ついでに無双オロチ3とfgo やってたせいでもあります。
それとタイトルを「超生物、群体最強と呼ばれる男の超級譚」では長い気がしていたので「群体最強の超級譚」へと改名しました。
◇◆◇
それはいつものように戦闘とはとても呼べぬ、一方的な虐殺を行なっていた。
戦闘になっても全身に炎を纏うだけだ。
自分はただ目標に向かって進むだけでいい。
相手の攻撃はこちらには届かない。
大抵の攻撃は纏っている炎のせいで当たる前に燃え尽きる。
自分の周りに近づけば生物はのたうち回り死んでいく。
全身の火傷と酸素を取り込めなくてのたうち回るのだ。
その光景が好きだった。
何も出来ずに絶望して、ひどい苦痛を受けながら死んでいく。
その姿を見るのが好きだった。
今もそうだ。
目の前でのたうち回り、今まさに死んで行こうとしている小鬼がいる。
『KYAHAHAHA』
その姿を見て笑う。
もっと近くで笑うために近づく、近づくと余計に暴れまわる。
だがその動きも徐々に無くなっていく。
動きが止まり死ぬ直前に
その男は目で追えない、恐ろしい速さで右手で武器を抜き放ってくる。
慌てて後ろに下がるが浅く攻撃を受けてしまう。
その男に反撃しようとしたが、また死にかけの小鬼に変わる。
小鬼は今度こそ死に光の粉となって消えていく。
しかし、また別の小鬼が周囲に現れる。見た目はさっきの小鬼と変わらないが、その中に自分を傷つけた赤い人はいない。
それは困惑していた。
その小鬼と赤い人の正体とは…
□【剣豪】ディアボロ・モスカ
俺はたった今攻撃をした相手である【超炎新星 スペルノヴァ】を見る。
今は気配隠蔽で隠れていたゴブリンを相手に戸惑っているようだ。
このUBMはルビーのような色合いをした球体状に、人の顔が付いており、その背面に飛行機の翼のようなものが4枚目生えているという奇妙な体をしていた。
球形の体には俺の攻撃の後である刀傷が一本できている。
その体の周りを高温の炎を纏っている。
ゴブリンを近づけさせないために炎の温度をさらに上げたようで、先ほどよりも炎の勢いが強かなっている。
「不意打ちは一応成功だが浅かったな。もう少し切れると思ったが」
「思ったよりも反応が良いですね」
俺と
こうやってスペルノヴァを見下ろしているのも、先程不意打ちを成功させたのも、一の<エンブリオ>であり、今現在は一が手に持っている直径30cm程の金色の円形扉になっている【怪物産母 エキドナ】の必殺スキル《
その能力は単純にして強力で、自身の従属モンスターや素材アイテムをコストにしてやり強力な
その必殺スキルを使う時はエキドナは子宮を模した形である、円形扉の形態にならなければいけないので、今は一が手に持っている状態である。
先程不意打ちを成功させたのは【
この能力は《気配隠蔽》と《キャスリング》を強化した能力を持つ。
《気配隠蔽》の効果は変わらないが、《キャスリング》に関しては改良されている。
《キャスリング》は本来、従属モンスターとその主人の位置を入れ替えるという能力だ。入れ替えれる範囲もそこまで長くない。
それを改良して、主人とパーティを組んでいる人間まで対象に出来る能力にしである。
この能力を使い最小限のダメージでスペルノヴァへと攻撃を成功させたのだ。
そして、見下ろせている理由は俺達が巨大な竜に乗っているからだ。
この竜は全長10m程で翼幅は20m以上ある。
名前は【
この竜のおかげで眼下で【隠れんぼの小鬼】を相手に炎を振りまいているスペルノヴァに発見されないでいる。
「何かするようですね」
「翼を丸めているのか?」
そのスペルノヴァに変化があった。
ゴブリンへと炎を振りまいていたが、ゴブリンが炎を恐れて逃げ惑いはじめたのを見て、背面に付いている翼を筒状に変形させ始めたのだ。
そのまま4つの筒をそれぞれゴブリンの方向へと動かす。
そして…
『
宣言と共に筒から豪炎の砲弾が放たれた。辛うじて捉えきれたが、亜音速で放たれたその豪炎の砲弾は瞬く間にゴブリンへと到達して、その上半身を跡形もなく消し飛ばして地面に着弾し、轟音を響かせながら爆発を起こして豪快に砂埃を立てた。
そして、残っているゴブリンへと向けて追い討ちをかけて砲弾を放っていく。
瞬く間に地上にいたゴブリンは全滅させられてしまっていた。
「…『BLAZE・CANNON』か。恐ろしい威力だな」
「ええ、直撃をもらえばあなたの鎧でも持たないでしょうね」
「だろうな。一撃なら耐えれるかもしれないが、試す気にはなれないな」
「となるとつぎの作戦へ移るべきですね。行きますよエキドナ」
『分かったわ』
「『《
一とエキドナが同時に必殺スキルを宣言した。
そして、次なる怪物が円形扉より現れた。
◇◆◇
【超炎新星 スペルノヴァ】は苛立っていた。
あの赤い人にダメージを負わされた。
小鬼に警戒を抱かなければいけなかった。
この姿へと至ってからこんな事は初めてだった。
出会った全ての生物は近く事すら出来なかった。
逃げ出そうとする生物は後ろから砲撃で消し飛ばしてやった。
自分にとって戦闘とは相手の絶望を見て楽しむ遊びであって、命の奪い合いではないのだ。
だが今回初めて自分の身の危険に対処するために攻撃した。
そう感じる事が何よりも苛立ち、あの赤い人がどこへ行ったかも分からず苛立って辺りに炎を撒き散らしてストレスを発散させようとする。
だから気づかなかった。
だから気づかなかった。
いつのまにか自分の周りに巨大な影が出来ていて、上空から何かに押しつぶされようとしていることなど。
スペルノヴァは落ちてきた紫色の物体に押しつぶされた。
そして、押しつぶした物体は
◇◆◇
俺達の眼下で大爆発が起きた。だがスペルノヴァがどうなったのかは分からない。爆発の影響による砂煙と紫色の気体が周囲を覆い尽くしているからである。
「えぐいな…」
「ここまでの爆発になるとは…」
『ええ、予想以上ですわ』
俺達が計画した作戦とはいえ、予想以上の成果に驚いてしまう。
俺達の2つ目の作戦は単純明快で、上空からの質量爆撃作戦だ。
今回落としたのは【
このモンスターの見た目は単純で、見た目は半径10m程の球体状で、紫色の水の塊だ。
性能も単純で毒系統のスキルに特化している。
その為先程の大爆発は【HPS】が起こしたものではない。
さっきの現象は水蒸気爆発だ。
スライムの体はほとんどが水だ。それは【HPS】とて変わらない。
その水分の塊である【HPS】は【超炎新星 スペルノヴァ】を押しつぶすと同時にスペルノヴァが纏っていた高温の炎により急激に熱せられて、液体から気体へと変化した。
その変化が激しすぎた為に水蒸気爆発となり、この惨状を引き起こしたのだ。
一は、普段は【HPS】ではなく、ダイナマイト・スライムと呼んでいる全身がニトログリセリンなどの物質で制作したスライムを落とす事で、空爆を行なって狩りをしているそうだ。
しかし、その手のスライムだと、今回のような場合は標的にあたるより先に爆発が起きる事でダメージ効率が落ちる。
だから今回は水蒸気爆発を起こす為にただのスライムが検討された。さらに毒の状態異常も付与する為に【HPS】が採用された。
ちなみに、水蒸気爆発が起こらない場合では相手は炎をほとんど纏っていないだろうから、先程の【隠れんぼの小鬼】の能力ですぐさま接近戦を挑む二段構えの作戦だった。
「今のでやれたか?」
「いえ、アナウンスは流れていませんね。生きているようです」
「そうか。ダメージはかなり入ったと思うが…」
一に確認するが、UBMの特典武具を得たというアナウンスは流れていない。つまり、生きているという事。
『もう一度落としますか?』
「いや、煙で正確な場所が確認できない。それに2度も同じ攻撃はもらわないだろう」
エキドナの言葉を俺が否定する。
「それより、さっきよりも暑くなってませんか?」
「いや、俺は鎧のせいで分からない」
『私もこの状態だと分からないわ』
一が暑くなっていると言っているが、俺は【HVA】の《熱量耐性》のせいで分からず、エキドナはアームズ形態の為に分からない。
「念のために距離をもう少し取っておきますか」
「そうだな。頼む」
「上昇してください」
一の頼みで【隠蔽竜】が上昇を始める。だが、その選択は結果的には遅かった。
『
下方から声が聞こえた瞬間。
視界全てが赤くなり、俺達を強烈な衝撃が襲った。
衝撃が強すぎたのか、声も出せず、体の感覚もなくなる中
【PTメンバー<藤堂一>が死亡しました】
【蘇生可能時間経過】
【<藤堂一>はデスペナルティによりログアウトしました】
そんなアナウンスが聞こえてくる。
俺の中に強い気持ちが込み上がってくる。
こんな理不尽があっていいのか、と。
そんな思いを抱きながら、何が起こったのかも分からずに、俺の意識は途切れた。
◇◆◇
俺は暗闇の中にいた。
その中で自分の過去を見ていた。
飼っていたペットのジョンが死んだ時のこと。
両親が死んだ時のこと。
『ソレ、ガ、ゲンテン、カ』
声が聞こえてくる。聞いたことがない、嗄れた声だ。
『ナラ、ワレワレ、ノ、チカラ、ハ…』
声の主は見えない。だが、不思議と抵抗なく受け入れられる。
『サア、オキロ、マスター』
その声と同時に、俺の意識が覚醒した。
◇◆◇
『GYAHAHAHAHA』
【超炎新星 スペルノヴァ】は笑っていた。
先程使ったスキルにより作った、直径1kmはある巨大なクレーターの中で笑っていた。
クレーターはまるで火口のようだ。
砂が熱によって溶けて溶岩のようになっていた。
自分に攻撃していた目障りな相手は消し飛んだ。
いつものようにのたうち回りながら死ぬのを見たかったが、自分の強大な力の前に全てが消し飛んだことで、ストレス発散出来た。
やはり自分は強かった。
そう思いながら自分の作ったクレーターに愉悦を感じて笑っていた。
だから、気づくのが遅れた。
自分の接近する敵の気配に。
そして…
「フッ!」
鋭い吐息が聞こえると共に視界が割れる。
『GA?』
因果応報。
先程自分がした通り、何が起きたのかも分からずに光の粒子となって消えていった。
その後…
【<UBM>【超炎新星 スペルノヴァ】が討伐されました】
【MVPを選出します】
【【ディアボロ・モスカ】がMVPに選出されました】
【【ディアボロ・モスカ】にMVP特典【炎纏星套 スペルノヴァ】を贈与します】
そんなアナウンスが流れた。
◇◆◇
<Infinite Dendrogram>時間で三日後。商業都市コルタナ内のあるカフェにて。
「それでその赤い外套が特典武具なのですか?」
「そうだ。名前は【炎纏星套 スペルノヴァ】で、階級は
俺は、三日間のデスペナの時間を過ぎて復活した一と、カフェでコーヒーを飲みながら話していた。
俺はUBMの特典武具を貰っておきながらデスペナルティを逃れたという負い目から詳細な報告をする事を決めていて、一も言いたくないことは言わなくて良いと前置きして、俺の報告を聞いていた。
「こいつはあの時、俺たちを倒したスキルを持っている」
「確か『
「ああ、概ねその通りだ」
あの時俺達を襲った攻撃は強力な爆発だった。この外套はそのスキルを
まあ、その内の1つはあまり欠点にはならないんだが…
「では、あの爆発からあなたが生き残れたのはなぜなのかしら?」
エキドナから質問が来る。当然予想していた質問である。
だから俺は淀みなく答えることが出来た。
「それは俺の<エンブリオ>の必殺スキルが
「…それは言っても良いことなのですか?」
一からも当然の疑問が出る。必殺スキルとは<エンブリオ>の奥の手、切り札にあたるスキルである。それを他人に教えるなど普通はありえない。
しかし…
「一は戦闘前に教えてくれたからな。それの礼だ」
「別に秘密にしていただいてもよろしいのですよ?私の場合はUBM対策の作戦に必要だったから教えたからで、」
「だとしても、俺がお前の能力を知っていて、お前が俺の能力を知らないのは
結局、一達に能力を話すことを決めたのはそこなのだ。
一達を対等の仲間と認めて信頼しているからこそ、キチンとした情報を開示したいと思っていた。
その事が伝わったのか
「分かりました。それでは話してください」
そこから俺は戦闘の詳細を話した。
あの時、土壇場で<エンブリオ>が進化して第五形態になると同時に必殺スキルを得て、名称が【死蝿群 ベルゼブブ】から【死生蝿王 ベルゼブブ】へと変わっていたこと。
そのスキルのおかげで死を免れて、無防備な【超炎新星 スペルノヴァ】に致命傷を与えれたこと。
そんな必殺スキルの詳細がこれである
《
マスターが死亡した時に自動発動する。召喚中の【死生蝿王 ベルゼブブ】をX体が死亡して、マスターを蘇生する。
※Xはマスターの最大HP÷【死生蝿王 ベルゼブブ】の最大HP×10
※マスターの最大HPに届かない場合は蘇生不可
そこまでを話すと
「やはり必殺スキル。すごい力ですわね」
「まあお前の必殺スキルも相当だがな」
「確かに、流石は<エンブリオ>の名称を冠するスキル。強力なのは当然と言えるでしょう。しかし…」
一が言葉を切り、何かを考える仕草をしている
「どうしたんだ?」
「いえ、必殺スキルは基本的にその<エンブリオ>を象徴スキルだと私は考えています。そうだとすると【ベルゼブブ】という名前から自動蘇生というスキルになった事が以外で。つい考え込んでしまいました」
「俺もスキルの詳細を把握した時に意外に思って、ネットで調べてみたよ」
「それでは何か分かったのですか?」
俺はネットで調べた内容を思い出しながら一達へと話す
「ベルゼブブには聖書の中で、天使に捕まって冥府に縛られるエピソードがある。そして最後の審判の日までそれから解放されることはない」
そこで一度言葉を区切る。ここまでならベルゼブブは捕まった間抜けだという話だ、しかしこの話には続きがある。
否、
「しかし、ベルゼブブは冥府に封印されたにも関わらず、それ以降にもあらゆる話で名前を見かけることとなる。つまりはベルゼブブは
「成る程。それがあなたの必殺スキルとなっている訳ですね。そういう話があるなら納得が出来ました」
一が首を縦に振り理解を示した。
「まあ、これは1つの解釈の仕方だがな。もしかしたらベルゼブブ本体は未だに冥府に囚われたままかも知れないし」
「そういう事なら、これから新しいスキルが増えるかも知れませんね。何にせよ<エンブリオ>には謎が多すぎますから」
「そうだな、あれから悩む必要もないか」
一の言う通りだと思う。<Infinite Dendrogram>には未知の技術が山盛りだが、その中でも<エンブリオ>は一番の未知の技術である。それを予想する事ほど答えの出ない問題もないだろう。
もちろん、管理AIが答えを教えてくれたら別だが…
「まあ、ある程度聞いておきたいことは聞けました。そこで、話を変えるのですが、あなたはこれからどうするつもりなのですか?僕達はこれからアルター王国へと帰るつもりですが」
「俺は…そうだな」
唐突な話題の変換だがこれからの事を考える中で割と重要な問題だ、だが俺には1つの考えがあった
「俺もアルター王国へ一緒に行こう」
そう答えた。その理由は
「
「ええもちろん。大歓迎ですよ。ねぇエキドナ」
「はい。もちろんですわ」
一もエキドナも笑顔で歓迎してくれる。
俺もつられて笑顔になる。やはり仲間とは良いものだと改めて思う
「じゃあ今回もよろしく頼む」
「こちらこそ」
俺達はお互いの手を握る。ああ、今度の旅も楽しくなりな予感がする。
その確かな予感を感じながら、俺達は旅の予定を立て始めた。
今回の話はいかがだったでしょうか。正直なところ戦闘描写薄すぎるとは思っているのですが、今回の更新は様々な理由が重なり、このような話となりました。申し訳ございません。
必殺スキルについてですが、割と強くしてしまった気がします。なので後日修正する可能性があります。修正した場合は前書きや後書きの部分で報告すると思います。
それでは、皆様も体調にはお気をつけて下さい。