墳墓大戦   作:天塚夜那

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感想、お気に入り登録、ありがとうございます!!

かなり自分の好みに寄った作品だったのでこんなに楽しんでもらえて嬉しいです
それとお礼を言うのが遅れてしまい、すいません。
確認を怠ってましたm(__)m

今後も不定期ながら頑張って参ります!




再戦準備

 ナザリック守備隊と防魔同盟軍との初戦を、同盟軍は痛み分けと伝えたが、実質的にナザリック守備隊の勝利となった。

 今回の戦闘における同盟軍の被害は王国では死者は五千人に昇り、重傷者約一万を超えた。帝国では死傷者合わせて五千を超えたという。

 ナザリック守備隊の損害は前衛のスケルトン達およそ八割、弓兵を護衛した部隊を、半数失った。

 しかし……

 

 

―――――

翌日、同盟軍王国側陣地

 

 

「ばっ、かな……」

 

 本陣が置かれた小高い丘から戦場を見下ろしたガゼフは、文字通り開いた口が塞がらなくなった。

 

「そんな……どうして?」

「これは、予想外だな」

 

 隣で同じ景色を見ていたブレインとクライムも驚きを口にする。

 それはそうだろう。彼らが居る場所からは、格子門の前に布陣するナザリック守備隊を見下ろす事が出来る。だが、恐ろしい事に、その数は昨日の戦闘前とまるで変わっていない。

 

「敵は無限にアンデッドを生み出せるのでしょうか?」

 

 クライムの呟きに、ガゼフは苦虫を噛み潰したような表情で答える。

 

「かもしれないなクライム。ただ倒しているだけではこちらの犠牲が増える一方だ」

 

 その言葉にクライムは――そして、珍しい事にブレインも――同じ表情で頷く。

 彼らは昨日の戦いとも言えない戦いの場に居た。次々と民兵が殺され、仲間が傷つくのを見てきのだ。

 無論、戦争とはそういうものだ。犠牲が出るのは仕方がない。

 だが一兵士として、その犠牲が無意味だとは思いたくなかった。

 

「それで、お偉いさん達はどうするつもりなんだ?」

 

 問いかけてきたブレインにガゼフは昨晩の会議の話をする。

 

「現状、負傷者をそれぞれの国へ帰還させつつ、援軍の到着を待って再度攻撃を仕掛けるという方針で進んでる」

「援軍というのは法国の軍ですか?」

「いや、法国の到着までまだまだかかるそうだ。だから、それぞれの国から増員をかけるぐらいだな」

「そうですか」

 

 クライムの声には落胆の色が滲んでいた。

 

「そう落ち込むなよクライム君。昨日の戦いは間違いなく戦い方に問題があった。上手く戦えば、相手がいくらアンデッドを生み出してきても問題無いさ」

 

 ブレインの言葉にクライムもガゼフも笑顔を浮かべた。

 不安は多々あるが戦場に来た以上、戦いが始まった以上、考えても仕方がない。

 戦いが始まれば兵としてただ戦う、それだけなのだから。

 

 

―――――

更に一週間後、ナザリック守備隊指揮所

 

 

「ほう、これほどか」

 

 報告書を作成していたクリプトは予想外の報せに目を見開いた。

 と言っても敵の増援が意外だったのでない。そんなものは初戦の直後から予見していた。

 予想外なのは敵の数。王国軍十二万、帝国軍二万という大軍勢が迫っているというのだ。

 

「はい。哨戒中の死霊(レイス)からの報告です。エ・ランテル並びに帝国のカッツェ平野駐屯地にて発見、とのこと」

「なるほど。敵も戦力の逐次投入を是とするほど愚かではない、か」

 

 侮っていたな、とクリプトは呟くと、すぐさま部下を見据えて問いかけた。

 

「それで敵の構成は? どんな紋章旗があった?」

 

 クリプトの問いかけにエルダーリッチは申し訳なさそうに答える。

 

「それが、死霊達には紋章旗を見分ける事が出来ないそうです」

「そうなのか? いや……そうか」

 

 思い出せば以前、敵の紋章旗を確認しようとした時も、確かに抽象的な受け答えばかりだった。

 

「仕方ない。私が王国軍の紋章旗を確認する。お前は帝国軍の構成を調べてくれ」

 

 言うが早いか、クリプトは巻物を使って魔法の感覚器官を作り出し、エ・ランテルへ飛ばした。

 三重の城壁の外側で待機する軍勢を見渡し、目についた紋章旗を手元の資料と見比べる。

 

「ほう、これはこれは。第一王子に名だたる大貴族が全員集合とは、我らの力を見せつけるにはちょうど良い」

 

 軍師の笑みを浮かべたクリプトは、机の上に広げられた地図を見下ろしながら、現在の戦力でいかに戦い抜くかを考える。

 とは言え、帝国側の戦力が分からない以上作戦の建てようがない。もしかしたら、こちらも増員をかける必要が出てくるかもしれないし、今より多様な戦力が必要になってくる可能性も有る。

 

(どのみち報告待ちだな)

 

 思い直したクリプトは中途半端だった報告書を仕上げる。

 報告書が完成し、ナザリックマスターガーダーに手渡そうとしたタイミングでエルダーリッチが戻ってきた。

 

「帝国軍はどうやら信仰系、魔力系など、複数の魔法詠唱者の部隊を動員したようです。詳しい数は分かりませんが少なくとも百を上回るかと」

「やはりか」

 

 予想していた報告に一つ頷くとマスターガーダーに下がるよう命じ、エルダーリッチに新しい指示を出す。

 

「死霊達を二つのチームに分けろ。一方は今まで通り哨戒、もう一方は嫌がらせ(ハラスメント)要員だ。こちらは上位死霊などの上位個体で固めろ」

「畏まりました。しかし、あまり敵を追い詰め過ぎてしまうと戦わずに逃げてしまう可能性が有りませんか?」

 

 エルダーリッチの意見にクリプトは不敵に笑いながら答える。

 

「逃げんよ。奴らは逃げん」

「何故でしょう?」

「死人が出ているからだ、既に少なくない死人が出ている。だからこそ、奴らは更に犠牲を積み上げねばならない、引くに引けんというやつだ」

「なるほど、了解しました。では、おっしゃる通りに分配致します」

 

 納得したエルダーリッチが自身の仕事に取り掛かるのを見届けて、クリプトも行動を開始する。

 

(さて、この報告書は私の手でお渡しするとしよう)

 

 クリプトは巻物の束から連絡用に渡されている〈伝言〉の巻物を取り出し、発動する。

 相手は勿論、彼らの唯一絶対なる主人だ。




同盟軍側とナザリック側で明らか作成のスピードに違いを感じる今日この頃。

なんかアイデアの湧きが悪いんですねぇ

黒帽子さん、一読さん、ニンジンガジュマルさん誤字報告ありがとうございます

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