あの日初めて六花ちゃんの家に行ったとき、オレは逃げた
それだけは曲がることのない事実だ
次の日からも普通に接してくれているし、オレも普通にしてる
いや、普通を装っているのかもしれない
「大雅さん?」
「ごめんな、少しボーッとしてた」
「らしくねぇな、前に泊まりに来たときから少し様子が変じゃね?」
「大雅くん具合悪いのですか?」
「小恋ちゃんも心配してくれるなんて、本当に具合悪くなっちゃおうかな」
「そんなこと言ったら六花ちゃんが怒っちゃいますよ」
「六花ちゃんに心配かけちゃうとダメだし
オレもいい加減自分を取り戻すかなー」
お昼に四人で笑い話をするのもいつも通りなのだが、六花ちゃんからあの日の事を話すことはなかった
「よーし、文化祭出し物決めるぞ
決まるまで帰れねぇからな、早めに決めろよ、以上!」
そんな季節か……、デートもろくにしてないし学園祭デートっていうのも良いのかもな
六花ちゃんの趣味もまだ知らねぇのはちょっと遅すぎなのかな、あの時から踏み込むのが怖いって思ってるのか?
オレが六花ちゃんを想う気持ちは多分今誰にも負けてる気がしないけど、六花ちゃんはオレの事を今でもちゃんと好きでいてくれているのかも気になる
まだ1度も六花ちゃんから「好きだよ」と聞いたことがない
色々と考えているうちに何をやるかが決まったらしい
「それじゃあメイド喫茶で決定ということで、メニューはどうする?」
「行ったことねぇから知らねぇよ」
「行ったことあるやついねーの?」
仮に誰か行ったことがあったとしても、誰も言えねぇだろ
「所詮文化祭だし、適当な飲み物とケーキでも出せば良いだろ」
グダグダ過ぎたところで思わず口出ししたが、ウケは良かった
「ケーキなら一時間くらいで簡単に出来るのもあるから良いかもね」
「時間かかるのは限定とかにすれば良いんじゃね?」
「服とかはネットとかでまとめて買えば良いだろうしな、よし決まりだ」
オレは昴達とは帰らずに六花ちゃんと帰った
「なぁ六花ちゃん」
「ん?」
「六花ちゃんはさ、オレの……」
「オレの?」
「オレのどこが良くて付き合ってんの?
前にも同じようなこと聞いてるけどさ、後々好きになるからってよく分からねぇんだよな」
よし言えた
「大雅さんカッコいいじゃん、それだけで理由にならない?」
「確かにオレはイケメンだしスポーツ万能で非の打ち所がないけど、六花ちゃんはそんなところ見てないだろ?」
「六道さんを忘れる為」
何も言えなかった
そんな答えは望んでいなかったから
「嘘だよ、嘘
そんな顔をしないで、大雅さんはあたしの殻が割れて中が全部見えても絶対に否定しない人だって思えたからだよ、実際にあんな親を見てもいつも通り接してくれてるじゃん
だからね、気を使ってくれてるのはわかっているけど、そういう優しいところ…あたしは好きだよ」
路上なのに六花ちゃんを強く抱き締めてしまった
少しだけ漏れてきた声で力が入りすぎていることに気付いたけど、緩めることが出来ない
六花ちゃんの言葉一つ一つで一喜一憂されている今の顔を見られたくないという意味もあった
★大雅sideout