【けものフレンズ】すとろんぐぜろ・ぱんでみっく 【二次創作】   作:はらだいこ

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仕事帰りのアラビアオリックスとオーロックスが繰り出したのはヒグマ経営の串焼き屋。熱々の串焼きをストロングゼロで流し込む快感に酔い痴れる。しかし、ストロングゼロのあまりの流行振りに不安を覚えるかばんちゃん。ここからストロングゼロの弊害とフレンズが向き合っていきます。


第三話 飲み会

 地平線に夕日が地平線の向こうに消えていく。空の主役が太陽から月に代わり、草木も眠る夜がやってくる。

 

「ふぅ、今日も一日働いたなぁ」

 

 ステージ設営の資材を運び終えたオーロックスはぐいっと伸びをして、凝った腰を裏拳でぽんぽんと叩く。

 

「そうだな。そろそろ戻ろうか」

 

 アラビアオリックスも肩をならし、一日の仕事をやり遂げた満足感に笑みを見せる。ライオン陣営の主戦力である二人は力仕事でも八面六臂の活躍。ライブステージの機材の運搬や瓦礫の撤去などで汗をかいた二人は、この上なく空腹だった。

 

「身体を動かしたあとのジャパリまんは格別だからな」

「そうだな。今日もいっぱいひかっけていくか」

 

 仕事終わりの解放感からか二人の足取りも自然と軽くなる。向かう先はゆうえんちのフードコート。異変の影響や長い間、放置されたおかげで、荒れ放題になっていたが、かばんやはかせの指導の下、壊れた椅子やテーブルを撤去して、遊園地の施設内から椅子やテーブルを持ち出して復旧作業をつづけた結果、かつての姿を取り戻しつつある。

 

「「「「かんぱーい!」」」」

 

 がちちっ!!かちっ!ちんっ!

 

 フレンズたちが集まったテーブルからは、乾杯の音頭とともに、コップを打ち鳴らす小気味のいい音が聞こえてくる。フードコートの中央からは野菜の焼けるいい匂いが漂ってくる。元は軽食販売用の屋台コーナーだが、現在は火が平気なヒグマによってプチトマトやカボチャ、ブロッコリー、パプリカ、ピーマン、シイタケ、ミョウガ、タマネギ、スイートコーン、ナス、アスパラガス、アボカドなどの色鮮やかな野菜が串に刺されて網の上で焼かれ、フレンズたちの目と舌を楽しませている。

 

「相変わらず、いい匂いがするな」

 

 甘く香ばしい食欲を誘う匂い。長い間、調理不要なジャパリまんでの食事に慣れきっていたため、野菜を火にかけて塩湖沼やソース、味噌で味付けした串焼きに、フレンズたちは病みつきになっていた。

 

「そうだな。焼き立てを頬張ってはふはふしながら、ストロングゼロで流し込む……くぅ!たまらん!」

 

 最初に食べた時は火傷しそうでとんでもない料理と思って敬遠したが、今は熱々の野菜を咀嚼して汁が口の中に溢れる汁を想像するだけで、口の中に唾がたまる。

 

「今日はどのストロングゼロを飲もうか……まずは、甘いプチトマト串とドライでいってみるかなぁ」

「いやいや、ピーマン串の苦みを桃ダブルでいくのがいい」

 

 席につくなり、自分の考えた最高の食べ合わせを議論しつつ、”おとおし”のピーナッツをつまみながら、氷がぎっしり詰まったコップに注がれたストロングゼロをちびちびと舐め、串焼きが出来上がるのを待つ。

 

「それにしてもかばんさんは本当にすごいな。コップに注ぐだけで、こんなに飲みやすくなるとわな」

 

 炭酸の泡がが氷の間を潜り抜けて立ち昇る芸術的な光景にオーロックスが目を細める。ジャパリパークに急速に飲酒文化が定着したのはかばんのアイデアによるところが大きい。炭酸が強すぎて飲めないフレンズがいれば、アルパカのカフェでは熱湯に耐えられないと使用されなかったガラスのコップにストロングゼロを注ぎ、さらにゆうえんちで生きている機能の一部をはかせやラッキービーストの助けを借りて製氷機を稼働させて作った氷を使うことで、キンキンに冷えた状態でストロングゼロを楽しめるようになった。

 

「本当だ。ストロングゼロに合うくしやきや、焼けるまで待っている間のおとうし……想像だにしなかった」

 

 アラビアオリックスはピッチが早くピーナッツをつまみに桃ダブルを一本開けようとしていた。かばんは、ジャパリ図書館ではかせのお願いから野菜カレーを作った時の要領でジャパリまんの原料を使った”くしやき”を考案。さらに焼けるまで待っていられないと生焼けの串焼きを頬張るアライグマの姿を見て、妬き上がるまでの間、軽くつまめる”おとうし”を考えたりと、かばんの発想力には素直に尊敬の念を抱かずにはいられない。

 

「かばんさんがいれば、楽しいことがどんどん増えていくな」

「あぁ、かばんさんに乾杯!」

 

 ちんっ!とコップを打ち合わせると、ちょうど串焼きが焼き上がった。熱々の串焼きとキンキンのストロングゼロの組み合わせに、酔い痴れ至福の時。

 

「みんな楽しそうでよかったね。かばんちゃん!」

 

 フードコートのテーブルの一つにサーバルとかばん、ラッキービーストのトリオの姿があった。ラッキービーストは中枢部のみの姿だが、かばんの腕に嵌った姿は、すっかり様になっている。

 

「……そうですね。うれしいです」

「どうしたの?かばんちゃん」

 

 口ではうれしいと言いつつも、その横顔には色濃い不安の色が浮かび上がっている。ストロングゼロでみんなが楽しそうにしているのが純粋に楽しいサーバルは、自分には想像だにしない問題があるのではないかと不安になる。

 

「ううん、ストロングゼロは飲んで気持ちがよくなるけど、ただそれだけじゃない気がして……」

 

 飲酒文化は根付いたばかり、コップの使用やくしやきなど、ストロングゼロをより楽しむ仕組みは考案した。しかし、”酔っぱらう”という現象はただ楽しいだけなのか?万が一のトラブルを避けるための、なにがしかのルールやマナーがまだ何も定まっていないというのが、かばんが漠然とした不安を覚える理由だった。  

 

「ボクの考え過ぎなら、いいんだけど……」

 

 深刻なかばんの表情にサーバルは首を傾げるばかり。そして、かばんの不安は遠からず的中することになる。

 

つづく


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