★大雅side
チャイムの音と同時にドアを開けて六花を出迎える
「相変わらずのはやさだね」
「オレのセンサーが六花を関知するんだぜ」
「なにそれ」
六花もちょこちょこオレの家に来るようになり、その度に何かと手土産を持ってきてくれている
そのお陰か母さんからはは中々の好評で娘に欲しいとまで言われていた
「別に何も持ってこなくても良かったのに」
「そういうわけにはいかないの」
「だってオレは何も持っていってねぇじゃん」
「そのかわりに大雅からはたくさんの気持ちを貰ってるから」
すげー嬉しい、心から好きな子にこんなこと言われると本当に嬉しいんだな
少し浮かれながらもいつも通りコーヒーを準備していると親父に話しかけられた
「大雅、お前も2年生になったならそろそろ将来のことを考えろよ」
「はぁ?兄貴は自分の好きなことしてんのにオレにはそんなことまた言うのかよ」
「あいつは必ず後悔する、大雅にはそうなってほしくないから口を酸っぱくして言っているんだ」
「オレは六花と別れねぇぞ」
「傷口が浅い内にけじめはつけておくんだ」
「うるせぇ!!!
母さんは六花の家族のこと聞いても何も言わなかったのにてめぇはそこまで家柄が大事なのかよ!!
ふざけてんじゃねぇぞ!」
六花の為に買ったコーヒーカップが落ちて割れた
「チッ……、てめぇの後継ぎなんてオレはしねぇぞ
そんな事言ってる限り絶対な」
割れたカップを拾いながらそう言った
「誰のお陰でこんな暮らしが出来てると思っているんだ!!
お前の気持ちはよく分かった、なら私から話をしておこう」
オレの部屋に向かおうとする親父を意識したせいかカップで指を少し切ったが、その指を抑えることなく親父の後を追いかけた
「入るぞ」
「勝手に入ろうとするんじゃねぇよ!!」
言い合いながら部屋に戻ったオレに六花は少し驚いた様子でいた
「大雅のお父さんまでどうしたの?」
「大変言いにくいのだが、大雅と別れてほしい」
その言葉に六花の眉が少しだけ動いた
「あたしが何か気に触ることをしましたか?」
「こんな奴の話を聞く必要はねぇよ六花」
「ううん、あたしが聞いておきたいの
でも大雅にも一緒に話を聞いてほしい、それは構わないですよね」
六花の返事に親父も頷いた
「大雅には以前から言っているのだが、婚約者がいるんだ」
「そうなの?」
「オレはキッパリ断ったって言っただろうが」
実際に会って断ったのは事実だ、オレには今とても大切な人がいるからこの気持ちは変わらないと伝えてある
「大雅もこう言って聞かないんだ、だから君から大雅と別れるように話してほしい
頭の良い君なら分かるはずだ、私も有数のグループ企業で社長をしていて、相手方も同じように有数の企業の社長をしているんだ」
「なるほど、確かにお互いWinWinの関係になるお話ですね」
「分かってくれるか」
「あたしのような凡人が大雅には不釣り合いということですよね」
「んなことはねぇから、六花はオレの側にいろ」
親父はオレの方を見ることなく六花の答えに気まずそうになりながらも頷いた
「それとな、これはまだ大雅にも話していなかったのだが、相手方の娘さんも大雅に好意があるらしくてな、近々転校して来ると言っていた」
「その時にあたしと大雅が付き合っているところを見られて関係が拗れる危険性がある、そうなってくると会社全体にその影響が及ぶ可能性が考えられるというわけですね」
「あぁ、言っては悪いが君では大雅と釣り合いはとれない、釣り合いがとれない人同士は絶対に上手くいかなくなる時が来る、傷が深くなる前に別れるのが賢い選択だ」
「話は分かりました、大雅と二人で話をさせてください」
「良い返事を期待している」
オレから何か言う事はほとんど無く親父は部屋から出ていった
「六花……」
「ごめんね大雅、コーヒー貰えるかな」
「あ、あぁ」
言われるがままに準備していたコーヒーを部屋まで持っていった
「最近の大雅のお父さんの態度を見ていたら何かしらあるかなーって思ってたけど、まさかこんなこととはね」
「嫌な思いさせちまったな」
「でも大雅は家のことを考えるべきだよ、あたしはもう大丈夫だから」
少しだけ目を背けながら言っているのはすぐに分かった
コーヒーを持っているからではなく、別の気持ちが六花にはあるということが
「六花……オレの子を産んで欲しい」
「急だね」
「既成事実でも何でもいい、オレは六花と別れたくない」
「それは自分の親の会社のこれからを一切無視したやり方だよ」
「そうだろうが会社がどうなろうがオレは構わない、ここでただ流されたらオレは多分一生後悔する
それがオレの気持ちなんだ」
六花は少し笑っていつも通り『なにそれ』って返事を返された
六花をオレから離れられないようにしたいって思っていたはずなのに今ではオレが六花から離れたくないとまで思わされている、そう思うと自分でも軽く笑えるよな
「まだ子作りはしたくないけど、大雅の気持ちは分かったよ
一緒に説得してみよ?あたしもこんな形で大雅と別れるなんて嫌だしさ」
「いや、親父は1度言い始めたことは滅多なことじゃ曲がらねぇ、最悪な場合オレが監禁されるかもな」
「逃げるの?」
「でもそれは格好悪いだろ、オレが何とか納得させてみせるから、だからオレを信じていてほしい」
六花は安心した顔で頷いてくれた
親父の部屋に入りオレがどれ程六花を大切に想っているかを話した、頭で考えるよりも口が先に動き続けた為か、何を話したかなんてほとんど分からないが
最終的に出た親父の答えは
「もういい!勝手にしろ!!
ただ私が言った通り傷付く結果になることだけは覚悟しておけ!!
相手方の娘さんが転校してくることはもう変わらんからな!あの娘がいかに自らが無力な存在か知れば諦めもつくだろうしな!!」
「その言葉忘れんなよ」
親父の部屋を出ると目の前に六花がいた
「うわっ!ビビったぁ」
「ちょっとだけ心配だったからさ、聞き耳立てるつもりはなかったんだけど」
「もしかして全部聞いていたのか?」
「ほとんど……」
恥ず!!なにこれ!?超絶恥ずかしいんだけど!!
「嬉しかったよ、そこまで想ってくれてたなんて」
キャーーーー!!もう止めて!!オレのライフポイントはゼロよーー
そう思って赤くなっていると六花からオレの胸に飛び込んできた
「本当に嬉しい」
「どうしたんだよ急に、六花らしくないな」
「大雅の気持ち凄く伝わったから、だからこの気持ちを忘れないようにしたいの」
「そう言ってくれるのは嬉しいんだけどさ……」
落ち着けオレ!六花はまだ子作りしたくないって言ってたじゃんか
「良いよ」
「こんな雰囲気なのに良いのか?」
「あたし達のこと見せつけてやろうよ」
もう否定なんてしなかった
部屋の鍵をかけて六花を出来る限り優しくベッドへ押し倒した
「あたし初めてだから、どうすればいいのかよく分からないけど」
「大丈夫だよオレだぜ?」
上着を脱がすと六花は恥ずかしそうに胸を抑えた
「あたし小恋みたいに大きくないから……」
「誰の胸かが重要なんだよ、大きさは二の次だ」
正直なところオレは巨乳好きだって思ってたけど、小さくっても良いじゃないか六花のだもの
思ったよりも小さい体は、慎重に扱わないと壊れてしまいそうだと思えるくらいだった
どのくらい時間をかけたのか分からない
ただどれだけの時間を費やしても六花のすべてを感じたい
そう思っていた矢先、オレの肩に置いてある六花の腕に力が入ったのが分かった
「もういつでも良いよ、大雅の優しさは分かったから」
「分かった」
さて、暴れん棒タイガーの出番だが…
慌てるな、慎重に優しく、今日だけは暴れん棒じゃなくてジェントルタイガーになれ
少し押し当てただけで六花はビクついた
「まだ怖い?」
「うん、でも大丈夫だから
あたしはちゃんと大雅を受け入れられる」
「痛かったら言えよ」
六花は小さく頷きながらもオレをまっすぐに見てくれていた
ゆっくり優しく六花を包み込んだ
ただの行為ではなく言葉にするのは難しいのだけど、なにか今までしてきた中で1番特別な感じがした
「どうだった?」
「………」
「六花?」
布団にくるまったまま六花は眠っていた
「ハハハ、疲れて眠っちまったか」
一旦風呂に行って戻ってくると六花は目を覚ましていた
「起きたか?」
「うん、ごめんね眠ってたみたい」
「のんびりしてりゃいいさ」
「それにしても痛かった」
無防備過ぎる格好で起き上がった六花の頭を軽く撫でた
「悪かったよ、優しく出来なくって」
「ううん、痛くなくなるまで頑張るからさ、ちゃんと付き合ってね」
「毎日でも良いぜ」
「痛いからまだ無理」
初めて見たその笑顔は多分…いや、絶対に忘れない
『これだけのために頑張れる』そんな下らないことは無いって思っていたのに、今この時だけは理解することが出来た