Summer Pockets #2   作:トミー@サマポケ

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第十二話 8月5日

 

 

 

 

 

 ……朝。

 

 今日も夏海ちゃんの声で目が覚め……。

 

「……あれ?」

 

 夏海ちゃんが起こしに来ない。

 

 俺は布団から起き上がって、ふすまの方を気にしながら手早く着替えを済ませる。

 

 それから布団をたたみ、廊下に出る。

 

 隣の夏海ちゃんの部屋からは、物音ひとつしない。

 

 時計を見ると、いつも夏海ちゃんが起こしに来る時間はとっくに過ぎていた。

 

「……これってもしかして」

 

 また寝坊しちゃってるかな。

 

「鏡子さーん!」

 

 それなら、今日こそは夏海ちゃんを起こしてもらおうと、鏡子さんの名前を呼びながら家中を探すけど……例によって、どこにもいない。

 

「ま、またこのパターン……」

 

 そろそろ起きてもらわないとラジオ体操に間に合わない。俺は意を決して夏海ちゃんの部屋に向かう。

 

「えーっと、夏海ちゃーん」

 

 例によってふすま越しに声をかけるけど、全く反応がない。

 

 夏海ちゃんってしっかりしてるように見えて、時々気が抜けたように寝坊しちゃうような。

 

 昨日も花火大会に肝試しと夜のイベントが続いたから、寝付けなかったんだろうか。

 

 毎日絵日記も書き続けてるみたいだし。

 

「……ごめんなさい。お邪魔します」

 

 俺はふすまをあけて、夏海ちゃんの部屋に入る。

 

 相変わらず巨大なアリクイのぬいぐるみが目につく。その足元にMDや色鉛筆、日記帳がきちんと並べて置かれていた。

 

 そんな部屋の真ん中に布団を敷いて、夏海ちゃんはすやすやと寝息を立てていた。

 

 相変わらず気持ち良さそうに寝てるけど……ここは心を鬼にして。

 

「夏海ちゃん、 朝だよ!」

 

 以前より強めに肩をゆすってみる。

 

「……はっ」

 

 むくりと上体を起こし、俺と目があう。

 

「おにーちゃん、おはよう……」

 

 上目使いでにへ~、と笑った後、ぽすんと布団に倒れて……また寝息を立て始める。

 

 聞いたことないけど、兄弟がいるんだろうか。それとも単に寝ぼけてるんだろうか。

 

 ……それより、また強引にでも起こさないと。

 

「夏海ちゃん、起きて! ラジオ体操に遅れるよ!」

 

 耳元で叫んでみる。

 

「ふにゃっ!?」

 

 今度こそしっかり起きたみたいだ。また変な声も聞こえたけど。

 

「夏海ちゃん、おはよう」

 

「……」

 

 泳いでいた目が、時計を捉える。

 

「……はっ、ラジオ体操!」

 

 直後、はねる様に飛び起きて凄い速さで布団をたたむ。

 

 そのままの勢いで鞄から服を引っ張り出して……。 

 

「だから、着替えるのは待ってーーー!」

 

 俺は慌てて廊下に飛び出して、夏海ちゃんが着替え終わるのを待つ。

 

 まるでへじゃぷだ。この間とまったく同じやりとりだった。

 

 

 

 その後、やっぱり神社に向けて全力ダッシュ。

 

「す、すみませーん!」

 

「いいよいいよ。それより急ごう!」

 

 慌てて飛び出してきたからヘアピンの位置がうまく決まってなかったんだろうか。一生懸命走りながら、蝶の形をしたヘアピンの位置を整えている。

 

 

 

 

 神社の境内に到着すると、ネコとウシが居た。

 

「ナツミさん、タカハラさん、おはようございます!」

 

「お、おはよう、二人とも」

 

「おはようござい、ます……」

 

「……パイリ君達、朝から疲れてるわね……?」

 

「オンユアマークでさ」

 

「……ごめんねパイリ君。意味が解らないわ」

 

「うん、気にしなくていいよ……」

 

「羽依里、どうせまた寝坊しちゃったんじゃないのー?」

 

 呼吸を整えていると、悪戯っぽく笑いながら蒼がやってくる。その後ろには良一に天善、のみきの姿も見える。

 

「あれ? 今日は藍さんはいないんですか?」

 

 夏海ちゃんに言われて気づいた。言われてみればいつもいる藍の姿がない。

 

「あー、ちょっと藍は体調悪くて」

 

「え、大丈夫なのか?」

 

 昨日の夜は肝試しで脅かし役をやってたし、身体を冷やしてしまったのかもしれない。

 

 いや、もしかしてあの時、お札の邪気にあてられたとか。直接触っていたし。

 

「本土の病院で見てもらうって」

 

「病院じゃなくてお寺や神社の方が良いんじゃないのか?」

 

「へっ?」

 

 ……しまった。ついオカルトチックな考え方が。

 

「いや、この島の診療所じゃだめだったのか?」

 

 確か、この島にもそれなりの設備が整った診療所があったはずだけど。

 

「あー、別に大したことないんだけど……その、あたしも藍も、この島の診療所って苦手なのよね」

 

「え、そうなのか」

 

 先生が合わないとか、そういうのだろうか。

 

「お医者さんも看護師さんも皆いい人なんだけど……なんて言うの、妙に不安になるっていうか」

 

 よくわからないけど、そういうこともあるのかもしれない。

 

「それでわざわざ本土の病院に行ってるわけか」

 

「そーいうこと。念を押しとくけど、大したことないから。心配しなくていいわよ。お昼には戻ってくるだろうし」

 

 実の妹が大丈夫って言ってるんだから、大丈夫なんだろう。余計な心配はしないでおこう。

 

 

「そいえば、皆さんにお知らせがあります!」

 

 その時、紬が思い出したように大きな声を出す。

 

「紬、どうしたの?」

 

「今朝確認をしたら、灯台のパリングルスがしっかり乾いていました!」

 

「おお、そうなんだ。良かったね」

 

「はい!」

 

 灯台のパリングルスと言うのは、一週間ほど前に漂着した大量のパリングルスのことだ。

 

 確か、完全に乾いたら皆で工作に使うって話になっていたはずだ。

 

「それでですね。今日、パリングルス工作大会を開催したいと思います!」

 

「お、ようやくやるのか。待ちに待ったぜー」

 

「ああ、アイデアを練りに練っていたからな」

 

 一番喜んでいたのは良一と天善だった。男子って工作が好きなものだけど、腕に覚えがあるんだろうか。

 

「そういえば紬。何日か前に通り雨があったけど、パリングルスは大丈夫だったの?」

 

「はい! 夜露に濡れないように、毎日夕方にはブルーシートをかぶせていましたので!」

 

 ……毎日やってたのか。すごい努力だ。

 

「それじゃ、10時くらいに灯台でいいのかな?」

 

「そですね。それくらいなら大丈夫と思います!」

 

「道具は私や天善が持って行こう」

 

 そう言ってくれたのはのみき。いつも助かる。

 

 

 

「お前らー! 今日もラジオ体操を始めるぞー!」

 

 その時、ラジオ体操大好きさんがやってきて、ラジオ体操が始まる。今日も頑張ろう。

 

「第一の体操! 耳介筋の鍛錬!」

 

「ピクピク、ピクピク」

 

「えええ!?」

 

 唐突に夏海ちゃんの声がしたので振り返ると、ネコとウシの着ぐるみの耳が動いていた。見なかったことにしよう。

 

「よーし、今日のラジオ体操はここまで―!」

 

「ありがとうございましたー!」

 

 相変わらず、今日も奇妙なラジオ体操だった。

 

「さあ、スタンプはこっちだぞー」

 

 ラジオ体操終了後、今日の分のスタンプを押してもらい、ログインボーナスを受け取る。

 

 本日のログボとして手渡されたのはドーナッツだった。

 

「何故にドーナッツ……?」

 

「木戸のおばーちゃんの手作りドーナッツね」

 

 見慣れないログボに俺と夏海ちゃんが戸惑っていると、蒼が説明してくれた。

 

「あのおばーちゃんに、そんな特技があったのか」

 

 手作り感たっぷりの、油で揚げられた昔ながらのドーナツだ。粉砂糖がこれでもかとばかりに振りかけられていて、すごく美味しそうだ。

 

「最近あまり作らないんだけど、おいしーのよ」

 

「若い頃は神戸の老舗洋菓子店で修業したという噂だぞ」

 

 そう話すのは天善。にわかには信じられない話だけど、それだけ美味しいのだろう。

 

 木戸のおばーちゃんの特技に感心しながら、俺達は帰路についた。

 

「そうだ紬、ちょっといい?」

 

「なんでしょうか?」

 

「工作大会の時、しろはと鴎にも声をかけてね……しない?」

 

「……そですね!」

 

 石段を下っていると、背後で紬と蒼がなにやら話す声が聞こえたけど、上手く聞き取れなかった。

 

 

 

 

 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

 

 

 俺と夏海ちゃんはドーナッツを持って帰宅した。

 

 玄関に靴がないので、やっぱり鏡子さんは出かけてしまっているようだ。いつもどこに行ってるんだろう。

 

「それじゃ、朝ごはん作ってきますね」

 

「……ちょっと待って夏海ちゃん、当たり前のようにドーナッツを持って台所に向かわないで」

 

「ドーナッツチャーハン……」

 

 ……目がうつろだ。

 

「れ、冷静になろう。夏海ちゃん」

 

 夏海ちゃんの両肩を掴んで、左右にゆする。

 

「……はっ」

 

 よかった。帰ってきてくれたみたいだ。

 

「このログボじゃ、チャーハンが作れません。朝ごはん、どうしましょうか」

 

 ログボで毎日朝ごはん! だっけ……この様子だと、ログボで毎日チャーハン! にすり替わってる気がする。

 

「いや、そのままドーナッツを食べたらいいと思うんだけど」

 

「えー、そのままですかー」

 

 なんだろう、夏海ちゃんが珍しく不満を表に出している。

 

「そうだ、何日か前にログボでもらったスイカも冷蔵庫に入ってるし、このドーナッツとそのスイカで朝ごはんにしよう」

 

「……わかりました。チャーハンにできないもの同士。まとめて始末しちゃいましょう」

 

 しぶしぶ了承してくれたようだ。ちょっとものの言い方にトゲがあるけど。

 

「それでは、いただきます」

 

「いただきまーす」

 

 木戸のおばーちゃんの手作りドーナッツはどこか懐かしい素朴な味で、美味しかった。

 

 小玉スイカは上の方だけを包丁で切って、中身をスプーンですくいながら食べた。冷蔵庫で何日間も冷やされていたこともあって、朝から食べるのが勿体無いくらいキンキンに冷えていた。

 

 

 朝食後はいつものように、二人で宿題をした。

 

 夏海ちゃんが算数でわからないところがあるからと、いくつか教えた。台形の面積の求め方とか、懐かしいな。

 

 

 

「……鷹原、居るか?」

 

 ちょうど今日の宿題が終わった頃、玄関から声がした。

 

「あれ、天善?」

 

 誰かと思って玄関に出てみると、天善が来ていた。

 

「お前が来るなんて珍しいな」

 

「のみきに頼まれてな。これを持ってきた」

 

 見ると、天善は真新しい中華鍋を抱えていた。

 

「なんだそれ」

 

「昨日の肝試しの優勝賞品だ」

 

 あ、そういえば優勝賞品があるとか言ってたっけ。

 

 最後のお札のせいで、うやむやになってしまっていた。

 

「お前としろはに渡してくれとのことだ」

 

「俺達が貰って良いのか?」

 

「どのみち、お前達のペアに贈られるはずの品だったんだ。気にせず受け取ってくれ」

 

「ありがとう。しろはも喜ぶと思うよ」

 

 そういうことなら、遠慮なく受け取ることにしよう。しろはは新しい中華鍋を欲しがっていたし、今夜食堂に行ったときに渡そうかな。

 

「ところで鷹原、夏海はいるか?」

 

「え、いるけど……」

 

 天善が夏海ちゃんに用事? それも珍しいな。

 

「ちょっと待っててくれ」

 

 とりあえず、居間にいる夏海ちゃんを呼ぶ。

 

「あ、天善さん! おはようございます!」

 

「今朝、頼まれた品物が届いたぞ。なんとか間に合ったな」

 

「本当ですか? ありがとうございます!」

 

 夏海ちゃんは天善から小さな箱を受け取っていた。

 

「え、それ何?」

 

「秘密です!」

 

「秘密だ」

 

 二人から同時に秘密にされてしまった。

 

「後、これがあの曲の楽譜だそうだ。水織先輩に譜面に起こしてもらった」

 

「ありがとうございます!」

 

 その次に、小さな紙のようなものを受け取っていた。

 

「え、楽譜?」

 

「だから秘密です! 天善さん、ありがとうございました!」

 

 夏海ちゃんは天善にお礼を言うと、すぐに家の中に戻ってしまった。

 

 なんだろう、すごく気になる……。

 

 

 

 

 ……その後、夏海ちゃんは自分の部屋に籠ってしまった。

 

 ガサゴソ音がしているし、何やら作業してるみたいだ。

 

「私が作業してる間は、絶対に覗かないでくださいね!」

 

 と、どこかの昔話みたいな台詞で釘を刺されてしまったし、手伝うわけにもいかない。

 

 時計を見ると工作大会の始まる10時までは、まだ一時間以上ある。

 

「どうしよう、やることがない……」

 

「アーー、ワレワレハトオイホシカラヤッテキタ……」

 

 扇風機に向かって懐かしい遊びをしてみるけど、たいして時間は潰れない。

 

 いっそ、少し早めに灯台に乗り込もうかと思った時、ふと今日の出店のことを思い出した。

 

「そういえば、今日も何か出店が出てるのかな……」

 

 時間もあるし、見に行ってみよう。

 

「夏海ちゃん、ちょっと港に行ってくるから」

 

「はーい! 気をつけて行って来てくださーい!」

 

「10時前には戻るからね」

 

「わかりました!」

 

 ふすま越しにそう伝えると、俺は財布をポケットにねじ込み、港へ向かう。

 

 

 

 

 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

 

 

 港に行くと、いつも屋台が出ている場所に蒼が居た。

 

「あ、いらっしゃーい」

 

「蒼、今日は何を売ってるんだ?」

 

 確か、この前はかき氷だったはず。

 

 今日はかき氷器もテーブルセットも出ていないし、こじんまりとした感じだ。見た感じ品物らしいものも並んでいない。

 

「今日はこれよ」

 

 蒼はそう言いながら、足元のクーラーボックスから何かを取り出した。

 

 半分くらいに切られた割り箸の先に、透明な物体がついている。よく駄菓子屋に売ってる、あのお菓子だ。

 

「水あめかー」

 

「え、なんでそんなに残念そうなの?」

 

「食べても時間はつぶれないなーと思ってさ」

 

「え、そこ重要なの?」

 

「うん、今は重要なんだ」

 

「それなりに時間かけて食べれば、長持ちしそうな気もするけどねー」

 

 そういう蒼も微妙な顔だ。

 

「これいくら?」

 

「50円よ」

 

 出店価格としては安いけど、駄菓子屋価格としては高い。絶妙な値段だった。

 

「売れてるのか?」

 

「全然……」

 

 先日のかき氷に比べたら、インパクトが無さすぎるしな。

 

「この調子だと、早くに店じまいかしらねー。なるべく早く、紬の所に行きたいし」

 

「早く行かないと、作るの間に合わなくなるぞ」

 

「あ。あたしは元から作る気はないから」

 

「え、そうなのか」

 

「……手先が不器用なの、知ってるくせに」

 

「あー……」

 

 鴎のボトルシップを作った時、散々だったことを思い出した。

 

「紬たちと一緒に、審査員役するのよ。厳しく採点するからね」

 

「お、お手柔らかにお願いするよ」

 

「どーしよーかしらねー」

 

 あれ、蒼の笑顔が急に怖くなった。

 

「水あめ一つ買ってくれたら、採点が甘くなるかもしれないわねー」

 

「ひとつください」

 

「まいどありー」

 

 さすが商売上手だった。

 

「せっかくだし、おすすめの食べ方教えてあげる」

 

 クーラーボックスから水あめを一つ取り出して、俺に手渡してくれる。

 

「え、そんな食べ方あるのか?」

 

「まず包みをはがして、割り箸で白くなるまで練るのよ」

 

「よし」

 

 まず包みをはがして……あれ?

 

「なあ蒼、これ変に溶けちゃってて、うまく包みがはがれないんだけど」

 

「え? ちょっと貸してみて」

 

 俺は一度受け取った水あめを蒼に返す。

 

「おかしーわね。あったまると溶けちゃうから、ちゃんとクーラーボックスで冷やしておいたはずなんだけど」

 

 この暑さだし、クーラーボックスに入れていても温まってしまったのかもしれない。

 

 包みを外そうと試行錯誤しているが、どうもうまく外れない。

 

「あ、そこの麦茶はサービスだから、好きに飲んでいいわよ。水あめだけだと、喉乾くでしょ」

 

「おお、それじゃ遠慮なく」

 

 俺は置かれていたヤカンから麦茶を紙コップに注ぎ、一口飲む。キンキンに冷えてて美味しい。

 

「割り箸で巻き取って、うまく引っ張り出してみるわね……っと、割り箸が割れない……」

 

 蒼はその間も水あめと格闘してくれている。

 

「手伝おうか?」

 

「大丈夫よ。もうちょっと……びゃあああっ!?」

 

 蒼は力任せに割り箸を割ってしまったらしく、包みが破れて水あめが大量に蒼の顔に飛ぶ。

 

「んぷっ……わぷっ、顔がベトベト……」

 

 反射的に手で拭うと、既に溶けかけているのか、半透明の糸を引いてその……エロい。

 

「うわあああああああーーー!」

 

 俺は思わず、持っていた麦茶を放り投げた。

 

 ……蒼の顔に向けて。

 

「ひゃあああーーー!」

 

 

 

 

「……ねぇ、なんでこんなことしたの?」

 

 蒼は髪をほどいて、タオルで拭いている。

 

「顔にその……糸引いてたし、エロかったから」

 

「へー」

 

「とっさに洗い流してあげようと思って」

 

「……あんた、しろはと恋人同士なんだから、こういうこと慣れてるんじゃないの?」

 

 こういうことってどういうことだろう。とりあえず、慣れてはいない。

 

「うう、髪の毛が水あめでベタベタなんだけど」

 

「反省してます」

 

 俺はせめてもの誠意を示すため、地面に正座していた。

 

「……それにしても、髪ほどいてると本当に藍と見分けがつかないな」

 

「え? そりゃ、双子だしねー」

 

「声も似てるしな」

 

「羽依里さん、業腹です……みたいな?」

 

「めちゃくちゃ似てる。まさか藍なんてオチはないよな」

 

「……言っとくけど、そんなこと言っても誤魔化されないから」

 

「……はい」

 

 笑顔の恐さは藍以上だった。

 

「それでその、責任を取りたいんだ」

 

「責任?」

 

「お、俺にも麦茶をぶっかけてください……」

 

 そう言って頭を出す。

 

「へー、そう来る? そう来るのねー?」

 

 蒼は笑顔を崩さないまま、ヤカンから紙コップに麦茶をなみなみと注ぐ。

 

「いい心がけじゃない。覚悟は良い?」

 

「い、いつでも来い!」

 

「せーの!」

 

 

 ……そして、勢いよく頭上から降り注ぐ麦茶。

 

「ぎょおおおおお!」

 

 あまりの冷たさに、思わず叫び声をあげる。

 

 冷たい。キンキンに冷えてる分めちゃくちゃ冷たい。いや、もうくちゃくちゃだ。くちゃくちゃ冷たい。

 

「あっはははははっ!」

 

 蒼はお腹を抱えて笑っている。俺もずぶ濡れだし、これでおあいこだろう。

 

「あたしの気持ちがわかったか……へっくしゅん!」

 

 蒼は途中で一度くしゃみをして、ぶるっと身体を震わせた。

 

「あー……大丈夫か?」

 

「大丈夫大丈夫。ありがと……って、もとはと言えば、羽依里のせいでしょーーー!」

 

 ……まだ怒ってらっしゃる。

 

「そ、そういえば家に夏海ちゃんを待たせてたんだ! それじゃ!」

 

「逃げるなー!」

 

 

 

 

 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

 

 

 結局、俺は逃げる様に加藤家へ戻ってきた。

 

 玄関に近づくと中から声が聞こえた。

 

「……それじゃあな。羽依里と食べるといい」

 

「はい! こばとさん、ありがとうございます!」

 

 あれ、この声は。

 

 直後、玄関からぬうっと大柄な男性が姿を現した。しろはのじーさんだ。

 

「む、羽依里か」

 

 俺の姿を見つけると、なんだかばつの悪そうな顔をする。

 

「どこかに出かけていたのか」

 

「ええ。ちょっと港に」

 

「夏海に卵を渡しておいた。二人で食べるといい」

 

「え、卵ですか?」

 

「六代目キャサリンの卵だ。味は保証する」

 

「ありがとうございます」

 

 ところで、キャサリンってなんだろう。しかも六代目って。

 

 頭に浮かんだのは、子供の頃に友達の家でやった某配管工ゲームの敵キャラだった。卵っぽいもので攻撃してきたし。

 

 キャサリンの卵があるということは、某スーパードラゴンの卵とかあるのだろうか。

 

「……夏海は、チャーハンでしろはに挑戦するそうだな」

 

「えっ、そうなんですね」

 

 半分聴いてなかったけど、そんな話になってるの?

 

「せいぜい頑張ることだ」

 

 さっきとは打って変わって、どこか嬉しそうな顔をしながら、しろはのじーさんは去っていった。

 

 色々と気になることはあるけど、今は夏海ちゃんと灯台に行くことが先決だ。

 

「ただいまー」

 

 足早に玄関に入る。

 

「あ、おかえりなさ……ひゃあ!?」

 

 夏海ちゃんが出迎えてくれたけど、ぐっしょり濡れてる俺を見て、驚きの声をあげる。

 

「えーっと、なにがあったんですか?」

 

「うん、ちょっと麦茶をね」

 

「え、それ麦茶なんですか?」

 

「うん」

 

「……着替えます?」

 

「いや、戒めとしてこのままで行くよ」

 

「はぁ……鷹原さんが良いなら、それでいいですけど」

 

 最初は冷たかったTシャツも、炎天下の中を歩いて帰ってくると、汗を吸ったりぬるくなったりで気持ち悪い。

 

「そろそろ灯台に行こうと思うんだけど、夏海ちゃんの方は準備良いかな?」

 

「はい、バッチリですよ」

 

 夏海ちゃんは既にリュックを背負っている。中に色々と詰め込んでいるんだろう。

 

「なら、そろそろ出発しよう」

 

「はい!」

 

 ガレージからバイクを引っ張り出して、二人で灯台へと向かう。

 

 

 

 

 キラキラと輝く海と、大きな入道雲を横目に、バイクを飛ばす。

 

「そういえば夏海ちゃん、しろはのじーさんからもらった卵ってどうしたの!?」

 

「あ、キャサリンの卵ですか!? 明日のチャーハンに使おうと思って、冷蔵庫に入れてます!」

 

「あ、それならいいんだ!」

 

 バイクのエンジン音があるから、結構大きな声を出さないと後ろの夏海ちゃんと会話ができない。

 

「ところで、キャサリンって何!?」

 

「知らないです! もらった卵は、普通のニワトリの卵みたいでしたけど!」

 

 しろはの家にニワトリ小屋があるのは知ってるけど、あのじーさんがニワトリにそんな名前をつけるなんて思えないし。

 

 謎は深まる一方だった。

 

「ところで鷹原さん、あんまり飛ばさないでくださーい!」

 

「この島は車もほとんど通らないから、平気だよ!」

 

「いえその、振り落とされそうで!」

 

「しっかり背中に掴まってよ!?」

 

「え、いえ、その……まだ濡れてますし!」

 

 そうだった。こればかりは、バイクで走ってる間に乾いてくれることを願うしかない。

 

 俺は少し速度を落とし、灯台への道をひた走った。

 

 

 

 

 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

 

 

「お、鷹原も来たか」

 

「ちーっす」

 

 灯台に着くと、のみき、良一、天善、静久、鴎の姿があった。他の皆はもう少ししたら来るそうだ。

 

「道具はそこにあるものを好きに使ってくれて構わない」

 

 のみきが灯台のそばに置かれた大きな箱を指差す。

 

 箱の中にはハサミやカッター、のりや木工ボンドに加えて、のこぎりやハンマーまで入っている。かなり本格的だ。

 

「そういえば、主催者の紬はいないのか?」

 

「少ししたら来るそうよ。勝手に作っていて構わないらしいわ」

 

 そう言うのは静久。自前で持ってきたのだろうか。絵の具をパレットの上で混ぜ合わせていた。

 

「よーいどんで作り始めるのかと思ってたけど、結構自由なんだな」

 

「お昼から審査を始めるらしくて、それまでに作品を作っておいてほしいって」

 

「わかった」

 

 とりあえず、俺も夏海ちゃんも適当にはさみやカッターを借りて、パリングルスの空き箱を手に取る。

 

「夏海ちゃん、結局何を作るか決めた?」

 

「えっと……決めてますけど、内緒です!」

 

 夏海ちゃんは手に2つのパリングルスを持って、向こうの方へ行ってしまった。

 

 一人残されてしまったけど、実は未だに良いアイデアは浮かんでいなかった。

 

「……皆のを参考にしたいな」

 

 そう思い、他の様子を見て回ることにした。

 

 

 

 

 まず、石畳の一角に本格的な設計図を広げて、無数のパリングルスの空き容器と向き合っている天善に声をかけた。

 

「天善は何を作ってるんだ?」

 

「秘密だ。競争相手に手の内を知られたくないからな」

 

 天善の言うことはもっともだった。

 

 設計図から、何か大きめのテーブルのようなものだということだけが読み取れた。

 

「まぁ、天善だし。大体予想はつくけど……」

 

 邪魔をしても悪いので、別の場所へ行くことにする。

 

 

 

 

 次に、灯台の脇で作業をしていたのみきに声をかける。

 

「のみきは何を作ってるんだ?」

 

「秘密だ」

 

 やっぱり教えてくれない。

 

 見た感じ設計図のようなものはないけど、そこまでたくさんのパリングルスを使っているようにも見えない。

 

 そして、見慣れないスプレー缶が一つ置いてある。

 

「……防水スプレー?」

 

「こ、こら。見るんじゃない」

 

 隠されてしまった。

 

 どことなく気まずい雰囲気になってしまったので、俺は別の場所に行くことにした。

 

 

 

 

「良一は何を作ってるんだ?」

 

 天善とは遠く離れた石畳の上で設計図を広げている良一に声をかけた。

 

「何を作っているように見える?」

 

 なんだろう。細かい部品が一杯ある。歯車のようなものも見えるし、底の鉄の部分を寄せ集めたらしい塊もある。

 

「悪い、わからない」

 

「だろうな。秘密だ」

 

 予想通り、教えてはくれなかった。

 

 それにしても、良一も天善も本格的に設計図を用意しているし、俺とは気合いの入れようが違うようだった。

 

 俺がその場にいても邪魔になるだけなので、別の場所に移動することにした。

 

 

 

 

 灯台を挟んだのみきの反対側では、制作物を茂みに隠すように、静久が何かを作っていた。

 

「あら、パイリ君」

 

 例によって絵の具の乗ったパレットを手に持ち、いつの間にかベレー帽も被っていた。妙に似合っている。

 

 そして足元には大量のパリングルスの残骸が散らばり、結構な量を使っているのがわかる。

 

「静久は何を作ってるんだ?」

 

「女性にとって大切な物よ」

 

 なんだろう。パリングルスでブラジャーでも作ってるんだろうか。静久ならやりかねない。

 

 結局、作りかけの物体を見てもよくわからなかった。

 

「♪~♪~♪~♪~」

 

 鼻歌交じりでパレットに肌色の絵の具を落としている静久に謎の恐怖を感じ、俺は逃げるようにその場を離れた。

 

 

 

 

「よう、鴎」

 

 その次に、浜辺に近い場所で作業している鴎の近くに行ってみた。

 

「あー、スパイが来た!」

 

 妙な言い方をしないでほしい。確かに、未だに何を作るか決めてないけど。

 

 鴎はいくつものパリングルスを解体し、平たく伸ばしてからくっつけていた。設計図のようなものも見当たらないし、何を作っているのかさっぱりだった。

 

「何を作ってるんだ?」

 

「それはね……」

 

「教えてあげないよ! じゃん!」

 

 俺は鴎より先に言ってやる。

 

「むー、なんで先に言うの……」

 

 あれ、思った以上に落ち込んでいる。悪いことしたかな。

 

「設計図もなしに作ってるのか。ボトルシップの時のそうだったけど、さすが器用だな」

 

 だから、そう慰めておいた。

 

「でしょー。ところで、羽依里は何を作るの?」

 

 そして、純粋な疑問が返ってきた。

 

「こ、これから最後の仕上げに取り掛かるところだ。それじゃあな」

 

「うん。午後からの発表会、期待してるね!」

 

「あ、ああ」

 

 

 

 

 ……なんとか誤魔化し、道具の入った箱の所まで戻ってきた。

 

 一通り見て回ったけど、皆自分の作ってるものは教えてくれなかった。

 

 そして結局、自分が作りたいもののアイデアも浮かばなかった。

 

 なんだかんだ言って、一週間以上考えても浮かばないのだから、今更浮かぶはずもないよな。

 

 それでも何か作っておかないと示しがつかないので、その後はお昼まで集中してパリングルスの空き箱と向き合った。

 

 

 

 

「一応、できたけど……」

 

 12時を回った頃、俺の作品は完成した。気が付けば麦茶で湿っていたシャツも乾いていた。

 

 夏海ちゃんも完成したらしく、小さな箱のような工作を隠すように持っていた。

 

「夏海ちゃん、一度お昼ごはん食べに戻ろうか」

 

「はい!」

 

 一度帰宅しようとバイクにまたがった、その時。

 

「あれ、しろは?」

 

「紬さんに蒼さんも。どうしたんですか?」

 

 しろはと蒼、そして紬が大きな荷物を持って灯台にやってきた。

 

「お昼ご飯、作ってきたの」

 

「はい!」

 

 三人は三人とも、大きな重箱を抱えていた。

 

「皆でお昼にしましょ。どうせ羽依里達、帰ってもカップうどんなんでしょ?」

 

「はい! そうです!」

 

 夏海ちゃん、正直すぎ。

 

「あれ、しろしろたちもお弁当?」

 

 その様子を見た鴎は驚いた顔をしている。

 

「も?」

 

「実は、私も皆に食べてもらおうと思って、お弁当作ってきたの!」

 

 そう言うと、鴎は灯台の中に入って、重箱を持って出てきた。

 

「というか、あの灯台の扉って開いてたのか」

 

「はい! 今日はカモメさんに鍵をお渡しておきましたので!」

 

「中は涼しいから、お弁当を置いておくにはちょうど良かったんだよね」

 

 鴎が持っていた重箱に触らせてもらうと、ひんやりと冷たかった。

 

「皆さん、折角なので灯台の中でお昼ご飯にしましょう! どうぞ!」

 

 紬の提案で、灯台の中で昼食をとることになった。そういえば、この灯台の中に入るのは初めてな気がする。

 

 

 

 

 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

 

 

「おお、涼しい」

 

 灯台の中に足を踏み入れると、日差しが遮られているためか涼しい。

 

 フローリングの床が広がり、目の前には螺旋階段。右手側には窓があり、日の光が降り注いでいた。

 

 壁際には机があり、その横には木箱や段ボール箱が並べられている。

 

 箱の中には、昔灯台として使われていたころの書類のようなものから、紬が拾ってきたらしい漂着物と思われるものまで、色々なものが入っていた。

 

 そして、机の上に置かれたクマのぬいぐるみに目が留まる。

 

「紬、このぬいぐるみは?」

 

「クマのツムギちゃんです!」

 

 自分の名前を付けるなんて、余程気に入ってるんだろう。

 

 紬がぬいぐるみ集めが趣味なのは知っているけど、そのほとんどは入って左側の壁際に並べられている。

 

 一つだけ机の上に置かれたクマのぬいぐるみには、紬の特別な思いが感じ取れた。

 

「羽依里、ビニールシート敷くの手伝って」

 

「ああ」

 

 しろはの持ってきたビニールシートを広げて、その上に全員が持ってきたお弁当をそれぞれ並べる。

 

「……壮観だな」

 

 俺はしろはの隣に座りながら、思わず呟いていた。

 

 目の前にはしろはの重箱。一つ目の重箱にはおにぎりがぎっしり。二つ目の重箱には卵焼きに唐揚げ、ウインナー、ミニトマトにひじきの煮物と、定番のおかずがぎっしりだった。

 

 更に俺の左側には鴎の重箱、右側には蒼の重箱、そして一番奥に紬の重箱が所狭しと並べられていた。

 

 ここに居る皆で、これだけの量を食べきれるんだろうか。

 

「お、男の子もいるし、たくさんあるに越したことないよね!」

 

「そうそう。なっちゃんも、しっかり食べてね!」

 

「は、はい!」

 

 誰もが多すぎると思いつつ、誰も口に出さない。

 

「それでは皆さん、いただきましょう!」

 

「「いただきまーす」」

 

 紬の言葉を合図に、各々食べ始める。

 

 俺も鴎の持ってきていたウエットティッシュで手を拭いた後、まずはしろはの重箱からおにぎりを一つもらって、かぶりつく。

 

「おお、昆布だ」

 

 中には昆布が入っていた。塩気もちょうど良くて美味しい。

 

「具材は昆布と鮭。見た目は一緒だから、食べてからのお楽しみ」

 

 その時、紙皿を持ってのみきと良一がやってきた。

 

「しろは、唐揚げを一つ貰っていいか?」

 

「うん、どうぞ。二人とも唐揚げ好きだもんね」

 

 二人に便乗して、俺も唐揚げを一つもらう。揚げて時間が経ってるはずなのにべちゃっとして無くて、衣もサクサクだ。

 

「うん。美味しい」

 

「漬けダレと衣に秘密があるの」

 

 次に卵焼きも一つ食べてみた。砂糖がたっぷり入ってる甘い卵焼きだった。

 

 さすが食堂を経営してるだけあって、どの料理も絶品だ。

 

「しろはさん、私にも卵焼きください!」

 

「いいよ。後、これも美味しいから食べてみて」

 

「ありがとうございます!」

 

 夏海ちゃんがしろはから受け取った紙皿には、卵焼きの他に見慣れないおかずが乗せられていた。

 

「しろは、今のおかずなに?」

 

「山菜のおひたしだよ。昨日の日替わりメニューのやつ。余らせたらもったいないし。甘辛く味付けしてるから美味しいよ」

 

「それじゃ少し貰おうかな」

 

 山菜のおひたしに箸を伸ばす。なんていう山菜なのかわからないけど、シャキシャキして美味しかった。

 

「それじゃ、次は……」

 

「羽依里、せっかくだから他の皆のお弁当も食べてあげて」

 

 もう一つおにぎりを貰おうかと思っていると、しろはからそう言われた。確かに、他の皆のも食べてみたい。

 

「わかった。そうするよ」

 

 俺は紙皿を持って、鴎の隣へ行く。

 

「鴎、少し分けてくれるか?」

 

 そう言ってから後悔した。

 

 鴎の弁当は、皆に食べてもらうと言っていただけあって、重箱三つ分。もの凄い量だった。

 

「うん。たくさん食べて!」

 

 そう言いながら紙皿にわかめおにぎりとウインナー、鶏のトマト煮、そしてミニハンバーグを分けてくれた。このハンバーグも手作りみたいだ。

 

「上にチーズ乗っけてあるの。チーズ美味しいよね!」

 

 確かに美味しい。ハンバーグも肉汁たっぷりだ。

 

「このウインナーも形が変わってるな」

 

 しろはのにもウインナーは入っていたけど、ポピュラーなたこさんウインナーだった。

 

「ひまわりだよ!」

 

 言われてみるとヒマワリの形をしていた。本当に手先が器用だな。

 

「この鶏のトマト煮が一番の自信作だよー」

 

 そう言いながら、美味しそうに鶏のトマト煮を自分の口に運んでいる。

 

「ぐわあ」

 

「おのれ鴎、同族のくせにこの仕打ち」

 

「ぐわあ」

 

 せっかくなので、鶏の気持ちを代弁してみる。

 

「やめてくれますか」

 

「ごめん、つい」

 

「鴎、あたしたちもポテトサラダもらっていい?」

 

「もちろん!」

 

 ちょうど静久と蒼がポテトサラダを貰いに来た。

 

「羽依里ももっと食べていいよ」

 

 俺もポテトサラダにウズラの卵のフライと、おかずを一通り味見させてもらう。どれも美味しかった。美味しいんだけど、量が多すぎていくら食べても減ってる気がしなかった。

 

「ところで鴎」

 

「え?」

 

「洋食ばっかりの中で、このきんぴらごぼうがすごく浮いてるんだけど」

 

「野菜摂れるし、いいじゃない」

 

 どさどさと紙皿にきんぴらごぼうが盛られる。

 

「……まあ、うまいけどさ」

 

「あ、ゆでたまごもあるの!」

 

 きんぴらごぼうの次は、大量のゆで卵が入った袋を出してきた。

 

「ちゃんとアジシオもあるよ? 食べる?」

 

「あー、いや……」

 

 ゆで卵を渡されそうになったけど、丁重に断った。そろそろお腹のことも考えないといけない頃合いだし。他の二人の弁当も味見させてもらわないといけない。

 

 

 

 俺は再び紙皿を持って移動し、今度は蒼の隣に行く。

 

「蒼―、お前の弁当も少し貰っていいか?」

 

「いいわよ。たくさん食べてー」

 

 そう言って蒼が差し出した重箱には、いなりずしとおはぎが入っていた。

 

「おおイナリ、今日は姿を見ないと思ったら、こんな姿に」

 

「ちょっと、やめてよね」

 

 いなりずしを一つ摘み、口に運ぶ。甘辛く煮たお揚げが酢飯とマッチして、最高だった。

 

「うん。うまい」

 

 次におはぎも一つ貰う。これも甘すぎず、食べやすかった。

 

 続いて、おかずの入った重箱に箸を伸ばす。カボチャの煮物に切り干し大根、卵焼き等の和風のおかずが並ぶ中、気になるものを見つけた。

 

「これ、ぬか漬け?」

 

「そうよ。駄菓子屋のおばーちゃんのぬか漬けなの。おいしーんだから」

 

「どれどれ」

 

 一口食べてみる。何とも言えない旨味が口の中に広がった。

 

「うまいな」

 

「でしょー。200年もののぬか床よ」

 

「マジか……」

 

 200年の歴史に思いを馳せながら、続いて卵焼きを食べてみる。しろはの甘い卵焼きと違って、だし巻き卵だった。

 

「おいしい」

 

「でしょー。その出汁巻き卵は自信作なのよ」

 

 嬉しそうに話してくれる。本当に自信があるんだろう。

 

「あれ? これってミートボール?」

 

「つくねよ」

 

「きつね?」

 

「つくね!」

 

 鶏肉の旨味と軟骨の歯ごたえが絶妙で、これもうまい。

 

「あ、デザートにリンゴもあるわよ」

 

 ビニール袋に入ったリンゴが出てきた。

 

「リンゴも塩水につけてれば色が悪くならないし」

 

 リンゴもウサギの形に丁寧にカットしてある。手先が不器用って、嘘なんじゃないのか。

 

「一通り食べてみて思ったけど、蒼の弁当は見事に和食尽くしだな」

 

「こういうおかずの方が、作り置きがきくから」

 

「これだけの量、一人で作ったのか?」

 

「ラジオ体操の後に準備しておいて、出店の後にちゃちゃっと詰めただけよ。昨日からの余りも……じゃない。作り置きもあったし」

 

 蒼は簡単に言ってるけど、時間がない中でうまくやりくりしてお弁当を用意してくれたようだ。まるで主婦だな。

 

「蒼は良いお嫁さんになれそうだな」

 

「へっ?」

 

 言ってから、しまったと思ったけど、もう遅い。

 

「そ、それってひょっとして……いやでもあんたにはしろはがいるし、そんなの……」

 

「おーい。帰ってこーい」

 

 マッハでピンクになってしまった。普段なら藍がいるからストップがかかるんだけど。

 

 顔を赤くしながら両手で頬を覆って、煩悩を吐き出し始めてしまったので、俺はこっそりとその場を離れた。

 

 

 

 最後に紬と静久のそばに行く。

 

「あ、タカハラさん! いらっしゃいませ!」

 

 待ってましたと言わんばかりに、重箱を差し出される。

 

 中には色とりどりの具材が挟まれたコッペパンが入っていた。それでも半分近くに減っている。

 

 見ると、少し離れたところで口の中に大量のコッペパンを詰め込んで気絶している天善が見えた。静久に良い所を見せようと、相当無理をしたに違いない。

 

「えーっと」

 

 正直、そろそろお腹が限界だ。食べるものは厳選したい。

 

 重箱の中を見ると、卵が挟まれた卵サンド、焼きそばが挟まれた焼きそばパン、ジャムが挟まれたジャムサンド……定番と呼ばれるものの中に、見慣れないものがあった。

 

「紬、これ何?」

 

「タコサンドです!」

 

 良く見ると、コッペパンに茹でたタコの足が一本挟まれていた。見た目はホットドッグみたいだ。

 

「どうぞ! 食べてください!」

 

 凄い笑顔でタコサンドを差し出してくる。これは無下に断ることはできなさそうだ。

 

「そ、それじゃいただくよ」

 

「はい!」

 

 意を決して一口かぶりつく。コッペパンは柔らかくて食べやすかったけど、具のタコが噛み切れない。めっちゃ歯ごたえがある。

 

 そしてタコはほとんど味がしなかった。

 

「ねぇ紬、このタコって味付けは……?」

 

「はい! タコそのもののおいしさを楽しんでいただくため、特に味付けはしていません!」

 

「そ、そうなんだ……うん。大海原の味がして、美味しいよ」

 

「そですか。良かったです!」

 

 

「……なぁ鴎、さっきのアジシオ貸してくれ」

 

 俺は紬に気づかれない様に、こっそりと鴎からアジシオを借りた。

 

「後、デザートにコットンサンドもありますので!」

 

「え、コットンサンド?」

 

「これです!」

 

 紬から差し出されたコッペパンには、ワタアメが挟まれていた。コットン=綿という意味だろうか。ワタアメは英語でコットンキャンディーというらしいし。

 

「じゃあ、一口分だけもらえるかな」

 

「はい!」

 

 紬にちぎってもらって、一口だけ食べてみた。コットンサンドという名のワタアメサンドはひたすらに甘かった。

 

 

 

 その後も、皆でわいわいと賑やかなランチタイムを楽しんだ。

 

 

 

 

 昼食を終え、工作の発表会が始まる。

 

「蒼ちゃんのお弁当、食べたかったです……」

 

 がっくりと肩を落としているのは、先程合流した藍。お昼の便で島に帰ってきたらしい。

 

「いいじゃねーか藍、本土でジャイフルに行ってきたんだろ?」

 

 良一は羨ましそうに話している。ちなみにジャイフルというのは、この地方を中心に展開しているファミレスチェーン店だ。

 

「ジャイフルなんかより、蒼ちゃんのお弁当の方がはるかに魅力的です」

 

 藍は心底残念そうだ。

 

「それより藍、お前体調悪かったんじゃ……?」

 

「大丈夫です。注射一本で治りましたから」

 

「そ、それならいいけど」

 

 見た感じは大丈夫そうだ。

 

「藍にはまた作ってあげるから! それより今は工作大会でしょ!」

 

「……そうでしたね。それでは、私が審査委員長を務めましょう」

 

「あ、そこは紬じゃないんだ」

 

「紬は灯台番長だから」

 

「はい!」

 

 もはや審査とはなんの関係もなくなってしまったけど、凄そうだった。

 

 結局、藍を含めたしろは、紬、蒼の4人が審査員を務めるようだ。

 

「審査員の皆さん、採点にはこれを使いましょう!」

 

 続いて紬が持ってきたのは、子供の頃に誰もが使ったことがあるお絵かきマシーン。

 

 めちゃくちゃ懐かしいけど、画面が半分欠けていたり、妙に汚れていたりと、明らかに漂着物だった。

 

「大丈夫です! 専用のペンもついてますので、採点に支障はありません!」

 

 ある意味、奇跡の漂着物だった。

 

「それでですね、そのお絵かきマシーンで……」

 

 その後も紬のルール説明が続いた。

 

 一人ずつ工作の発表を行い、発表が終わる度に四人の審査員が採点をして評価を行う。

 

 審査員の持ち点は一人10点。審査員が四人だから、最高で40点満点。一番評価が高かった人が優勝のようだ。

 

 ちなみに優勝賞品は、例の缶コーヒーが1ケースらしい。

 

 

 

「それでは一番手! カノーさん、よろしくお願いします!」

 

「ああ。よっと」

 

 最初に紬に指名された天善が、巨大な物体を持って皆の前に立つ。

 

「なんだそれ?」

 

「パリングルスの卓球台Version2だ!」

 

 Version2ってことは、Version1があったのだろうか。詳しく知りたくはないけど。

 

「カノーさん、この卓球台を作るとき、どのような点に頑張りましたか!?」

 

 早速審査員の紬から質問が飛ぶ。

 

「うす塩からサワークリームまで、綺麗にグラデーションさせた。これにより錯覚効果を引き起こし、相手のレシーブタイミングをずらす!」

 

「敢えて欠点を挙げるなら?」

 

「俺もレシーブタイミングがずれることだ!」

 

 蒼の質問に対し、天善は胸を張って答える。

 

 それってどーなの、みたいな意見が出て、審査員の間で話し合いが持たれている。

 

「せっかくですし、デモンストレーションしてもらいましょうか」

 

 そこで審査委員長の鶴の一声。

 

 え、デモンストレーションって何?

 

「わかった。誰か相手をしてくれ」

 

「ここは羽依里さんが良いんじゃないですか?」

 

「俺?」

 

 唐突に指名されてしまった。

 

「優勝できるかどうかは、鷹原のリアクションにかかっている。よろしく頼むぞ」

 

 突然そんな重大な役目を任されても。

 

 俺は渋々天善からラケットを受け取り、バリングルスの卓球台でラリーを始める。

 

「おおお!?」

 

 天善からのサーブを受けようとすると、光の反射のせいか高速で移動するピンポン玉が七色に見える。

 

 そして目の錯覚か、ピンポン玉の大きさが変化しているようにも思える。

 

「うわっ!?」

 

 更に表面が波打つようにボコボコしているせいか、ピンポン玉も普段ではありえないような動きをする。その動きについて行けず、返せなかった。

 

「天善、もう一度頼む」

 

「よし、行くぞ」

 

 その後も天善からのサーブを何度か受けるが、まったく返せない。

 

「イマイチわかりにくいわねー」

 

「羽依里さんが下手なだけかもしれませんし」

 

 審査員達からは、散々な言われようだった。

 

「それなら審査員を代表して、しろはがやってみないか?」

 

「え、私?」

 

「しろはは卓球上手いからな」

 

 しろはが返せなければ、この卓球台は本物というわけだ。何が本物なのかはよくわからないけど。

 

 俺はしろはにラケットを渡す。

 

「よし。いくぞ、しろは」

 

「う、うん」

 

 しろはがラケットを構えるのを確認して、天善がサーブを放つ。

 

「ほいっ」

 

 しろははそのサーブを普通に返した。

 

 そして変なカーブがかかって、ピンポン玉の軌道が90度変わった。

 

「ぬおおーーーっ!」

 

 天善が横っ飛びするけど、追いつけない。

 

「……すまないしろは、もう一度だ」

 

「い、いいけど」

 

「その前に、少し良いか」

 

 天善が腕につけていたサポーターを外す。

 

 サポーターが地面に落ちると、鈍い音と同時に砂ぼこりが舞った。

 

「な……まさか天善、そんな重たいものをつけて卓球を……!」

 

「フッ……こいつを外すのはいつ以来だろうか」

 

 天善が素振りをする。めちゃくちゃ早い。

 

「軽い……今なら空でも飛べそうだ」

 

 ……この間は砂に潜ってた気もするけど。

 

「天善の奴、まだあれをつけて卓球をしてたのか」

 

 良一が呆れた様子で話す。

 

「女の子との試合でこれを外したのは初めてだ。許してくれ」

 

「う、うん……別に、いいよ」

 

 なんとか平静を装っているけど、しろはも明らかに引いてる。

 

「行くぞ! サー!」

 

 天善が渾身のサーブを打つ。さっきとは速度が違う。

 

「ほいっ」

 

 しかし、それをしろはが返す。

 

 また変なカーブがかかる。今度はバックスピンがかかっていて、摩訶不思議な動きをする。

 

「ぬおおおーーーーっ!」

 

 天善が必死に食らいつくが、返せない。

 

「これって、しろしろが強いの? 卓球台が凄いの?」

 

「どっちだろうな」

 

「うーん……」

 

 下された評価は、しろはが4点、紬が10点、蒼が5点、藍が5点。合計24点だった。

 

 実際に卓球台でプレイしたしろはを中心に入念な話し合いがもたれ、このような評価になったらしい。

 

 

 

「次はノミキさんです!」

 

 紬に呼ばれ、のみきが作品を持って皆の前に出る。

 

 のみきの作品は、パッと見だとパリングルスそのままだ。

 

「私が作ったのは、パリングルスの水鉄砲だ」

 

 シャキっと筒の一部が引き抜かれた。どうやらそこから水を入れられるようだ。

 

「先端に小さな穴を開け、発射口をつけてある。小さな穴なので、相手には気づかれにくい」

 

 審査員に促されるまでもなく、作品の説明を始める。さすが場慣れしているようだった。

 

「一応小型のパリングルスに水を溜め、予備タンクにすることもできる。もちろん、全て防水スプレーで固めてあるので、水漏れを起こす心配はない」

 

 そういえばのみきは廃材で水鉄砲を自作するらしいし、これくらいの作品は朝飯前なのかもしれない。

 

「見た目は完全にパリングルスなので、隠密性も完璧。問題は耐久性くらいのものだな」

 

「では、さっそくデモンストレーションをしてもらいましょう。天善ちゃん、脱いでください」

 

「妙な言い方するんじゃねーよ! 撃たれるのがわかってて、誰が脱ぐか!」

 

 藍に指名された良一は断固拒否の構えだ。

 

「……よし、ここは俺に任せてくれ」

 

「まさか、羽依里が脱ぐの?」

 

 いや、脱がないから。しろは、変な目で見ないで。

 

「魔法の呪文がある」

 

 そう言うと俺は、大きく息を吸い込む。

 

「裸祭り! んんーーー!」

 

「パーーージ! んんんーー! パーーージ!」

 

 良一はものの見事に裸になった!

 

「し、しまったーーー!」

 

「えーっと、撃っていいのか?」

 

「はい。どうぞ」

 

 どうぞって、藍。冷静なのが逆に怖いんだけど。

 

「とりあえず良一、離れてくれ」

 

 のみきはパリングルス水鉄砲を構えながら、良一に提案する。

 

「へ?」

 

「……その場でもいいぞ? 痛いと思うがな」

 

「え、あの見た目でそんなに威力あるの?」

 

「問題は耐久性だと言ったろう」

 

「ダッシュ!」

 

 そのやりとりを見て、良一は一目散に駆けだした。

 

「……ファイア!」

 

 良一が十分に離れたところで、その背中に向けて強烈な水流が放たれた。

 

「ぎゃーーーー!」

 

 直後、良一の断末魔が聞こえた。

 

 藍が爆笑していた。どうやらツボに入ったらしい。

 

 その後、パリングルス水鉄砲に下された評価は、しろはが7点、紬が5点、蒼が7点、藍が10点。合計29点だった。

 

 

「いてててて」

 

 しばらくして戻ってきた良一の背中には、みみずばれができていた。夏海ちゃんが灯台にあったらしい救急箱から薬を出して、良一の背中に塗ってあげていた。

 

「紬ちゃん、次の審査に行きましょう」

 

 冷静な審査委員長怖い……。

 

「はい! 次はカモメさんです!」

 

「どうもー」

 

 ガラガラとスーツケースを引いて前に出てきた鴎だったが、手にしているスーツケースがいつもと違う。二回りくらい小さい。

 

「私が作ったのは、パリングルスのスーツケースです!」

 

「おおー」

 

 色々な種類のパリングルスが組み込まれていて、とてもカラフルなスーツケースだった。

 

「本当は海賊船を作りたかったんだけど、さすがに材料が足りなくて」

 

 海賊船って何だろう。ボトルシップクリエイターの血が騒いだんだろうか。

 

「どのような所を頑張りましたか!?」

 

「いくつものパリングルスを伸ばしては重ねて、できるだけ強度を増しました!」

 

 こんこん、とパリングルスのスーツケースを叩く。パリングルスらしからぬ音がしていた。

 

「他には、スムーズな移動を実現するために、パリングルスの鉄の部分をたくさん使って車輪を作りました!」

 

 前後にスーツケースを動かす。なるほど、石畳の上で軽やかに動いている。

 

「欠点を挙げるとすればどこです?」

 

 続いて藍が欠点を聞いてくる。どうやら紬は長所を、藍は欠点を聞いてくる審査スタイルのようだ。

 

「欠点は、上に乗れない事です!」

 

「え、それって欠点なの?」

 

 しろはが思わずツッコむ。さすがに人が乗れるほどの強度は実現できなかったみたいだ。

 

「普通は乗りませんからね」

 

 

 今回はデモンストレーションは十分と判断されたのか、すぐに評価が下された。

 

 しろはが5点、紬が7点、蒼が6点、藍が7点。合計25点だった。

 

 今の所、のみきの水鉄砲が29点で暫定首位だ。

 

 

 

「次はシズクです!」

 

「審査員の皆、よろしくね」

 

 静久が結構な大きさの作品を引っ張ってきた。覆い隠すように、ブルーシートがかかっている。

 

「さあ、見てちょうだい!」

 

 静久はそのブルーシートを一気にめくる。

 

「パリングルスでおっぱいを作ってみたわ!」

 

「うわぁ……」

 

 皆絶句していた。

 

 なんていうのだろう。色まで塗ってあって色々とリアルなんだけど。ところで、なんで3つ?

 

「……のみきちゃん、撃っていいですよ」

 

「ああ。強制撤去というやつだな。早速パリングルス水鉄砲の限界を引き出すことになりそうだ。ファイア!」

 

 いち早く我に返った藍が指示を出し、あっという間に撤去されてしまった。

 

「ぐすん。ひどいわ」

 

「すまない。子供もいるし、さすがに公序良俗に反する」

 

「あ、撤去したけど、一応評価は下すから」

 

 そう言って下された評価は、しろはが0点、紬が8点、蒼が8点、藍が0点。合計16点だった。

 

「0点ってのも分からなくもないけど、逆に紬と蒼はなんで点が高いんだ?」

 

「そりゃ、大きいおっぱいが好きだからだろう」

 

 天善が至って真面目に返してくれた。

 

 

 

「次はミタニさんです!」

 

「おう! 見て驚けよ!」

 

 そう言って良一が披露したのは……自転車だった。

 

「パリングルスで自転車を作ったんだ」

 

「え、マジで?」

 

「大マジだ」

 

 審査員を含めた皆も、思わず近づいてじっくりと観察してしまう。

 

 段ボールで自転車を作るという話は聞いたことがあるけど、これはこれですごい。

 

 ハンドルにフレーム、タイヤからサドルにペダル。全部がパリングルスだ。切り取ったり繋げたり、重ねたりして強度を増したんだろう。

 

「へー、上手いもんね」

 

「三谷さん、これ乗れるんですか?」

 

「当然だ。試験走行はまだだけどな」

 

 皆も興味津々だ。

 

「それでは、早速デモンストレーションをしていただきましょう!」

 

 そして、紬は灯台から見える下り坂を指差す。ただ単に純粋な気持ちで、下り坂の方がスピードが出ると思っての発言だろう。

 

「そ、そうだな……どうせなら、できるだけ小さい子が良いかな。夏海ちゃん、お願いでき」

 

「できるわけないでしょう。自分で乗ってください」

 

 審査員長の冷たい一声。

 

「そ、そうだよなー……よし。いくぜーー!」

 

 良一は腹をくくったのか、明らかに身丈が合っていない自転車に跨り、坂を下っていく。

 

 良一の体重もあってか、パリングルス自転車はぐんぐん加速。あれだけのスピードが出せる時点で、十分すごい。

 

「ところで良一、ブレーキついているのか!?」

 

「一応、底の部分を使ってブレーキを作ったことは作ったんだけどよ!」

 

 パリングルスの底の部分は鉄で、一番強度がある部分だ。そこをブレーキの部品に採用した良一のやり方は間違っていない。

 

「うおおおおーーー!」

 

 良一がブレーキを作動させる。

 

「すげぇ、火花が出てる」

 

「でも減速してないよ。逆に加速してるようにも見えない?」

 

 鴎も心配そうな表情だ。

 

「あ、ブレーキ取れた」

 

 先程まで火花を吹いていた部品が外れ、宙を舞っている。

 

 だいぶ距離が離れてしまったので、良一の声は聞こえないけど、めちゃくちゃ慌ててるのがわかる。

 

 ハンドルを急に切って蛇行運転してみたり、なんとかスピードを抑えようと頑張っているみたいだ。

 

「あ、ハンドルが折れた」

 

「……万事休すだな」

 

 直後、良一は盛大に転んだ。

 

 

「いてててて……」

 

 坂道を転がり落ちたため、良一はさっき以上に傷だらけになっていた。また夏海ちゃんが薬を塗ってあげていた。

 

「ごめん良一、面白すぎ!」

 

「お腹が痛いです。どうしてくれるんですか」

 

 その隣では、空門姉妹が大爆笑していた。どうやらツボったらしい。

 

「笑ってないで、ちゃんと評価してくれよ?」

 

「わ、わかってるわよ。ちゃんと身体を張ったんだし、評価はしてあげるから」

 

 良一の得点は、しろはが7点、紬が7点、蒼が10点、藍が10点。合計34点と高得点だった。

 

 デモンストレーションで自転車はバラバラになってしまったけど、その性能は十二分に見せられた感じだ。

 

 

 

「次はタカハラさんです!」

 

「よし、俺か」

 

 いよいよ俺の番だ。ここまできたら覚悟を決めるしかない。

 

「俺が作ったのは、パリングルスタンバリンだ!」

 

「おおー」

 

 ……紬以外の審査員の視線が一気に冷たくなったのは、きっと気のせいだろう。

 

「頑張った点はどこですか!?」

 

「底の鉄の部分を組み合わせて、結構いい音が鳴るようにできたはずだ!」

 

「それじゃ、欠点は?」

 

 蒼は半分笑いをこらえているようにも見える。まだ良一の自転車の余韻が残ってるのだと信じたい。

 

「手抜き感が半端ない」

 

 紬以外の審査員の視線が一層冷たくなった。

 

「それでは、デモンストレーションをどうぞ」

 

「え、デモンストレーション?」

 

「はい。どうぞ」

 

 藍にそう促されて、同時に視線が一気に集まる。

 

「……」

 

 受けたことないけど、圧迫面接ってこんな感じなんだろうか。

 

 ……ええい。ままよ!

 

 俺は色々な物を捨てる覚悟を決めた。

 

 

 

「しゃかしゃかへいっ!」

 

「筋肉いぇいいえーい!」

 

「しゃかしゃかへいっ!」

 

 俺はパリングルスタンバリンを全力で振りながら、踊りまくる。

 

 しゃんしゃん、と良い音がしている。我ながら上手くできてるとは思うんだけど。

 

「ボンバヘッ! それと便座カバー!」

 

「しゃかしゃかへいっ!」

 

「ひゃっほーう! 筋肉革命だ―――!」

 

 

 

 

「……ごめんなさい。もう許してください」

 

 俺は一分間ほど踊り続けた後、周りの空気に耐えきれなくなって全力で頭を下げた。

 

「反省しましたか?」

 

「反省しました」

 

「皆頑張ってるんだから、羽依里ももうちょっと頑張らないと」

 

「俺の歌や踊りのセンスより、パリングルスタンバリンが楽器としていかに素晴らしいかを評価してほしい」

 

「はいはい」

 

 最大限に取り繕ってみたが、軽く流されたみたいだ。

 

 そして下された評価は、しろはが2点、紬が8点、蒼が5点、藍が0点。合計15点で最下位だった。

 

 紬と蒼の採点が若干高かった。

 

 紬は純粋に採点してくれたんだろう。蒼は水あめ買った分、甘く採点してくれたのかな。ほかの二人は散々だったけど。

 

 

 

「最後はナツミさんです!」

 

「は、はい!」

 

 めちゃくちゃ緊張してる。俺があんな評価を受けた後だし、悪い想像しちゃってるんだろうか。

 

「わ、私が作ったのはこれです!」

 

 夏海ちゃんが取り出したのは、パリングルスで作られた小さな箱。

 

「むぎゅ?」

 

「えーっと……」

 

 審査員たちも、どう反応していいのか悩んでいる様子だ。

 

「そ、それでは、デモンストレーションをどうぞ!」

 

 紬が先を促すけど、デモンストレーションって言っても、あの箱で何をするんだろう。びっくり箱にでもなってるんだろうか。

 

「はい!」

 

 夏海ちゃんが箱のふたを開け、なにやら操作をする。

 

 ……しばらくすると、聞き覚えのある音色が聞こえてきた。

 

「……むぎゅ! これはあの歌です!」

 

 一番に気づいたのは紬だった。それを皮切りに、他の皆もなんの歌かわかった様子だった。

 

「これってあれだよな。島に伝わる童謡」

 

「そうですね。間違いないです」

 

「うん」

 

 島に住む皆なら誰でも知ってる、あの歌だった。

 

「その、この島の思い出になるものを作りたいと思いまして! パリングルスのオルゴールです!」

 

「夏海ちゃん、見せて見せて」

 

 皆でパリングルスオルゴールの周りに集まる。俺も一緒になって覗き込む。

 

 オルゴール本体はさすがにパリングルスではなく、組み立て式のキットのようだったけど、楽譜のカードは全部パリングルスで作られていた。

 

 カードには所々に穴が開いていて、手動のレバーを回す事でカードがシリンダーに巻き取られて、穴が開いてる部分をコーム(櫛歯)が通過すると音が鳴る仕組みのようだ。

 

「この曲の楽譜なんて、よくあったね」

 

「えっと、それは……」

 

「このハンドルを回すと音が鳴るのね。紬もやらせてもらったら?」

 

 夏海ちゃんの言葉を遮るように、静久もその輪の中に入ってくる。

 

「はい! ナツミさん、回してみていいですか?」

 

「え……はい、どうぞ!」

 

 紬が夏海ちゃんの手からオルゴールを受け取り、楽しそうにレバーを回しだす。

 

 すぐにオルゴールの旋律に紬と夏海ちゃんの鼻歌が交じり、やがて他の皆にも伝播していったのだった。

 

 

 

「それじゃ、評価を発表するわよー」

 

 ひとしきり皆で楽しんだ後、パリングルスオルゴールの評価が発表される。

 

「ナツミさん、カッキテキな発明でした!」

 

 紬は一番に10点満点を掲示。

 

「うんうん。夏海ちゃんがそのオルゴールを島の思い出として持って帰ってくれるなら、あたしたちも嬉しいわ」

 

 同じく蒼も10点満点。

 

「やっぱりこういうのが良いよね。羽依里にも見習ってほしい」

 

 しろはも10点満点で続く。

 

 ここまでで30点。最後の藍の評価で全てが決まる状況だ。

 

「……なんですか天善ちゃん。そんな泣きそうな顔で見つめても、私の評価は変わりませんよ」

 

 というわけで、藍も10点満点。満場一致で夏海ちゃんの優勝が決まった。

 

 

 

 

 表彰式の後、優勝賞品のブラックコーヒーは皆に配られていた。

 

 理由は二つ。

 

 一つは、缶が多すぎてバイクに積めず、数を減らさないと持って帰れないということ。

 

 もう一つは、夏海ちゃんがブラックコーヒーを飲めない事だった。

 

 頑張って飲みますと言っていたけど、一口飲んだらものすごく苦そうな顔をしていた。ちょっとかわいそうだった。

 

 この『ブラック黒田の缶コーヒー』は、他のブラックコーヒーに比べても苦い気がする。

 

 やっぱり、ブラック企業の缶コーヒーだからだろうか。

 

「……誰かお砂糖持ってないですか?」

 

「あいちゃんごめん。アジシオしかないよ」

 

「むぎゅ、ワタアメを使ったコットンサンドならあります!」

 

「少しください。さすがにきついです」

 

 夏海ちゃんだけじゃなく、どうやら藍もブラックコーヒーはダメみたいだ。

 

「ちくしょー、結局2位かよ!」

 

 昆虫採集大会に続いて、工作大会でも苦汁をなめた良一は、コーヒーをヤケ飲みしていた。後で胃を悪くしないといいけど……。

 

 

 

 

 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

 

 

 夕方には灯台から帰宅し、夏海ちゃんと一緒に洗濯物を取り込む。

 

 取り込んだ洗濯物を居間でたたみながら、夏海ちゃんと話をする。

 

「あ、やっぱり今朝天善が持ってきたのはオルゴールキットだったんだね」

 

「はい。隠すようなことしてごめんなさい」

 

「いいよいいよ。気にしないで」

 

 午前中部屋に籠ってたのは、それを組み立ててたのか。

 

「じゃあ、あの時受け取ってた楽譜ってのも」

 

「はい。静久さんに頼んで、この島の童謡を楽譜に起こしてもらったんです」

 

 そういえば、静久は楽譜が読めるって話を紬から聞いたような。

 

 午前中に下準備をしっかりやって、灯台ではパリングルスを使ってボックス部分の組み立てと、楽譜通りにパリングルスに穴を開けるだけ。凄く計画されていた。

 

「水あめ食べに行ってる場合じゃなかったな……」

 

「え、なんですか?」

 

「ううん。なんでもないよ」

 

 その後も、夏海ちゃんは身振り手振りを交えてパリングルスオルゴールの制作秘話を話してくれた。

 

 本当に楽しそうで、聞いているこっちも自然と笑顔になった。

 

 

 

 

 日が暮れた頃、しろは食堂へ向かう。

 

 今朝天善に渡された最新式中華鍋も、忘れずに持って行った。

 

「あ、いらっしゃい」

 

 扉をくぐると、早速笑顔のしろはが出迎えてくれる。

 

「しろは、これ」

 

 俺は早速中華鍋をしろはに渡す。

 

「え、どうしたのこれ」

 

「肝試しの優勝賞品だって。今朝天善が持ってきてくれたんだ」

 

「それじゃ、遠慮なく使わせてもらうね」

 

 しろはは中華鍋を受け取ると、棚の下にしまう。

 

「あれ、早速その中華鍋で何か作ってもらおうかと思ったんだけど」

 

「駄目だよ。新品の中華鍋って、空焼きしたり慣らし炒めをして、油を馴染ませないといけないの。いきなりは使えないんだよ」

 

「え、そうなのか」

 

「うん。そう」

 

 知らなかった……残念だ。

 

 夏海ちゃんも知らなかったような顔をしている。さすがしろはだ。

 

「それで、今日は何にする?」

 

 しろはからおしぼりを受け取って、夏海ちゃんと二人でメニュー表を覗き込む。

 

「ちーっす」

 

 その時、扉が開いて良一がやってきた。

 

「あれ、良一?」

 

「おう、二人とも」

 

 良一が俺の隣に座る。どことなく漁師らしい、潮の香りがした。

 

「良一お前、釣りでもしてたのか?」

 

「ああ、大したものは釣れなかったけどな」

 

 しろはからもらったおしぼりで手を拭きながら、満足そうな顔をしている。漁師って、たとえ大漁でも釣れてないって言うよな。

 

 というか、こいつはあの工作大会の後に釣りに行ってたのか? 元気な奴だな……。

 

「しろはー、エビフライ定食くれよー」

 

「うん。ちょっと待っててね」

 

 良一が料理を注文したタイミングで、俺と夏海ちゃんもかつ丼とコロッケ定食を注文した。

 

 料理を待つ間、隣の良一が話しかけてくる。

 

「なぁ羽依里、今度夜釣り行かないか」

 

「え、夜釣り?」

 

「ああ、磯から釣っても良いし、時間があれば夕方のうちにマリンジェットで穴場に連れて行ってやるぞ?」

 

「良一、マリンジェット運転できるのか?」

 

「ああ、できるほうがモテるんだろ?」

 

 モテるかどうかは知らないけど、かっこいいとは思う。

 

「あの、できたら私も行ってみたいです!」

 

 俺を挟んで良一の反対側にいた夏海ちゃんが、身を乗り出すようにして良一に話しかける。

 

「あー……悪いけど夏海ちゃんはさすがに無理だな。夜の海は本当に危ないからな」

 

 良一が真剣な顔で言う。めったに見せない表情だし、本当に危ないんだろう。

 

「そ、そうですか……」

 

「あー……夜の海は無理でも、マリンジェットに乗ってみたいなら、今度昼間に乗せてやるよ!」

 

「……はい! 楽しみにしてます!」

 

 夏海ちゃんが気落ちしてるのがわかったのだろう。良一が慰めてくれていた。さすが兄弟持ちは違うな……。

 

「……夜の海なんて危ないし、落ちたりしたら大変だよ。夏海ちゃんは行かなくて正解だと思う」

 

 途中から話を聞いていたしろはが、ため息混じりに言う。

 

「羽依里も行くなら、十分気をつけてね?」

 

「わ、わかってるよ」

 

 この島には長い事通い詰めてるけど、夜の海には基本一人では近づかないようにしている。夜の山とはまた違った、得体の知れない怖さがあるし。

 

「はい、おまちどうさま」

 

 その時、しろはが俺達の前に料理を提供してくれる。

 

 良一の前にエビフライ定食、夏海ちゃんの前にコロッケ定食、俺の前にかつ丼がそれぞれ置かれた。

 

「おお、今日もうまそうだ」

 

 今日のかつ丼は、トンカツの下に千切りキャベツが敷き詰められていた。更に色々な野菜となめこが入った味噌汁と、野菜サラダもついているので、すごく野菜が摂れる感じだ。

 

「それじゃ、いただきまーす」

 

 

 

 

 良一と一緒に、騒がしくも楽しい夕食を過ごした後、加藤家に帰宅する。

 

 入浴を済ませて居間に戻ると、鏡子さんと夏海ちゃんがテレビを見ていた。

 

『私は魔物を討つ者だから』

 

 ちょうどテレビドラマが始まったようだ。学校に出た魔物を退治する、女剣士の話だった。

 

 女剣士の親友が魔物の攻撃で大けがを負わされ、女剣士自身も大ピンチに陥ったところで次回予告になった。

 

「凄い迫力だったわね」

 

「面白かったですねー」

 

 鏡子さんと夏海ちゃんはご満悦だった。

 

「次も見ないとね」

 

「はい!」

 

 俺も思わず、食い入るように見てしまっていた。

 

 ……面白かったけど、後半は戦闘シーンばかりで内容はほとんど頭に残らなかった。

 

 ただ冒頭に主人公達が食べていた牛丼が、とても美味しそうだった。

 

 

 ドラマを観終わり、時計を見るとちょうどいい時間だったので、二人に挨拶をして部屋で休むことにした。

 

 布団を敷いて横になってしばらくすると、隣の部屋からはパリングルスオルゴールの音色が聞こえてきた。

 

「夏海ちゃんも部屋に戻ったのかな……」

 

 その音色に耳を傾けていると、いつの間にか眠ってしまっていた。

 

 

 

第十二話・完




第十二話・あとがき


おはこんばんちわ。トミー@サマポケです。

今回は紬のパリングルス工作大会がメインとなりました。

これは一度やってみたかったネタで、紬がベランダを作るなら、他の皆なら何を作るかと考えながらやりました。

前半は皆が工作している様子、昼食を挟んで、作品発表会と一応三部構成にしています。

お弁当大会もやってみたかったネタで、これもできるだけ個性を出そうと頑張りました。
しろは以外ほとんど料理の描写がないので、なかなかに大変でした。

結果は、夏海ちゃんの優勝となりましたが、純粋に工作としてみれば、間違いなく良一か天善の優勝だと思います。

パリングルス自転車とか夢がありすぎますよね。

ちなみに、今回もテキスト量が過去最高を更新しました。ついに25000文字超えです。長すぎてすみません(汗

そして余談になりますが、この小説では原作中にPocketルートを迎えるために犠牲にした世界(各ヒロインルートやアルカルート等)の影響が随所に現れているような描写をしています。
ラジオ体操の参加賞を皆が自然にログボと呼んでいたり、しろはがケツァコアトルの鳴き真似に嫌悪感を抱いたり、蒼や藍が診療所を毛嫌いしていたり。紬の歌が島の童謡として既に広まっているのもその一つです。


■今回の紛れ込みネタ

・もうくちゃくちゃだ。くちゃくちゃ冷たい!
リトバスより、鈴の台詞ですね。

・筋肉いぇいいえーい
リトバスより、真人の名言です。あまりにも有名ですよね。

・ボンバヘッ! それと便座カバー!
CLANNADより、春原の迷言です。ボンバヘッ、は時代遅れのヒップホップですね。それと便座カバー。

・筋肉革命だ!
これもリトバスより、真人の名言ですね。筋肉シリーズ多すぎですよね。

・『私は魔物を討つ者だから』のテレビドラマ
kanonの舞のシナリオそのままです。こんなテレビドラマがあったら、毎週欠かさず見てしまいそうですよね。はちみつくまさん。

以上になります。いくつお気づきになられたでしょうか。
感想など頂けましたら、泣いて喜びます。
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