バカとテストと召喚獣 奏で繋ぐ物語   作:ソーナ

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第Ⅴ問 第一回納涼ミス浴衣コンテスト

 

〜明久side〜

 

 

《それでは、いよいよ今年から始まりました新企画!"第一回・納涼ミス浴衣コンテスト"を開催致します!》

 

 

『『『『『うおおおっー!!』』』』』

 

スピーカーよ割れよ、と言わんばかりのノリノリのアナウンスがコンテストの会場に響き渡った。快晴で、場所が海の近くという好条件だからか、そーっと舞台袖から覗いて見ると、お祭りと海水浴に来ていた人、そして地元の人らが大勢ひしめいていた。

 

 

《このコンテストは"浴衣の小畑"の協賛による浴衣を題材としたミスコンテストでありまして、名前の通り浴衣の似合う美女を見つけようというものです!》

 

 

アナウンスを耳にして、僕らは揃って思う。

 

『『『(水着審査がなくて良かった)』』』

 

と。

 

 

《審査方法は得点式で、予選は三名の審査員たちによる独断と偏見で、決勝は審査員プラス観客の皆様の投票によって行われます!》

 

 

今現在の時刻は十八時過ぎと、あまりこの会場にいる人は少ないはずだが、それでも結構な人がいた。現時点でこんな人数ということは、万が一にも決勝に出ようものなら更に多くの衆目に晒されるだろう。下手したら地元や地方新聞、ネットに乗せられることもあるかもしれない。幸い、ここは静岡の伊豆と内浦の間辺りなので、文月学園や音ノ木坂学園の生徒に見られる確率は低いと思うが、僕らはこの予選で何が何としても負けなければならない。これ以上大切な何かを失わないようにしないと。

 

 

《予選参加はなんと七十名、この中から決勝に進むことができるのはわずかに十二名となります!》

 

 

参加者七十名のうち、十分の一、一割・・・・・・七人が男子。すでにこのミスコンはミスコンですらなく、ミス(?)コンと名前を変えるべき状態になっていることなど、観ているお客さん達は夢にも思うまい。

 

 

《では、エントリーナンバー一番の方に入場して頂きましょう!どうぞっ!》

 

 

アナウンスと係員の人に促されて、最初の人がステージに出ていった。

 

 

《では、エントリーナンバー1の方、お名前を教えて頂けますか?》

 

『はいっ。えっと、旅行で東京から来ました東野(ひがしの)聡美(さとみ)と言います』

 

《東京からご旅行ですか。羨ましいです。では、特技などはございますか?》

 

『あ、はいっ。特技は―――』

 

 

ステージに立った人にマイクが渡され、ついに予選が始まった。

ここで予選に付いて説明しておこう。

まず、この予選は番号順に一人ずつステージに立ち、そこで司会や審査員の人の質問やらを答え、審査員のポイントが高かった人十二名が次の決勝に進むことが出来る。

だが、僕らはなんとしてもこの予選で落ちなければならない。出来ることならエントリーをした際に女装をしてると気づいて欲しかったのだが、ことりたちのメイクにより気づかれることなく、エントリーが通ってしまった。まあ、すでに終わってしまったものは仕方ないと割り切るしかない。が、一度ステージに立ってしまったら、観客には僕らが女装をしていることは絶対にバレてはならない。バレたらそれは、社会的な死も同然となってしまう。

以上のことから、僕ら男子の命題。それは、『女装していることを隠しつつ、華麗に。速やかに。迅速に。誰にも気づかれることなく予選を敗退する』というものである。もっとも、この参加者七十名から決勝に進めるのはわずか十二名。確率で言うならば5.8・・・・・・。およそ六人に一人という割合だ。余程のことがなければ、僕らは決勝に進むことは無いだろう。なにせ、参加者には僕らの他、恵衣菜や零華、穂乃果、海未、ことり、と絶世の美少女達がいるのだ。選ばれるとしたら絶対彼女達だ。そう・・・・・・余程のことがなければ―――

 

 

《───ありがとうございました。では次の方どうぞステージへ!》

 

 

そんなこんなでどんどん進んでいき、次は僕の番になった。

あまり乗り気でない僕に。

 

「おに―――じゃなかった。お姉ちゃん、頑張ってね」

 

お兄ちゃん呼びから、わざわざお姉ちゃんに呼び変えた妹の零華がニコッと笑って言ってきた。

 

「あ、うん。行ってくるよ」

 

覇気のない言葉でステージに上がる。

ステージに上がると、さっきより観客の数が多いのに気づいた。

 

「(さ、さっきより増えてる・・・・・・!)」

 

他の人に気取られないように驚く。

 

「(さあ・・・・・・どうする)」

 

驚いてどうするか悩んでいる僕に、スタッフからマイクが渡される。

 

 

《───それでは、お名前をお教えて頂けますか》

 

 

司会の人の声に、僕は心の声を出す。

 

「(顔は浴衣の裾部分で少し伏せて、答えも出来るだけ小声で)───は、はい。・・・・・・吉井秋子です」

 

 

《おや?吉井さんは恥ずかしがり屋さんのようですね》

 

《清楚な感じで、可愛らしいですね・・・・・・これは、高得点です!》

 

 

「(何で!?)」

 

司会の人の隣に座ってる、小畑と呼ばれた人のコメントにドン引きと驚愕、疑問が出た。

なにゆえ、これで高得点なのだろうか!?

そんな僕の考えを知らずに、

 

 

《なにか特技はありますか?》

 

 

司会の人が問いてきた。

 

「と、特技ですか?そうですね・・・・・・強いて挙げるなら料理でしょうか・・・・・・。パエリアとか、カルボナーラとか」

 

特技の内に入るのかわからないが、一応料理と答えておく。

料理が出来たのは、元を辿れば姉さんのお陰(?)でもある。なにせ、姉さんは頭がいいのに料理はからっきしダメなのだ。姉さん以外は料理出来るのに・・・・・・。父さんも、一通りの料理は出来るが、母さんには及ばない。その為、僕や零華は姉さんに料理を極力させないために普段からやっていた。母さんと父さんはいつも忙しいため、基本的には料理は僕と零華が担当しているのだ。

 

 

《お料理ですか。家庭的で素晴らしいですね〜。では、ご家庭でも?》

 

 

家庭?何を当たり前のことを。そもそも、家事全般僕か零華しかここ最近やってないし。姉さんにやられたら何が起こるか・・・・・・。

うぅ。考えただけで寒気が走る。

 

「はい、ほぼ毎日・・・・・・」

 

うん。嘘はついていない。

 

 

《毎日ですか!今時の若いお嬢さんにしてはとても珍しいですね。これはポイントが高そうです》

 

 

いや、そんなに珍しくないと思う。

現に僕の周囲には料理をしてる女子沢山いるし。零華と恵衣菜はもちろんのこと、霧島さんや友香さんを始め、エレンさんや桜咲さん、葵姉さんも普通に料理をする。まあ、毎日ではないと思うけど。他にも、チーズケーキをよく作ることりや、妹の亜里沙ちゃんと二人で暮らしてる絵里、何故かμ'sの中で料理スキルの高いにこに、希。μ's三年生はほぼ毎日料理してると聞いたことがある。絵里は亜里沙ちゃんからだけど、にこと希は絵里から聞いただけだけだ。あとは海未も料理はする。

と、僕の周囲には結構な人数がいるため、なんの珍しくもない。

ちなみに男だと、代表は雄二だ。なにせ、雄二曰く、ウニとタワシの区別が付かず、『お袋に料理を作らせたら、俺も親父も互いの無事を願わずには居られない』、とのことらしい。まさか、姉さんの他にもいたとは・・・・・・。その事を聞いた僕と零華は遠い目をして、互いに今までの苦労を嘆きあったのだった。

そう思い出していた僕に、さらに質問が飛んできた。

 

 

《それでは───彼氏さんはいらっしゃいますか?》

 

 

「(What's?!)」

 

司会者の質問に僕はつい英語が心の中で出てしまった。

いやいや、僕は男だし!彼氏なんかいてたまるか!というかいないわ!

 

「か、彼氏なんていませーーんっ!!!」

 

動揺した僕は思わず、大きな声で返してしまった。

僕のその声に、観客から大歓声が上がった。主に男性陣から。

 

 

《おおーっ!これは男性陣にはとても嬉しいお話です!どうですか協賛かつ審査員の小畑さん》

 

《携帯番号を教えてくれたらオジサンがあとでお小遣いをあげよう》

 

 

一体なにを言ってるんだろうかこの人は?

そう思わざるを得ない言葉が発せられたことに僕は唖然とした。そんな僕の耳に。

 

 

「お姉ちゃん、あの巫山戯たこと言った人どうしようか?」

 

「そうですね〜。まずは、社会的に抹殺してからにしましょうか」

 

「あ、賛成ですわ。翠姉さまはどうします?」

 

「そうねー。どうせなら、社会的にだけじゃなくて個人的にも抹殺したいわね〜」

 

「では、あとでお話(OHANASI)しましょう。───全員で」

 

 

零華や姉さんをはじめとした人の声が聞こえてきた。

所々怒気が入っているのは気の所為だろうか?そう思っているところに。

 

 

《はい。あなたがスポンサーでなければ張り倒していたところですがそうもいかないので質問を返させていただきます》

 

 

と司会者さんが隣に座る小畑と書かれたプレートのところに座る人を睨み付けて言った。何故か、あの人がかなり苦労してると思ってしまった。

 

 

《では、吉井さん、今回、浴衣を着る上で気を付けたポイントなどは?》

 

 

司会者さんの質問に、声を小さくして言う。

 

「その・・・・・・あまり、か、身体の線が、出ないようにと・・・・・・」

 

着付けをしてくれたのはことりなので、さすがに骨格とかでバレる可能性はないとは思う。まあ、着付けをしてくれたことりが顔を真っ赤にしていたのだけど。

 

 

《なるほど。小畑さんから、吉井さんの着こなしについてなにか質問はありますか?》

 

《下着をつけてるかどうかお聞かせ願いたい!》

 

 

はいぃ!?

物凄い質問(悪い)に僕は面食らった。

僕と同じ心象の司会者さんも。

 

 

《一周回って心地よくなってしまうほどのゲスな質問ありがとうございます。気のせいかわたくし、先程から冷や汗が止まりません》

 

 

と、隣の人に『こんなところでそんな質問するかこの人!?』と言いたげな表情をしていた。声に何も出さないとはスゴい司会者魂だ。いつまで持つのだろうか・・・・・・。司会者さんにそう同情を禁じ得ない僕であった。

で、小畑さん?の質問に関しては。

 

「そんなのつけてませーんっ!」

 

速攻でそう返した。

なんで僕が女子の下着をつけなければならないのか!?さすがの僕もそこまでやらないわ!いや、そもそも、女装自体嫌なのだけど・・・・・・。

 

 

『『『うぉおおおーーーっ!!』』』

 

 

僕の返しにしっきよりもスゴいウェーブが上がった。

なにか変な解答をして・・・・・・したかも。さっき自分が何言ったのか思い返した。

 

「(これ、観客からしたら僕は下着をつけないで浴衣を着てるって聞こえるんじゃ・・・・・・!)」

 

 

《よ、吉井さん!?こんなセクハラ質問に答えなくても大丈夫なんですよ!?男性客の皆様、ウェーブはおやめ下さい!ここはそういう会場ではございません!》

 

 

司会者さんが慌ててそう呼びかけるが時既に遅く、

 

 

《決めたよ。彼女は決勝には進ませない。衆愚に晒すにはあまりに惜しい人材だ》

 

 

隣の小畑という人も興味津々と言う感じでいう。

というか今あの人観客に向けて衆愚って言ってなかったかな?

 

 

《はい皆様空耳ですよー!スポンサーがお客様を衆愚などと呼ぼうはずがございませんからねー!》

 

 

なんだろう。あの司会者さん、ものすごくやつれてる気がする。

 

 

《とにかく、吉井さん。色々ありがとうございました。そして、本当にすいませんでした・・・・・・》

 

 

一気に疲れた表情の司会者さんが、僕に本当に申し訳なさそうに言った。まあ、司会者さんが悪いわけじゃないんだけど・・・・・・。そう感じながら、僕はマイクを係の人に渡して舞台袖に帰って行った。

舞台袖に帰ると、次の番の零華がスタンバっていた。

 

「えーっと、お疲れ様お兄ちゃん(お姉ちゃん)

 

今、零華のお兄ちゃんがお姉ちゃんになったのは気の所為だろうか?そう思考の片隅で考えながら。

 

「うん・・・・・・なんかどっと、疲れたよ・・・・・・」

 

多分、今日一日で一番疲れたと思う。

 

「あははは・・・・・・そ、それじゃあ、行ってくるね」

 

「うん」

 

ステージへと向かっていく零華と変わって、僕は舞台袖に向かった。舞台袖では、恵衣菜や雄二、ことり達がいた。

 

「お疲れさん、明久」

 

「あ、うん」

 

「なんというか、大変じゃったな・・・・・・」

 

「ホントだよ」

 

労いを掛けてくる秀吉の声を聴きながら、僕は海未に渡された飲み物を口に含む。そこに。

 

 

《―――それではお名前をどうぞ》

 

 

「はい。吉井零華です」

 

零華への質問が始まった。

 

 

《おや?もしかして、先程の秋子さんのご家族の方でしょうか?》

 

 

「はい。私のお兄ちゃん(お姉ちゃんです)

 

 

《なるほど。姉妹でのご参加ですか。いかがですか小畑さん》

 

《姉妹揃って素晴らしいですね!是非ともお近付きになりたいものです!》

 

 

司会者さんの問いに下心丸見えの小畑さんと呼ばれた人に、僕は冷たい殺気を送っていた。

 

「僕の大切な妹に手を出したら、ただじゃおかない・・・・・・!」」

 

呪詛のように言う僕に雄二達は、微妙に後ずさりして、

 

『『『シスコンここに極まりだな(ね)(ですね)(じゃな)(ですわね)』』』

 

と一斉に言っていた。

それからさらに零華への質問は続いていき。

 

 

《―――他になにか質問はありますか小畑さん?》

 

《お姉さんのスリーサイズと連絡先を教えて欲しい!》

 

 

何故か零華に僕のことを聞いていた。うん、ナンデ?!

理解できなくフリーズしている僕の耳に、零華の冷たい声が伝わってきた。

 

「この人、殺っていいよね?ウン、殺ろう。私の大切なお兄ちゃんに手を出そうとする害虫(ゴミ)排除(抹殺)しとかないと・・・・・・」

 

幸いにも、その声はマイクに拾われなった為、観客や司会者さんの耳に入らなったが、舞台袖にいる僕の耳にはきちんと入ってきていた。え?普通この距離じゃ聞こえないだろだって?僕は普通に聞こえたよ。理由?だって、僕は零華のお兄ちゃんだよ?可愛い妹の声が聞こえるのは当然じゃないか。

 

 

《またしても下衆な質問にこのわたし、冷や汗が先程から全く止まりません。そして、何故か頭が痛いです》

 

 

司会者さんの心労が悲鳴を上げているような気がするのは気の所為では無いはずだ。

小畑さんと呼ばれた人の、下衆な質問に零華は―――

 

「ごめんなさい。見ず知らずの人に、私の大切なお兄ちゃん(お姉ちゃん)の情報をひとつでもあげる訳にはいかないんです」

 

と、ニッコリと笑って答えた。

その笑みは、見たものを震え上がらせるほどの冷たさを醸し出していた。そして、その攻撃とも言える言葉を一番ダイレクトに受けていたのは小畑さんと呼ばれた人だった。

ちなみに、司会者さんには被害が行ってなっかたりする。

 

 

《はい、ありがとうございました吉井さん。そして、姉妹揃って本当に申し訳ありませんでした!》

 

《ま、待ちたまえ!まだ聞いて―――!》

 

《時間もあまり在りませんので次の方どうぞ!》

 

 

隣でなにか言おうとしている小畑さんを完全に無視して、司会者さんは次に進めた。

次の人と入れ替わって戻ってきた零華に僕は。

 

「お疲れ様零華」

 

と、そう一言言った。

 

「うん。司会者さんのには疲れなかったけど、あの小畑さんという人に疲れたよ」

 

零華はそう言うと、人目も憚らずに僕に抱きついてきた。

抱きついてきた零華に僕も返し、零華成分。略して妹分を補給した。

妹分がわからない人に説明しよう!零華成分―――通称妹分とは、零華の匂いや体温、感触などにより得られる成分である!また、零華のいうお兄ちゃん成分。略して兄分と同じ効果を得ることが出来るのである!そして、僕と零華にとってものすごく重要かつ大切なことなのである!

ここ、テストに出るのからちゃんと覚えておくように!

 

 

そんなやり取りをしながらも、僕達(男子のみ)の重要な戦い(?)は続いて行った。

 

―――次回へとつづく。

 

 

 

 

 











次回 『浴衣コンテストの結末』 Let GO to The Next Baka Live!
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