バカテスト
問題:『夏の大三角を構成する3つの一等星は何でしょう?』
解答
吉井明久
『アルタイル、ベガ、デネブ』
教師コメント
『吉井くんは星座にもくわしいのですね』
姫宮恵衣菜
『アルタイル、ベガ、デネブ』
教師コメント
『さすがです。博識ですね』
西木野真姫
『アルタイル、ベガ、デネブ』
教師コメント
『詳しいですね。さすがです』
~明久side~
《それではそこの高校生お二人様、どうぞこちらへ!》
突然の当選に、理解できないまま僕と恵衣菜は案内されるがままにステージに上がり、クイズ回答席に座った。
「明久くん、これはどういう状況なんだろう」
「う~んと・・・・・・ごめん、僕にも分からない」
「でも、司会の人このクイズに答えればウェディングイベント体験が出来るんだよね」
「うん、そう言っていたね」
「なら、私頑張る!」
「おぉ・・・・・・恵衣菜が燃えてる」
僕らが小声でそんなやり取りをしていると、
《それではルールを説明いたします!ルールは簡単、こちらの出題する問題、5問全てに答えていただき、全て正解でございましたらウェディング体験をプレゼントいたします》
司会者席にいる絵里が説明した。
《それでは早速参りましょう》
そして零華が続けていった。
どうやら問題が出るみたいだ。どんな問題なんだろう?
《第一門!お二人のご出身の小学校はどこですかっ!》
「はい?」
僕は零華の出した問題に情けないすっとんきょうな声を発した。
そこへ。
―――ピンポーン!
机の台の真ん中に置かれているボタンを恵衣菜が押した。
《はいっ!答えをどうぞっ!》
「水音文小学校」
《正解です!》
「(ちょっとぉーー!!??)」
ツッコミを入れてる僕を無視してさらに続いた。
《続けて第二問!お二人の高校での肩書きはなんですかっ!》
「(それって質問なの!?)」
―――ピンポーン!
「第二学年序列1位と序列2位」
《正解です!》
僕はこれまた呆気に取られて零華と絵里の方を見た。すると、僕の視線に気がついたのか絵里は苦笑いを浮かべ、零華は冊子で隠して僕だけに見えるようにして、右手の親指を上げてサムズアップした。
「(これは・・・・・・まあ、いいかな)」
僕は半ば諦めになり、残り3問答えることにした。
《ではでは、第三門!お二人の出会いは何処でしょうかっ?》
―――ピンポーン!
「「幼稚園」」
《正解です!》
《ではお次。第四問!お二人がお揃いで身に付けているものはなんですかっ!》
―――ピンポーン!
「「約束の指輪とペンダント」」
《正解ですっ!》
「(ところでこれ。完璧に出来レースだと思うんだけど・・・・・・。恵衣菜はなぜか気づいてない)」
残り一問のところで僕は苦笑気味にそう思った。
《さあ、残り一問です!これに正解することができたらウェディングイベントがプレゼントとなります!》
「ラスト一問・・・絶対に答える・・・・・・!」
「だね」
「うん・・・・・・!」
《では第五も―――――『おい、ちょっと待てよ』―――――はい?》
突如、絵里の言葉を遮って声が聞こえた。
『ちょっとおかしくな~い?アタシラも結婚する予定なのに、どうしてそんなコーコーセーだけがトクベツ扱いなワケ~?』
声の発生元を探ると、その声の主はすぐに見つかった。
その声の主の男女は立ち上り、ステージのすぐ横の司会者席の近くにまで来ていた。
男の方は茶髪で顔中にピアスをつけ、絵里と零華を威嚇するように大声をだし、女の方は小太りで厚化粧をしている、まさに絵に描いたようなチンピラカップルだ。
『あのー、お客様?申し訳ありません、イベントの最中ですので、どうかお静かに――――』
『あぁっ!?グダグダとうるせーんだよ!オレたちゃオキャクサマだぞコルァ!』
『アタシらもウェディング体験ってヤツ、やってみたいんだけど~?』
『いえ、ですから――――』
『ゴチャゴチャ抜かすなってんだコルァ!オレたちもクイズに参加してやるって言ってんだボケがっ!』
『うんうんっ!じゃあ、こうしよーよ!アタシらがあの二人に問題出すから、答えられたらあの二人の勝ち、間違えたらアタシらの勝ちってコトで!』
『『そ、そんな―――』』
零華と絵里が説得するなかチンピラカップルはズカズカと壇上に上がり、零華からマイクをひったくった。
『きゃ・・・・・っ!』
無理矢理マイクをひったくられ突き飛ばされた零華はバランスを崩し、その後ろの絵里に背中から倒れこんだ。
「あ・・・っ!」
だが、零華は絵里に支えられるようにして倒れずにすんだ。
それを見た僕はホッと胸を撫で下ろした。
「(さてと、僕の可愛い大切な妹の零華を傷付けた礼はどう返そうかなぁ・・・・・・)」
僕が心中でそう考えるなか零華がアイコンタクトでこう言った。
『(私の方は大丈夫だから、お兄ちゃんはそっちに集中して)』
そう言ってきた零華に僕は小さくうなずき、壇上に上がったチンピラカップルを見る。
「あ、明久くん。どうしよう・・・・・・」
「大丈夫、心配しないで恵衣菜」
「明久くん・・・うん」
隣に座っている恵衣菜の不安そうな表情に、僕は優しく微笑み台下の右手を左手で優しく重ねた。
『じゃあ、問題だ』
チンピラの男がわざわざ巻き舌の聞き取りにくい発音で言った。
そして――――――
『ヨーロッパの首都はどこだか答えろっ!』
僕らは言葉を失った。
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」
『オラ、答えろよ。わかんねぇのか?』
チンピラ男がバカにしたように言う中、僕と恵衣菜は小声で。
「ね、ねえ、明久くん」
「なに、恵衣菜」
「ヨーロッパって・・・・・・首都あったかな?」
「ううん、ないよ。と言うより、ヨーロッパは国というカテゴリーに属したことは一度もないから」
「だよね」
「うん。だからヨーロッパの首都はどこか、聞かれても答えることなんて不可能だよ」
「・・・・・・あの人、もしかしてバカなのかな?」
「うん。・・・・・・多分バカだと思う。それもFクラスの彼らより相当のバカ」
「だよね。さすがのFクラスでもヨーロッパは国というカテゴリーじゃないし首都がないことは知ってるはずだよね」
「う~ん・・・多分・・・・・・・」
そう会話していた。
そして同時に、問題を出したチンピラ男に哀れみの視線を向けた。
ちなみにその視線は僕らだけじゃなく、チンピラカップルのすぐ近くの絵里や零華。グランドピアノ近くの真姫、接客を中断してステージを見ている秀吉、恭二、希たちからもだった。というよりその場の全員(チンピラ女は除く)が向けていた。
《ハァー・・・・・・。え~と、吉井明久さま、姫宮恵衣菜さま、おめでとうございます。如月ハイランドウェディング体験をプレゼントいたします》
零華が絵里の持っていたマイクを借りてそうアナウンスした。
『ちょっと待てよ!アイツら答えられなかったじゃねーかよ!』
『そうよそうよ!なんであのコーコーセーたちにプレゼントするわけ!』
絵里と零華にガミガミ文句を言うチンピラカップルに、僕は軽~く殺気を出して静まらせようとしたが、当の絵里と零華が淡々と次の準備をしているのを見て、苦笑しながらも無視することにした。うん、チンピラは無視が一番だね。
《吉井さまと姫宮さまは係の者がご案内いたしますので今しばらくお待ちください》
絵里のアナウンスでしばらく待つこと数分、係の者が来て、僕と恵衣菜は如月ハイランドホテルへと向かった。
「それでは、姫宮さまはあちらのスタッフの後に付いていってください」
「あ、はい、わかりました。それじゃあ明久くん、また後でね」
「うん。楽しみに待ってるよ」
「うん♪」
恵衣菜が女性スタッフとともに離れていくのを見た僕は、案内役の人を見た。
と言うか。
「なんとなくわかっていたけど・・・・・・・なにしてるの葵姉さん?」
案内役のスタッフは葵姉さんだった。
「あらあら、さすがにバレてしまいましたか」
「うん。はじめから気づいていたから」
「あら、そうなんですの?」
「むしろあれで気付かれないとでも?」
「まあ、そうですわね。取り敢えず付いてきてくださいな」
「了解」
僕は葵姉さんの後に付いていって控え室まで来た。
中に入ると、
「ヤッホー、来たね明久くん♪」
中にいる人を見て僕はすぐさま扉を閉めた。
「・・・・・・」
「中に入らないんですの?」
「いや、入るんだけど・・・・・・」
「はい」
僕は再度扉を開き、
「なんで母さんがいるのさ!?」
中にいる人――――――母さんを見てツッコミをいれた。
約1時間後
「お兄ちゃんのタキシード姿・・・・・・。もう、私死んでもいいかも」
「れ、零華!?ちょっ、零華ぁああああ!!」
「あらあら、零華ちゃん明久くんのタキシード姿に興奮しちゃったみたいですね」
「わかるわ~。さすが、彼と私の子供よ~」
「それより零華の鼻血を止めてぇええ!」
ステージ横でそんなことが行われていた。
「ハァー、思いっきり疲れた・・・・・・」
「まあまあ、これが終わったら自由だからね♪」
「そうだけどさ・・・・・・なんでことりがここに?」
ステージ横での騒動から数分、零華と母さんたちは観客席に移動し、ことりが代わりにやって来た。
「・・・・・・話したいことがあったから」
「それは・・・昨日の事。だよね」
「うん・・・・・・」
「海未たちには話さないの?」
「海未ちゃんとつばさちゃんには明日話そうと思うよ。でも、穂乃果ちゃんには・・・・・・」
「文化祭を張り切っている穂乃果には話せない 、か」
「うん・・・・・・」
「ことりは・・・・・・どうしたい?」
「わ、私は・・・・・・」
「焦らないでゆっくりと考えよ・・・僕はことりの味方だから」
「明久くん・・・・・・・」
「ほら、笑って。何時ものことりじゃないと僕は嫌だよ?」
「うん♪夜また連絡するね」
「わかったよ」
「うん。それと、似合ってるよ明久くん♪」
「ありがとう、ことり」
ことりがそう言い出ていくのを確認した僕は、表情に影を作った。自分でもどうすればいいか分からないからだ。
そして、その数分後―――――――
《それでは本日のメインイベント、ウェディング体験です!皆様、まずは新郎の入場を拍手でお迎えください!》
葵姉さんの声が聞こえてきた。
そして、それと同時に園内全てに響き渡るのではないかと思われる程の拍手が聞こえてきた。どうやら周囲の熱気に押されて一般入場客もいるみたいだ。
「それじゃあ行きますか」
僕は舞台袖からステージへと上がった。
ステージに上がった僕はあまりの明るさに手で光を遮った。
光になれた頃、ステージを見た僕はビックリした。
そこはまさに本物の結婚式のようなセットだったからだ。
「(うわー、すごいなぁこれ。イベントにしてはかなり大がかりな設備だなぁ)」
《それでは新郎のプロフィールの紹介を――――――》
「(え!?僕のプロフィール紹介するの!?プライバシーは!葵姉さん!!)」
《プライバシーなので控えさせていただきます》
葵姉さんの放送に僕はホッと胸を撫で下ろした。
すると。
『ま、紹介なんていらねぇよな』
『興味ナシ~』
『ここがオレたちの結婚式に使えるかどうかが問題だからな』
『だよね~』
最前列に座っている連中からそんな声が聞こえてきた。
「(また、あのチンピラ)」
声の主は先ほど騒いだチンピラカップルだった。
しかもどうやら外観に相応しいマナーの持ち主らしい。
《申し訳ございません。他のお客様のご迷惑となりますので、大声での私語はご遠慮頂けるようお願い致します》
『コレ、アタシらのこと言ってんの~?』
『違ぇだろ。俺らはなんたってオキャクサマだぜ?』
『だよね~っ』
『ま、俺たちの事だとしても気にすんなよ。要は俺たちの気分が良いか悪いかってのが問題だろ?な、これ重要じゃない?』
『うんうん!リュータ、イイコト言うね!』
調子に乗った下卑た笑い声が一層大きく響き渡った。
チンピラカップルの周囲のお客さんは迷惑そうに眉をしかめている。
『お、お兄ちゃんのこと悪く言ってぇぇ。マジで許さない。あの人たちに絶望を見せてあげる・・・・・・!』
『れ、零華ちゃん落ち着いて落ち着いて~。ことりちゃん、海未ちゃん、手伝ってぇ』
『零華、落ち着いて下さい。このままでは出来なくなってしまいますから』
『落ち着こうよ零華ちゃん~』
そんな声が僕の耳に入ってきた。
「(あはは)」
《続きまして新婦の入場です。皆様、拍手でお迎えください!》
葵姉さんのアナウンスに再び拍手が鳴り響いた。
それと併用して、心なしか音量の上がったBGMとアナウンスが流れ、同時に会場の電気が全て消えた。スモークが僕の時と同じように足元に立ち込め、否応なしに雰囲気が盛り上がった。
《本イベントの主役、姫宮恵衣菜さんです!》
葵姉さんのアナウンスと同時に幾筋ものスポットライトが壇上の一点のみを照らした。暗闇から一転して輝き出す壇上で、僕は思わず目を瞑った。
そして、再び目を開けた時に視界に入ってきた姿に僕は言葉を失う。
『・・・・・・・・・・綺麗』
『・・・・・・・・・・可憐』
静まり返った会場から溜め息とともに漏れ出た、誰のものともわからない台詞が静かな会場に伝わる。
余程入念に製作したのか、純白のドレスは皺一つ浮かべることなく着こなされていた。僅かに銀が煌めくスカートの裾は床に擦らない限界ギリギリの長さに設定されていた。
「・・・・・・明久くん・・・・・・」
「恵衣菜・・・・・・?」
白銀のティアラとヴェールの下に素顔を隠し、シルクの衣のような衣装に身を包む、幼馴染で恋人が綺麗な瞳で見てきた。
「うん。そうだよ」
僕は恵衣菜の姿に動揺した。
すると、そんな動揺する僕に、恵衣菜が恥ずかしげに問いかけてきた。
「・・・・・・どう・・・かな・・・・・・?似合ってる・・・かな・・・・・・?」
「―――うん。似合ってるよ。とても」
「ありがとう明久くん/////とってもうれしいよ♪私の昔からの夢が一つ叶った♪」
「夢?」
「うん。明久くんのお嫁さんになること。それが私の昔からの夢。だから、今ではこうして明久くんと一緒にいられてとっても嬉しい♪」
恵衣菜は満面の笑顔を浮かべて、僕に向けた。
「!恵衣菜//////」
恵衣菜の満面の笑顔に僕は自分の顔が赤くなったのを感じ、少し視線をずらした。
《見ている私にもお二方の喜びが伝わってきますね。泣けてきます》
葵姉さんが相変わらずのアナウンスで言った。だが、その声に嬉しそうな雰囲気を醸し出していた。
『恵衣菜姉様、綺麗です、素敵です~』
『綺麗だね、恵衣菜ちゃん』
『ええ』
『ホントだね~』
零華たちの声が耳に聞こえてきた。
すると。
『あーあ、つまんなーい!』
観客席から大きな声が上がった。
『マジつまんないこのイベントぉ~。人のノロケなんてどうでもいいからぁ、早く演出とか見せてくれな~い?』
『だよな~。お前らのことなんてどうでもいいっての』
発言者はまたしてもあのチンピラカップルらしい。
『ってかナニ、このオンナ?ちょっとどころかかなりキモいんだけど』
『言えてる、言えてる。昔からの夢があんなオトコと一緒にいることって、バカみてぇ』
『だよね!あのオンナ歳いくつ?あ、もしかしてキャラ作り?ここのスタッフの脚本?』
『どうでもよくねぇ~。言えることはあのオンナ、マジでアタマおかしいってことだろ?ギャグにしか思えないんだケドぉ』
『だよねぇ~』
『そっか!コレってコントじゃねぇ?あんなキモい夢、ずっと持ってるヤツなんていねぇもんな!』
『え~っ!?コレってコントなのぉ?だとしたら、超ウケるんだケドぉ~!』
『動画に撮ってネットに流したら面白くねぇ~?』
『そうかもぉ』
口々に文句を言っているチンピラカップルは、恵衣菜を指差して笑っていた。
するとそこへ、
『今度という今度は許せないっ!いますぐあの人たち半殺しにする!』
『私もかな?さすがにこれは幼馴染として、友達として許せないね!』
『同感です!絶対に許せません!今回ばかりは私も止めません!』
『だね~。私も今回はかなりイラーってきたよ~!絶対に許さない!』
『れ、零華落ち着いて!』
『穂乃果、海未、ことり、落ち着いて!ステージが台無しになるわ!真姫、希、手伝ってちょうだい!』
零華、穂乃果、海未、ことりの怒気の声と、それを宥めるつばさと絵里の声が聞こえた。
そしてそんな短い、一分にも満たない時間の間に、
《は、花嫁さん?花嫁さんはどこにいかれたのですかっ?》
「えっ!?」
恵衣菜は僕の前から消えていた。
恵衣菜の立っていた場所には、手に持っていたブーケ、白銀のティアラとヴェールだけが残されていた。
「恵衣菜どこへ・・・・・・・」
僕は落ちていたブーケと白銀のティアラとヴェールを拾う。ヴェールは、羽根のように軽いはずなのに、恵衣菜の流した涙で湿り、僅かに重くなっていた。
《姫宮さん?姫宮恵衣菜さーんっ!皆さん、花嫁を捜してください!》
僕は葵姉さんのアナウンスが流れている間にステージ脇に移動していた。
そして、
「恵衣菜を捜してくる。皆には悪いけど、このあとのイベントはいいよ」
そこにいた母さんにいった。
「わかったわ・・・・・・ちゃんと恵衣菜ちゃんを捜してきなさい」
何時もの雰囲気ではなくシャキッとした雰囲気と口調で母さんは言った。
「もちろんだよ。ごめん、母さん」
「いいのよ。私もあそこにいる人たちには激怒してるの。明久くんに任せてもいいかしら?」
「言われずとも初めからそのつもりだよ母さん。彼らは恵衣菜を泣かした。それに零華にも手をかけた。僕は・・・・・・それを許さない・・・・・・!」
「そう・・・・・・。ここの人には連絡を入れとくわ、すきになさい」
「ありがとう母さん。それと、これ・・・お願いしてもいいかな?」
「ええ。任せときなさい」
「ありがとう」
僕は持っていたブーケと白銀のティアラ、ヴェールを母さんに預け、その場から駆け出した。
目的地は5分もたたずに見えた。
いやー、あまり遠くなくて助かったよ~(棒読)。
『いや、マジでさっきのウケたな!』
『うんうん!私・・・・・・結婚して一緒にいるのが夢なんです・・・・・・。どう?似てる?かわいい?』
『ああ、似てる!けど――――キモいに決まってんだろ!』
『だよね~!』
『動画にでも撮っておけばよかったな!』
『うんうん!それでネットに流したら面白かったかもね~!』
さてと。それじゃあ、始めようか。
あの人たちにO☆HA☆NA☆SHI☆をしようか。
「ねぇ、そこの人たち」
『ぁあ?ぁんだよ?』
二人組が真っ茶色な顔をこっちに向けてきた。
正直あまり長く見たくないね。
『リュータ。コイツ、さっきのキモいオンナのオトコじゃない?』
『みてぇだな。んで、その新郎サマがオレたちになんか用か、あァ!?』
なんか威嚇してきたみたいだけど全然怖くないね。
「うーん、大した用じゃないんだけどね――――――」
僕は言葉を区切り対面した。
「――――――ちょっとそこまで来てもらって良いかなぁ?」
『ぁんだよ?』
チンピラカップルは僕のあとを疑いもせずについてきた。
そして、人気のない場所に来た僕は振り返り、
ガンッ!
『ヒッ!』
チンピラカップルの男の顔を掴んで持ち上げた。
『な、なにすんだテメェ!』
「・・・・・・・・・・」
男が何か言うが本気でキレてる僕には聞こえない。
まあ、言ってることはわかるけどね。あえて無視をする。
そして、男を地面に放る。
『おいっ!なんかいえよガキッ!』
『そ、そうよ!何か言いなさいよっ!』
「ハァ・・・・・・うっさい、黙れ」
『ヒッ!』
僕の眼と表情を見たチンピラカップルは情けない上ずった声をあげた。
「あのさ、キミたち僕の恋人に散々好き勝手言ってくれたよね?」
『そ、それがなんだよ!しょーじきキメェんだよ、あのオンナ!』
ゴスッ!ゴスッ!
『ガフッ!』
『り、リュータ!』
「この状況でも僕の大切な人を好き勝手言うんだ。・・・・・・ふざけんなよ」
僕は男の腹を殴り続けて鳩尾を殴り倒す。
「あんたらからしたらどうでも良いことかもしれないけどね、彼女にとっては大切なことなんだよ。それを、あんたらにバカにする権利はないよね?あんたたち何様のつもりなの?クイズの時もそうだけどさ、あんたらの行動でどんだけ他人が迷惑してるか、わかる?それにあんたら僕の妹にも手をだしたよね?幸いにも後ろに友達がいてくれたから怪我をせずにすんだけど。もしこれで怪我とかしたらどうするつもりだったの?責任とれるの?とれないよね?更に言うけどあんたらの方が頭悪いから。ヨーロッパは国というカテゴリーに入ったこと一度もないから首都なんかないんだよね。それなのにヨーロッパの首都はどこか答えろ、なんてあんたらの方がバカなんだよ」
チンピラどもはもう何も言えずにいた。
表情は恐ろしいものを見たような顔をして、その汚い顔を涙で濡らしていた。
「次僕らの前に出たらその時は――――――」
僕はチンピラから背を向けて歩き、途中で立ち止まり顔だけを振り向かせて言う。
「――――――これだけじゃ済まさないから。覚悟しとけ!」
そう言うとチンピラにはもう振り向かず立ち去った。
~明久side out~
~恵衣菜side~
「うっ、うっ・・・・・・・グスッ・・・・・」
ステージから飛び出した私は如月ハイランドホテルの屋上にいた。
「グスッ・・・・・ヒッグ・・・・・・うっ・・・・・・」
あのチンピラの人たちに私の夢をバカにされていてもたってもいられなくなり人気のない場所、屋上に来たのだ。
時間は夕刻で黄昏時に近く、茜色の空には微かに月が出ていた。
「明久くん・・・・・・明久ぐん・・・・・・」
私は一人屋上の端で縮こまって泣いていた。
そこへ、
「捜したよ・・・・・・恵衣菜」
優しい、私の大切な人の声が聞こえてきた。
そして、顔をあげるとそこには
「明久・・・ぐん・・・・・・」
「泣かないで恵衣菜」
大好きな明久くんの姿があった。
~恵衣菜side out~
~明久side~
「捜したよ・・・・・・恵衣菜」
「明久・・・ぐん・・・・・・」
「泣かないで恵衣菜」
僕の予想した通り屋上にいた恵衣菜を僕はタキシード姿のまま優しく恵衣菜を抱き締め、頭を撫でる。
恵衣菜はしばらく僕の胸の中で小さな泣き声を出して泣いた。僕はそれをただ静かに聞き、優しく撫でる。
「僕は恵衣菜の味方だよ、どんなときも。世界中が恵衣菜を否定しても僕は絶対に否定しないから。まあ、零華や穂乃果、海未、ことり、つばさも恵衣菜を否定しないと思うよ」
「明久くん・・・・・・」
「だから、恵衣菜、ね」
「・・・・・・うん、うん♪」
僕はウェディングドレス姿のまま恵衣菜をお姫様抱っこで抱き上げる。
「明久くん・・・・・・//////私、重くない・・・・・・?」
「重くないよ。むしろ、軽い方、かな?」
「そ、そう//////」
「うん。あ、写真を撮らない?」
「写真を?」
「うん。恵衣菜のウェディングドレス姿って貴重だから、今日のメモリアルとして、ね♪」
「うん♪そうだね」
僕は持っていたスマホを近くの物に立て掛け、タイマーをセットして写真を撮った。
「さっ、まだ時間はあるんだから行こうよ」
「うん!そうだね!」
僕は恵衣菜とともに階下に行き、スタッフの人たちの協力もあり着替えたあとエントランスで待ち合わせをした。その際、スタッフの人たちに謝罪をしたのだが、逆にこちらが謝られた。なんでもこちらが用意したイベントなのに台無しにさせてしまったかららしい。
ちなみに母さんたちはもう帰ったみたいだ。つい先程、メールがあった。
「お待たせ」
数十分後、元の私服に着替えた僕と恵衣菜は合流し、まず最初に観覧車に向かった。
その際、僕らの手にはタキシードとウェディングドレスの入った袋があった。
それは今回のお詫びとして渡されたものだ。
観覧車に乗った僕らは黄昏に染まり、夜の闇へと移り変わる風景を眺めた。
「わぁー、綺麗だね」
「うん。周囲の町並みだけじゃなくて星空も見えるよ」
「ホント~」
僕らは窓から周囲の風景を眺めた。
そして、沈黙が流れた。
「あ、明久くん、その・・・・・・」
「恵衣菜・・・・・・」
僕と恵衣菜は眼を閉じ、唇と唇を合わせキスをする。互いの口の中で舌を絡め合わせる。
キスをした時間は何秒、何分だろう?分からないほどしていた。そして気づいたときには、観覧車が頂点に達していた。
「ふ、フフフフ」
「は、ハハハハ」
僕らはクスリと笑い、笑い声をあげた。
そして一周し地上に戻った僕らは、夕飯と少し遅くなったが恵衣菜のお弁当を食べ、パレードと花火を見たあと帰路についた。
帰路についている最中、恵衣菜が、
「ねぇ、明久くん」
「なに?」
「私の夢っておかしいのかな?」
そんなことを不意に言ってきた。
「ううん。そんなことないよ」
「そう、かな?」
「少なくとも僕はそう思わない。多分だけど雄二も霧島さんにそう言うと思うよ」
「フフ、確かに坂本くんなら翔子ちゃんに言うかもね」
「ね。僕は恵衣菜の夢はおかしくなんかないよ」
「・・・・・・ありがとう、明久くん」
「どういたしまして、かな?」
僕は恵衣菜と手を繋いで月明かりに照らされ、星々が明るく煌めくなかを帰っていった。
家についた際、僕は家にいた母さんと零華、葵姉さん、翠姉さん、お祖母ちゃんにお礼を言うと、
「今日は恵衣菜ちゃんの家で寝たらどう?」
と母さんに言われ、僕は恵衣菜の家に行き恵衣菜に事情を話、お風呂に入り、一緒に寝た。
その際、母さんから持っていくものを取り出したのだがそれを見た僕らは顔を赤面した。
何故なら、母さんが持たせたのは、その、夜の営みに使うゴムだったからである。
「あ、明久くんがしたいなら・・・・・・」
「え、恵衣菜・・・僕は・・・・・・」
そして、僕と恵衣菜は互いの身体を合わせ、一つとなった。
次回 『音ノ木坂学院文化祭』 Let GO to The NextStory!