鬼巫女日常綺譚   作:鉄夜

6 / 9
第5話

鬼滅隊東京市部鬼巫女寮。

同田貫と城和泉の部屋。

 

同田貫と加州は同期の鬼巫女と丸いローテーブルを囲んでテレビを見ていた。

 

テーブルには鍋用のガスコンロとコンセントに繋がれた炊飯器、

そしてしゃぶしゃぶ用の食材が置かれている。

 

テレビでは鬼に襲われている京都の街と、

鬼と戦う京都本部の鬼巫女たちの映像が流れていた。

 

『ご覧下さい!今目の前で、今回の首魁と思われる鬼が鬼巫女によって倒されました!

情報によりますと、今回出撃に当たった5人のうち3人は研修中の新人の鬼巫女らしく、

首魁を倒した鬼巫女はそのうちの一人かと思われます!』

 

そう叫ぶレポーターの声とともにヘリに取り付けられたカメラの映像が映し出される。

 

丸焦げになった鬼の死体の傍で、1人の軍服を着た少女が佇んていた。

 

それを見て同田貫が感心したように言う。

 

「へぇ、なかなかやるじゃねぇか。

どう思う加州。」

 

「すごい技でしたね。炎を出したところを見ると能力を2つ持ってるんでしょうか。」

 

「どっちにしろ将来有望だな。

なぁ九字。

・・・九字?」

 

同田貫が目を向けると隣で一緒にテレビを見ていた九字兼定が、ワナワナと震えていた。

 

「田貫・・・これはどういうことだ。」

 

「なにが。」

 

「なにがじゃない!」

 

九字は同田貫の肩を掴んで揺らしながら叫ぶ。

 

「あんな必殺技を見せつけられたら私の立つ瀬はどうなる!」

 

「そこかよ!

知らねぇよんなもんてめぇでなんとかしやがれ!」

 

「でかい腕に炎纏わせてぶん殴るって私よりよっぽどヒーローっぽいではないか!」

 

「九字だって覚醒したら変身ヒーローになるんですから十分だと思うんですが。」

 

「確かにそうだがやはり必殺技は重要だろ!」

 

「たしかになぁ。

お前の覚醒って鎧纏って身体能力上げてのパワーでゴリ押しだもんな。」

 

「というより、ヒーローっぽくなる必要あります?」

 

加州の疑問に九字は床に座り直して腕を組む。

 

「たしかに私は自分の正義の為に鬼巫女になった。

それとヒーローになることは関係ない・・・だが!」

 

九字は立ち上がり拳を握ると力強く叫ぶ。

 

「せっかく仮面ラ〇ダーみたいな能力手に入れたんだからヒーローになりたい!」

 

「結局自分の欲じゃねぇか。」

 

「それで本当に子供に人気なんですから凄いですよね。」

 

九字は顎に手を当てていう。

 

「敵を殴る時に『S〇ASH!』とでも叫んでみるか。」

 

「それもうおる奴やないか。」

 

鍋掴みで鍋を持ってキッチンから出てきた城和泉がツッコミを入れる。

 

「まるパクリはあかんやろ、くー子。」

 

そう言って城和泉は鍋をガスコンロに設置して火をつける。

 

「それにしても、もうすぐ7月だと言うのにしゃぶしゃぶですか。」

 

「ったく、どこのどいつだ。

急に鍋料理食いたいとか言い出した奴は。」

 

「お前やろ田貫。

くー子、カンナとお菊はいつ来るんや?」

 

「さっき買い物終わったからもうすぐ着くってCHAIN(SNS)来てたぞ。」

 

ピンポーン。

 

「お、噂をすれば。

はーい。」

 

城和泉が玄関に向かい扉を開ける。

 

そこには銀髪ショートヘアーの目を半分閉じている少女、菊一文字則宗。

 

そして活発そうな赤い大きな瞳と長いロングヘアーに、サイドテールを生やした髪型の少女、

鉋切長光がいた。

二人とも酒類が大量に入った買い物袋を両手に下げている

 

「やっほ〜城和泉〜、来たよ〜。」

 

「もしかしてだけどアタシとお菊抜きで始めてないよねぇ。」

 

そう言った鉋切に城和泉は笑って答える。

 

「阿呆、酒なしでうちらが始めるわけないやろ、上がって。」

 

城和泉に促され2人は玄関で靴を脱いで他のみんながくつろいでいる居間へと入る。

 

菊一文字が両手に持った買い物袋を高く掲げてのんびりとした口調で話す。

 

「やぁやぁ皆の衆〜、

おまたせ〜。」

 

「遅くなってごめんね、車で酒屋まで行ってたんだけど道が混んでてさぁ。」

 

「お!待ってました!」

 

「カンナ、お菊、お疲れ様です。」

 

「二人とも、話はいいから早く座れ。

城和泉、お前もはやくこーい。」

 

「はいはい。」

 

菊一文字と鉋切、そして城和泉が席に着くと、

各々好きな酒を買い物袋から取り出してコップに注ぐ。

 

「そんじゃ、きょうもお疲れ。

かんぱーい!」

 

『かんぱーい!』

 

同田貫の雑な音頭で乾杯をして食事が始まった。

 

「それにしても、もう7月か・・・。」

 

皆で飲み食いを楽しんでいると、九字が小さく言葉を漏らした。

「なんだぁ?九字。

歳とると体感時間が短くなるってやつか?」

 

「そんな話がしたいんじゃない。

それと、歳の話はお互い様だろ田貫。」

 

「歳の話やなかったら何の話や?」

 

「新人が入ってくるのは8月かと思ってな。」

 

「あ〜、たしかに〜。」

 

九字の言葉を聞いて菊一文字がテレビを見ると、他のみんなもテレビに視線を向けた。

 

そこには、素早い動きで敵を斬り倒していく肥前、首魁の鬼を鬼の手で叩きのめした鬼丸。

そして、ミミズのような姿の巨大な鬼に丸呑みにされ、その後鬼の体を内側から破って出て来る蜻蛉切の映像がダイジェストで流れていた。

 

「へぇ、なかなか威勢が良さそうな奴らじゃねぇか。」

 

「うん、特に槍使ってる子の力化け物じみてるねぇ。」

 

テレビの場面が切り替わり、3人のインタビュー映像が流れる。

 

三人の顔の下に彼女達の名前が書かれたテロップが差し込まれ、アナウンサーがマイクを向ける。

 

『大活躍でしたねぇ、

鬼巫女としてこれからどんなふうに戦っていきたいですか?』

 

『は・・・はい!

日々精進を重ね、鬼滅隊の名を汚すことなくこの国の平和の象徴として責任ある行動を・・・その・・・。』

 

『肥前、緊張しすぎっすよ。』

 

『ねぇねぇカメラマンさん!私も撮って撮って!』

 

『だ・・・ダメだよ蜻蛉!カメラ鷲掴みにしちゃあ。』

 

テレビの向こうで騒いでいる3人を見て、

城和泉が口を開く。

 

「真ん中の鬼丸国綱っちゅうんが例の椒林剣さんがスカウトしてきた子やな。」

 

「あ〜そういえばそんな話しあったねぇ〜。」

 

テレビを見ながら九字が腕を組んで言う。

 

「この3人のうち、何人かは東京支部(うち)に来るんだよな。」

 

「そうらしいけど・・・なんか椒林剣さん、

福岡支部の水龍剣支部長と取り合っとるらしいで。」

 

それを聞いて九字が思い出したように言う、

 

「そういえば母さ・・・支部長がCHAINで送ってきたなぁ。」

 

「私にも来てたよ〜、お菊ぅーって〜。」

 

「あたしのとこにも来てた。

キヨは?」

 

話を振られた加州は笑って答える。

 

「私のところにも来ました。

もしかしたら箱庭出身者全員に送っているのかも知れませんね。

いい加減子離れして欲しいんですが。」

 

箱庭というのは、鬼滅隊東京支部長、

丙子椒林剣が管理運営している孤児院のことである。

 

鬼滅隊の中には箱庭出身者が多く、

九字、菊一文字、鉋切、加州もそれにあたる。

 

「親からしたら子供はいつまでたっても子供なんよ。

ウチのおかんもしょっちゅう電話かけてきよるしな。」

 

「それが嫌とは言わないが・・・支部内で出会う度にハグするのは恥ずかしくて叶わん。」

 

「と、いいながら本当は誰よりも嬉しいくーちゃんなのであった〜。」

 

「お菊!余計なことを言うな!」

 

「あはははは!」

 

菊一文字と九字の会話に大笑いしてから、鉋切が感慨深そうに話す。

 

「8月かぁ・・・アタシ達が鬼巫女になったのもそれぐらいだよねぇ。」

 

「今年で丸10年か・・・はえぇもんだな。」

 

「・・・そうだな。」

 

昔を懐かしむように話す鉋切、同田貫、九字に

城和泉と加州が呆れたように言う。

 

「なんや3人とも、年寄り臭いで。」

 

「そうですよ。

10年なんて、鬼巫女としてはまだまだ若手です。」

 

「そうだけどよー、色々あったなあって思ってさぁ。

ほら、新人研修の時とか。」

 

「あ〜、あったね〜。」

 

菊一文字がのんびりとした口調で言うと、

九字はハイライトの消えた瞳で言う。

 

「私は最初の高所からの着地訓練で高所恐怖症を克服した。」

 

「俺は渋りまくって結局武蔵さんに突き落とされたっけ。

身体能力の変化を自覚させるためとはいえ、めちゃくちゃだよなぁ。」

 

「そう言えばさぁ〜、カンナはフリーランニングで勢い余って壁に突っ込んでたよねぇ。」

 

「そ・・・そういうお菊だって、

調子乗って全力疾走してたらすっ転んでたじゃん。」

 

「あー、あったあった。

そんでボーリングみたいに転がって加州にぶつかっとったなぁ。」

 

「なんのこと〜?

そんな昔のことは忘れちゃったな〜。」

 

「私は忘れませんよ。」

 

「ごめんてキヨ〜。

冗談だから怒んないで〜。」

 

昔話に花を咲かせていると、城和泉が思い出したように言う。

 

「そういえば、新人研修始まったのって今月の初めやんな?

ってことはそろそろ実地演習やないか?」

 

「そういやぁ椒林剣さん張り切ってたなぁ。

俺も色々準備しねぇと・・・めんどくせぇ。」

 

「しっかりやんなよー。

同田貫先輩♪」

 

「うるせぇ。」

 

からかってきた鉋切に、同田貫はいつもどうり乱暴な口調で答えた。

 

#####

 

同時刻

 

東京支部、支部長室。

 

広い部屋の中央と右端と左端には作業机がありその上にはパソコンが置かれていた。

 

部屋の真ん中には応接用のテーブルがあり周りを長いソファーで両端を挟まれていた。

 

部屋の隅の天井にはテレビが吊るされていた。

 

中央の机では丙子椒林剣が書類にペンを走らせていた。

 

真ん中のソファーの上では2人の女性がいた。

 

1人はソファーの上で横になっており、

身長140センチほどで、鬼滅隊の制服を前のボタンを絞めずに気崩し、中に着ているタンクトップを大胆にさらけ出していた。

髪の毛は茶髪の天然パーマ、控えめな胸も相まって中学生ぐらいに見える。

 

その隣でもう一人の女は本を読んでいた。

 

もう1人は寝転がっている女のそばで本を読んでいた。

 

身長は160センチほどでこちらは制服をキチンと着こなし長い髪の毛をポニーテールに結んでいる。

 

精悍で整った顔つきは、どこか知性を漂わせている。

 

その傍では、ソファーに立てかけるように物干し竿のような刀が置かれていた。

 

ソファーで寝ているのは無銘、金重。

 

本を読んでいるのは長船長光。

 

どちらも椒林剣の側近として働いている。

 

椒林剣は最後の書類にサインをし終えると、

大きく背伸びをする。

 

「んーっ!やっと終わったー!

カネ、フゥちゃん、帰ろう! 」

 

それを聞いて長船は読んでいた本を閉じて制服の内ポケットに入れる。

 

そして立て掛けていた刀を背中に背負う。

 

「お疲れ様です、支部長。

ほら金重、起きてください。」

 

長船が体を優しく叩くと、金重は閉じていた瞼を開く。

 

「んあ?」

 

「んあ?じゃありませんよ。

起きてください、帰りますよ。」

 

「あー、はいはい。」

 

金重は背伸びをしてから立ち上がる。

 

「椒林剣さん、書類仕事終わったの?」

 

「うん、これで研修生の受入準備は出来た。」

 

「嬉しそうですね。」

 

長船が微笑んでそう言うと、椒林剣は実に楽しそうに答える。

 

「そりゃそうだよ。

ウチが賑やかになるのは大歓迎さ。

出来れば研修終わったあと、

3人とも面倒見たかったんだけどねぇ。」

 

「確か3人のウチ1人は福岡支部に行くんだっけ。」

 

「3人のうち2人も手に入れられるんですからいいじゃないですか。」

 

「いやだって福岡支部に行くってことはさぁ・・・あの酒クズ達の相手しなきゃ行けないってことだよ?」

 

「それは・・・。」

 

「確かに気の毒ですね

でもまぁ仕方ないですよ、決まってしまったものは。」

 

「その辺の愚痴も含めて飲みながら聞くからさ。

早く帰ろ、母さん。」

 

「・・・そうだね、今日は飲むぞー!」

 

「飲むのはいつもの事だと思いますけどね。」

 

3人は笑いながら、同居している家に向かって歩いていった。

 

#####

 

東京、鬼滅隊管理局。

 

ここは、日本中の鬼巫女達を管理する最後の砦。

 

ここから京都本部に司令が渡り、京都本部から各支部に伝わるようになっている。

 

働いているのは、主に鬼人達である。

 

そんな建物の中を、一人の鬼人の女性が書類の挟まったファイルを両手で抱えて走っていた。

 

身長は143センチほどと小柄で腕や足も細く、

髪は金髪のショートヘアー、顔は童顔で一見子供にしか見えない外見をしていた。

しかし胸だけは立派なようで、スーツの上からでも僅かに膨らんで見える。

 

額には短い二本の角が生えており、そのうち片方は先が欠けていた。

 

女は急いでいるようで、小走りで目的地に向かった。

 

やがて、局長室と表札に局長室と書かれている部屋の前に着くと、扉を開いて中に入る。

 

「酒呑!おまたせ!」

 

扉を開いた先には広い部屋があり、その中央に執務用の机がある。

 

高そうな机と座り心地の良さそうな椅子の後ろには大きめな窓がある

 

さらに部屋の右端にはテーブルがあり、長いソファーとテレビが備え付けられていた。

 

彼女が酒呑と呼んだ男はそこにいた、

 

身長は190程だろうが。

 

良く鍛えられたからだをしており、身につけている立派なスーツの上からでもわかる程だった。

額には右の眉の上に立派な角が1本生えていた。

 

酒呑は手に持っている大きな瓢箪から酒を豪快に飲むと、彼女に笑いかける。

 

「おう、茨木。」

 

その様子を見て茨木と呼ばれた彼女は呆れたように腰に手を置いて言う。

 

「もう酒呑ったらまたお酒飲んで・・・。

まだ仕事中だよ?」

 

「いいじゃねぇか、酒は俺達のエナジードリンクだろ。

そんなことよりこっち来いよ。」

 

酒呑は自分の右側をポンポンと叩く。

 

茨木は呆れながらも笑みを浮かべると、酒呑の横に座る。

 

「ちょい離れて。」

 

「え?」

 

茨木が言われた通りにすると、

酒呑は彼女の膝を枕に寝転んだ。

 

「あ〜、しふく〜。」

 

「だからまだ仕事中だって。」

 

「今更誰も気にしねぇよ。

・・・うつ伏せになっていい?」

 

「だめ、せめて帰ってからね。」

 

茨木は酒呑を優しく嗜めてから、テレビに目を向ける。

 

テレビには鬼巫女たちの戦っている姿をヘリから撮った映像が流れていた。

 

「京都の?」

 

「ああ、怪我人は居たか犠牲者は出なかったらしい。」

 

「へぇ、これだけの群れが発生したのに珍しいね。」

 

「運が良かったんだよ。

それより、例の資料は?」

 

「はい。」

 

茨木がファイルを渡すと酒呑は起き上がってそれを受け取り、中を確認する。

 

「それが今研修中の3人だよ。

右から蜻蛉切、鬼丸国綱、肥前忠広。」

 

「どいつもいい目してやがる。

それに・・・鬼丸国綱か。

天下五剣が揃ったってことは・・・。」

 

「いよいよ、だね。」

 

「・・・だな。」

 

二人は目を合わせると笑みを浮かべた。

 

#####

 

京都本部、鬼巫女寮。

 

「えー、それでは新人3人の初陣の勝利を祝して。」

 

『カンパーイ!』

 

鬼丸達は、研修生用の部屋で祝勝会と称していつも通り飲んでいた。

 

「あー!うまい!」

 

ビールを飲んだ鬼丸が声を上げた。

 

「ひと仕事終えたあとの酒は格別っすねー!」

 

「はっはっは!

そうじゃろうそうじゃろう!

これもまたこの仕事の醍醐味と言うやつじゃ!」

 

そう言って豪快に笑いながら武蔵は一升瓶をラッパ飲みする。

 

「それにしても凄かったね、鬼丸のデビ○ブリンガー。」

 

「蜻蛉、人の能力をデビルブリ○ガーっていうのはなしっすよ。」

 

「いや、あれは完全に右腕に悪魔宿っとるじゃろ。」

 

「やどってないっすよ!」

 

そんなくだらない会話をしていると、武蔵が持っている一升瓶をテーブルの上に置く。

 

「お主らもそろそろ実地研修の時期じゃの。」

 

「実地研修?」

 

「うん、研修生は1ヶ月たったら東京支部に実地研修に行くことになっておる。」

 

「東京支部って、どんな人がいるんですか?」

 

肥前の質問に武蔵はニヤリと笑って。

 

「ここより相当濃いぞ。」

 

そう言った。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。