鬼巫女日常綺譚   作:鉄夜

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カスタムキャストで作ったキャラのイメージ。

鬼丸国綱。

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蜻蛉切

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肥前忠広

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第4話

京都市街地。

 

「いやあああああああ!」

 

「にげろおおおおおお!」

 

鬼が群れを成して現れ、街で暴れていた。

 

パニックに陥りながら逃げ惑う人々の中に、

1組の親子がいた。

 

「きゃっ!」

 

親子は手を繋いで走っていたが、子供がつまづいてコケてしまった。

 

母親が駆け寄り、急いで立たせようとする。

 

しかし。

 

「がああああああああ!」

 

近くにいた3メートルほどある鬼が、近くにあったコンクリート製の建物を破壊し、

大きなコンクリートの塊が親子に降ってくる。

 

母親は我が子を守るように抱きしめ、

目を閉じる。

 

しかし、体に走るはずの衝撃や痛みはない。

 

親子が恐る恐る瞳を開けると。

 

「よかったあ!間に合った!。」

 

黒い軍服を着た蜻蛉切が安堵の表情を浮かべながら片手でコンクリートの塊を抑えていた。

 

「よいしょ。」

 

蜻蛉切はコンクリートの塊を地面に置く。

 

「立てますか?怪我とかありませんか?」

 

「は・・・はい!」

 

「それならすいませんけど立って逃げてください。

私は鬼と戦わなきゃいけないんで。」

 

「はい!ありがとうございます!」

 

母親が子供を抱き上げて走り出す。

 

蜻蛉切は敵の方を向く。

 

と、

 

「お姉ちゃん!がんばって!」

 

背後から聞こえた子供の無邪気な応援に、蜻蛉切は背中越しにサムズアップをした。

 

「さて・・・と。」

 

蜻蛉切は再び視線を敵に向ける。

巨大な鬼の周りには、中型の鬼が複数集まっていた。

 

「初手柄、頂きますか。」

 

そう言って鬼の群れへ突っ込んで行った。

 

まずは手始めに先頭にいた10体を横一閃で斬り飛ばす。

 

高く飛び上がって敵の攻撃を避け、槍を地面に叩きつけて衝撃で敵を複数体浮かし、回転するように槍を振るい体を両断する。

 

槍を四方八方に高速に振り回し、敵を切り裂きながら進撃する。

 

本命の巨大な鬼のそばに着く頃には、蜻蛉切の体は返り血に染っていた。

 

「があああああああああああ!」

 

巨大鬼は咆哮をあげると体中の筋肉が膨れ上がり、腕は丸太のように太くなる。

 

さらに体も大きくなり、身長5メートルほどになった。

 

その様子に蜻蛉切は、焦るどころか楽しそうに口角を上げる。

 

そんな蜻蛉切に、鬼は地面を踏んで距離を詰めると太い腕を振るう。

 

蜻蛉切は正面から槍で防ぐが、衝撃は殺しきれず3メートルほど吹き飛ぶ。

 

そんな蜻蛉切の背後に鬼は一瞬で回り込み、

横腹に向けて蹴りを放つ。

 

「くっ!」

 

槍で防ぐが、衝撃を殺すことが出来ず吹き飛ばされ、建物の壁に激突する。

 

激突した壁は轟音とともに砕かれ崩壊し、土煙がまう。

 

そこに向かって鬼はさらに追撃を行う。

 

一気に距離を詰め、土煙の中の蜻蛉切に向けて拳を振るう。

 

しかし。

 

その大きな拳を、遥かに小さな掌が受け止める。

 

煙が晴れ姿を現した蜻蛉切は、

 

「調子に・・・乗るな!」

 

片目が黒く染っていた。

 

ドゴォ!

 

蜻蛉切は倒れた体勢のまま、鬼の腹に蹴りを入れる。

 

10メートルほど飛ばされた鬼は空中で宙返りをして着地し、蜻蛉切に向かって赤い光弾を口から数発放つ。

 

蜻蛉切はそれを槍で弾きながらものすごい勢いで距離を詰めていく。

 

間近まで接近した蜻蛉切に、鬼は拳を振るうが、

蜻蛉切は体を反らして避け、鬼の腕を切断する。

 

鬼が悶えている間に蜻蛉切は飛び上がり、

鬼の頭の位置で槍を振りかぶった。

 

鬼は咄嗟に腕で防ごうとするが、

 

スパァン!

 

その腕ごと、首を撥ねられた。

 

蜻蛉切が着地すると、鬼の体から吹き出した血が降り注ぎ、蜻蛉切の体を赤く染める。

 

と、蜻蛉切がしているインカムに通信が入る。

 

『蜻蛉切、首尾はどうじゃ?』

 

「・・・武蔵さん、私今日美味しいお酒飲めそう。」

 

『おいおい、大概にしておけよ。

あまり溺れると戻れなくなるぞ。』

 

「あはは、大丈夫だよ。」

 

蜻蛉切の傍に、再び鬼が複数体現れる。

 

「ごめん、またお客さんだ。」

 

『そうか、油断するなよ。』

 

「わかってる、じゃあね。」

 

蜻蛉切は槍を構えると、鬼の群れへ突っ込んで行った。

 

#####

 

蜻蛉切との通信を終えた武蔵は、溜息を吐いた。

 

武蔵は市民の避難所の前で防衛に徹していた

 

「まったく、あの戦闘狂め。」

 

武蔵は溜息を吐いた。

 

「はは、今回の新人は有望そうで何よりだね。

武蔵。」

 

そんな武蔵に、フランは笑いながら近寄る。

 

「用事は済んだのか?

フラン。」

 

「うん、新人3人はいい感じに暴れてくれてるからね。

いい戦闘データが取れたよ。

それでついでだから仕事を手伝おうと思ってね。」

 

「初の実戦訓練でまさかの群れ相手じゃからのぅ。

蜻蛉もそうじゃが皆滾っておるのよ。」

 

「まったく、若いっていいねぇ。」

 

「そうじゃの・・・くるぞ。」

 

そう言った武蔵の視線の先では、中型の鬼(身長2~3メートルほど)が群れを為して迫ってきていた。

 

「さぁて、久々の運動と行こうかな。」

 

そう言ってフランは白衣を脱ぎ捨て、黒いタンクトップと短パンの姿になる。

 

すると突然、フランの両腕の手の甲から60cm程のレーザーで構成された剣の刀身が現れ。

 

「さて、始めるか。 」

 

フランの足の裏から炎と煙が吹き出した。

 

フランはそのジェットエンジンを使って敵に高速で突撃する。

 

「はぁ!」

 

体を横に回転させながら複数体の敵の体を横に両断する。

 

敵の攻撃を軽やかに避けて、背後に回ると背中を突き刺す。

 

60センチある刀身が更に伸びて広範囲の敵を斬り裂く。

 

さらに離れた的は掌に空いた小さな穴からレーザーを発射して吹き飛ばす。

 

そんな縦横無尽にあばれまわるフランを囲み、数十体の鬼が一気にとびかかるが、

フランはジェットエンジンで飛行して回避する。

 

そして空中で拳をふりかぶると、その拳が機械音を立てながら形を変化し、巨大な拳になる。

 

フランはそれを真下にいる鬼の群れに叩き込んだ。

 

ドゴオオオオオン!

 

けたたましい音と共に大量の鬼が吹き飛ばされる。

 

フランが着地して目の前を見ると、未だに複数の鬼がこちらに向かってきていた。

 

「やれやれ、相変わらず群れるのが好きな奴らだ。

・・・ふむ、ちょうどいい。

新装備を試すとしよう。」

 

そういったフランの背中から機械の翼が生える。

 

機械の翼はバチバチと帯電をしだし、フランの目の前に光る球体を作り出す。

 

球体はどんどん大きくなり、直径1メートルを超えた所で。

 

ズドオオオオオオオオン!

 

巨大なレーザとなり、敵の群れを射線上にあった瓦礫ごと蒸発させた。

 

「ふむ、上出来だな。」

 

武蔵はその光景を刀を肩に担いでドン引きしながら見ていた。

 

「蜻蛉もそうじゃがあやつも敵に回したくないのぉ。

さすが、フランケンシュタイン(人造人間)の名を冠するだけはある。」

 

その武蔵の背後に降ってきた鬼が彼女に向かって拳を振り上げる。

 

ザンッ!

 

しかし、その拳を振るう前に武蔵の刀によって胴体を横に両断される。

 

「それで不意打ちのつもりか?

阿呆が。」

 

武蔵は思いっきり地面を蹴って鬼の群れに突っ込んでいくと、見事な太刀筋で鬼たちを仕留めていく。

 

それも1匹1匹を一撃で確実に仕留めていた。

 

そんな武蔵の背後から襲おうとしていた鬼に、複数の小型ミサイルが直撃し吹き飛ばす。

 

右手をミサイルポットに変形させたフランが武蔵に背中を合わせて立つ。

 

「背後がお留守だよ武蔵。

書類仕事ばかりで鈍ったんじゃないかい?」

 

「阿呆。

まさに攻撃しようとしたところじゃ。

人の獲物を横取りしおって。」

 

「ははは、それは済まないことをした。

それはそうと大した数だ。

本気を出した方が良くないかい?武蔵。」

 

「そうじゃの。

・・・ちと暴れるか。」

 

その言葉と共に覚醒した武蔵は刀に妖気を纏わせそこにさらに妖力を注ぐ。

 

すると刀身が青白く光を放ち、その光は刀の形となり真っ直ぐに伸びる。

 

2メートルほどの長さになったそれを、武蔵は肩に担ぐ。

 

「さぁ、行くぞフラン。」

 

「了解、武蔵。」

 

2人は不敵に笑って鬼の群れに向かっていった。

 

#####

 

鬼の群れが街中を練り歩いていた。

 

肥前はその様子を高層ビルの上から眺めながらインカムで七星剣と連絡を取る。

 

(せい)さん、こちら肥前忠広。

目標の地点に到着、敵影を確認しました。」

 

『こちら七星剣。

肥前、敵の総数は?』

 

「十から三十ほどだと思います。」

 

『了解、こっちはもう少しかかるから少しの間敵をくい止めておいてくれる?』

 

「わかりました。」

 

『落ち着いて、訓練で学んだ事を思い出すのよ?』

 

「りょ・・・了解です。」

 

肥前は通信を切ると、眼下で群れをなして歩く鬼を見て深呼吸する。

 

「・・・よし。」

 

小さくつぶやくと、刀を抜いて標的を見定めビルの上から前のめりに倒れるように落下する。

 

頭を下に向けて落下しながら軌道修正し、

空中で半回転して頭の位置を上にすると刀の先を下に向け。

 

ザシュッ!

 

敵を下敷きにするように脳天に刀を突き刺した。

 

突然のことに驚いている鬼の間を抜けると同時に刀を素早く振るい2体の鬼を斬る。

 

続けて前進すると目の前の鬼が大剣を肥前の首めがけて横に振るった。

 

その大剣の下をスライディングで避けて股の下をくぐって鬼の背後に周り、背中越しに鬼の心臓を突き刺した。

 

そこに、3匹の鬼が一斉に襲い掛かる。

 

「コード103。」

 

肥前が小さく呟いた瞬間、腕輪が光り肥前の姿がその場から消えたかと思うと上空に姿を現した。

 

自分の真下にいる3匹の鬼の体が重なった瞬間、肥前は刀を下に向け3匹の鬼の体を真上から貫いた。

 

動かなくなった3匹の体の上から飛び降りてから刀に付着した血を刀を軽く振って払い、

こちらに向かって吠える鬼達を刀を構えて睨む。

 

そして鬼達がこちらに向かって突進をしかけたその時肥前の頬に一陣の風が触れたかと思えば、

 

ブシャア!

 

鬼達が体から鮮血を吹き出して倒れた。

 

目の前の光景に唖然としている肥前に背後から声がかけられる。

 

「まだまだ遅いわね、肥前。」

 

肥前は振り返ると、頬を緩ませ声の主に言う。

 

「星さんが早すぎるんですよ。

能力使われたら勝てるわけないじゃないですか。」

 

「諦めたらそこで試合終了よ。」

 

「諦めるとか以前の問題ですって。」

 

そんな会話をしていた2人の顔が引き締まる。

 

肥前が振り返ると、そこにはまだ複数の鬼達がいた。

 

「さっさと終わらすわよ、肥前。」

 

「はい、星さん。」

 

2人は覚醒し、目の前の敵の群れを睨みつけた。

 

#####

 

鬼の発生源周辺は廃墟と化していた。

 

建物はそのほとんどが破壊され、所々炎が上がっている。

 

「ハァ・・・ハァ・・・。」

 

そんな街の中を、一つの人影が走っていた。

 

頭に2本の角を生やしているショートカットの女性はまるで何かから逃げるように走っていた。

 

彼女は『鬼人』と呼ばれる種類の妖怪で、

鬼と同じく角を生やしているが全く別の種族である。

 

鬼人はこの世界に多く存在しており、現代社会に溶け込んでいた。

 

しかし、鬼人は鬼達の好物でもあり、

鬼が出現すると決まって狙われることになるのだ。

 

この女性も鬼から追われ、必死に逃げているところである。

 

と、そこに、

 

ドゴォン!

 

大きなコンクリートの塊が空から降ってきた。

 

「きゃあ!」

 

少女は潰されはしなかったものの、衝撃で体が飛ばされ、地面を転がった。

 

「くっ・・・。」

 

そこに、地面を揺らしながら巨大な影が現れる。

 

その鬼の体長は10メートルほどで全体的に筋肉質な体をしていた。

 

腕と足が大木のように太くいかついゴリラのような猿の顔を持ち、額から立派なツノが1本生えていた。

 

鬼は鬼人の少女の肩から下を鷲掴みにして持ち上げると顔に近くに持ってくる。

 

「やっと捕まえたぜェ!

逃げるなんてひでェじゃねぇカ。

同じ鬼だってのによォ。」

 

「・・・じゃない・・・。」

 

「あァ?」

 

少女は勇敢にも鬼を睨んで叫ぶ。

 

「仲間なんかじゃない!

私達は誇り高い鬼人よ!あんたみたいな化け物と一緒にしない・・・・ぐっ・・・あああああああ!!」

 

鬼が少女を掴む手に力を入れ始めた。

 

「言葉に気をつけろよ女ァ。

じゃねぇと・・・力加減を間違えていたぶる前に殺しちまいそうだ。」

 

「う・・・うぁ・・・。」

 

鬼は少女をいたぶるようにゆっくりと力を入れていく。

 

肺の空気が押し出され、息ができない苦しみの中、少女はなおも鬼を睨みつける。

 

「い・・・今に見てなさい・・・いつか、アンタ達に罰を与えてくれるやつが現れる・・・・くっ・・・かはっ・・・。」

 

とうとう喋ることも出来ずに、脱力する少女に、鬼は下卑た笑みを浮かべていう。

 

「罰を与えル?俺たちにィ?

そんなやつがどこにいるってんダ!」

 

「ここにいるっすよ!」

「ここにいるよ!」

 

同時に聞こえた2つの声に、鬼は空を見上げると、2つの影が降ってきた。

 

そのうちの一人は刀を抜き、少女を掴んでいる鬼の腕を斬りつける。

 

「ウガアアアアアアアア!」

 

斬られた痛みで鬼は少女を離し、斬られた場所を手で抑える。

 

鬼を斬りつけた人物、鬼丸は落下してきた少女を抱えるようにキャッチする。

 

「おまたせっす!」

 

「貴方は・・・鬼巫女!」

 

少女は安心したように微笑む。

 

「クソがァ・・・!」

 

鬼が鬼丸を睨んでいると懐に覚醒した皆朱槍が潜り込んできた。

 

「はーい、ちょっとあっち行ってようねー。」

 

皆朱槍は鬼の体に触れると能力で鬼を弾き飛ばした。

 

「ぐっ!」

 

10メートルほど飛ばされた鬼は、途中で身を翻して着地する。

 

「ありゃ、見た目の割に案外身軽。」

 

そう言っている皆朱槍の後ろで鬼丸は助けた少女と話していた。

 

「大丈夫っすか?」

 

「はい!ありがとうございます。」

 

「後で安全な場所に誘導するんで、そこに隠れといてください。」

 

鬼丸にそう言われ、少女は破壊された建物の後ろに隠れて2人の様子を見ていた。

 

それを確認すると、鬼丸は皆朱槍と共に鬼の方へ歩いていく。

 

「最近の鬼はナンパのやり方も知らないんすか?

ワイルド系のつもりなら大失敗っすよ?」

 

「確かにねぇ、野性的な男ってことなら合ってるかもだけど。」

 

「いくら野性的でもゴリラは勘弁っすわ。」

 

「それな。」

 

二人の会話を聞いて鬼が歯ぎしりをする。

 

「舐めやがってェ人間風情がァ!」

 

「てめぇこそ、山猿風情が誰に断って人のシマ荒らしてんすか。」

 

「そうだよ、お猿さんは猿山におかえり。」

 

皆朱槍が、シッシッと手でやると鬼はさらに牙を剥き出しにした。

 

「ナメるなァ!!」

 

鬼が咆哮を上げると黒い霧が鬼から発生し、

そこか、小型から大型の鬼が群れをなして現れた。

 

「やっぱりあのお猿さんが首魁っぽいね。」

 

「首魁?」

 

「鬼の群れの発生源、強い力を持った上級の鬼だよ。」

 

「発生源・・・つまりアイツを倒せば今回の騒動は収まるってことっすか?」

 

「そういうこと。

さすがマル、理解が早くて助かるよ。」

 

「・・・皆朱槍さん、あのでかいのあたしがもらってもいいすか?」

 

「お?随分強気だねぇ。」

 

「自分がどこまでできるか確かめたいんっすよ。

・・・それに。」

 

鬼丸は右手の拳を握る。

 

()()()()()()、試してみたいっす。」

 

「ふーん、なるほどねぇ。

・・・よしわかった、雑魚は私に任せなさーい。」

 

「ありがとうっす。

あ、危なくなったら助けてくださいっす。」

 

「マルのそういうところ私好き。

さてと、それじゃあ!」

 

皆朱槍は槍を構え、鬼丸も覚醒して刀を構える。

 

鬼丸の刀の刀身を、炎が纏っている。

 

「ひと暴れと洒落込もうか!!」

 

2人は鬼の群れに突っ込んでいく。

 

まずは皆朱槍、先陣を切る1匹の鬼を殴り付けると同時にゼロ距離で衝撃波をぶつけ、

後ろにいる複数匹の鬼をいっぺんに吹き飛ばしたかと思へば、間髪入れずに槍を振り回し鬼を薙ぎ払っていく。

 

続く鬼丸、敵の攻撃を軽やかに避けがら空きになった腹に一太刀浴びせれば、その傷口から炎が燃え上がり敵の体を焼き尽くす。

 

三方向から襲ってきた敵の攻撃をしゃがんで避けて足祓いをすると、おもむろに右腕の掌を開く。

 

すると、鬼丸の右腕を覆うように青い半透明の腕が浮かび上がった。

 

半透明でわかりずらいが、その腕は指の先まで硬いゴツゴツとした鱗のようなもので覆われており、爪は鋭く刃物のようであった。

 

鬼丸が腕を一回転させながら振るうと、

その腕は巨大化して伸び、鬼丸の腕の動きと連動して三体の鬼の体をまとめて掴む。

 

「オラァ!」

 

鬼丸はその手を使って3体の鬼を地面に叩きつけると、

 

「吹っ飛べ!」

 

そこに向かって激しく燃え上がる刀を振り下ろす。

 

火柱が上がり、三体の鬼の体は一瞬で灰となった。

 

「やっぱりかっこいいなぁ、『鬼の手』

能力2個持ちって色々と応用効くし絵になるよねぇ。」

 

槍を肩に担いで呑気に言う皆朱槍の背後から鬼が襲いかかるが、

 

「よっと。」

 

皆朱槍はハエでも払うようにその鬼を斬り捨てた。

 

「にしても多いなぁ。

これじゃあマルが首魁のところに行けないよ。

・・・よし。」

 

皆朱槍は鬼丸に向かって声を貼りあげる。

 

「マルぅ!

今からボクが道作るから一気に首魁のところまで行っちゃってぇ!」

 

「了解っす!」

 

「うん!いい返事だ!

そんじゃあ、巻き込まれないでね!」

 

「え?今なんて?」

 

鬼丸の問いかけを無視して皆朱槍は右腕を大きく振りかぶる。

 

皆朱槍の拳が白い光に包まれていき、それはだんだんと大きくなる。

 

「やっべ!」

 

何が起こるか察した鬼丸は、皆朱槍の()()()から飛び退いた。

 

その直後。

 

「せーのっ!」

 

皆朱槍が掛け声とともに何も無い空間を殴り付けると、巨大な衝撃波が発生し敵の群れを吹き飛ばしながら地面を抉って進んでいく。

 

衝撃波がぶつかる度に、敵は体から骨が砕けるグロテスクな音を立てながら吹き飛んで行く。

 

そして衝撃波が消えると、跡は綺麗に道のようになっていた。

 

「・・・うわぁ。」

 

鬼丸は目の前の光景に引いていた。

 

「ほら鬼丸、なにやってんの。

さっさと行った行った。」

 

「あ・・・うっす。」

 

鬼丸は皆朱槍が作った道を進んでいく。

 

「・・・あの攻撃絶対くらいたくない。」

 

その途中鬼丸は小さく呟いた。

 

#####

 

「大人しく待ってたっすか?お猿さん。」

 

首魁の鬼のところに着くと、鬼丸は早速挑発する。

 

「ふん、わざわざ殺されに来たカ。

俺に喧嘩を売ったこと後悔させてやル!」

 

「うわぁ、雑魚のテンプレ台詞っすね。

あんた今自分の死亡フラグ乱立してるの気づいてるっすか?」

 

「ナメヤガッテェ!」

 

鬼は飛びかかると右腕を大きく振りかぶり、

鬼丸に拳を振るう。

 

鬼丸も皆主槍が鬼の手と呼んだそれを出現させて、巨大化させて拳をぶつける。

 

「なにィ!?」

 

鬼は力負けして弾き飛ばされる。

 

「貴様ァ!なんだその力はァ!」

 

狼狽える鬼に、鬼丸は右腕の拳を見つめて言う。

 

「ガキの頃、あの修学旅行の日からテメェらに追いかけ回される度に思ってたんすよねぇ。

こいつらをぶっ飛ばせたら、そりゃあもう気持ちいいだろうなぁって。」

 

鬼丸は鬼を見てニヤリと笑う。

「夢が叶ったっす。」

 

鬼丸は一歩一歩鬼に近づいていく。

 

「や・・・ヤメロ!クルなぁ!」

 

鬼は複数の鬼を出現させて鬼丸に突撃させる。

 

鬼丸はその群れに突っ込むと一撃の元に鬼たちを斬り伏せていき、首魁との距離を詰める。

 

「チクショウめぇ!」

 

鬼は鬼丸に向かって拳を振るうが鬼丸はそれを避けて腕を斬り飛ばし、大きく跳躍する。

 

鬼は空中にいる鬼丸に拳を振るうが、やはり回避され腕を斬り落とされる。

 

「な・・・なんだ・・・なんなんだお前ハ!」

 

「・・・あーしは」

 

鬼丸は鬼の手に炎を纏わせて腕を振りかぶる。

 

「鬼丸国綱だあああああああああああ!!」

 

ドゴオオオオオオオン!

 

鬼丸は叫びながら鬼の手で首魁を思いっきり殴り付ける。

それと同時にその場に激しい火柱が上がる。

 

炎が収まると、そこには丸焦げになった鬼の死体があった。

 

しばらくすると鬼の体は黒い液体となって消失した。

 

それを見た鬼丸は覚醒を解き。

 

「ふぅ・・・」

 

静かに息を吐いた。

 

#####

 

鬼達がいなくなってからしばらくして、

武蔵は避難所で無銘の鬼巫女達の指示に当たっていた。

 

鬼巫女達は怪我人の搬送や、瓦礫の撤去に勤しんでいた。

 

「武蔵さん。」

 

と、そこに鬼丸と皆朱槍が合流する。

 

「おお、来たか二人とも。」

 

「武蔵、被害状況はどんな感じ?」

 

「うむ、負傷者は多数出とるようじゃ死者はおらんようじゃ。

街の被害も発生源周辺以外は大したことがないそうじゃ。

それで、そっちはどうじゃった?」

 

「こっちはもう鬼丸先輩が首魁をぶっ飛ばしてくれちゃったよ。」

 

「ほう。」

 

武蔵が鬼丸の方を見ると、

 

「あーしがやりました。」

 

鬼丸はサムズアップしてドヤ顔でそう言った。

 

「可愛くないやつじゃのう。」

 

「ここで謙遜して『大したことしてないよ。』なんて言うやつの方がむかつかないっすか。」

 

「・・・それもそうじゃの。」

 

「納得しちゃうんだ。」

 

雑談をしていると肥前達も合流してきた。

 

「鬼丸、武蔵さん、皆朱さん、お疲れ様です。」

 

「あ、肥前、(ほし)ねえさん。

お疲れっす。」

 

「星、そっちは大事なかったか?」

 

「誰に物言ってるのよ武蔵。」

 

武蔵の言葉に、七星剣は自信満々で答えた。

 

「ここにもいたよ、可愛くない奴。」

 

「なんか言った?皆朱。」

 

「なんでもありません!」

 

七星剣が睨むと、皆朱槍は敬礼をして答える。

 

肥前は周りを見渡して鬼丸に聞く。

 

「鬼丸、蜻蛉はまだ来てないの?」

 

「そう言えばいないっすね。

武蔵さん、蜻蛉はどうしたんすか?」

 

「それが途中から完全に別行動での、

通信機が壊れたのか連絡も取れんのじゃ。」

 

「あんたしっかり見ときなさいよ。

なにかあったら監督不行届よ。」

 

「やーい、武蔵の無能ー。」

 

「ワシだけ散々な言われようではないか!?」

 

じゃれている3人の側で、鬼丸と肥前は不安そうな顔をする。

 

「蜻蛉、何かあったのかな。」

 

「アイツがそこら辺の雑魚にやられるとは思わないっすけど・・・。」

 

そんな話をしていると。

 

「おーい!みんなー!」

 

蜻蛉切の声が聞こえた。

 

「あ!とん、ぼぉ!?」

 

「何があったの!?」

 

鬼丸と肥前が見たのは、頭のてっぺんからつま先まで血で真っ赤に染った蜻蛉切だった。

 

「いやぁ、ミミズみたいな奴に1回食われちゃってさぁ。

ぶち破って外に出たらこんなになっちゃって参っちゃうよ。

あははははは!」

 

「食われたって、大丈夫なんすか?」

 

「うん、通信機は壊れちゃったど。」

 

「そ・・・それならいいけど。」

 

「ん?2人ともどうしたの?」

 

「えっとその・・・」

 

少し間を開けて、鬼丸と肥前は声を合わせて言う。

 

「「血生臭い。」」

 

「ひどっ!」

 

3人でそんな話をしていると、武蔵達がやってきた。

 

「蜻蛉〜、派手にやったのぅ。」

 

「あはは、真っ赤っかだねぇ。」

 

「ほら蜻蛉、こっち来なさい。

水で流してあげるから。」

 

「え?私は別にこのままでもわぷっ!」

 

七星剣は、ホースを使って問答無用で蜻蛉切に水をぶっかける。

 

「良くない、これから取材もあるんだからそんな格好でカメラに映れないでしょ。」

 

「そう言えば、戦ってる時は気にならなかったっすけど本当に中継してんっすね。」

 

鬼丸が空を見ると、テレビ局のヘリが何台も飛んでいた。

 

「ま、鬼巫女はこの国の平和の象徴だからね。」

 

「一部は海外に派遣されるくらいじゃし、

国民が注目しとるんじゃよ。」

 

そんな会話をしている間に、蜻蛉の身体が綺麗になった。

 

「はい終わり。」

 

「サッパリ!」

 

蜻蛉切は両手を広げて笑顔で言うが、

 

「「やっぱり血生臭い。」」

 

「そればっかりはどうしようもないんだけど!?」

 

再び2人に言われて半泣きになって嘆く。

 

と、そこにフラン博士がやってきた。

 

「やあみんな、お仕事ご苦労。」

 

「あ!フラン博士!やっほー!」

 

「どもっす。」

 

「お疲れ様です。」

 

鬼丸達はフランに軽く挨拶をする。

 

「3人ともお疲れ様、

おかげでいい戦闘データが取れたよ。

っとそうだ、お客さんを連れてきたよ。」

 

「え?客。」

 

フランの後ろには複数の人物が立っていた。

 

「みんな君達に直接お礼が言いたいそうだ。」

 

「アンタ達のおかげで助かったよ!

ありがとう!」

 

「ヘリからの中継映像見てました!

あのでかい鬼を倒したところすごくかっこよかったです。」

 

「ど・・・どうも。」

 

鬼丸は感謝とともに何度と握手を求められ、

照れくさそうに笑った。

 

一方蜻蛉切は、

 

「あ!さっきのお姉ちゃん!」

 

「おー!さっきの子供とお母さん!

大丈夫?あれから怪我とかしてない?」

 

「うん!お姉ちゃん達が守ってくれたから大丈夫だよ!」

 

後ろで見ていた母親が申し訳なさそうに言う。

 

「あの、この子がどうしても写真を撮りたいと言って、おねがいできますか?」

 

「お易い御用!

でもお姉ちゃんちょっと臭いかもだけど大丈夫?」

 

「大丈夫!」

 

「よしきた!」

 

蜻蛉切は片腕で少女を抱きかかえると、

母親が向けているカメラに向かって笑顔でピースをする。

 

肥前も大勢の人に囲まれてたじたじだった。

 

「武蔵さん!この人たちどうしたらいいですか!」

 

肥前が顔を向けると、

武蔵は子供一人を肩車し、

2人を両腕にぶら下げていた。

 

「どうした?肥前。」

 

「手馴れてる!?」

 

嵐のように集まっていた人が去り、鬼丸達は一息ついた。

 

「凄かったっすね。」

 

「大変だった。」

 

「そう?楽しかったよ?」

 

「ははは、本格的に働きだしたらこんなもの比ではないぞ。

・・・じゃが。」

 

武蔵はニヤリと笑う。

 

「どうじゃ、人を救った感想は。」

 

その言葉に3人は顔を見合わせると何も言わずに楽しそうに笑ってみせた。

 


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