バカとテストと召喚獣 奏で繋ぐ物語   作:ソーナ

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第Ⅴ章 肝試し編
第Ⅰ問 肝試し大会IN文月学園!


 

~明久side~

 

どうも、こんにちは。吉井明久です。つい先日、音ノ木坂学院から文月学園に戻り早数日。季節はもう夏休み。それはもちろん僕たちもなんだけど・・・・・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

文月学園

 

 

「暑い・・・・・・」

 

夏休みにも関わらず文月学園に登校している僕はあまりの暑さについそう漏らした。

 

「なんで僕らこんなことしてるんだろ・・・・・・?」

 

思わずそう呟く僕の答えに返したのは。

 

「仕方無いだろ明久。来学期から俺たちは生徒会役員なんだから」

 

「分かってるけどさ雄二」

 

悪友であり親友の坂本雄二だ。

僕らが今いるのは文月学園本校舎1階にある空き教室――――――ではなく、生徒会室だ。

 

「―――にしてもなんで生徒会なんて作ったんだろ?前までなかったよね」

 

そう、ここ今まで文月学園に生徒会というものは無かったのたが、来学期から新しく生徒会執行部、つまり生徒会を作ることになったのだ。役員は僕と雄二を含めてあと3人。計5人で成り立っている。僕が生徒会執行部の立ち上げに疑問をもっていると雄二が。

 

「さあな。恐らく、文月学園(ここ)と姉妹校になった音ノ木坂学院に生徒会があるからじゃないか?生徒会同士、交流があった方が良いってことだろ」

 

「へぇー」

 

雄二の言葉にそう返すと。

 

「さすが元神童と言われるだけはあるさね。まさにその通りだよ」

 

「学園長!」

 

扉から学園長が入ってきた。

 

「準備の様子はどうだい?」

 

「後は各部活動の予算などだな。それ以外は高橋女史たちのお陰で問題ない」

 

「そうかい。吉井、体調の方はどうだい?」

 

「あ、大丈夫です。傷の方も問題ないですし、ちゃんと動けます」

 

「そうかい、ならよかったさね」

 

学園長・・・・・・お祖母ちゃんは安堵したように言った。まあ、お腹の刺し傷の傷跡はまだ残ってるけど西木野先生のお陰で日常生活に支障はない。ただ、なんらかの衝撃でまた傷が広がる可能性もか無くはないそうなので少しでも体調に異変があったらすぐに知らせるようにと西木野先生からは入念に言われた。もっとも、可能性は低いので心配する必要はあまりないそうだけど。西木野先生からは走ったり、泳いだりと日常生活は問題ないとのことだ。

 

「ところで女子はどこに行ったんだい?」

 

「あ、恵衣菜たちは・・・・・・」

 

学園長の言葉に答えようとしたそのとき。

 

「た、ただいま~・・・・・・」

 

「お兄ちゃ~ん・・・・・・・」

 

「・・・・・・今戻った・・・・・・」

 

残りの生徒会役員である、恵衣菜と零華、霧島さんが戻ってきた。

 

「暑かったよ明久く~ん・・・・・・」

 

「お疲れさま恵衣菜。零華と霧島さんも」

 

「うん・・・・・・」

 

「・・・・・・雄二」

 

「おう、お疲れさん翔子」

 

恵衣菜たちに労いの言葉をかけると。

 

「ふむ。さすが仕事が速いさね。もう各部活動の予算が記入されてるよ」

 

零華の持っていたらしき紙を見てお祖母ちゃんが感心したように呟いた。

 

「あ、学園長」

 

「座ったままでいいさね姫宮」

 

立ち上がろうとする恵衣菜をお祖母ちゃんは苦笑いでその場に座らせる。

 

「ところで学園長、なにか用事でも?」

 

「実はだね、ちょいと不味いことになったんさね」

 

「「「「「???」」」」」

 

苦虫を噛み潰したようなしかめ面のお祖母ちゃんの言葉に僕たちは疑問符を浮かべた。

 

「言うより見せた方がいいさね」

 

お祖母ちゃんがそう言うと、突然召喚フィールドが形成された。

 

「誰でもいいから召喚獣を呼び出してみるさね」

 

「え~と、じゃあ、僕が。試獣召喚(サモン)っ!」

 

召喚獣を呼び出す言葉(キー)を呼ぶと、僕の前の空間に召喚獣が出る不可思議な魔方陣が現れる―――が。

 

「あれ?あんなに召喚獣を呼び出す魔方陣って大きかったっけ?」

 

零華の言うとおり、魔方陣の大きさがいつもの魔方陣より2、3倍大きかった。

しばらく待つと、魔方陣から召喚獣が出てきた――――――――――え?

出てきた召喚獣を見て僕は瞬きをした。

出てきた召喚獣の姿は西洋の騎士甲冑姿に両手剣クラスの大剣を床に突き刺していた。

うん、僕の召喚獣ってこんなのだっけ?

そう思いながら召喚獣を視る。そして召喚獣の大きさは僕と同じくらいあった。というよりこれって――――――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「僕?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこにはもう一人の僕がいた。

うん、ドウイウコト?

 

「が、学園長、これは一体・・・・・・?」

 

雄二が恐る恐る聞くと。

 

「召喚システムに不具合が生じてこうなったさね」

 

「簡潔に言うと?」

 

「調整に失敗してすべての召喚獣が妖怪の姿になってしまったさね」

 

うん、とても分かりやすい。

つまり、お祖母ちゃんが召喚システムの調整に失敗して、僕らの召喚獣はこういう姿になってると。

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「はいイイイイイイっ!!?」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お祖母ちゃんの言葉を理解して数秒後、僕らは絶叫を響き渡らせた。

 

「じゃあ、僕の召喚獣ってなんの妖怪!?」

 

僕がそう言うと。

 

「「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」」」

 

目の前で僕の召喚獣の頭が取れた。

 

「え・・・・・・・?」

 

突然のことに唖然していると。

 

「明久くん、あああ、頭が・・・・・・きゅ~・・・・・・」

 

「お、おおお、お兄ちゃんの頭が、と、とれ、取れ・・・・・・・ふにゃぁ~・・・・・・・」

 

「恵衣菜!?零華!?」

 

恵衣菜と零華が眼を回して気絶した。

慌てて二人を介抱していると。

 

「ふむ、明久のこれはデュラハンか?」

 

「・・・・・・うん。でもなんで吉井デュラハンなの?」

 

「それはたぶん明久がバカだからじゃないか?」

 

「・・・・・・私や雄二より頭がいいのに?」

 

「ああ。だって考えても見ろよ翔子。自分の妹といつもいつもイチャイチャしていて恋人の姫宮とだってそうなんだぞ?いくらシスコンでもあそこまでしないだろ」

 

「・・・・・・確かに」

 

「だろ?だから予想だがシステムが、明久=シスコン=バカという方式をして頭がない騎士、デュラハンにしたんじゃないか?その辺りはどうなんだ学園長?」

 

「あー・・・・・・そうさね~・・・・・・おおよそは坂本の予想が正解だろうね。明久レベルのシスコンをシステムが異常(バカ)として認識したんだろうね」

 

雄二たちの酷い言われようが聞こえてきた。

 

「学園長これって元に戻るんですか!?」

 

「一応元に戻ると思うが・・・・・・・」

 

お祖母ちゃんの表情を見て僕はこの先の展開が読めてしまった。あ、お祖母ちゃんなにか企んでる。

そう思うのと同時に。

 

「実はこれでお化け屋敷をやってもらいたいさね」

 

うん、予想通り。予想通りなんだけど、一応。

 

 

「「「「「お化け屋敷!?」」」」」

 

 

僕らはまたツッコんだ。

あれ!?恵衣菜と零華いつの間に起きたの!?

 

「・・・・・・学園長、なんでお化け屋敷なんです?」

 

「清水のバカやFクラスのバカどものせいでここ最近我が校の評価が下がりっぱなしなんだよ。まったく、面倒なことしてくれたものさね」

 

「あ、それで評価向上と宣伝もかねてお化け屋敷ってことですか」

 

「ああ。予期せずシステムのオカルト面が色濃く出たからね。これを逃す手はないさね。それに丁度今は夏の季節だからね。お化け屋敷はもって来いなのさ」

 

「なるほど」

 

「それで私たちはなにを?」

 

「あんたたち生徒会役員にはこのお化け屋敷を作る作業をしてもらいたいさね」

 

「わかりました」

 

「それと、丁度補講とかも終わりさね?なら、全体でお化け屋敷を試験的にやってもらいたいさね」

 

「というと?」

 

「チェックポイントでも作って生徒たちの夏の遊びとして楽しんでもらうさね」

 

つまり、お化け屋敷型の攻防戦ということだ。

ではここで文月学園お化け屋敷のルールを説明するよ。

 

 

 

  文月学園お化け屋敷のルール

 

 

1:ペアは極力男女のペア。

 

2:お化け屋敷の恐怖判定は入る人に渡す、音量測定機能付きマイクから、一定のラインを超えたらその場で失格。どちらか片方でもラインを超えたらペアで失格となる。

 

3:チェックポイントはA~Dクラスまでの各4ヶ所に有り、4ヶ所全てを攻略できたら攻略するチームの勝ち、攻略出来なかったら驚かすチームの勝ちとなる。

 

4:視ている人も楽しめるよう支給されたカメラを必ず携帯すること。

 

5:お化け屋敷内の設備を故意に破壊することはしないように。

 

6:お化け屋敷内はキチンとルートの通りに進むこと。

 

7:驚かすチームは攻略者を物理的及び召喚獣でのバトルや妨害をしてはならない。

 

8:チェックポイントでの召喚獣での対戦は必ず二人一組のペアで行うこと。

 

9:相手を傷付けるようなことはしないようにしましょう。

 

10:以上のルールを元に、みんな仲良く、楽しく遊びましょう。

 

 

         承認  文月学園学園長 藤堂カヲル

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一時間後

 

 

「おーい、その天幕取ってくれー!」

 

「ここはどうする?」

 

「はい、次~!」

 

二年Aクラスの中ではほぼ全員の二年生がお化け屋敷に向けての装飾をしていた。

 

「うわ~。みんな凄いやる気」

 

「だな。まさか来ていた二学年全員が手伝ってくれるとは思わなかったぞ。しかもFクラスの奴らもいるしな」

 

雄二の視線の先にFクラスの生徒が黙々とお化け屋敷に必要な装飾を作ったりしていた。う~ん、あのFクラスがこうも落ち着いているなんて・・・・・・明日は雪が降るのかな?

 

「ねえ、坂本君」

 

「ん?どうした姫宮?」

 

「Fクラスの人たち・・・・・・あ、坂本君たちは除いてだよ。あの人たちに何かしたの?」

 

「あ~・・・・・・」

 

恵衣奈の問いに雄二は視線を泳がせた。

 

「雄二?」

 

「実はだな・・・・・・吉井妹が脅したと言うか、実力で屈服させたと言うかなんと言うか・・・・・・あ~、明久の妹がマジギレしてだな・・・・・・」

 

「はい?」

 

「ああ、なるほど」

 

雄二の言葉の意味を僕は理解できなかったが恵衣奈は理解できたみたい。え、どういうこと?

 

「一言で言うなら、アイツらは吉井妹の逆鱗に触れたと言うことだな」

 

「???」

 

疑問符を浮かべる僕に雄二が。

 

「姫宮、明久に説明頼む」

 

「あ、うん」

 

「どういうこと恵衣奈?」

 

「えっとね明久くん。零華ちゃんがFクラスの人たちにお話(OHANASHI)したということだよ」

 

今お話がお話(OHANASHI)って聞こえたのは気のせいかな?

 

「お話?」

 

「うん、お話(OHANASHI)

 

恵衣奈の言葉を復唱していると。

 

「お話がどうかしたのお兄ちゃん?」

 

装飾に必要な布を持って零華がやって来た。

 

「あ、零華」

 

「零華ちゃん、それって窓縁に架ける布?」

 

「そうですよ。それでお兄ちゃんたちどうしたの?お話がどうのこうのって言ってたけど」

 

零華が疑問顔で可愛らしく首をチョコンと傾けて聞いてきた。

うん、可愛い。写真に撮っておきたいぐらい。

零華を見てそう思っていると。

 

「おい明久」

 

「ん?なに雄二?」

 

「いや・・・・・・なんでスマホを持って吉井妹を撮ってるんだ・・・・・・?しかも連写で」

 

「へ?」

 

雄二に言われて自分の手元を見ると、そこには僕のスマホが握られていてカメラモードで零華を連写していた。

 

「お、お兄ちゃん・・・・・」

 

「明久くん・・・・・・」

 

「あ、あれ!?いつの間に!?」

 

いつの間にか持っていたスマホを見て驚く。いつスマホを出したのかまったく分からなかった。

 

「無意識かよ・・・・・・吉井妹もだが、明久のやつシスコンがさらに極まってやがる・・・・・・」

 

「あははは・・・・・・」

 

慌てふためく僕に雄二は呆れた眼差しで見て、恵衣奈は苦笑いを浮かべていた。

そんなところに―――。

 

 

『『お前らうるせぇんだよ!!!!』』

 

 

Aクラスの扉を蹴破るかのよう勢いで開け、入ってくるなり大声で怒声を上げた三階のフロアではあまり見ない二人の男子生徒がやって来た。

 

「???」

 

「え~と・・・・・・?」

 

「どちら様?」

 

僕、零華、恵衣奈がそれぞれ口にすると。

 

「は!お前らは揃いも揃ってバカなのか?」

 

「そう言ってやるな夏川。吉井の頭は妹の事ばかりで埋まってんだ、しかたねぇだろ」

 

「そう言えばそうだったな常村」

 

何故かとてつもなくバカにされた気がする。

 

「まあ、零華のことをいつも思ってるのは当然ですけど」

 

そう首をかしげながら言うと。

 

「「シスコンかよ!?」」

 

目の前の男子生徒二人が同時にツッコんできた。

 

「私もお兄ちゃんのことをいつも思ってるよ?」

 

さらに零華が言うと。

 

「「コイツもかよ!?しかもブラコン!?」」

 

またしても二人のツッコみが響いた。

 

「あはは。何時ものことだね~」

 

のほほんと零華が言い、雄二たちもなぜかうなずくと。

 

「「何時もなのかよ!?しかも既に認知済み!?」」

 

三度目のツッコミが響いた。

そんなツッコミが響いたところに。

 

「一体何やってるのですか二人とも?あら、明久くん、零華ちゃん、恵衣奈ちゃん」

 

「葵姉さん!?」

 

「「葵お姉ちゃん!?」」

 

葵姉さんが男子生徒の後ろからAクラスに入ってきた。

 

「はい、そうですよ。それで、夏川君と常村君二人はここで何をしているんですか?」

 

「こ、小暮・・・・・・」

 

「別に、こいつらがうっせぇから文句を言ってるだけだ」

 

「ふむ・・・・・・」

 

葵姉さんが言った、目の前の男子生徒二人の名前の夏川と常村という名前に首をかしげる。

 

「(はて・・・・・・夏川に常村・・・・・・・どこかで・・・・・・・・・あ!)」

 

二人のことを思い出した僕は。

 

「召喚大会の時の常夏コンビ!!」

 

二人を指差して言った。

 

「「誰が常夏だぁぁ!!!」

 

「ふふっ・・・・・・」

 

常夏コンビ先輩がツッコミ、葵姉さんは手で口元をおおって笑う。

そこに零華と恵衣奈が。

 

「違うよお兄ちゃん!」

 

「そうだよ明久くん!あの人たちは―――」

 

「「変態先輩コンビ、だよ!!」」

 

ハッキリと同時に常夏コンビに向かって言った。

 

「「誰が変態先輩コンビだぁぁ!!!?」」

 

「ふふふふっ・・・・・・・・・」

 

さらにツッコむ常夏コンビに葵姉さんは肩を振るわせて笑っていた。

 

「お前らは人の名前すら覚えられないのかよ!」

 

「それで学年首席とか笑えるぜ!」

 

「しかたねぇだろ、首席とはいえバカなんだからよ」

 

「まっ、それもそうだな」

 

「「ギャハハハハハハハハ!!」」

 

「「「「・・・・・・・・・・」」」」

 

常夏コンビの言葉に僕と恵衣奈、零華、そして葵姉さんは黙って常夏コンビを見た。最初にしゃべったのは。

 

「二人とも?」

 

「「ヒッ!?」」

 

妖艶な雰囲気から一転、悪魔のような微笑みを浮かべた葵姉さんだった。その葵姉さんを見た僕たちは。

 

「「「(あ、終わったなあの二人)」」」

 

と心に思った。

 

「こ、小暮?」

 

「な、なんだよ?」

 

「今、(わたくし)従兄妹(いとこ)がバカと・・・・・・お二人はそう言いましたよね?」

 

「「ひぃっ!!」」

 

「それは、私に対する嫌がらせですか?私は、私の従兄妹が知りもしない人にバカにされるのが我慢ならないのですよ。しかもお二人はこんなところで何をしているのですか?明久君たちがうるさいからと言いましたが、ここは本校舎。お隣の旧校舎とは違って防音設備が万全ですよ?しかも扉が閉まっていたのですから私たちのいた上の階にまで響くことはないと思いますが?違います?」

 

「「あ、ああ・・・・・・」」

 

「つまり、お二人は・・・・・・いえ、あなた方は勉強に飽きてフラフラしているところを明久君たち二年生が何か楽しげな事をしているのに気がついて、八つ当たりしたということですわね」

 

葵姉さんはAクラスの教室の扉前にいる三年生の人たちを視てそう言った。言われた三年生の人たちはバツが悪そうに眼を逸らした。

 

「つ、つうかお前はどっちの味方なんだよ小暮!」

 

「そうだ!なんで二年のガキどもを擁護すんだ!」

 

「あら?私はなにも二年生を擁護しているわけではありませんわ」

 

「はあ?」

 

「じゃあなんでソイツらを庇うんだ!」

 

「私が庇うのは私の従兄妹である明久君と零華ちゃんと妹同然の恵衣奈ちゃんですわ。他にも、明久君たちの友達は擁護しますが、別に二年生全体を擁護する気は更々ありませんわ。特に、そちらの二年Fクラスの方々はですが。ああ、もちろん、坂本君らは擁護する側ですわよ」

 

「葵姉さん・・・・・・」

 

凛々しく、年上の風格を持つ姉さんとは違う風格を持つ葵姉さんの後ろ姿を視る。

両者の無言の沈黙が漂っていると。

 

「話は聞かせてもらったよ」

 

「学園長?」

 

お祖母ちゃんが入ってきた。

 

「やれやれ、状況を視に来たんだがどうやら面白いことになってるみたいじゃないか」

 

お祖母ちゃんのニヤリと笑いながら言う言葉に苦笑を内心浮かべる。

 

「ふむ。よし、決めたよ。三年もこの肝試しに参加するように。これは学園長命令だよ」

 

『『『『な・・・・・・っ!』』』』

 

常夏コンビたち三年生がお祖母ちゃんの通達に眼を白黒させた。

 

「正確に言うなら、補習と夏期補講に参加している二年と三年は全員余すとこなく参加しな。いいね。詳しい話は坂本から聞くんだね。坂本、ルール表は出来てるさね?」

 

「ああ、ここにある」

 

すでにプリントされてる肝試しのルール表の入ったクリアファイルを持ち上げて言う。

 

「うむ。今回の肝試しを学園行事として、学園長が認可する!ルールを守り生徒同士、切磋琢磨しあうんだね」

 

そう言うとお祖母ちゃんは満足そうに教室から出ていった。

 

「さて、つう訳だがセンパイ。どっちが脅かす側をする?」

 

「んなの俺たちに決まってるだろ」

 

雄二の言葉に常夏コンビの片割れ、坊主頭の夏川先輩が言った。

 

「なら、俺たちが驚かされる側だな」

 

「ああ。テメェらを徹底的に叩き潰してやるよ。前からお前らは気に入らなかったんだ・・・・・・!」

 

「ふっ。いいだろう。俺もアンタたちにはムカついてんだ」

 

坊主先輩と雄二の間に火花が散ってる気がする。

 

「なあ坂本。この肝試し、負けた側に罰ゲームとかねぇのかよ?」

 

「あ?」

 

「なんだねぇのかよ。つまんねぇな」

 

「・・・・・・いいか明久?」

 

坊主先輩の言葉に雄二は小声で聞いてくる。

僕が小さくうなずくと。

 

「いいだろう。負けた側は二学期にある体育祭の準備や片付けを相手の分まで引き受ける、これでどうだ?」

 

来学期の初手頃に予定されてる体育祭。それは文化祭に並ぶ結構な大掛かりなイベントなため、準備や片付けもそれなりに手が掛かる。それを相手の分までやるとなるとその苦労は計り知れないが、罰ゲームというのにしてはちょうど妥当だと思う。雄二の言った意味を理解したのか葵姉さんは苦笑を僅かに浮かばせていた。

 

「おいおい坂本。お前にしちゃ随分ヌルい提案じゃねぇか。さてはテメェ、勝つ自信がねぇな?」

 

「この罰ゲームは学園長ら学校側に知らせてないからな。知っているのはここにいる俺たち生徒だけだ。勝手に決める罰ゲームとしてはこの程度が妥当だろ?」

 

「・・・・・・けっ」

 

「安心してくださいセンパイ方。僕と勝負がしたいならチェックポイントにでもいてくれれば、相手をしてあげますよ」

 

「そういうことだ。俺と明久に個人的な勝負がしたいならそこにいたらいい」

 

常夏コンビの眼を視て僕と雄二は言う。

 

「面白れぇ、その話乗ったぜ」

 

「ああ。テメェらに年上の怖さを思い知らせてやる」

 

僕と雄二、常夏コンビとの間にバチバチと火花が飛び散り一気即発にでも成りかねない雰囲気だ。

こうして、肝試しは三年生をも巻き込んだ大規模な催しになった。

 

 

 

 











次回 『肝試しは内外ともにご注意を』 Let GO to The NextStory!

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