少しの間六花に話しかけようとする生徒は更に減っていたが、神が必要以上に絡んできたお陰なのか、次第に六花の周りにも友達といえる存在が増え、半年も過ぎれば神を応援する人すらも出てきた
「いやぁ、やっぱり男子がいると食卓も賑やかになるもんだな」
「何でまた神さんがいるんですか?」
「そりゃ、六花の手料理食べたいからに決まってんだろ
それに家にいても親父もお袋もいねぇだろうし、そうなると当然オレの飯が無いしな」
神はよく六花の家で食事をご馳走になるほどまで、六花との距離を縮めていた
六花も『まぁ良いかな』と思うほどで、神が家で食事をすることに嫌な気持ちなどは無くなっていた
「ごっそーさん!」
「はい、お粗末様でした」
「粗末なもんか、オレは六花の料理なら嫌いなトマトだって食べれるさ」
「はいはい」
父親と神はよく一緒に話をする男友達のような関係になっていて、今日も二人で食後仲良く話をしていた
「おい六花」
「何?」
「ちょっと買い物頼まれてくれねぇか」
「なら食器洗っておいてね」
父親のメモを受け取って外に出ると、神も一緒に外に出てきた
「barはこの時間から始まるんだ
帰ってきたら裏から入れよ、それと近場だけど小僧にも付いていってもらえ」
買い物に向かう先は徒歩3分ほどで買うものもミネラルウォーターだけ
「神さんは今日も泊まっていかれるんですか?」
「もう遅いしそうさせてもらおうと思ってる
六花が迷惑じゃなければ……だけどな」
「今さらなんですか?迷惑に思っていますよ?」
「えっ!マジでか?」
「はい、あたしの周りにも人が集まるようにもされるし
当然のように家でご飯を食べていますし、あたしの心まで乱そうとしていますからね」
神の少し前を歩いていた六花はそう言うと振り返り、神に見せたことの無い自然な顔で笑っていた
「本当に迷惑ですから、はやくあたしにテストで勝ってくださいね
モヤモヤが解消されません」
「お、おうよ!任せとけって
それとさ……これ、誕生日プレゼント受け取ってほしい」
神はポケットからネックレスを取り出した
チェーンは綺麗なシルバーをしているが、付いているのがよく分からない何か
「この銀の変なのは何ですか?」
「猫だよ!工作のときハンダゴテでこっそり作ってたんだ
本当はもっと良いもの買ってあげたかったんだけど、オレんち貧乏だからさ、高校生になったらバイトも出来るようになるから、六花が喜ぶようなものプレゼントするからな」
「んー……何で猫なんですか?
あたし別に猫が好きなんて言っていませんよ?」
「なんか六花って猫っぽいなって思ったからだよ」
そうですか、と納得したかしていないか分からない様子の六花は一歩神に近付いた
「それなら今はこれで満足しますね、付けて下さい」
少し戸惑いつつもネックレスを六花につけようとすると、かなりの小声で六花は言った
「次の模試で結果を残してください
待つのは好きではないので」
「分かってるよ」
ネックレスを付け終わると六花はまた少し離れた
「なぁ六花!」
「はい?」
「いい加減硬い話し方直してくれねぇかな
もっと六花とは対等でいたいんだよ」
「この話し方は癖ですからね、でもがんばってはみますね、神さんがあたしを越えられる頃までには」
いつも通りの作り笑顔を振りまいて六花と神は買い物に戻った