数ヶ月が過ぎて試験も近くなってきた頃
神と六花はよく一緒にいることから、周りの人からはもう付き合っているのかと勘違いさせるほどになっていた
「う~…寒いな……」
「そうですか?去年神さんマフラーしていたじゃないですか、何で今年はつけないのですか?」
マフラー・手袋を着用している六花は防寒対策していない神より遥かに暖かい格好をしている
「流石にヨボヨボだから捨てたよ」
六花は自分のマフラーを外して神に渡した
「これあたしの手作りですから、大事に使って」
「いや、流石に悪いだろ」
「中学最後の模試で風邪引いたからなんて言い訳聞きたくないですし
それに、このネックレスのお礼だと思ってください」
神がプレゼントしたネックレスをしっかりと付けてくれていたことに神は恥ずかしく思えた
「わかったからしまってくれ、今見ると下手くそ過ぎて恥ずかしい」
クスクス笑いながら制服の中へネックレスをしまった
神は六花から渡されたマフラーを巻いて叫んだ
「絶対に勝つからなーーーー!!」
「五月蝿い」
模試の前でも二人で勉強し、理解しにくいところは六花の父親に聞いていた
そしてお互いがベストコンディションな状態で模試試験を迎えることが出来た
「よう、どうだったよ結果は」
「まぁまぁかな、いつも通りだよお父さん」
「オレはいつも以上に出来たぜお義父さん」
「誰がお義父さんだぁ!?」
軽く絞められながらも、神はそれなりに自信があったらしく笑顔が途切れることはなかった
「自己採点とかしねぇのか?」
「あたしはしないかな」
「オレも基本しねぇかな、やったところで点数変わるわけじゃねぇし」
「それにあたしは自信もって回答してるから」
「オレだって今回は自信しかねぇぞ
って!今日は親父もお袋も家にいるって言ってたな…
今日はこのまま帰るわ、結果楽しみにしてろよ」
返事を聞かずに走り去って行った
「なぁ六花、好きなら結果なんてどうでも良いじゃねぇか」
「神さんが自分で決めたルールだからね
あたしがそれを破るわけにはいかないよ」
「硬い考えなことで、つーか小僧に話したのか?
オレが海外に行ってる間のこと」
「まだ」
六花の父親は勉強のために海外に行くことが決まっていた
アマチュアレベルでピアノも弾けるので、夜のショーとして出演する代わりにプロの技を見て盗んでくるということらしい
六花はその間に今いる場所を離れて母親のところへ行くか、祖父母のところに行くか、どちらを選ぶにしてもここから出ていって、この街から離れなければならない
「小僧は小僧なりに必死で六花を追いかけたんだからよ、大切で大事なことはしっかりとお前の口から伝えてやれよ」
六花はコクりと頷いた
模試の結果が返ってくる前日、六花と神は朝から職員室へ向かうように言われていた為、六花はいつもより早めに家を出た
六花自身自覚しているのか分からないでいたが、ワクワクしていたのだと思う
「お、御昴は早いな」
「神さんはまだのようですね」
「まぁ一條も楽しみにしていたんだ、すぐに来るだろ」
「そうですよね」
「それにしても御昴は変わったな」
「そうですか?」
「あぁ、言っちゃ悪いが入学当初は人形みたいだなって思っていたくらいだ
今じゃしっかりと女の子やってるじゃないか」
職員室で話をしていても一向に神は現れず、電話をしても誰も出ない
「先生!!一條くんが……」
それから数分間のことは六花は覚えていなかった
ただ気付いた時には病室のベッドの上で横たわる神を六花は見つめていた
ベッドに伏せて泣いている神の両親を初めて見た時
やっと六花は理解を始めた
「あんなに楽しそうに家を出ていったのに…どうして……」
交通事故だったらしい、運ばれて来た頃にはもう助からなかった
葬儀ではクラスのほとんどの生徒は泣いていたが、六花は魂が抜けたようにただじっとしていた
「あなたが御昴 六花ちゃん?」
「はい」
「神ってば六花を紹介するからって張り切っていたの
それがこんな……」
「御冥福をお祈りします」
涙1つ流すことなく葬儀は終わり、その数日後に六花のところに神の模試の結果が届いた
誰もいない教室で結果を見比べてクスクスと笑った
「1点差でまたあたしの勝ちですね
でもここまで追い付くなんて凄いじゃないですか」
笑っていたはずなのに、模試の結果の上にボタボタと水滴がこぼれ落ちて来ていた
「ズルいですよ、本当にズルいです
あたしの気持ちも分かっていたのに、最後の最後まで言わせてくれなかったなんて」
ネックレスを握りしめて泣きながらそれでも笑顔で言った
「答えは決まっていたんですよ、神さん
あたしは神さんが好きです、凄く好きです
だからあたしと答え合わせをして下さい
答えが無い問題を残さないで下さいよ」
溜まっていた涙を教室で全て流した
それから父親は海外へ行って、六花は人間関係をリセットするために祖父母の反対を押しきって一人暮らしを始めた