君が帰る場所   作:pwpa

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夏の思い出は甘くて苦いもの ④

「うっわ!流石都会だな

平日なのに人だらけじゃねぇかよ」

 

「そりゃ夏休みだし、オレらみたいな学生も来てるしな」

 

ちらっと大雅と並ぶあいつを見ると繋がれていた手は離れていた

なんでそんなことを気にしたのかは…わからん

 

「オレ絶叫マシン乗りたい!」

 

「あたし、絶叫系はちょっと」

 

「オレもせっかくの髪型が崩れちまう」

 

「あたしもパス」

 

なんだよこいつら!都会のやつらは乗らないのか?

あんなに並んでて楽しそうなのに!

 

「それよりペアでお化け屋敷行かね?

ここの結構怖いみたいじゃん」

 

「なんでわざわざペアで?怖いならみんなで入れば良いじゃん」

 

大雅に後ろ頭をスパーン!と叩かれ、耳打ちされた

 

「こういう時は男女が接近する大チャンスなんだよ!

小恋ちゃんと仲良くなりてぇんだろ?

ならオレの計画に任せろよ」

 

理由は分かったけど、叩かれた意味あるのか?

 

八百長くじを引いて小恋とオレ、大雅とあいつのペアでお化け屋敷に入ることになり、先に大雅ペアが突き進んで行った

 

昴sideout

 

六花side

 

「なぁなぁ六花ちゃん

怖ければオレの手を掴んでも良いんだぜ?」

 

「九頭竜さんはどうして六道さんを応援するの?」

 

「あーーー……昴の話かよ

昴が恋愛しようとしてるところ初めて見るから、背中押してやってるだけだよ」

 

「そうなんだ」

 

「お化け屋敷での吊り橋効果でお互い高まり合って

今日中に付き合ってもおかしくはねぇと思うが…」

 

「なに?」

 

「六花ちゃんはそれでいいのか?」

 

「どういうことかな」

 

「だって六花ちゃんも昴のこと好きなんだろ?」

 

あたしが?六道さんを?

 

「アハハハハ」

 

久しぶりにお腹の底から笑いが込み上げてきた

 

「ちょいちょい!そこ笑うところか?」

 

「なんだか九頭竜さんは六道さんの10倍は人を見ているんだなーって思って」

 

「そんな誉めんなよ、熱い夜しか渡せねぇからよ

それで本題に戻すが、六花ちゃんは良いのか?」

 

「確かに好意が無いと言えば嘘になるけど

それは恋愛対象とは違うと思ってます」

 

「どうしてそう思うんだい?」

 

「あたしだって1度本気で誰かを好きになったことあるから、その時の感情を忘れてないの

六道さんにはそれほどの感情はないから」

 

「そっかそっか、ならまだ六花ちゃんを振り向かせるのは難しそうだにゃー

でもさ、こんな時くらいは楽しもうぜ」

 

九頭竜さんの差し出された手を自然ととって、残りの道を進んでいった

 

六花sideout

 

同時刻

昴side

 

「ほっつぁぁぁ!?」

 

「ほっつあって昴くんお化け屋敷苦手なんですか?」

 

「驚かされるのが嫌なんだよな

暗い道を歩くだけなら良いんだけどよ…小恋はこういうの平気なのか?」

 

「あたしはホラー映画とかお化け屋敷とか大好きですので、すごく楽しいです」

 

「意外だな…」

 

くそー!変な声上げて驚いてるオレってばかっこわりー

『怖いなら手を繋ぐか?』みたいなこと言いたかったのに!!

 

驚かされる度にビクッとする情けない姿を晒しつつもゴールまでたどり着くと、先に入った二人の姿が見当たらない

 

「昴くん、九頭竜くんからLINEが来ています」

 

そう言われてスマホを確認してみるとこう書かれていた

 

『オレと六花ちゃんは先に色々回ってくるから、お互い二人で楽しもうぜ☆』

 

楽しもうぜ☆じゃねぇよくそったれ!!

ていうかあいつ大雅と付き合ったのか!?

 

「ど、どうしましょう」

 

「オレらも色々回っているうちに合流出来ると思うし、こまめに連絡しながら色々見て回ろうぜ」

 

「そうですね」

 

これは大雅がくれた千載一遇のチャンスなのか?そうに違いない

決めたぜ!やっぱり今日中に告白してみせる!

 

 

昼飯を食べたり、ちょっとしたアトラクションに乗ったり、店を回っているうちに辺りも暗くなりパレードが始まった

その時には自然と手を繋げていて、正直今の関係のままでも良いと思ったのだが、あいつの『絶対に失敗するから』という言葉を思い出して決意を固めた

 

「あのさ!」

 

「どうかしましたか?」

 

「オレ小恋のことが好きだ、もしよければオレと付き合ってほしい」

 

「 」

打ち上げられた花火の音で小恋の声が聞こえなかったけど、小恋の表情と離された手で答えはすぐに理解できた

 

「そうだよな……ごめんな、こんな時にこんなこと言って」

 

やべぇよ泣きそうだよ、誰か助けてくれよ

 

「でも昴くんの良いところもあたしは沢山知っていますから……」

 

格好悪いのはわかっているけど、その場の空気に耐えることが出来ずにオレは小恋の前から逃げ出した

 

「昴!!」

 

50mほど離れたところで誰かに肩をおさえられて振り返った

 

「大雅か…」

 

「あぁ、悪いと思ってたけど少し離れたところから見てたぜ、小恋ちゃんのところには六花ちゃんが行ってくれてるよ」

 

「ダメだったよ、いけると思ったんだけどな」

 

「お前にしては頑張ったほうじゃんか

1度失敗したからって逃げ出すなよ、それを乗り越えてまた挑戦すりゃ良いだろ?」

 

「1度フラれてる相手にもう一度告白しても良いのか?」

 

「オレはあり得ねぇけど、知り合いに何人か付き合えた奴もいるぞ」

 

励まされた訳でもなく、勇気付けられた訳でもないのに、話せたことで少しだけスッキリした

 

その日の夜は隣からノックの音も聞こえてくることはなかった

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