バカとテストと召喚獣 奏で繋ぐ物語   作:ソーナ

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第Ⅶ問 真夏の思い出

 

〜明久side〜

 

「───PV?」

 

合宿という名の旅行の二日目。朝食を食べ終えた僕らに、絵里がそう言ってきた。

 

「ええ。折角、ここに来たのだからどうせなら新しいPVを作ろうかな、とね」

 

「別にPV作成は良いけど、曲はどうするの?」

 

PVを作るとなると、新曲が必要になるはずなのだけど。

そう思っていると。

 

「この間出来た新曲ですよ」

 

海未がそう言ってきた。

 

「え!?あれ!?」

 

「そうよ」

 

驚く僕に、当たり前じゃないと顔に出してにこが返した。

 

「まあ、確かに夏に作る新作PVとあの曲はマッチしてるけど・・・・・・」

 

ちょっとだけ驚いている僕に、話を聞いていた雄二が。

 

「なんでそんなに難しい顔してるんだ明久?」

 

怪訝そうに見て聞いてきた。

 

「あー。そのー」

 

「絵里ちゃん、それって確か水着姿も撮影しないといけないんじゃなかったっけ?」

 

言い淀んでいる僕に苦笑いしながら、零華が絵里に訪ねる。

 

「ええ、まあ、そうなのよね」

 

引き笑いをする絵里。

今回作成している新作PVは少しだけみんなの水着姿が入るのだ。いや、別に水着姿じゃなくて、浴衣姿でもいいんじゃない?と、思うけど。

 

「や、やっぱり水着姿も撮るのですか絵里?」

 

そこにおずおずと海未が質問する。

 

「ええ」

 

海未の質問に間髪入れずに返す絵里。その絵里の言葉に、海未は顔を真っ赤にすると。

 

「は、は、は、破廉恥です!他人に水着姿を見せるなんて!」

 

と、言った。

その言葉を聞いた僕達幼馴染sは───。

 

「「「「「(あ。言うと思った)」」」」」

 

と、同時に思ったのだった。

 

「あ、明久や、坂本さん達にならまだいいですが、他人に・・・・・・しかも、動画でなんて・・・・・・!ムリですぅ!」

 

「(いや。昨日水着着て海で遊んだよね海未?)」

 

海未の言葉に僕はそう頭で突っ込んだ。

ま、まあ、動画で見るのとリアルで視るのは違うからね。

雄二達が大丈夫なのは、友達だからだと思う。まあ、何度も会ってれば大丈夫になるか。(僕や恵衣奈、零華経由で)

というか、海未のことだから昨日はずっと遠泳するのかと思ったりする。何故かというと、かなり前(約二ヶ月ほど前)にμ'sの合宿があった際、海未の考えた練習計画に【泳ぎ=遠泳】というのがあったのだ。他にも普通じゃやらない練習計画があったなどと、穂乃果とことり経由で聞いたのだ。その時の二人の声は泣きそうだったと記しておこう。

ちなみに、その練習計画の計画表のコピーを貰い、後日我が文月学園補習教師である西村先生に見てもらったところ、西村先生から、『これは、トライアスロン競技者並の練習量じゃないか?』と、かなり引いて疑問形で言われた。それと、『流石の俺でもこんな量の練習はやらんぞ・・・・・・。というか、これを女子高生がやるのは無理があるだろ。幼い頃から武道など鍛錬を培っている者は別として。男でもこれは無理に近いぞ』とも言っていた。西村先生がそこまで言うとは、さすがの僕らも目を丸くしてこの練習計画を考えた海未に恐れを為したのだった。ちなみに、これを雄二たちに見せたところ、雄二たちみんな顎が外れそうなほどあんぐりしていた。

とまあ、そんな訳で昨日海未がまたそんな練習計画を考えていさきているのではないかと不安だったのだ。

ま、それは置いといて───。

 

「あのー、海未さん?いつまで僕の後ろに隠れてるおつもりで?」

 

僕はいつの間にか、僕の後ろに隠れていた海未に問いかけた。

すると。

 

「あ、明久が変わりに出てください!」

 

全力の懇願で海未が言ってきた。

 

「ナゼニ!?!?」

 

「明久が私の代わりに水着姿で出れば問題ありません!」

 

「いやいやいやいや!!なんで僕なの!?しかも水着!?」

 

「女装すれば大丈夫です!」

 

「却下だから!」

 

「なんでですか!?可愛いじゃないですかっ!」

 

「男の僕に可愛いはおかしくないカナァッ!?」

 

「小学生のころ、ことりに色々されましたよね!」

 

「うぎゃぁぁぁぁああああ!それは思い出させないで海未ぃぃ!!」

 

あの時の事は、軽くトラウマになってるのだ!

何があったのかと言うと、朝から晩までことりや恵衣奈たちのおもちゃ。もとい、着せ替え人形になったのだ。知らず知らずの内に着ていたから、僕の中で軽く黒歴史ものなのだ。ちなみに、その時の写真は僕と零華の親は愚か、ことりの親であるかおりさんを始め、穂乃果と海未、ツバサ、葵姉さん、恵衣奈の親にも見られた。(写真で)まあ、誰が拡散させたかはどうでもいいけど。(遠い目をして)

 

「はぁー。なら、もういっその事、明久と海未二人が映ればいいでしょ」

 

『『『それだ(よ)!!』』』

 

「「それだ!ではないから(ありません)!」」

 

にこの案を名案だとでも言うように言う穂乃果たちに、僕と海未は全力で突っ込んだ。

μ's九人の中に僕がいるところを想像して欲しい。もしそれがネットに流れたら、僕は間違いなく社会的な死を迎える事になる。いや、社会的どころか精神や肉体の死になるかも。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とまあ、そんなやり取りを終え、僕らは別荘の前にある砂浜でμ'sの新作PV撮影を始めた。もちろん、周りの人に迷惑にならないようにしている。ま、なにかあったとしても、今回撮影しているのは康太だ。だからなんの問題もない。どういう意味かと言うと、文月学園でムッツリ商会をしている康太はカメラ撮影は勿論のこと、映像、音声などを、撮影対象本人の了承を得て販売しているため機械系はあらゆる面で凄いのだ。まあ、偶に学園長であるお祖母ちゃんが学校の行事やらなにやらで撮影協力を求められてる程だからね。

 

「手伝ってもらって助かるよ雄二」

 

「気にするな。俺としても、お前が彼女たちと何時もどういう風にしてるのか知れて良いからな」

 

僕の言葉に雄二はフッ、と軽く笑って嬉しそうに言った。その笑いは嘲笑ではなく、安堵の笑みだとすぐに分かった。

 

「まあ、話には聞いていたが、やっぱり自分の目で見た方が分かるな」

 

「ん?」

 

「いや。お前が音ノ木坂に行ったのはやっぱり正解だったな、ってな」

 

雄二の言葉に、僕は視線をPVを撮ってる穂乃果たちに向けた。

穂乃果たちは絵里と海未、そして撮影者の康太から色々言われ動いていた。

雄二たちは手伝ってくれなくてもよかったんだけど、雄二たちから「俺たちにも手伝わせてくれ」と言われ、今に至る。

 

「・・・・・・確かにね」

 

「女子高だったけどな」

 

「そ、それは言うな」

 

雄二の女子高、という言葉に僕は言葉を詰まらせた。

何せ女子高に男である僕一人だけなのだ。さすがに気疲れする。

 

「来学期からはすぐに体育祭だ。生徒会の仕事もあるから忙しくなりそうだな明久?」

 

「はは。そうだね雄二」

 

裏拳を軽く合わせて僕と雄二は言った。

来学期からは生徒会も始まるし、すぐに体育祭もある。他にもオープンキャンパスや学校説明会など、来年の新入生に向けての準備が沢山ある。もちろん、試召戦争やテストもあるけど。

 

「そう言えば来学期からの試召戦争どうするの?やるの?」

 

Fクラス代表である雄二に問いかける。

 

「あぁ。どうすっかなぁ〜」

 

思案顔になる雄二。

一学期は成績最底辺のFクラスでも頂点のAクラス打倒!という目標があったけど、その目標もそうそうに終わってしまい、今はFクラスとAクラスでは友好関係が築けている。まあ、僕と恵衣奈が音ノ木坂に行ってる間に零華が雄二たち以外のFクラス生徒にお話(OHANASI)したみたいだけどね。

 

「偶にするぐらいか?」

 

「ふぅ〜ん」

 

どうやらあまり試召戦争をするつもりはないらしい。これなら来学期は平和な毎日を送れるかもしれない。

そう脳裏に浮かばせた僕は、ある事を頭に出した。

 

「あ」

 

「ん?どうした?」

 

「いやさ。折角音ノ木坂と姉妹校になったんだから、学校同士の交流会みたいなのどうかなって」

 

「学校交流会か・・・・・・。具体的にはどんなのだ?」

 

「それぞれの学校のことを話したり、選抜メンバーによる試験召喚大会とか。どうかな?」

 

「面白そうだな、それ」

 

「でしょ?」

 

「ああ」

 

ニヤッ、と笑みを浮かべる僕に、雄二も面白いと言う風にニヤリと笑みを出す。話の内容を知らない人から見たら、若干引くような光景だろう。なにせそれほど悪巧みを考えているような顔なのだから。

現に。

 

「お主ら、なにか悪巧みを考えておらんか?」

 

呆れた顔で秀吉が言ってきた。

隣にいる恭二も同じ顔だ。

 

「せめて穏便なものにしてくれよ?」

 

「まったくじゃ」

 

「そこまで派手な事したか?」

 

秀吉と恭二の懇願に僕と雄二は頭上に?を浮かべて聞く。

派手な事をした覚えは無いはずなんだけど・・・・・・?

 

「いやいや、あれが派手じゃねぇって・・・・・・」

 

「類は友を呼ぶってやつじゃな」

 

二人の言ってることが理解できない僕と雄二はさらに?を出して互いの顔を見合わせた。

それを見てさらにため息を吐く二人を見ながら、μ'sの新作PV撮影は進んで行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は過ぎて夜。

 

 

「───それじゃあアップするよ?」

 

「ええ」

 

修正などを終えた動画をホームページにアップすることを絵里に問い、絵里の許可を得た僕はパソコンを操作してさっそく昼間撮った新作PVをサイトにアップロードした。

パソコンのインジケーターが左から右に流れていき、ほんの十秒ほどで右に到達し100%になった。

 

「───これでアップロード完了、っと」

 

新作PVがサイトにアップされると、一分と待たずしてコメント欄に見た人の感想やツイートが並んだ。それと同時に、サイトにある視聴者カウンターが次々に増加して行った。

 

「うおっ!もう百人を超えたぞ」

 

スマホから見ていた雄二が驚く声を出して言った。

こうしている間にも、コメントやカウンターは増え続けていき───。

 

「コメントが386。視聴者数は894人・・・・・・!!」

 

新作PVをアップした五分後にはこんな数になっていた。

 

「つまり、一分間に・・・・・・えーと・・・・・・」

 

「約180人。一秒に約3人は見てる計算になるわ」

 

「ひゃ、180人っ!?」

 

「すごいにゃー!」

 

「ちょっと待って!もう千を超えてるよ!」

 

「コメントもいっぱい来てくれてるね!」

 

送られてきたコメントには───

 

『新作PV待ってました!これからも応援します!』

 

『曲のタイトルと歌詞と風景とμ'sのみんなの水着がマッチしていてとても良かったです!』

 

『これからも頑張って下さい!』

 

と言った言葉や。

 

『ことりちゃんマジ天使!!』

 

『にこちゃん可愛い!』

 

『凛ちゃんの活発な動き凄い!』

 

と言う風なコメントも多々送られてきていた。

 

「スゴいのぉ、これは」

 

「・・・・・・想像以上の数」

 

「さすがに驚くな、これは」

 

「・・・・・・ビックリ」

 

「ええ。まさかここまでとは」

 

秀吉や康太、恭二、霧島さん、友香さんも驚嘆の声を漏らす。

そこに。

 

「ただいま帰りました」

 

「ただいま〜」

 

「あ、姉さん。翠姉さん」

 

今日一日外出していた姉さんと、そのお目付け役の翠姉さんが帰ってきた。

姉さんが一人で外出するとなると、なにか起こさないか心配とのことで翠姉さんが着いて行ったのだ。ホント、姉さんが迷惑をかけます!

 

「アキくん。私たちがいない間、不純異性交遊はしてませんよね?」

 

「ぶふっ!」

 

「お、おおお、お姉ちゃんんん!!??」

 

唐突に姉さんの言った言葉に僕は息が詰まり、零華は何言ってるのお姉ちゃん!?と言った顔をする。

 

「はぁ。いきなり何言ってるのかしら玲?」

 

額に手を当て、溜め息をつく翠姉さん。

 

「気にならないんですか翠は?」

 

「明久くんたちが昼間からそんな事するわけないでしょ?」

 

疑問顔の姉さんに、翠姉さんは呆れたように言う。

 

「それもそうですね。ですが───」

 

「ですが?」

 

「お姉ちゃん?」

 

「もししていたら───」

 

「「ゴクリッ・・・・・・」」

 

「一族郎党皆殺しです♪」

 

「「・・・・・・いや、それ姉さん(お姉ちゃん)も死んでるから」」

 

姉さんのどこかズレた言葉につっ込む気力もない僕と零華であった。その一連のやり取りを見ていた雄二たちは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべ、恵衣奈や穂乃果たち幼馴染sは苦笑し、唯一亜里沙ちゃんだけは頭上に?を出していた。

そんなやり取りもありつつも、夕飯を食べ、姉さんたちが買ってきた花火で遊んでいた。

別荘の前の砂浜で、水の入ったバケツの近くでみんな花火を手に楽しく遊んでいた。かく言う僕は海の近くに立ち、月夜の映る海面を眺めていた。そこに。

 

「なぁに黄昏てんだ」

 

「お前らしくねえぞ明久」

 

「雄二・・・・・・恭二も・・・・・・」

 

雄二と恭二が火のついてない線香花火を持ってやって来た。

 

「ほれ」

 

「ありがとう」

 

雄二から手渡された線香花火を持ち、ロウソクの火に付け静止する。

雄二と恭二もそれぞれ線香花火に火を付け静止し、しばしの間無言が貫く。

 

「んで?」

 

「ん?」

 

「なに悩んでんだよ」

 

「あはは。悩み事じゃなくて、ちょっと一人になりたくてさ」

 

「ん?そうだったのか?」

 

「悩みかと思ったんだがな・・・・・・」

 

「ははは」

 

クスッと笑い、零華たちの方を見る。

 

「みんな楽しそうだね」

 

「ああ」

 

「だな」

 

みんな楽しそうに、笑顔でいた。

それはつい一、二時間前にアップしたμ'sの新作PVの曲のタイトルと同じだった。

 

「来年もみんなで来れるといいね」

 

「そうだな」

 

「ああ」

 

僕たちがそう言うと同時に三つの線香花火の火は消えた。

 

 

μ'sの新作PVの曲のタイトルは───

 

 

 

 

 

 

 

 

  【夏色えがおで1,2,Jump!】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 











次回 『文月学園生徒会始動!』 Let GO to The Next Baka Live!

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