群体最強の超級譚   作:北山 真

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今回はそこそこ長いです。書いていて時間が掛かりました。すぐに投稿するつもりだったので、申し訳ない気持ちです。


第3話

 □【大盗賊(グレイト・バンディッド)】ディアボロ・モスカ

 

 3体の【亜竜甲蟲(デミドラグワーム)】の襲撃から2時間ほど経過していた。

 俺達は当初予定していた、オアシスでの休憩を諦めて、寄り道をせずに真っ直ぐに賭博都市ヘルマイネへと向かっていた。

 

「順調過ぎるな」

「確かにな。順調過ぎる」

 

 俺が呟くとドルメルが返してくる。そう、()調()()()()のだ。【亜竜甲蟲】の襲撃から一転、モンスターの襲撃が一切なくなった。ひょっとしたら、あの【亜竜甲蟲】が食べたか、恐れをなして逃げ出したのかもしれない。その可能性を示唆してみると

 

「その可能性はある。それに、ここからヘルマイネまでは近い。急激に増えたお前たち<マスター>が、ここから辺や、【亜竜甲蟲】の巣の近くのモンスターを討伐しすぎて生態系が狂ったのかもしれないしな」

「なるほどな。確かに俺たち<マスター>だったら、亜竜級のモンスターは狩りの対象だからな。それで生態系が狂ったというのはあり得るな」

 

 ドルメルの意見に納得する。確かに< Infinite Dendrogram>発売から、この世界には<マスター>が急激に増えた。そして、デンドロ時間で3ヶ月もたっているのだ。俺やファトゥムのように、亜竜級モンスターを狩れる<マスター>はかなりいるだろう。むしろヘルマイネからそこそこ近いこの場所は絶好の狩場かもしれない。そう話していると、ちょうどそれらしい砂埃が遠くに見えた。

 

「【亜竜甲蟲】と何かが戦闘しているな」

「噂をすればというやつですね。戦闘相手は誰でしょう?」

「いや、ここからじゃ流石に分からないな」

 

 ファトゥムと会話しながら戦闘を把握しようと目を凝らす。

 俺達の視線の先、およそ200メートル先で巨大な百足が暴れているのがわかる。百足は30メートル近い巨体なのだ。遠くから見てそれを見つけるのは簡単なことだが、その巨体が暴れることと、時折放たれる炎属性の魔法と思われる爆発によって起きる砂埃のせいで、戦闘している相手のことは把握できない。

 

「あ、終わったようですね」

「そうだな、そして最後の攻撃を見るにおそら<マスター>だろうな」

 

 戦闘の砂埃が止む。

 最後は百足の頭のあたりで爆発が起きて、それが連鎖するように数回爆発していった。それからすぐに巨大百足の体が光になって消えたのだ。

 

「どうやらこっちに来るようだな。どうする盗賊の可能性もあるが」

「それを言ったらお前は【大盗賊】だろうが。まあ向こうもこっちのことが見えてそうだからな、ここら辺は砂漠で逃げる場所もない。それに、どっちにしろ向こう側がヘルマイネだ。俺達も向かおう」

 

 俺達は商隊であり、アイテムボックスのお陰で、身軽そうに見えてもかなりの荷物がある。そう思い、ドルメルに相手が盗賊だった場合を示唆すると、ドルメルは俺のジョブについて弄りながら、向こう側に行くという事を決めたようだ。

 しばらくすると、相手の顔が見える位置まできた。相手は3人組で、男が2人、女が1人のメンバーだった。

 

「あんたらはそっちの方から来たのかい?」

「ああ、そうだがお前達は誰だ?」

「ああ、俺は【紅蓮術師(パイロマンサー)】のボールド。そしてこっちの2人が、

「【盾巨人(シールド・ジャイアント)】のケイ・ヴァイオレット。横にいるおん、ん"ん"。び、美女が俺の<エンブリオ>のアテナだ。」

「何やら言い淀んでいたが…まぁいいか…。美女だぞ、崇めても良いぞ」

 

 メンバーの見た目が濃い。その見た目に惹かれ、思わず挨拶するのを躊躇っていると、ドルメルが代表して喋ってくれている。その間に、俺は3人をじっくりと見ていた。

 1人目は最初に挨拶して来たボールドという男だ。【紅蓮術師】と言っていたので、先程の戦闘の爆発は彼なのだろう。身長は俺より少し下なので175cmといったところ。金髪の白人で、見た目も白いローブと普通なのだが、首から下げている10cm程のひょうたんの形に人の顔を書いた物をつけたネックレスのせいで台無しだ。マトリョーシカに見えるが。おそらくあれがエンブリオなのだろう。

 2人目も男性のケイ・ヴァイオレットだ。全身鎧の上から外套を纏っている長身の男だ。190cmぐらいある。黒髪黒目で真面目そうな印象を受ける。<エンブリオ>の紹介をする時に苦い顔をしながら言い直していた。あと、【盾巨人】なのに盾を持っていない。

 そして最後の3人目。ケイの<エンブリオ>でメイデンのアテナ。メイデンは基本形態が女性という珍しい<エンブリオ>で、かなり強力なスキルを持っていることが多いみたいだ。反面ステータス補正は低い傾向にある。

 そして、見た目なのだが…美女だ。腰のあたりまで伸びて輝いている金髪に、エメラルドを思わせる碧眼。胸当てなどの装備を着ているが、出るところは出て、引っ込むところは引っ込む素晴らしい体型である。しかも身長がボールドとほぼ変わらないという女性にしては長身。それで整った顔立ちなので、紛うことなき美女である。しかし自分で言うのはどうなのだろか?しかもケイが苦い顔をしていたところを見るに、言わせているのだろう。なんだそれは意味分からん。

 そんな濃い面子について思考を巡らせていると、

 

<UBM(ユニーク・ボス・モンスター)>が出たのか、通りで【亜竜甲蟲】の生息地域が広がっていると思った。逃げてきていたのか」

「UBMから逃げたのか、UBMに使役されているのかどちらかだな」

 

 ドルメルとボールドの会話の中で聞きいたことのない言葉で意識を戻した。

 

「<UBM>?なんだそれは」

 

 俺は3ヶ月ログインしていても聞いたことがない単語に関して質問した。

 

「<UBM>っていうのは、所謂ボスモンスターのことですよ。討伐したら最も貢献度の高い人に、MVP特典という強力なアイテムが手に入ります。しかし、かなりの強さを誇ります」

 

 ファトゥムは知っていたようで、俺に教えてくれる。

 

「それで、特徴とかは分かっているのか?」

「そのUBMは【亜竜甲蟲】の生息地帯で発見されたので、その進化体じゃないかと言われている。発見した【盗賊】の<マスター>が言うには、一回り小さいくて、甲殻が赤色だったと」

「一回り小さい?赤色の甲殻というのも見たことがないな。名前は見えなかったのか?」

「いや、相手が移動中で頭上の名前は確認できなかったらしい。俺達はその<UBM>を狩る為にお前達が着た方角の砂漠に向かう予定だったんだ。お前達は接触しなかったみたいだな」

 

 ドルメルが特徴を確認して、ボールドがそれに対応していた。しかし、

 

「お前たち2人で勝てるのか?その<UBM>とやらには。相当強いんだろう?」

 

 俺は気になっていたことを聞いた。その<UBM>とやらは上級職のマスター2人で倒せるようなものなのだろうか。ボスというだけあってかなり強いはずだ。

 

「そりゃあ勝てないかもしれないが、最悪死んでも1日のデスペナですむしな。それよりもMVP特典が欲しいからな」

「俺はMVP特典というのを知らんが、良いものなら、確かにデスペナを覚悟しても挑んでも良いのかもしれないな」

 

 俺はボールドの発言に同意する。このゲームは確かにデスペナルティが大きい気がするが、所詮は1日だ。それよりも強力なMVP特典とやらの方が良いのだろう。

 

「ケイもそうなのか?」

「いや、俺は友達の商人が困っているから倒しに行くだけだ。それに、俺は盾役だよ。貢献度は多分稼げないさ」

「こいつは“世界(ワールド)派”のすげぇぇお人好しなんだよ」

「なるほどな。だからメイデンなのか」

 

 “世界派”というのはこの世界をゲームだと思っていないプレイヤーのことだ。この世界はリアルと変わらない五感で、ティアンというプレイヤーとの差異がエンブリオ以外にほとんどない人間がいる。その為、この世界をゲームではなく、もう一つの世界(リアル)だと考える人間もいる。

 そういう人間は傾向として<エンブリオ>がメイデンになる事が多いと聞く。だからボールドの説明を聞き、ケイがメイデンの<マスター>という事に納得した。

 

「じゃあ俺達はそろそろ<UBM>狩りに行くとするわ」

「分かった、気をつけろよ」

 

 ボールドと別れて、別々の方向に歩き出す。<UBM>については気になるが、俺達は商隊の護衛任務中だ。放り出す訳にもいかない。

 それに、ボールド達が勝てるとも限らないのだ、情報を仕入れてから挑んでも遅くはない。そう思いながら俺だけ後ろを振り向いてボールド達に声を掛けた、

 

「デスペナしてヘルマイネに戻ったら<UBM>の情報をくれよなー」

「うるせぇよ!街に帰ったら特典武具の話してやるから期待して待ってろ!」

 

 俺が見ている先で、ボールドが振り向いて大声で返事をした。後ろに向き直り、UBMが待つであろう【亜竜甲蟲】の生息地帯に向かおうとした瞬間。

 

 一瞬地面が揺れた後、()()()()()()()

 

 

 

 ◇◆◇

 

 

 それは見つけた。自分の配下を倒した者達を。

 

 それは感じていた。その者達がどこにいるかを。

 

 それは動き出した。その者達を()()()()()

 

 それは目指す。その者達のいる場所を。()()()()()()

 

 

 ◇◆◇

 

「何が起きやがったッ!」

 

 ドルメル達も振り返った。そこに見えるのは立ち込める土埃ばかりだが、土埃の奥で何かが動いているのは分かった。

 土埃が晴れていくと、そこには弾き飛ばされたのか、地面に横たわるボールドと身を覆い隠す程の大盾を構えて防御の態勢をとっているケイ。アテナがいないところを見るにあれがそうなのだろう。そして、

 

「もしかして、さっき聞いた<UBM>か?」

 

 赤い【亜竜甲蟲】が地面から首を出していた。

 いや、よく見ると【亜竜甲蟲】とは大きく違う部分がある。まず大きさが違う。胴体が一回りは細い。そして足も細く短くなっている。と言うよりも足ではなく剣のようになっている。それが胴体の側面にズラリと並んでいる。

 何より、頭が違うのだ。元々は、ムカデのような顔にクワガタのようなアゴが付いているような頭だった。しかし今は、蛇いや、竜の頭に大きな角が生えているような頭へと変わっている。

 そしてその頭上には【潜撃蟲竜 サンドレイダー】と言う文字。先程話していた<UBM>で間違いなかった。

 

『GYAAAAAAAAAAAAAA』

 

【サンドレイダー】は倒れ伏しているボールドに狙いを済まし、体を捻りながら角で貫きに行った。その速度は【亜竜甲蟲】の倍は速い。恐らくはAGI職である【大盗賊】の俺よりも速いスピードでボールドに迫り

 

「させるかぁぁっ!」

 

 ボールドを貫くかと思った瞬間、大盾を持ったケイがその前に立ち塞がった。

 ガガガガッ!と派手な音を立てながら、大盾を使って何とか巨体を逸らす。アテナが居ないところを見るにあの盾がアテナなのだろう。

【レイドワーム】は大盾によって軌道を変えられながら勢いよく地面へと潜り込んだ。体を唸らせ、体の側面についた剣でケイに追撃を重ねながら地面へと潜り切った。それを見て、

 

「今の内に早く逃げるんだっ!」

「クソッタレがっ!こんな所に居られるかっ!」

 

 商人達5人が走り出した。足音を立てながら一目散に逃げていく。

 

「何やっているんだドンメル!リリアナ!お前達も早く逃げろ!」

「いや!待てお前らっ!」

 

 声を掛けられたドンメルとリリアナだが、ドンメルは何かを考えたのか逃げるのを制止しようとして、リリアナはそんなドンメルを見ている。恐らく、この状況についていけてないのだろう。そして、

 

 グラグラっと、地面が音を立てて揺れた。その音がケイ達がいる場所から俺達のいる方へと向かってきている。俺達のいる地面から出てくると思った俺は、

 

「ファトゥムは自力で避けろッ!」

「了解ですっ」

「ぬぅわぁ」「キャァァァァァァッ」

 

 近くにいた、ドンメルとリリアナを両脇に抱えて全力で走り出しながら、ファトゥムには指示を出す。しかしながら【サンドレイダー】は出てこない。

 

「スルーしたッ!?」

 

 足元から感じていた揺れが遠ざかっていく。その進路には、

 

「お前たち避けろぉぉぉぉぉっ!」

 

 ドルメルが叫ぶ。だが無情にもその叫びは届かず、商人達は一直線に走る。

 

 そして、

 

『GYAAAAAAAAAAAAAA!!!』

「「「グワァァァ」」」

 

 地中から浮上した【サンドレイダー】は1人を角で貫き、2人を丸呑みにした。残る2人も【サンドレイダー】が地面に飛び出した衝撃で地面に放り投げられている。そして、

 

「やめろ、来るなぁぁぁぁっ!」

 

 叫び声を上げながら【サンドレイダー】の口に飲み込まれていった。

 その光景を俺は呆然と見ていた、

 

「--ィ!----ッ!」

「-----ッ」

 

 両脇でドルメルとリリアナが何かを叫んでいるが俺には聞こえない。いや、耳には入っているが頭で理解できない。

 

 N()P()C()()()()()。今までのゲームならそれだけだっただろう。しかし、あの商人達は()()()()()

 このデンドロ内での3ヶ月間。そして、この2日間で、俺はそう強く思うようになっていた。普通に喜び、怒り、哀しみ、楽しむ。俺達と、人間(プレイヤー)と何も変わらない。

 彼らは人間(ティアン)であって、NPCでは断じてない。

 

 人が目の前で死んだ。その死を強く実感して

 

「クソッッタレがァァァァッ!」

 

 再び地面に潜っている【サンドレイダー】に向かって吠えた。叫ばないと怒りで胸が張り裂けそうだったのだ。しかし、

 

「モスカっ!冷静になって口を閉じろっ!」

 

 脇に抱えたままだったドンメルにドンっと胸を叩かれた。痛覚はオフにしたあるので痛みはないが、咳き込んでしまう。

 

「ゲホッゲホッ」

「いいか、よく聞けモスカ。やつはおそらく足音に反応している」

「ッ!?」

 

 ドンメルの話に俺は今までの【サンドレイダー】の行動を思い出す。始めのボールドへの襲撃。そして2回目の襲撃。どちらも()()()()()。やつは潜っている間、こちらは視認できない。となると、こちらの位置を確認する手段は()。正確には地面に伝わる()()か。そこまで考えてから

 

「ありがとう冷静になったよ」

「頼むぜ、ここを切り抜けられるかはお前達が頼りだ。それと、リリアナを落とさんでくれよ。ショックで気絶しているみたいだから」

 

 リリアナを見ると確かに気絶していた。落とさないように抱えなおしながら、考える。ヤツを倒すためにはどうすれば良いか。

 しかし、ヤツはそんな時間を与える気は無いようで、地中からの揺れが近づいて来る。再度、地面からの奇襲を仕掛ける気なのだろう。

 俺はそれを見て、時間がないことを悟り覚悟を決める。そして、ドンメルとリリアナをそっと地面に置いてから、()()()()()()()()()

 

「オイッ!何する気だ、よせっ!」

「俺が囮になるっ!ファトゥムは魔法の準備をしておいてくれっ!」

「分かりましたっ!」

 

 ドンメルの制止を振り切り、ドンメル達と【サンドレイダー】がいるであろう位置と中間地点程で直角に曲がる。すると、

 

「やっぱり、追ってきやがるなっ!」

 

 地中から聞こえる音は俺の方へと追ってきていた。

 思い返したのは最初の襲撃の後だ。あの時すぐ近くに倒れ伏しているボールドがいた。格好の餌食だったはずだ。なのに地中からは攻撃しなかった。

 それよりも【商人】というAGIのそこまで早くない人間を追いかけた。

 つまりこいつは、()()()()()()()()に襲っているんだろう。

 それさえ分かれば後は覚悟を決めるだけ。この中で1番AGIが高いだろう、俺が囮を務める。他の人間ではあの速さは躱しきれないかも知れない。

 そう考えて走っていたが、

 

「準備出来ました。いつでも打てますっ!」

「こっちもボールドを回復させたっ!ドンメルさん達の守備は任せろっ!」

「すまねぇっ!気絶していた。俺の魔法も準備オッケーだっ!」

 

 ファトゥムからの準備完了の知らせと共に、ファトゥムと合流したケイとボールドの声も届いた。

 

「了解だっ!チャンスは一回だと思ってくれっ!」

 

 5人との距離が20mほどのところで一度止まる。その場で高速で足踏みする。完全に足を止めないのは、避ける時に素早く動くためと、足音で俺の居場所を正確に伝えるためだ。

 予想通り、俺のいる地表へ向かって来ているのか、地中を進む音が大きくなる。そして、

 

『今ッ!』

『GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAA』

 

 心の中で叫び、勢いよく走り出した直後。【サンドレイダー】は先程までいた場所へと飛び出して来ていた。この瞬間ファトゥム達に無防備に体を晒したことになる。その瞬間を見逃さずに

 

「《魔法威力拡大》MP20万追加。《アースランス》」

「《連鎖する魔法(チェーン・マジック)!《魔法威力拡大》に1万MP追加。《ヒート・エクスプージョン》ッ!

 

 ファトゥムが静かに唱え、ボールドが2つの魔法を叫んだ。

 まず、 ファトゥムのアースランスが発動した。アースランスとは本来なら、長さ2m、直径3cm程の槍を地面から生やす魔法だ。しかし、どうやったか知らないが、30万ものMPが込められた槍は、長さ10m直径15cm程にまで成長して、無防備にさらされた【サンドレイダー】の腹に突き刺さる。

 次にボールドの唱えた2つの魔法が発動した。最初の《連鎖する魔法》は付与魔法だったのかボールドの体が赤い粒子を纏うようになる。続いて《ヒート・エクスプージョン》が【サンドレイダー】の頭の角のあたりで爆発した。直後、ボールドの纏っていた赤い粒子が消え去り、爆発したあたりで、最初のより小さい2度目の爆発が起きて、その後さらに小さい3度目の爆発が起きた。

 

『GYAA L LAAAAAARRR!!!!」

 

【サンドレイダー】は体に大穴を開け、頭が焦げて血を流している。

 その状態で、魔法を放った2人を含む5人に向けて、頭の角から突き進む。目視ず回避されるかもしれない、地中からの襲撃よりも目視で確認して角で貫くことに決めたようだ。

 勢いよく突き進み5人の目の前まで行き、貫く寸前、

 

「「《シールドウォール》!」」

 

 ケイとアテナの声で叫ばれた技の宣言と共に、勢い良く突き出された大楯の前に()()()()が現れていた。

 角が正面から壁にあたり、ガキンッと音を立てて弾かれた。

 これには驚いたのか

 

『GYAA!?』

 

 躊躇い、その場で立ち止まってしまう。その油断が命取りになる。

 

「そんな隙を見逃すかよっ!」

 

 俺は碧色の壁が現れるのと同時に、走り出していた。

 側面の剣を躱して飛び移り、ファトゥムが開けた穴へと()()()()()()()()()()

 

『GYAAAAAAAAAAAAA!!!』

 

 痛みで【サンドレイダー】が叫び、のたうち回ることで、振り落とされそうになる。右手と両足で体を支えて、

 

「《蝿の群隊(フライ・アーミー)》!」

 

 体の内側にねじ込んだ左手から全力で蝿を出す。のたうち回るせいで体の中で潰れる蝿もいるが、問題ない。

 同時召喚可能数100体。1体に1SPというコスパの良さと、数の暴力で押し込む。そのままクールタイムの10秒毎に体内に出し続ける。1分ほど【サンドレイダー】に張り付いていると

 

『GYUUUAAAA!!AAAッAッGA』

 

 声を震わせて【サンドレイダー】の体が地面に倒れこむ。そのままピクピクと小刻みに痙攣している。麻痺の状態にかかったようだ。

 

「よしっ!とどめを頼んだっ!」

 

 俺は叫びながら、奥に入っていた左手を無理矢理引き抜き、とどめを渡すためにその場から離れる。

 すると、それを待っていたファトゥム達が

 

「《魔法威力拡大》《魔法多重発動》各10万MP追加。《アースランス》」

「《連鎖する魔法》発動。《魔法威力拡大》1万MP追加。《クリムゾン・スフィア》ッ!」

 

 ファトゥムの先程よりも細いが数を増やした槍が全身を貫き、ボールドの【紅蓮術師】の奥義が1個、それに連なるように小ぶりは2個目、3個目と発射され、長い胴体部分を焼き払う。

 

『GYAAAAAAAAAAAAA!!!』

 

【サンドレイダー】が叫をあげるが、麻痺はまだ解けない。いや、解ける前に

 

「《ストロングホールド・プレッシャー》!!」

 

 ケイが【盾巨人】のスキルを使用しながら振り下ろした盾によって、頭が破裂して動かなくなった。

 そのまま残った体が光となって消失していく。残った体が全て消えた時

 

【<UBM>【潜撃蟲竜 サンドレイダー】が討伐されました】

【MVPを選出します】

【【ケイ・ヴァイオレット】様がMVPに選出されました】

【【ケイ・ヴァイオレット】様にMVP特典【潜撃蟲竜圧縮遺骸 サンドレイダー】を贈与します】

 

 そのアナウンスを確認した俺達は

 

「「「終わったあぁぁぁぁっっ!!!」」」

「ふぅ、やれやれですね」

 

 安堵によって倒れ伏したのだった。

 

 

 

 

 

 ◇◆◇

 

 

 

 その後の話は語るまでもなかろう。残念ながら死んでしまった商人達の中で1人分だけの残った遺体を、それ専用のアイテムボックスへと回収して、その場で他の商人達の葬いだけ済まして、ヘルマイネへと向かった。

 道中、UBM特典の性能を確かめたり。自分達の功績を讃え合いながら、商人達の死を引きずらないように、出来るだけ笑顔で街へと凱旋した。

 

 

 こうして、俺の始めての拠点移動。始めてのUBM戦闘は、後味の悪さを残しながらも、幕を閉じたのだった。

 

 

 

 

 

 




如何でしたでしょうか?これで<下級>編は終了となります。第2章は<上級:必殺スキル>編となる予定です。第3章で<超級>になる感じです。(あくまで予定です。)←念押し
さて色々気になっているであろう。今回登場したオリジナルエンブリオ+特典武具の情報を載せておきます。

【連鎖人形 マトリョーシカ】TYPE:アームズ。モチーフ:マトリョーシカ人形。ステータス補正:MP→D。その他G。
スキル《連鎖する魔法》LV3(アクティブ)
次に使う魔法を連射する。LV3で3個まで。最初が100%の威力だとして、連射した魔法は100÷何発目かで威力が決まる。

【守護女神 アテナ】TYPE:メイデンwithアームズ。モチーフ:ギリシャ神話の女神アテナ。ステータス補正:SP→E。END→D。その他G。
スキル《シールドフォース》(パッシブ)
盾で防御した時、防御力2倍。
《シールドウォール》(アクティブ)
自分の防御力と同じ耐久力のある碧色の壁を作り出す。《シールドフォース》適用範囲内。
《グローアップ・シールド》(アクティブ)
モンスターの素材や、アイテムを盾に吸収させて成長させる。

【潜撃蟲竜 サンドレイダー】
伝説級なりたて。スキル《地中潜行》《衝撃感知》などのスキルにより、地面の下から奇襲するのが得意。

【潜角蟲竜圧縮素材 サンドレイダー》
《グローアップ・シールド》用素材。
地面に潜って奇襲する能力が盾職に必要?か→いらん→じゃあ素材でいいか。となった模様。



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