
「そんなこと言われてもーーー!!」
万丈がそう促したが、梨子は走るのをやめず、挙句の果てにふすまと障子を蹴破り、窓から一回転ジャンプを決めて自室のベランダに飛び込んだ。
「すげえ……」
何故か拍手が起こり、称賛の声まであがる。
対して梨子はというと、握り拳を作ってこちらを……というかしいたけを人睨み。
そしてその後ろで、
「お、おかえり……」
「ただいま……」
掃除機をかけていた梨子のお母さんらしき人物が、引き攣った笑みを浮かべていた。
……何だこれ。
その後、堕天使PVの撮影は無事終了。
完成した動画は、動画サイトにアップロードされた。
***
『伊豆のビーチから登場した待望のニューカマー、ヨハネ!みんなで一緒に堕天しない?』
『『しない?』』
動画を投稿した翌日、部室にて動画とランキングの確認が行われた。
再生回数は思っていたよりも伸び、コメントも好評的なものが多くみられた。
「すげえ!マジすげえ!!一日でこんなに再生されてる動画なんて、あんまり見たことねーぞ!!」
「やってしまった……」
……頭を抱えている人が一名いるのだが。
「まあ……その、なんだ。あまり気に止まない方が良いぞ」
「……はい」
気休め程度にしかならないだろうが、俺は梨子にフォローを入れる。
こちらの方は時間が解決してくれるだろう。
……どっかのバカが余計なことを言わなければだが。
「何でそんなに落ち込んでんだよ。確かに露出は多いかもしんねーけどよ、すげえ似合ってるし可愛いんだから、もっと自信持とうぜ!」
「かわっ!?かわ……いい……」
真っ赤に染まる顔からは「プシュー」というSEと共に湯気が上がる。
こいつ……わざとやってるんじゃないだろうか。
まあそれはさておき、堕天使PV作戦は順調に進んでいた……と思われていた。
「これはどういうつもりですの!?」
ダイヤの怒号が生徒会室、さらにはその外にまで響き渡る。
何故、ダイヤがここまで憤怒しているのか。
原因は、今回撮影、公開したPVにある。
「えっと……この衣装って凄く可愛いし印象にも残るから、これでライブをすれば人気が出るかなぁ……って」
「可愛い?良いですか?!このような衣装は破廉恥と言うのです!!こんなに短いスカートをルビィに履かせるなんて……」
「ごめんなさい、お姉ちゃん……」
そう、PVの撮影でルビィ達に着てもらった衣装だ。
まあ、正直ダイヤの目に入ったらどやされるのだろうとは思ってはいた。
とはいえ、半ばそそのかすような形で善子さんの協力を仰いでしまった。
俺達側から話を持ち出して、断るという無粋な真似はしたくなかったのだ。
「悪いなダイヤ。今回は完全に悪ふざけが過ぎた。本当に済まない」
「……ルビィにスクールアイドル活動を認めたのは、節度を持って、自分の意志でやりたいと言ったからです。こんなことをさせるわけではありません。それに、キャラが立っているとか個性が無いと人気が出ないとか、そう言う狙いでこういうことをするのはいただけませんわ」
今回のAqoursの行いを厳しく評価するダイヤ。
千歌達には悪いが、彼女の言うことは一つも間違ってはいない。
上辺だけ取り繕っても、真の意味で変わることは出来ないんだと。
「これを御覧なさい」
ダイヤは自身のパソコンでサイトを開き、千歌達に“その事実”を突き付けた。
「ウソ……さっきより順位が……」
曜がそう言葉を零し、他のメンバーも唖然とする。
再生回数が伸びていたというのは、少々予想外だったが、やはりこうなってしまった。
「本気で目指すならどうするべきか……もう一度考えることですね」
「はい……」
流石に今回は効いたらしく、千歌の声にはいつものような真っ直ぐな想いではなく、迷いや焦りというような感情が感じ取れた。
そしてそれ以上に、自分の行いを後悔し、傷付いてしまった者がいたのだった。
龍輝)……ダイヤさんすげえ厳しかったな。やっぱり世界が変わっても同じ人ってことか……。
作者)うん?龍輝くんじゃないか。こんなところで何をしてるの?
龍輝)ちょっと人間ってものを噛みしめてたところだ。
作者)へえ、なるほどね。ところで今は暇かい?良かったら予告をしてもらいたいんだけど……。
龍輝)良いぜ。次回「第8話 赤色のコンスピラシー」