鬼巫女日常綺譚   作:鉄夜

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第3話

打ち上げの翌日。

 

「う・・・うーん・・・。」

 

鬼丸が目を覚ますと、何故か床の上で寝ていた。

 

周りを見ると蜻蛉切は鬼丸と同じく床の上で雑魚寝していて、

肥前は壁にもたれて眠っていた。

 

鬼丸が寝返りを打つように横を見ると、

 

「・・・」

 

鬼丸より先に起きていたであろう七星剣と目が合った。

 

「・・・おはよ。」

 

「・・・おはようございます。」

 

2人は少し間をあけ。

 

「・・・フッ。」

 

「・・・フフッ。」

 

同時に笑いだした。

 

「・・・やっちゃったっすね。」

 

「・・・やっちゃったわね。」

 

鬼丸は小さく笑いながら言う。

 

「とりあえずアレっすね・・・全員見事に酔い潰れたってことでいいっすね?。」

 

「・・・ええ、間違いないわ・・・フフッ。」

 

七星剣は自らの情けなさに可笑しくなり、笑ってしまう。

 

「結局みんなで何本開けたっけ。」

 

「えっと・・・あーしがビール2本と日本酒3本。

蜻蛉がワイン6本で肥前はハイボールウイスキー3本くらいっすかね。」

 

「私はワイン8本開けて武蔵は大吟醸5本だから・・・。」

 

「合計・・・27本・・・あははは。」

 

「・・・言い訳をさせて。」

 

「なんすか?」

 

「私もね、さすがに新人の前でみっともない姿は見せられないと思って抑えようと思ったのよ・・・でもね、止まんないの。」

 

「あははははは。」

 

七星剣の言い訳を聞いて笑った。

 

「いや、七星剣さん。

昨日までのあーしなら糾弾したっすけど・・・これは仕方ないっすよ。」

 

「分かってくれる?」

 

「わかってくれるも何も・・・あーし1人で5本も開けてるんすよ?

そんな奴に説得力なんて皆無じゃないすか」

 

「クククッ・・・そうね・・・ごめんね。」

 

「なんに対しての謝罪っすかそれは。」

 

「いや、これでアンタ達も立派な酒クズに堕ちたって思ったら・・・罪悪感が・・・。」

 

「あはははは・・・酒クズって・・・フフフッ・・・。」

 

「そりゃそうでしょうよ酒瓶5本も転がしてんだからもうあたし達同類よ。」

 

「聞きたいんすけど・・・鬼巫女って酒クズ多いんすか?」

 

「・・・イヤ・・・ソンナコトナイヨ。」

 

「ちなみに、10人いたら何人酒クズっすか?」

 

「・・・8人くらいじゃないかしら。」

 

「二人しかまともなの居ないんすね。」

 

「あははははは。」

 

鬼丸が笑いながら言うと、七星剣も声を出して笑った。

 

「いやでもね、鬼丸。

私達なんて可愛いほうよ?

後ろ見て見なさいよ。」

 

「うしろ・・・プッ・・・ククククッ・・・。」

 

鬼丸が言われた通り寝ながら後ろを振り向くと、空になった酒瓶を手に持ちながら壁にもたれて微笑みながら眠っている武蔵がいた。

 

「どうよ。」

 

「いやぁ、勇ましいっすねぇ。」

 

「でしょ?

最早風格すら感じる堂々としたやられようでしょ?」

 

「写真に撮ってタイトルつけるなら『ラストサムライ』っすね。」

 

「ラストサムライ・・・あははははは。」

 

鬼丸の言葉に、七星剣はまた笑った。

 

「アレね、戦場で深手を負ったけどそれを隠して祝勝会に参加したのね。」

 

「そうっすよ。

それで悟られないようにしながら最期は仲間達が楽しそうにしてるのを見ながら満足そうに微笑んで逝くんすよ。」

 

「泣かせるじゃないの。」

 

「プッ・・・クククククッ。」

 

眠っていた肥前が吹き出した。

 

「鬼丸・・・何そのストーリー。」

 

「あ、肥前。

起きたっすか。」

 

肥前は壁にもたれたままの状態で鬼丸達の方を向く。

 

「・・・夢を見たよ。」

 

「あら。」

 

「どんな夢っすか。」

 

肥前は寝起きだからか力の抜けた声で続ける。

 

「あのね・・・この5人でカブに乗ってアラスカの動物観察小屋に行く夢。」

 

「あっはははは。」

 

あまりの内容にまた七星剣が吹き出した。

 

「いや、昨日酒飲みながら皆でみたどう○しょうの影響なのは分かるんっすけど混ざりすぎっす。」

 

「カブでアラスカは死ぬわよ。」

 

鬼丸と七星剣は笑いながらツッコンだ。

 

「あ・・・あとそこのラストサムライが『相撲じゃ!』とか言って私たちを1人ずつ投げ飛ばす夢。」

 

「あー、肥前それ夢じゃないっす。」

 

「それは現実よ。」

 

「え?じゃあ最後に武蔵さんが蜻蛉投げようとしたら力負けして逆にブレーンバスター決められたのも?」

 

「現実ね。」

 

「あっはははははは。」

 

その時の光景を思い出したのか鬼丸は腹を抱えて笑う。

 

「調子乗ってから一瞬で逆転される構図が見事でしたよね。」

 

「何が怖いってそもそものウェイトが違う上に同じパワータイプの武蔵を『よいしょ』の一言で軽々と持ち上げたのがヤバかったわ。」

 

「あーし的には投げられるときの武蔵さんの何が起こったか分かってないポカン顔がもう・・・ツボでツボで・・・クククッ。」

 

「あはははは。」

 

「フフフフフッ。」

 

3人が楽しそうに笑っていると、

 

「うみゅー・・・」

 

蜻蛉切が目を覚まし、ムクっと上体を起こす。

 

「あ、蜻蛉、おはようっす。」

 

蜻蛉切はボーッと鬼丸の方をしばらく見てから立ち上がりとてとてと近くに歩み寄った。

 

そして鬼丸の傍で横になると体をピトッとくっつけて再び寝息を立てだした。

 

「・・・子犬かな?」

 

「すっかり懐かれたわね鬼丸。」

 

「なんすかこの可愛い生き物。」

 

そう言って鬼丸は蜻蛉切の頭を撫でる。

 

「そう言えば、そこのラストサムライは起こさなくていいんすか?」

 

「あー、そうね。」

 

鬼丸にそう言われて、七星剣は武蔵の体を揺する。

 

「ほら武蔵、朝よ、起きなさい。」

 

「うーん。」

 

少しすると武蔵は目を覚ました。

 

「おはよ。」

 

「うむ、おはよう。」

 

「わかる?この状況。」

 

武蔵は七星剣に言われて状況を確認すると、

握っている酒瓶を見て吹き出し、顔を片手で覆った。

 

「やらかしたのー。」

 

「えぇ、そうね。

明らかにやらかしたわね。」

 

「しかしなんじゃ、蜻蛉にブレンバスターをキメられたところから記憶が無いぞ?」

 

「そりゃああの後すぐ寝落ちしましたからね。

この場にいる誰より早く。」

 

「そうか・・・それでわしを投げ飛ばした当人は起こさんでいいのか?」

 

「あ、そうっすね。

ほら蜻蛉、起きるっすよ。」

 

「うーん・・・。」

 

鬼丸に体を揺すられ目を覚ました蜻蛉切は眠たそうに目を擦る。

 

「はよー。」

 

「おはようっす。」

 

「鬼丸ー、今何時ー?」

 

「そういえば確認してなかったっすね。

えーっと・・・。」

 

蜻蛉切に言われて、鬼丸はスマホで時間を確認する。

 

「・・・12時半。」

 

「あははははは!」

 

蜻蛉が大声で笑い出す。

 

「お昼・・・過ぎちゃってるけど・・・ククククッ・・・。」

 

「アンタ達今日と明日は休日だから荷解きするとか言ってなかった?」

 

「そうだよ、蜻蛉、鬼丸。

酔っ払ってこんな時間まで寝てる場合じゃないよ私達。」

 

「なんでこれだけいて誰もアラームセットしてないの?」

 

まさかの事態に、肥前と蜻蛉が口々に不満を漏らす。

 

「全く、酔っ払ってやらかすとはだらしない奴らじゃ。」

 

(カチンッ。)

 

「・・・アンタでしょ?」

 

「お、なんじゃ?」

 

武蔵の言葉にカチンと来た鬼丸食ってかかる。

 

「あーしと七星剣さんは何回か止めたっすよ。

『もうそろそろ切り上げた方がいいんじゃないか』っつって。

それなのにアンタは、『いやいやまだまだいけるじゃろ』っつってガンガン酒を煽り、周りに勧めて挙句の果てには相撲だっつって暴れて新人に返り討ちにあう始末でしょ。

みっともないったらありゃしないっすよ。」

 

「確かに1番暴れてたのは武蔵よね。」

 

「そうですね。」

 

「私もそう思う。」

 

鬼丸の言葉に、武蔵以外の3人が同調する。

 

「ほう・・・そうかそうか。

お主らはわしが悪いというか・・・なら。」

 

武蔵は立ち上がり、構えを撮る。

 

「相撲で決着をつけるぞ、かかってこい!」

 

「・・・蜻蛉。」

 

「ん。」

 

鬼丸に名前を呼ばれ蜻蛉切が立ち上がって構えをとる。

 

「いや、待て待て待て!

構えからしておかしいじゃろ!

相撲と言っておるのに明らかにレスリングのかまぐふっ!」

 

全て言い終わる前に、武蔵の体に蜻蛉切の弾丸タックルが決まった。

 

そんなふうに騒いでいる間に、貴重な休暇は過ぎていった。

 

#####

 

休み明けの月曜日。

 

屋外訓練場に腰に刀を差して立っている武蔵と七星剣の前に鬼丸達はいた。

 

鬼丸と肥前は腰に刀を差し、蜻蛉切は背中に槍を背負っている。

 

その3人に向けて、武蔵が声を張る。

 

「本日より、本格的な戦闘訓練を始める。」

 

「いよいよっすか。」

 

武蔵の言葉に、鬼丸たち三人の緊張感が増す。

 

そんな3人に、七星剣が言う。

 

「まあ戦闘訓練と言っても鬼巫女としての基礎的な戦い方は刀と契約の時に頭に刷り込まれてるはずよね。」

 

「・・・まぁ、確かに。」

 

「何となくだけどどんな風に刀を振るえばいいのかはわかる気がします。」

 

「不思議だよねー。」

 

「それによって基礎的な訓練は必要ない。

という訳で、お主らには覚醒の訓練をしてもらう。」

 

「「「覚醒?」」」

 

武蔵の言葉に3人が首を傾げる。

 

「詳しくは後で説明するが、そのまえに・・・お、きたきた。」

 

武蔵が見ている方向を向くと、金髪ショートヘアーの白衣を着た少女と、巨大な槍を背負った赤髪1本結びの少女がいた。

 

金髪の少女は鬼丸より背が低く、140センチほどだろうか。

中性的な精悍な顔立ちで歩いてくるその姿からはクールな雰囲気を放っていた。

 

大してもう1人の赤髪は、こちらかににこやかに手を振って微笑んでいるが、背中に背負った巨大な槍のせいで妙な迫力を放っていた。

右手にはトランクケースを持っている

 

「すまない、またせたね二人とも。」

 

「ねー聞いてよ星、武蔵ぃ。

フラン博士ったら偶然会ったボクの事荷物持ちにしたんだよ!」

 

「何を言ってるんだ皆朱槍、それぐらい君にとっては大したことないだろ?」

 

「フラン博士だって大したことないじゃん。」

 

2人は賑やかに会話しながら教官2人の前に並ぶ。

 

「2人とも、紹介するわ。

こっちのちっこいのは東京支部で技術開発部門の主任をしてるフラン博士。

そっちのチャランポランは皆朱槍、貴方達と同じ鬼巫女よ、無所属だけどね。」

 

「ちっこいとは言ってくれるねぇ七星剣。」

 

「ちゃらんぽらんは酷いよ星。」

 

「いいからアンタらも自己紹介しなさい。」

 

七星剣に言われて、2人は自己紹介を始める。

 

「初めまして。

私は東京支部で技術開発を取り仕切っているフランという者だ。

以後よろしく頼む。」

 

「ボクは皆朱槍、どこの支部にも所属しないで日本中を歩き回ってるんだ。

で、今日は本部に遊びに来るついでに手伝いに来ました。

宜しくね、皆。」

 

2人に続いて、新人3人も自己紹介をする。

 

「肥前忠広です。」

 

「蜻蛉切です!よろしくお願いします!」

 

「鬼丸国綱っす、よろしくお願いします。」

 

自己紹介が終わり、鬼丸は皆朱槍を見る。

 

(この人が皆朱槍・・・キ○ガイって聞いてたけど案外普通の人っすね。)

 

「うんうん、大変元気でよろしい。

・・・それにしても。」

 

皆朱槍は怪しく目を細めて三人を一瞥する。

 

(!!!!)

 

皆朱槍と目があった途端背中に悪寒が走った。

 

他のふたりも同じようで顔を強ばらせていた。

 

「どの子も壊しがいありそうじゃない。

・・・今ここで食っちゃいたい。」

 

その瞬間、

 

(((や・・・ヤバい奴だ・・・。)))

 

新人3人の心の声が一致した。

 

七星剣が後ろから皆朱槍の頭を叩く。

 

「っいて。」

 

「新人怖がらせてんじゃないわよバカ。」

 

「ちょっとしたジョークじゃん。

そんな怒んないでよ星ー。」

 

「わざわざ殺気を放ちながら冗談を言う奴があるか。

・・・やはり今回の訓練からは外すか。」

 

「ちゃ・・・ちゃんと加減するから!

そんな事言わないでよ武蔵ぃー!」

 

皆朱槍が武蔵の手を掴んで揺らしながら子供のようにすがる。

 

「仲いいんっすね。」

 

「私たち3人は同期だからね。」

 

「ズッ友だよ♡」

 

「黙りなさい。」

 

「はい。」

 

会話が終わると、フランが前に出てくる。

 

「さて武蔵、覚醒についての話はしたかな?」

 

「いや、これからじゃ。」

 

「ふむ、ならばちょうどいい。

皆朱槍、トランクを渡してくれ。」

 

「はいはい。」

 

皆朱槍から渡されたトランクをフランが開けると、中には銀色の腕輪が3つ入っていた。

 

ブレスレットほどの大きさで、表面にはびっしりと幾何学模様が描かれていた。

 

それを見て蜻蛉切が声を上げる。

 

「あ!それって鬼巫女がみんな付けてるやつだ。」

 

「そう。

この腕輪は君たちが鬼巫女であるという証明のような物だ。

それを左腕につけてくれ。

あ、ついでに言うとその腕輪はつけたら一生外れないからね。

それだけ心してくれよ。」

 

フランに言われて鬼丸達は少し不安な顔をするが、意を決して腕輪を手に取り右腕に嵌める。

 

するも、腕輪の幾何学模様がかすかに赤く輝き出した。

 

3人が腕輪を装備したことを確認すると、

フランは説明を続ける。

 

「その腕輪には色んな機能がある。

例えばその腕輪ひとつで装備している対象のバイタルを確認したりね。

まぁ、それはまたおいおい話すとして。

今回の君たちの訓練にもその腕輪は大きく係わってくる。

そうだよね、武蔵。」

 

「うむ。」

 

フランに話を振られ、武蔵は大きく頷いた。

 

「今、お主らの魂は半分が人間、半分が鬼じゃ。

それ故に、この間も言うたと思うが、

主らの身体能力は普通の人間を遥かに凌駕しておる。」

 

武蔵の説明を引き継ぐように七星剣が話す。

 

「でも、それでもアンタ達の中にある鬼の力は抑えられてる状態なの。

それを解放するために必要なのが、覚醒よ。」

 

「覚醒・・・っすか。」

 

「なんかすごそうだね。」

 

「うん。」

 

3人が思い思いの言葉を口にすると、七星剣はさらに続ける。

 

「で、ここからこの腕輪が関わって来るんだけど。

覚醒にはLv1~5の五段階があるんだけど。

安全に使えるのはLv3まででLv4からはとても危険なの。」

 

「具体的にはどれだけ危険なんすか?」

 

鬼丸の質問に七星剣が答える。

 

「長時間使い続けると鬼になるわ。」

 

「・・・oh」

 

七星剣の言葉に、鬼丸は唖然とした。

 

「安心せい、そのための腕輪じゃ。」

 

「どういうことですか?」

 

 

首を傾げる肥前にフランは自慢げに話す。

 

「この腕輪はリミッターさ。

LEVEL4と5は本部からの許可がなければ使うことが出来ない。

それに万が一使うことになっても制限時間を超えると再びリミッターが掛かるようになっている。」

 

「つまり、腕をちぎられたりしない限り大丈夫ってことよ。」

 

「怖い事言わないでほしいっすよ七星剣さん。」

 

「嫌なら気をつけなさい。

ちなみに人体再生手術の費用は鬼滅隊持ちだがら安心しなさい。」

 

「何を安心しろと・・・。」

 

「しかも何か経験談っぽいのが怖い・・・。」

 

フランはさらに説明を続ける。

 

「そして腕輪のもう一つの機能、

それが覚醒の簡略化。」

 

「簡略化?」

 

「うむ。

本来覚醒をするためには長ったるい詠唱をしなければならん。

しかしそれは戦場においてはデメリットでしかない。

この腕輪はその詠唱を省き、簡略化する術式が組み込まれておる。

まぁ実際に見た方が早かろう、星。」

 

「はいはい。」

 

武蔵に促され七星剣は刀を右手で抜いて逆手に持ち、歯を前方に向けて刀身を顔の前に持ってくる。

 

「覚醒、Lv1。」

 

七星剣がそう唱えた瞬間、爆発音と共に光と爆風が七星剣から放たれた。

 

「うお!?」

 

鬼丸達は爆風から身を守るように腕を前に出す。

 

爆風が収まり、目の前を見ると。

 

「おお!」

 

姿が様変わりした七星剣が、そこにいた。

 

と言っても見た目で変わっているのは瞳だけであるが、その変化は確かなものだった。

 

チキの黒目の周りは赤く染まり、白目は真っ黒に染っていた。

 

「おぉ!七星剣さんかっこいい!」

 

「そりゃどうも。」

 

目を輝かせて興奮気味に言った蜻蛉切に、

七星剣は少し照れながらも、咳払いをして説明を始める。

 

「覚醒の特徴は2つ。

身体能力がさらに上がることと、

能力を使えることよ。」

 

「能力?」

 

「うむ。

鬼巫女の中には特殊な能力を持っておるものがおる。

ワシらは通称、『能力持ち』と呼んでおる。」

 

「例えば私の場合・・・。」

 

七星剣が言葉の途中で音もなく消える。

 

その瞬間、鬼丸の頬を一陣の風が撫でた。

 

気配を感じて振り向くと、七星剣が背後にいた。

 

「私の能力は加速よ。

言っとくけど、まだまだこんなもんじゃないわよ。」

 

「おお!」

 

「すごい!かっこいい!」

 

肥前と蜻蛉切が感嘆の声を上げる。

 

「今でこそこんな感じだけど、

最初の頃は星ったらはしゃいじゃってさぁ。

音速超えて走ったら服が破けてあわやエロ同人だったんだよ。」

 

「あー、あったあった。

懐かしいのう。」

 

「余計なこと言うんじゃないわよ!皆朱!武蔵!」

 

同期2人に黒歴史を掘り下げられ、七星剣は顔を赤くして怒鳴ってから覚醒を解き元の姿に戻る。

 

「武蔵さんと皆朱槍さんも能力持ってるんすか?」

 

「いや、ワシはもっとらん。

じゃが皆朱の能力はチート級じゃぞ。

どれ、ひとつ見せてやれ。」

 

「りょうかーい。

・・・覚醒、Lv1。」

 

皆朱槍は先程の七星剣と同じく覚醒すると、

足のつま先で地面を軽くける。

 

バァァァァン!

 

軽く蹴ったとは思えない音が響き、皆朱槍の足元のコンクリートが広い範囲で砕け散った。

 

「「「・・・は?」」」

 

唖然とする3人に、覚醒状態を解いた皆朱槍が微笑んで言う。

 

「ボクの能力は、衝撃を自由自在に操る。

衝撃波も飛ばせたりするよ。」

 

「このように、能力の中には使い方によっては大変危険なものがある。

よって今回は、覚醒後の体と能力の使い方について、それぞれ一人づつ教官をつけて個々に訓練を行う。」

 

「あ!そういうことならボクから選びたい!」

 

武蔵の言葉に、皆朱槍が元気に手を上げる。

 

「構わんが・・・壊すなよ?」

 

「分かってるって。

・・・うーん、それじゃあね。」

 

皆朱槍は少しの間悩んだが、鬼丸の方を見てニッコリと笑った。

 

「鬼丸ちゃん、ボクと行こうか。」

 

「は・・・はぁ。」

 

それに続いてほかの教官2人も一人づつ選ぶ。

 

「肥前、あんたは私とよ。

同じスピードタイプ同士だしやりやすいでしょ。」

 

「はい、よろしくお願いします!」

 

「ということは蜻蛉はわしとじゃな。」

 

「よろしくね!武蔵さん!」

 

「うむ、ビシバシ行くから覚悟せい。」

 

こうして戦闘訓練が始まった。

 

#####

 

鬼丸は皆朱槍に連れられて、訓練場の開けた場所まで来た。

 

「そんじゃ、まず手始めに覚醒してみようか。

さっき星がやったみたいにやればいいから。」

 

「うっす。」

 

鬼丸は刀を抜き目の前で垂直に立てると左目を峰に添える。

 

「覚醒、Lv1。」

 

瞬間、先程の七星剣と同じく爆風とともに目の色が変わった。

 

「どう?なにか感じない?。」

 

「なんていうか・・・力がめちゃくちゃ湧いてくるっす・・・それに。」

 

鬼丸は刀を見つめる。

 

「初めて覚醒したはずなのに・・・どんなふうに動けばいいのかわかる気がするっす。」

 

「・・・へぇ。」

 

皆朱槍は楽しそうに笑みを浮かべる。

 

「ってことは君はその刀と相当相性がいいんだね。」

 

「相性?そんなのあるんすか。」

 

「まぁね。

それによって鬼巫女になった時どれだけ身体能力のスペックが上がるか変わるし、結構重要だよ。」

 

「そのへんは人によって違うんすか。」

 

「うん。」

 

皆朱槍ははっきりと頷いてから解説を始める。

 

「鬼巫女には大きくわけて3つのタイプがいるんだよ。

ここに来るまでに色々データ見せてもらったけど鬼丸ちゃんは私と同じバランスタイプだね。

鬼巫女になった時全体的に満遍なくスペックが上がったタイプだね。」

 

「・・・つまり蜻蛉はパワータイプっすか?」

 

「Exactly♪

これはバランスタイプとは違ってパワーと防御力重視でスペックが上がったタイプだね。

教官組だと武蔵がそうだね。

で、残った肥前ちゃんと星がスピード。

わかりやすいでしょ。」

 

「なるほど。」

 

鬼丸は解説を聞きながらきながらふむふむと何度もうなづいた。

 

「さらに、君は他の鬼巫女とは違って特別なことがある。」

 

「え?なんすかそれ。」

 

皆朱槍はニヤッと笑っていう。

 

「それはね、君が天下五剣の1人ってことだよ。」

 

「天下・・・五剣?」

 

「うん!」

 

皆朱槍は楽しそうに解説を続ける。

 

「天下五剣は他の方の何倍も強い妖力を持ってる。

つまり、鬼や敵対する妖怪に強い効果を発揮するわけだよ。

その特性は結構重宝されてるんだよ。

・・・つまりはね。」

 

皆朱槍は鬼丸の肩に手を置く。

 

「君、すごく期待されてるよ?」

 

「新人にプレッシャーかけないでくれないっすかね。」

 

「あははは!

何言ってんの。

これっぽっちも気にしてないくせに。

椒林剣さんの言ってた通り、肝が座ってるね。」

 

そこまで言うと皆朱槍は目を座らせ、鋭い目で鬼丸を見つめると頬に手を添える。

 

「ホント・・・ここで食っちゃいたい。」

 

「・・・あー。」

 

鬼丸は恐怖を表に出さず。

 

「だめっすよ、皆朱槍さん。

あーしに伸びしろがあるならもっと美味くなるまで待たないと。」

 

「あはは、君なかなか言うねぇ。」

 

皆朱槍は少し後ろに下がり、鬼丸から距離をとる。

 

「そんじゃあ次、能力使ってみようか。

使い方、分かるよね?」

 

鬼丸はうなづくと、覚醒した時に頭に流れた映像をイメージする。

 

すると。

 

ボオッ!

 

「おお!」

 

鬼丸の刀の刀身が炎で覆われた。

 

「へぇ・・・炎か。

それだけじゃないでしょ。」

 

皆朱槍の言葉に答えるように鬼丸は刀を振るった。

 

すると、炎の斬撃が近くの建物に飛んばした。

 

飛ばされた斬撃は建物の上半分を切り落とした。

 

「あはは!いいねぇいいねぇ!」

 

皆朱槍は大層楽しそうに槍を構えると。

 

「じゃあ次は、軽く打ち合ってみようか!

鬼丸ちゃん!」

 

そう言って覚醒する。

 

それに対して鬼丸も刀を構えると。

 

「ちゃんと手加減してくださいよ?」

 

そう言って目の前の皆朱槍を見据えた。

 

#####

 

一方別の場所では、覚醒した肥前が同じく覚醒している七星剣に斬りかかっていた。

 

肥前は凄まじい速さで攻撃を繰り出すが、

七星剣はそれを簡単に刀で弾いていく。

 

(やっぱり私ほどではないけどめちゃくちゃ早いわね。)

 

七星剣が冷静に分析していると、

肥前の攻撃の手が止まる。

 

「そこまで。」

 

それを見計らって覚醒を解いた七星剣がそういうと、

肥前も覚醒を解いて大きく息を吐く。

 

「分かってたけど・・・掠りもしないなぁ。」

 

「そりゃあね。

鬼巫女最速の名は伊達じゃないわ。

でも、あんただって充分早いじゃない。

能力なしでその速さなら上等よ。」

 

能力なし、そう言われた肥前の顔が曇る。

 

「なに?能力がないのがそんなに不満?」

 

「そういう訳じゃないんですけど、

やっぱりあった方が便利かなぁって。」

 

「別にあっても使いこなせなきゃ意味ないのよ?

それとも何?あんたもエロ同人みたいになりたいの?」

 

「いやですよ。

そんな無様晒すくらいなら腹切ります。。」

 

「あんた大人しそうに見えて結構言うわね。」

 

七星剣は腰に手を当てて、肥前に言う。

 

「まぁ、そういうやつのための戦い方があるんだけどね。」

 

「え?そうなんですか?」

 

「実際にやってみましょうか。」

 

そう言って七星剣は刀を前に出す。

 

少しすると、刀がかすかに赤い光を纏いだしその色は次第に濃くなっていった。

 

「どうやってるんですか。」

 

「これは妖気を使ってるのよ。」

 

「妖気?」

 

「ええ。

妖気は妖怪に宿ってる力なんだけど私たち鬼巫女も使うことが出来るの。

こんなふうにね。」

 

七星剣は妖気を纏わせた刀をふるって空中に斬撃を飛ばす。

 

「妖気は今みたいに飛び道具にも使えるし、

纏わせるだけども刀の切れ味が変わったりするから、使い方を覚えて損は無いわよ。

妖気の使い方は武蔵が上手いから後で聞いてみなさい。」

 

「はい。」

 

「そしてもう1つは、戦闘の中に妖術を盛り込んだ戦い方ね。」

 

「妖術?」

 

「そう、妖術。

体の中にある妖力を消費して発動する術の事ね。」

 

「それってやっぱり発動するの難しいんじゃ・・・。」

 

「そこでこの腕輪よ。」

 

七星剣は右腕にはめている腕輪を肥前に見せる。

 

「基本的には妖術は呪文を詠唱して発動するんだけど。

その一連の流れをこの腕輪に記録してコード番号を設定すれば簡単に発動する事が出来るわ。」

 

「へー、便利なんですね、この腕輪。」

 

肥前は自分の腕輪をマジマジと見つめる。

 

「そういう戦い方が得意なのは東京支部の支部長、丙子椒林剣さんね。

あの人の能力は無闇矢鱈に使っていいものじゃないから。

良かったら紹介するわよ。」

 

「ぜひお願いします!」

 

「うん、いい返事。

それじゃあその辺はおいおいやるとして。」

 

七星剣は再び覚醒して刀を構える。

 

「とりあえず今は覚醒に体慣らすわよ、肥前。」

 

「はい!」

 

それに対して肥前も覚醒し、刀を構えて七星剣を見据える。

 

「よろしくお願いします!」

 

#####

 

そしてその頃武蔵は。

 

「はぁはぁ・・・。」

 

しんどそうに息を切らしていた。

 

その理由は目の前の蜻蛉切にあった。

 

「のう、蜻蛉。

そろそろ休まんか?」

 

「えー!なんで!」

 

覚醒状態の蜻蛉は子供のように駄々をこねる。

 

「私まだまだ武蔵さんと戦いたい!

まだまだ暴れたりない!」

 

「戦いじゃなくて手合わせじゃと言うとるじゃろ!

それに急にどうした!なぜ戦闘狂化しとるんじゃ!」

 

「わかんないけど武蔵さんとぶつかり合ってる間にめちゃくちゃ楽しくなってきた!」

 

「こっちは全然楽しくないわ!

なに目覚めてくれとんじゃ!」

 

「それにねそれにね!

この槍の昔の持ち主はすごい強いひとなんだよ!

だからその人みたいになりたいの!」

 

「・・・なるほど、契約の時に刀の記憶を見たか。」

 

「刀の記憶?」

 

「たまにお主の様なものがおるんじゃ。

契約の時に頭に映像が流れてきたんじゃろ?

それは刀との相性がかなり良くないと起きん現象じゃ。

どうりでぶっとんだ馬鹿力のはずじゃ。」

 

「うーん、よくわかんないや。

とりあえずもう1回だけでいいから立ち会おうよ!」

 

「・・・しょうがないのう。」

 

しゃがんでいた武蔵はため息を吐いて立ち上がると、刀を構える。

 

「こい!蜻蛉切!」

 

蜻蛉切は楽しそうに無邪気な笑顔を浮かべ、

覚醒する。

 

すると蜻蛉切の全身がかすかに青く光り、身体中を稲妻がかけめぐっているように見える。

 

(元々の高い身体能力が鬼巫女になったことで強化され、さらに覚醒で上昇。

その上でさらに能力で身体能力強化とは・・・。)

 

「いっくよー!武蔵さん!」

 

蜻蛉は飛び上がると、武蔵の真上か槍を振り下ろす。

 

「ったく、冗談キツイわい。」

 

訓練場が爆音と共に煙に包まれた。

 

#####

 

その頃東京では。

 

「きゃああああああ!」

 

「鬼だああああああ!」

 

「逃げろぉぉおおおおお!!」

 

複数の鬼が暴れ、人々を襲っていた。

 

「きゃあ!」

 

高校生くらいであろうか、1人の女の子が躓き転倒する。

 

立ちあがろうとする女の子の前に身長が3メートルはある大きな鬼が空から降ってきた。

 

「あ・・・あ・・・」

 

恐怖で腰が抜けた女の子に、鬼は無慈悲に鋭い爪の生えた腕をふりかぶる。

 

女の子がとっさに目をつぶり、小さく悲鳴をあげる。

 

「おらあああ!」

 

しかし、鬼は目の前に降ってきた人影によって縦一閃、一刀両断に切り裂かれる。

 

その人物、同田貫正国は真正面から鬼の返り血を浴びて顔が赤く汚れる。

 

無残な死体は倒れ足元の地面を赤く染めた後黒い塵になって消え去る。

 

「大丈夫か?」

 

同田貫は背後の少女に声をかける。

 

「は・・・はい・・・ありがとうございます・・・。」

 

同田貫は少女の手を引いて立たせる。

 

「この先を少し真っ直ぐ行けば無名が避難誘導してる。

行きな。」

 

「はい!」

 

少女は同田貫にお辞儀をすると走っていった。

 

同田貫はその背中を見送ると、

 

「さて・・・と!」

 

背後に近づいてきていた鬼を振り向きざまに横に両断する。

 

崩れた鬼の体の先には、複数の鬼が呻き声を上げながら歩いてきているのが見えた。

 

同田貫はそれを確認すると、静かに目を閉じる。

 

「覚醒、Lv2。」

 

同田貫を中心に、爆音と衝撃はが起きる。

 

両方の瞳は赤く染まり、その周りの白い部分も黒くなる。

 

同田貫は、目の前の敵の群れを見据えると。

 

「うあああああああああああああ!!」

 

咆哮と共に勢いよく飛びかかり、1番前にいた鬼を袈裟斬りにする。

 

すぐ横にいた鬼が腕を振り上げるが、

その腕を払うより先に腹に同田貫の刀が突き刺さる。

 

「うおらああああああ!」

 

同田貫は鬼が刺さったままの刀を振り回し、

刺さっていた鬼を目の前の鬼の群れに投げつける、

 

投げられた鬼は眩しい光を放ったかと思うと。

 

ドカアアアアアアアアアン!

 

周囲の鬼を10体ほど巻き込み爆発四散する。

 

爆発のあとは土煙で覆われ、その手前で鬼達が警戒して立ち止まっている。

 

すると土煙を切り払って同田貫が突撃してきた。

 

同田貫は惚けている鬼を五体斬りながら前進する。

 

そして目の前の10体の鬼に向かって左手を突き出す。

 

「うざってぇ!吹っ飛べぇ!」

 

ドゴオオオオン!

 

同田貫の左手から爆音とともに炎が吹き出し、

鬼の群れを吹き飛ばして塵にする。

 

その光景にほかの鬼達は後ずさる。

 

「いつもの事やけど荒っぽい戦い方やなぁ。」

 

同田貫が声のした方を見ると両目の色が変わり

、覚醒状態の城和泉が歩いて近づいてきていた。

 

両手に鉄製のナックルグローブをはめている。

 

「もう超静かに戦われへんか。」

 

そんな城和泉の背後から、2体の鬼が襲いかかるが。

 

ヒュッと何かが風を切る音がしたかと思うと、2体の鬼は体を両断される。

 

それをきっかけに複数の鬼が城和泉に襲いかかるが、城和泉は鬼たちの攻撃をスルスルと避けて鬼たちの背後に回る。

 

鬼達は体を動かそうとするが、何かに阻まれて動けない。

 

よく見ると、城和泉の両手のグローブから伸びている複数の鉄線が鬼たちの体に絡みついていた。

 

城和泉はニヤつくと両手を手前にグンッと引っ張る。

 

すると、鬼たちの体はばらばらに切り刻まれ地面に鮮血を撒き散らす。

 

「ウチみたいにな。」

 

「お前のやり方はいつもグロすぎんだよグロ泉。」

 

「おう、ウチのあだ名これ以上増やすのやめぇや。」

 

二人が他愛のない話をしていると、

 

「はああああああ!」

 

背後から叫び声が聞こえてくる。

 

2人が振り返ると加州清光が鬼の群れを斬り進んでいた。

 

加州は素早い動きと磨きあげられた技で、次々と鬼を斬り捨て、2人と合流する。

 

「2人とも、無事でしたか。」

 

「あぁ、数は多いけど大したことねぇからな。」

 

「しっかし今日はようけ出よるなぁ。」

 

「これだけいるってことはどっかに首魁が居るはずだ、

加州、城和泉、手分けして探すぞ。」

 

「わかりました、では私は北の方を探s。」

 

加州の言葉を遮るように、

 

「うがああああああああああ!!」

 

ズンッ!

 

雄叫びとともに身の丈5mはある鬼が目の前に降りてきた。

手足の腕の太さは象の足ほどあり全体的に筋骨隆々であった。

 

腕は全部で6本あり、どれも鋭く長い爪がついていた。

 

「美味そうな匂いがすると思えバぁ。

人間の姿してんのに仲間の匂いがすルなぁ。

なんだぁ?てめぇラァ。」

 

鬼の言葉に同田貫達は返事を返さない。

 

「怯えて声も出ねぇかァ?

ぎひひひ!

安心しナァ、あんまり苦しまねぇように殺してやるからよぉ。」

 

鬼がそこまで言うと城和泉はようやく口を開く

 

「なぁ、田貫。

このアホ自分からノコノコ出てきよったで。」

 

「あぁ、探す手間が省けたな。」

 

「言語を喋るところを見ると中級でしょうか。

・・・大したことはなさそうですが。」

 

「舐めるな小娘共がアアアアアア!」

 

小馬鹿にされた鬼が3人に向かって拳を振り下ろす。

 

3人はそれを後ろに飛んで避ける。

 

城和泉が敵に向かって突っ込んで行く。

 

敵の攻撃を飛んで避けると、きりもみジャンプの体勢で敵の真上からワイヤーで敵の2本の腕を縛る。

 

そして地面に着地すると。

 

「おらぁ!」

 

ワイヤーを引っ張り、敵の腕を切り落とす。

 

しかし、2本の腕は数秒で再生する。

 

「うわ、面倒くさ。」

 

「うがアアアアアア!」

 

鬼は城和泉に突進すると、その体を握り潰そうと鷲掴みにする。

 

しかし、城和泉はその手をこじ開けていく。

 

「アンタが触れていいほど、安い体やないねん!」

 

そしてそのまま腕を軸に飛び上がり、鬼の顎を思い切り蹴りあげてから地面に着地し、距離をとる。

 

手につけていたグローブが光を放ち、刀に戻って城和泉の腕に収まと、城和泉は再び突っ込んでいく。

 

鬼は城和泉に向かって攻撃態勢をとる。

 

しかし、

 

「前ばっか見てんじゃねぇよマヌケ!」

 

背後から同田貫が迫っていた。

 

「合わせろ城和泉!」

 

「いわれんでも!」

 

2人は鬼の前方と後方から迫っていき、同じタイミングで城和泉は鬼の左腕、同田貫は右腕をそれぞれ3本づつ斬り落とす。

 

「今や!」

 

「やれ!」

 

「「加州!」」

 

鬼が顔を上げると、加州が肩を構えて飛び上がり目の前にいた。

 

そして、

 

「はぁ!」

 

鬼の顔面に3発の突きを放つ。

 

加州が着地すると同時に鬼の身体は仰向けに倒れ動かなくなる。

 

しばらくすると鬼の体は黒い塵と化した。

 

それと同時に周りの鬼達も叫び声とともに倒れ、塵となる。

 

「終わったか。」

 

周囲の鬼が消えたのを確認すると、3人は刀をさやに収める。

 

「もしかしたらまだ居るかもしれねぇ。

警戒をしつつ逃げ遅れた市民がいないか探すぞ。」

 

「「了解。」」

 

3人はバラバラに散って周りを捜索し始めた。

 

#####

 

捜索を終え、避難所にやってくると無銘の鬼巫女が同田貫たちに報告に来る。

 

ここで言う無銘とは、儀式の際名前のない刀と契約した鬼巫女を指す。

 

無銘達の役割は街の警備など、前線で戦う名前付き(通称名物)の鬼巫女たちのサポートである。

 

今回も、街を警備していた無銘の通報で出撃し、今に至る。

 

「同田貫隊長!」

 

「隊長代理な。

で、状況は?」

 

「はい、けが人は多数出ていますが死亡者はいないようです。」

 

「あれだけの鬼がいたのに幸運ですね。」

 

「ホンマやなぁ、良かった良かった。」

 

「俺達もあとで見て回る、今来てる無銘を総動員してけが人の治療に当たれ。」

 

「了解!」

 

無銘の少女は返事をすると走り去っていった。

 

「とりあえずは一件落着ですね。」

 

「せやなぁ。

さっさと事後処理終わらせて帰って風呂入ろ、田貫。」

 

そう言って城和泉は、同田貫と腕に抱きついた。

 

「お前なぁ、一般人だっているんだぞ?」

 

「誰も見てへんもん。」

 

「私が見てますよ。」

 

イチャついてる2人の後ろから、加州がジト目で睨む。

 

「とりあえず今は離れろ。」

 

「はーい。」

 

城和泉はどこか不満そうな顔で同田貫から腕を離した。

 

「それにしてもやっぱり人材不足が痛いなぁ。

もう少しいりゃあけが人もっと少なく済んだかもしんねぇ。」

 

「せやなぁ、津田はともかく瓶割さんまで海外の支部に行ってもうたからなぁ。」

 

「近々二人の空いた穴を埋めるために新人か来るらしいですけど、どうなることやら。」

 

「その新人のどっちかが俺らの新しい隊長になるかもな。

鬼滅隊(うち)は使える人材は使っていくスタイルだしな。」

 

そう言うと同田貫は大きく背伸びをする。

 

「よし、そんじゃあ俺らもけが人の治療手伝うか。」

 

「せやな。」

 

「そうですね。」

 

#####

夕方。

 

新人3人組は訓練が終わり、部屋に戻っていた。

 

肥前と鬼丸は床に寝転んでのびている。

 

「あー・・・つかれた・・・。」

 

「こってり絞られたっすね・・・。」

 

「2人とも大丈夫?」

 

「蜻蛉はぴんぴんしてるっすね。」

 

「うん!まだ私動き足りないくらいだよ!」

 

「体力おばけじゃないすか。」

 

「そう言えば蜻蛉は相手してた武蔵さんが疲れてたよね。」

 

「うん!武蔵さん強くて楽しかったからついはしゃいじゃった。」

 

「バトルジャンキーが誕生してしまった・・・。」

 

鬼丸はグルンと回転して仰向けになる。

 

「なんか今日あーし、飯作る気になれないっすわ。

さすがに疲れたっす。」

 

「私も・・・どうする?ピザでも頼む?」

 

「あーだったら酒も欲しいっすね。

蜻蛉、金渡すんでひとっ走り買ってきえくれないっすか。」

 

「いいよ!任せて。」

 

と、蜻蛉切が出かけようとしたところで、

 

「その必要は無いぞ蜻蛉!」

 

その声とともにドアが開け放たれる。

 

「酒ならここにあるからな!」

 

両手に酒が大量に入ったコンビニ袋を持った武蔵が声を張り上げる。

 

そして武蔵が部屋に入ってくるとその後ろから七星剣と皆朱槍も続いて入ってくる。

 

七星剣と皆朱槍は両腕に大量の機材を持っていた。

 

「邪魔するわよ。」

 

「やっほー、みんな。」

 

「酒はありがたいんすけど・・・なんすかそれ、カメラ?」

 

鬼丸の疑問をスルーして七星剣と皆朱槍はテキパキとカメラ機材をセットしていく。

 

そしてテーブルの端にノートパソコンを置いたところで、武蔵が口を開く。

 

「よし、準備は整ったな。

良いかお主ら。」

 

武蔵は新人3人に向かって。

 

「今から動画を撮るぞ!」

 

「は?動画?」

 

「どうしてですか?」

 

「うむ、今日の訓練で分かると思うが鬼巫女はとてつもなく強い力を秘めている。

その気になれば、国家転覆も可能な程のな。

つまり、鬼巫女は人々の希望ではあるが、その力を恐れている者もいる。

そういうもの達に自分たちは無害であるとアピールすることが必要なのだ。」

 

「そのための動画撮影ですか?」

 

そういった肥前に、七星剣は頷くと武蔵の説明を引き継ぐように話し出す。

 

「それだけじゃないわ。

鬼巫女の中には女優や歌手、果てはアイドル活動をしてる奴までいる。

それほどまでにこれは重要なことなのよ。」

 

「てなわけで今からみんなにはニヤニヤ動画の生放送に出演してもらいます。

拒否権はないからねぇ。」

 

皆朱槍は笑顔で言い放った。

 

「で・・・でも急に生放送なんて恥ずかしいですよ。」

 

「え?なんでなんで?楽しそうじゃん!

私やりたい!」

 

「それに肥前、拒否権はないんだから何言っても無駄っすよ。」

 

「うう・・・。」

 

鬼丸は先輩3人に促され席に着いてから、肥前ともにため息を吐いた。

 

#####

 

生放送の後。

 

泥酔した七星剣を、皆朱槍は肩を貸して歩かせ七星剣の部屋まで運んできた。

 

「ほら星、鍵出して。」

 

「うーん・・・」

 

七星剣は眠たそうにしながらポケットから部屋の鍵を出すと鍵を開ける。

 

皆朱槍は部屋の中に入ると、七星剣をベッドの上に座らせる。

 

「それじゃあボクは行くからね。

念のために今日はシャワーだけにしときなよ」

 

そう言って出ていこうとした皆朱槍の服を、七星剣は掴んで引き止める。

 

「え・・・なにそれ、可愛いんだけど。」

 

「飲むわよ、皆朱。」

 

「いやいや、明日も新人教育があるんだし。

そろそろ寝ないと。」

 

皆朱槍がそう言うと、七星剣は顔をむっとさせて、

 

「のーむーのー!」

 

赤ら顔でそう言った。

 

#####

 

「かんぱーい♡」

 

「乾杯。」

 

結局、上機嫌な七星剣と共にビールを飲むことになった。

 

「んぐんぐんぐ、ぷはーっ!

美味しい!」

 

「はは、そりゃよかった。」

 

普段の七星剣は酔った状態でも自制をきかせ、

周りに自分の醜態を見せないようにしている。

 

しかし、唯一皆朱槍と2人の時だけ素直に酔うことが出来るのだ。

 

「むー、わたひがひょんなに酔ってるのにあんた何でなんともにゃいのー?

にゃっとくいかにゃいー!」

 

「まーボクはお酒強いからねー。」

 

「なにそれ!わりゃひが下戸だって言いたいの!?」

 

「ちょ、絡まないでよめんどくさいなぁ。」

 

絡んでくる七星剣をなれた様子でいなしてから、皆朱槍は微笑んで七星剣に聞く。

 

「どう?新人3人は。」

 

その質問に七星剣は上機嫌に答える。

 

「みんなめちゃくちゃ優秀よ!

肥前はスピードもだけど技のキレや技術も天才的だし!

蜻蛉のほうはさっきビデオで確認したんだけど、

今いる鬼巫女の中でも最強クラスの怪力なんだけど、それに頼りっきりじゃなくてちゃんと技術も身につけてんのよ。

戦いの天才ね、あの子は。」

 

「ふーん、そう。

・・・で?鬼丸ちゃんは?」

 

「そう!鬼丸!あの子が何気に1番優秀なのよね。

力とかスピードは他の子達に負けるけど、その分技が冴え渡ってるの。

それに冷静に周りを分析できる頭も持ってる。

今からでも隊長になれるわよ。」

 

「確かに、実際に立ち会ったけど、能力も使いこなしてたしね。」

 

「そう!蜻蛉とは別ぺクトルで天才ね!

・・・でもね。」

 

散々新人たちを褒めちぎったかと思えば、

七星剣は机にぐでーっと体を伸ばす。

 

「あのこ、責任感が強すぎるのよね。

それが心配。」

 

「心配って・・・たとえば?」

 

「天下五剣ってそれだけで周りは期待するでしょ?

それに焦って失敗とかしたらあの子絶対傷つくと思うの。」

 

「確かにね。」

 

「それに・・・また沖縄みたいなことが起きたら・・・そこにあの子がいたら・・・潰れちゃうかもしれない。」

 

「・・・」

 

20年前・・・沖縄という島国が日本の地図から消えたあの日。

 

たくさんの血が流れた惨劇を、

皆朱槍は決して忘れてはいない。

 

「その時は私たちが支えてあげればいいんだよ。

鬼巫女は魂で繋がった姉妹なんだから。」

 

「・・・そうね、アンタの言うとおりだわ。」

 

そう、いつだって彼女達はそうしてきた。

 

どれだけ傷つこうが、たとえどれだけ心が折れようが、今まで戦い抜けたのは傍に仲間がいたからであった。

 

「で、それはそれとして・・・皆朱!

なんでアンタはろくに連絡もよこさないくせにふらっと帰ってくるの!」

 

「ごめんごめん、

あちこち行ってて忙しいからつい連絡するの忘れちゃっててさ。」

 

「忘れてたああああ!?」

 

皆朱槍の言葉に七星剣は身を乗り出して声を貼りあげる。

 

「私はこんなに心配してんのにアンタは忘れてたぁ!?

なにそれふざけてんの!?」

 

「大丈夫だよ、ボク強いから。」

 

「そういう油断があぶないの!」

 

「うわー、超絶面倒臭い。

大丈夫だって。」

 

「なんで言いきれるのよ!」

 

「ボクが星を残して死ぬわけないじゃん。」

 

「そんな言葉に釣られると思ってんの!

好き!」

 

七星剣は座っている皆朱槍の腰に抱きついた。

 

「ちょろいなー、星は。」

 

そう言って皆朱槍は七星剣の頭を撫でる。

 

「ねぇ、凛。」

 

「・・・なに?紅葉。」

 

本名で呼んできた七星剣に、皆朱槍は優しく語りかける。

 

「これからも・・・皆と・・・一緒・・・に・・・。」

 

「・・・紅葉?」

 

「スゥ・・・スゥ・・・」

 

寝息を立て始めた七星剣に、微笑む。

 

「・・・守るよ。

世界も、皆も・・・君も。」

 

そう言って額にキスをした。

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