僕のヒーローアカデミア〜Dark Knight〜 作:ΣiGMA
強盗事件を解決した翌朝、義妹の理科が笑顔で俺に一刊の新聞を見せてきた。
「おはようございます、兄様。昨日、新たなヒーローが強盗事件を解決したそうですよ?」
見れば新聞の一面には確かにその時の事がデカデカと飾られていた。
しかし当のヒーローとやらの写真では無く、強盗に遭った銀行の写真が載っていた。
理科はその写真を指差しながら俺にこう問いかけてくる。
「この銀行は兄様が普段から使われている銀行ですよね?」
「そうだな。まぁ昨日は銀行に行くのを忘れてて近くのATMで下ろしたんだよ。いや〜、結果的に幸運だったな。」
朝食を食べながら惚けてみせるが、理科の俺を見る目が怖い......。
「まさかとは思いますが......ここに書かれている〝正体不明のヒーロー〟とは兄様の事ではありませんか?」
「まさか。」
「本当に?」
「本当だよ。」
「本当に本当に?」
正面から俺の隣へと移動し問い詰めてくる可愛い義妹.........しかし如何せん顔が近過ぎる気がする。
理科が座っている車椅子は本人お手製の特別製であり、前後左右に移動出来るよう作られている。
故に隣へと移動してくる様子は、近寄ってくる幽霊のようで相手に恐怖心を芽生えさせてしまう。
というか確実に俺だと疑ってるよな......これ......。
「兄様......政府非公認でのヒーロー活動はご法度ですよ。」
「〝違う〟っつってんのが聞こえなかったか?」
「この時の兄様の言葉ほど信用出来ないものはありません。」
キッパリ言われてしまった.........普段は俺の目から見ても〝ちょっと危ういのでは?〟と思うほどにベッタリなのに、こういう事だけ信用してくれない。
「ともかく今日は早く帰ってきて下さい。ちなみに夜の外出も厳禁ですよ?」
「お前は俺の母親か何かか?」
「貴方の妹です。」
「知ってら!それじゃあ行ってくるからよ。お前も遅れないように気をつけろよ。」
「まぁ!今日まで皆勤賞の私ですよ。」
「それも知ってらぁ。」
他愛もない(?)会話......それをしてから俺は学校へと向かう。
俺が今通っている高校は〝東都工業高校〟......工業系、土木系、建築系の仕事に就く為の勉強をする高校だ。
元々、雄英高校に通おうとしていた身としては不本意ではあるが、それでも不思議と今の生活に不満は無い。
でも......あの時少しだけヒーローっぽい事をしたのは楽しかったし、嬉しかった。
客や職員達の感謝の目......あの目を見た時、俺の中に喜びと充実感があった。
自己満足なのは分かってる......それでもやはり俺はヒーローになりたいと、ヒーローになる事を諦めたくは無いと思っているのも事実だ。
あの日強盗から奪ったレインコートと仮面はまだ俺の部屋に隠している。
「......。」
理科からは釘を刺されてしまったが、それでも困っている人を助けたい。
助けを求めている人の前に駆けつけ、助けてやりたい。
(ゴメンな......理科。)
俺は心の中で義妹に謝罪すると、秘密のヒーロー活動について考え始めたのだった。
▷▶︎◀︎◁▷▶︎◀︎◁
その日の夜......理科はもう寝ているはずの時間。
俺はベッドとマットレスの間に隠したレインコートと仮面を引っ張り出すと、自身の個性でデザインを作り替えた。
そして帰りに拾ってきた廃材で腕と脛のプロテクターを作り、それらを着用する。
頭の中央に一本の角......それを挟んで左右に縦に並んだ青いライン。
そしてそれぞれのプロテクターにも同様の角とラインが描かれている。
それらの着心地とデザインを鏡の前で確かめた俺は、物音をたてぬよう窓から静かに飛び降りた。
そして夜の街に降り立つと、早速事件が起きてないかを確かめる。
すると......。
「向こうでサイレンの音が鳴ってるな......。」
俺はサイレンが聞こえてくる方向を向くと、そちらに向かって走り出した。
翌朝......。
─こちらは昨夜、立て篭り事件が起きた現場です!警察や目撃者の話によると、この目の前にある建物に立て篭っていた五人の脱獄者達が突然現れた謎のヒーローにより全員確保されたとの事です!現場からは以上です!─
─千野アナ、ありがとうございました。しかし気になりますね、〝謎のヒーロー〟。─
─政府によるとこの謎のヒーローは協会に登録されていないようですよ?─
─となるとヴィランという可能性も......。─
─それは無いでしょう。目撃者の方達も〝まるで黒い騎士様のようだった。〟と言っていますし。─
─まさに〝ダークナイト〟ですな。政府もその呼称で調査を進めておるようですよ?─
─ダークナイトの正体は何なのか......今後も我々は新たな情報がわかり次第お伝えしていきます。それでは続いてのニュースです。─
プツン────
消されるテレビ.........俺はその前で何故か椅子に固定されていた。
「......だそうですよ兄様?」
「なんの事だか分からんな。」
「シラを切れるのも今のうちです♪」
「それよりも何故俺は椅子に縛り付けられてんだ?」
「それはただの椅子では御座いません。私が発明した〝嘘発見器〟です!」
「嘘発見器?」
明らかに嘘発見器では無いフォルムの椅子を見ながら聞き直す。
「はい、嘘発見器です♪もし私の質問に嘘をつくと、たちまち電流が流れる仕組みなんですよ。それはもうビリビリと♪」
「それって嘘発見器じゃなくて〝電気椅子〟じゃ......「それじゃあスイッチオーン♪」──聞けよ!?人の話を!!」
その言葉虚しく、理科は電気椅子型嘘発見器のスイッチを押して質問を始めた。
「兄様は昨晩、外に出ましたか?」
「出てはいない。」
シーン......。
「むぅ......ならば兄様は私に内緒でヒーロー活動をしてはおりませんか?」
「してなどいない。」
シーン......。
「むぅ......。」
反応を示さぬ嘘発見器を前に唸る理科......。
「これでもう俺が本当のことを言っているのが証明されただろ!」
「確かにこのような尋問をした所で、兄様の個性ならば電気系統を弄くり回す事が可能ですね。」
おっふ......バレテーラ......。
「ですから私も奥の手を出させて頂きます!」
理科はそう言うと徐にスマホを取り出し、その画面を俺に突きつけてきた。
画面には地図が映し出されており、その中心に青く丸い点が点滅している。
これってまさか......〝GPS〟なんじゃ......。
「ご存知の通り、これは〝GPS〟です!ちなみに点滅している青い点が兄様の携帯ですね。」
「おい、まさか......お前、昨日起きて......。」
「ちゃんと寝てましたよ。私は兄様と違って規則正しい生活を送っているのです。このGPSには記録機能が備わっていて、朝起きた時に確認したのです。これを見てください。」
スマホを操作してもう一度画面を突きつけてくる理科.........そこには昨夜の立て篭り事件の現場で点滅している青い点があった。
「場所も時刻も昨日の事件現場にいますね......さて、これは一体どういう事でしょうか?」
ヤッベェ......動かぬ証拠を突きつけられてしまった。
このままでは電気椅子では無く理科の雷に襲われる事になっちまう!
俺は素早く電気椅子を〝分解〟すると、荷物を持って一目散にその場から逃走したのだった。
「あ!ちょっと、兄様!?帰ってきたら説教ですよ!!」
《登場人物紹介》
誕生日:5/5
身長:178cm
個性:
本作の主人公。東都工業高校に通う少年で、ヒーローを目指している。
唯一の家族であった母親を亡くしてからは、叔母夫婦に引き取られた。
成績優秀ではあるが耳や唇にピアスをしている為、そこうふりよ素行不良として内申点があまり宜しくない。
個性は自身の体に触れているこの世の万物全てを理解し、分解及び再構築する事が出来る〝錬金術〟。
しかしキャパオーバーすると体が粒子状に崩れてしまう。
もう一つ個性を持っているらしいが、これは未だ明らかとなっていない。