君が帰る場所   作:pwpa

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夏の思い出は甘くて苦いもの ①

夏休みに入ってすぐに隣の部屋のやつは実家に帰ったらしく普段の何気ない命令も無いとつまらなく感じる

小恋ちゃんとは何気ないLINEのやり取りをしてはいたが、なんだか物足りないような気持ちでいた

 

夏休みも1週間過ぎた夜に隣からノックが聞こえてきた

 

「なんだよ、帰ってきたならインターフォン押せばいいだろ」

 

なんだかんだ嬉しそうにそう言って棚をずらすと、テーマパークのチケット2枚を渡された

 

「あたしの父さんから友達と行ってきなさいって渡されたけど、六道さんにあげるね

西城さんでも誘えば?」

 

それだけ言われるとカーテンを閉じられて穴正面に鏡を立て掛けられた

それからいくら呼び掛けても返事はなく、チケットを見つめて座り込んだ

 

ペアチケットじゃねぇかよ、つーかオレあいつに小恋ちゃんのこと話してねぇのになんで分かったんだ?

それ以前にオレから誘うなんて絶対に無理だ

ここは偉大なるあの御方の力を借りよう

 

「もしもし大雅、今大丈夫か?」

 

『珍しいじゃん、どうした?急に電話なんて』

 

「テーマパークのチケットがあるんだけどさ…」

 

『小恋ちゃん誘いたいんだけど僕ちゃんどうしたら良いか分かんないのーってところか』

 

エスパーかこいつは!!

 

「そ、そうだよ!悪いか」

 

『いや、悪くはねぇけど、オレが間接的に誘うのは変じゃね?』

 

「それなんだけど、ペアチケットが2枚あるんだ

何とか誘ってくれねぇかな」

 

『え?その為にお前ペアチケ2枚とったのか?』

 

「貰いもんだよ!!」

 

『そっかー、そうだよな

危うく友達止めるところだったわ

それで?後女の子1人は誰なんだ?』

 

「決まってねぇけど」

 

『何でもオレ任せかよ~

じゃあオレが責任もって小恋ちゃんは誘ってやる

ただしだ!昴は六花ちゃんを誘えよな、誘えたらオレもしっかりと誘うからよ』

 

「なんでお前はあいつにそこまでご執心なんだよ」

 

『なんていうかミステリアスな感じが堪らないじゃん

オレからLINEしても半日とか次の日とかに既読つくし、返事もねぇしさ、オレ色に染めたい的な?』

 

「分かったよ、オレからも一応聞いてみるけど、駄目だったとしてもオレのせいにすんなよ」

 

『そしたら小恋ちゃん誘わねぇから大丈夫だ』

 

そう言われて電話は切られた

オレの恋を実らすためには何としてもあいつを誘わなきゃならねぇ事がよく分かった

 

壁を叩いても反応が無いことくらい分かっている

ならば……ベランダからだ!!

 

ベランダから隣の部屋に侵入することは物凄く簡単に出来ると知っている

ベランダ同士の薄い仕切りを越えて隣のベランダへと侵入し少しだけ開いている網戸に手をかけて気付いた

 

あれ?これ不法侵入じゃね?

バレたらまた弱味握られるってパターンじゃね?

 

そう思った途端に全身から冷や汗が流れた

バレないようにバレないようにとそっと網戸から手を離した時、隙間から微かではあるが妙になまめかしい声が聞こえてきた

 

予想は何となくついていた

見てはいけないものだとも分かっていたのに

オレはカーテンの隙間から部屋の中を覗いていた

 

「……っん」

 

ベッドの上で服の上から胸をまさぐり、もう片方の手は下半身へとのびていた

 

かなり声を殺している様子ではあるけど呼吸する声までしっかりと聞こえてくる

エッチな動画で見たことはあったはずなのに、初めて直接見るその姿に釘付けになってしまった

 

あいつがそのまま寝転んだ時、オレのスマホが鳴り響いた

 

完全に目があった

ペタペタと歩み寄る音、オレは急いでマナーモードに切り替えて逃げようとしたが、時すでに遅く、カーテンは完全に開かれた

 

「覗きですか?」

 

「ごめんなさい」

 

何もかもが終わった

叔母さんにも話しはいくだろう

流石に引っ越すだろう

怖くて顔を上げることも出来ない

 

「はぁ……なにか弁解したら?」

 

「ごめんなさい…」

 

何かって何言えば良いのか分からねぇ

 

「ここじゃ話をするにもなんですし、とりあえず上がって下さい」

 

窓際から離れて行く後ろ姿が見えてからオレは逃げることを諦めてゆっくりと部屋に入った

 

「どうぞ」

 

言われるがまま座布団に正座した

 

「何でベランダ乗り越えて来たの?」

 

「壁叩いても返事が無かったからです…」

 

「ならインターフォン押すかLINEすれば良かったんじゃないの」

 

オレはその時初めてインターフォンの存在を思い出した

 

「ちょっと急いでて、インターフォンの存在を忘れていました」

 

「壁に穴を空けるし、襲おうとするし、今度は覗き

そんなにカチコチにして本当に変態さんのようで」

 

サッとズボンに手を当てるがオレの息子はどうやら空気を読めるらしく、静かにしてくれていた

 

「と、とりあえず今回の件はオレが全面的に悪かった!

ごめんなさいだけで許してもらおうなんて思ってないから、叔母さんには話さないで下さい!」

 

全力でのDOGEZA

これくらいしか出来ることは無いけど誠意は見せる

 

「六道さんがそこまで言うのであれば、管理人さんには言いませんけど」

 

『けど』という言葉を気にして顔を上げると、タオルを顔面に投げつけられて、そのまま床へと押し倒された

タオル越しに伝わる柔らかい唇や舌の感触と温かい吐息に少し目眩がした

 

「あたしだけ見られるって不公平だから、六道さんの恥ずかしいところも見せてください」

 

誰がこんな奴に…という気持ちとは裏腹に、オレの息子は愛と勇気だけしか友達がいない彼のように元気100倍になってしまっていた

 

「こんな時でもこんなに元気になるんですね」

 

羞恥心120%こんなことあって良いはずがない

はち切れそうな理性を制御してオレはこいつを突き放した

 

「この埋め合わせは必ずするから!!」

 

逃げるようにベランダへ向かって、1度落ちそうになりながらも自分の部屋に逃げ帰った

 

 

深呼吸をしてぐちゃぐちゃの頭の中を整理した時、ふと思い出した

 

テーマパーク誘うの忘れた

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