遠慮いらない……!?
待て待て、クールだクールになれ、ここで流されるようなのはオレじゃない
「オレが抱き締めたいって思うより強く六花ちゃんがオレに抱き締めてほしいって思わせてやるよ」
「大雅さんなら知っていると思うけど、あたしは結構面倒で難しいよ」
「なめんなって、オレだぜ?」
六花ちゃんはクスクスと笑って立ち上がり、オレの隣に座った
「あたしは誰とも付き合ったこと無いから、『恋人同士』が何をするのかなんて、漫画や小説でしか分からないの
だから大雅さんが教えてよ」
これは天然なのか?それとも狙っているのか!?
どっちにしても恐ろしいな、上目遣いで『教えて』なんて言われたら……
おっといかん、オレのペースが崩される
「あれ?でも六花ちゃん好きな人いたんだろ?」
「いるけど、それは絶対に叶えちゃダメだから」
「そいつは六花ちゃんが諦めるほどの子と付き合ってんのか……その子は女神か!!」
「さぁ、どうだろうね」
六花ちゃんと昴が話している時も思ってたけど、やっぱりこういう風に笑ってる顔はなんだかそそられる
御昴 六花という
まぁ素直に教えてって言って教えてくれるはずないだろうけどな
けど、全部知った上で全部包み込んでやるよ
そう意気込んで触れそうで触れられていなかった手を重ねて、そっと目を閉じて顔を近付けた
『ピンポーーン』
「なんだよ、こんな時に……なぁ六花ちゃ………」
思わず恐怖を感じるような冷たい目をしている
「も、もしかして嫌だったか?」
すぐに六花ちゃんはいつも通りの顔つきに変わって大丈夫だと返事をくれたのだが、インターフォンはまた同じように同じリズムで鳴った
「ごめんね大雅さん」
六花ちゃんはハンドバッグを持って玄関へと向かい、オレは素直に部屋に留まった
あんな冷たい目をする時あるんだな……正直ビビったわ
オレに向けられてたらどうしようかと思ったぞ
「……」
「………」
意外と長く話してるのが気になるけどこれ以上プライベートに踏み込むのもダメだよな
少しすると何か倒れるような音が聞こえて急いで玄関へと向かうと、倒れている六花ちゃんがすぐに目に入った
「六花ちゃん!!」
手でおさえていても、白い頬が赤くなっているのはすぐに分かり外へ目を向けた
「あなたは?」
「六花ちゃんの彼氏だ、そういうお前らは誰だよ」
多分30代前半くらいの女と40前後くらいの男を睨み付けた
「あらあら、流石私の娘ね、家から逃げ出したと思えば昼間っから男を連れ込んでるなんて
初めましてイケメンの彼氏さん、六花の母です
それとこの人が……今の私の旦那
これは家族間の話だから帰ってもらえるかしら」
「家族間の話だと?
数分でいきなり娘をぶん殴るのが話なのかよ!!」
「これは躾なの」
「そうだぞ、躾は大事なんだ
それくらい坊主にでも分かるよなぁ?」
男の手が近付いて来るのがスローモーションで分かった
確実に避けられると思ったのに、実際体は思うように動くことが出来ない
「やめて!!」
オレと男の間に六花ちゃんはすぐに入ってきた
「大雅さんに手を出すなら、あたしはあなた達を絶対に許さない」
「本っ当にその目は気に入らないわね、前の旦那そっくりよ」
六花ちゃんは何も言い返すこと無くハンドバッグから封筒を取り出して地面に落とすと、母親らしき人はそれをすぐに広い中を確認してクスりと笑った
「悪いわね六花、お店の売り上げが上がったら必ず返すから」
「また来るかも知れねぇからそん時は頼むわ」
それだけ言い残して二人はいなくなった
「ごめんね、変なところ見せちゃって」
「んなことより、早く頬冷やせよ
こっちは女の子用に持ってるハンカチだから綺麗だぞ」
水で濡らしたハンカチを六花ちゃんに渡すと、いつも通りに笑ってくれた
「ありがと」