Summer Pockets #2   作:トミー@サマポケ

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第十四話 8月7日

 

 

 

 

 

 

 

「鷹原さーん! 朝ですよー!」

 

 今日も夏海ちゃんの声で目が覚める。

 

「……夏海ちゃん、おはよう」

 

「おはようございます」

 

 夏海ちゃんの方は既に着替えていて、準備万端みたいだ。

 

「うーん」

 

「鷹原さん、どうしたんですか?」

 

「いや、今朝は普通に起こされたからさ。何か物足りなくて」

 

「はい?」

 

 昨日は鏡子さんに起こされたし、一昨日は俺が夏海ちゃんを起こしたし、その前は紬に起こされたし。

 

「平凡な朝に飽きてしまっているのかも。刺激を欲しているというか」

 

「……変なこと言ってないで、早く着替えてくださいねー」

 

 夏海ちゃんは笑顔のまま、廊下の方へ消えていった。

 

「……うん、起きようかな」

 

 布団をたたんで、服を着替える。洗面所で顔を洗って、身支度を済ませる。

 

 その後、居間に行ってみたけど、鏡子さんの姿はなかった。今日も出かけてるみたいだ。

 

 

 

「おまたせ。行こうか」

 

「はい!」

 

 夏海ちゃんと合流して、今日も一緒にラジオ体操へ向かう。

 

 今日は時間に余裕もあるので、ゆっくりと歩きながら神社を目指す。

 

 道沿いの塀に、新しいセミの抜け殻を見つけたり、夏を感じながら神社へと辿り着く。

 

 

 

 

 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

 

 

「おはよー」

 

「おはようございます」

 

「蒼さん、藍さん、おはようございます!」

 

 神社の境内には、いつものメンバーが揃っていた。

 

 それとなく覚悟はしていたけど、誰からも昨日の噂については言及されなかった。

 

 広まるのも早いけど沈静化するのも早いんだろうか。

 

「あれ? のみきは?」

 

 いつものメンバーが揃っていると思ったけど、よく見たらのみきの姿がなかった。

 

「今日は朝早くから寄合が入っているそうだ」

 

 そう教えてくれたのは天善。手にはラケットを持っていた。あれって壊れたんじゃなかったっけ。

 

「ああ、これはスペアだ」

 

 俺の視線に気がついたのか、天善がそう説明してくれる。

 

「天善のやつ、確か三本くらいはラケット持ってるからな」

 

「そうなのか」

 

 良一がそう説明してくれた。

 

 よくわからないけど、ラバーの種類とかグリップの握り具合とか、色々あるんだろうか。

 

「よーしお前ら! 今日もラジオ体操を始めるぞー!」

 

 そこにラジオ体操大好きさんがやってきて、今日もラジオ体操が始まる。

 

 

 

 

「第二の体操! 横隔膜の振動だ! うるぁぁぁぁーーー!」

 

「くけーーー! けぇーーー! けっけぇーーー! くぇぇっけぇーーー!」

 

「……羽依里、今のはなんだ?」

 

 隣の良一が引いてる。

 

 なんだろう。思いついた言葉を発したらそんな奇声が出てしまった。

 

「確か、ケツァルコアトルだったかな」

 

「なんだそりゃ」

 

 ……なんだっけ。オカルト本に載ってたんだったかな。

 

「まぁ、気にしないでくれ」

 

 

 

 

「さあ、スタンプはこっちだぞー」

 

 今日もラジオ体操が終わり、ログインボーナスを受け取る。

 

 今日のログボは、袋に入ったナスだった。

 

「って、普通のナスじゃないですよね?」

 

 夏海ちゃんに言われてよく見ると、やけにシワシワだった。そして袋越しに変わった匂いがする。

 

「これ、駄菓子屋のおばーちゃんのぬか漬けね」

 

 蒼がそう説明してくれた。

 

「この間、灯台で蒼の弁当に入ってた奴だな」

 

「そうよ。美味しかったでしょ?」

 

「ああ、朝ごはんが楽しみだ」

 

 帰ったらごはんと一緒に食べようと楽しみにしながら、神社を後にした。

 

 

 

 

 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

 

 

 夏海ちゃんと二人で加藤家に帰宅した。まだ鏡子さんは帰って来てないみたいだ。

 

「それじゃあ、朝ごはん作ってきますね」

 

「うん。お願いするね」

 

 至って自然に、ナスのぬか漬けを夏海ちゃんに渡す。夏海ちゃんは笑顔で台所へ向かっていく。

 

「……ちょっと待って夏海ちゃん。今日の朝ごはんって?」

 

「え、ナスチャーハンですけど?」

 

 エプロンをつけながら、さも当然、と言った顔をしている。

 

「ちょっと待って夏海ちゃん。そのナス、ぬか漬けだよ?」

 

「それがどうかしたんですか?」

 

 なに言ってるのこの人。みたいな視線を向けられた。あれ? 俺の感覚がおかしいのかな。

 

「いや、チャーハンにナスのぬか漬けは合わないと思うんだけど……」

 

 上手くすれば味に深みが出るのかもしれないけど、塩辛くなるイメージが先行する。

 

「鷹原さんはチャーハンの可能性を信じてないんですか!?」

 

「信じてるけど、ぬか漬けはそのまま食べようよ……」

 

 その後、何がなんでもナスチャーハンを作らんとする夏海ちゃんを必死に止めた。夏海ちゃんのチャーハンに対する、この情熱はなんだろう。

 

 どうしても引き下がってくれなくて、30分以上の激論の末、冷蔵庫にたくさんあったキャサリンの卵を使って卵チャーハンを作ってもらうことにして、ぬか漬けはぬか漬けで別に食べるということで落ち着いた。

 

 

「はぁ、朝から疲れた……」

 

「おまたせしましたー」

 

 俺がナスのぬか漬けを切って、味噌汁と一緒に居間のテーブルに並べる。そこに笑顔の夏海ちゃんが卵チャーハンを持ってやってきた。

 

「おお、美味しそうだね」

 

「はい! 良い感じにパラパラな、黄金チャーハンにできました!」

 

「それじゃ、いただいていいかな」

 

「はい、食べましょう!」

 

 スプーンを手に取って、黄金色のチャーハンを口に運ぶ。

 

「うん、美味しい」

 

 チャーハンはパラパラで美味しかった。具材は本当に卵だけみたいだ。

 

 そして時々、ぬか漬けを口に運ぶ。きゅっきゅっと良い音がする。これも美味しい。

 

「美味しいですねぇ」

 

 夏海ちゃんも機嫌が直ったのか、ニコニコ顔でぬか漬けを食べていた。

 

 きゅっきゅっ。ナスを噛む。良い音がしていた。

 

 

 

 

 朝ごはんの後、いつものように宿題をする。

 

 それが終わってしまうと、暇になる。

 

「また出店にでも行ってみようかな……」

 

 そう考えていると、昨日の夜釣りで釣った魚が冷蔵庫に入っていたのを思い出した。

 

「そうだ、冷蔵庫に入ってる魚、しろはに届けてあげようかな」

 

 うちの冷蔵庫に入ってても、どうにもならないし。

 

「あれ、その魚、どうするんですか?」

 

 冷蔵庫からビニール袋に入った魚を引っ張り出していると、夏海ちゃんから声をかけられた。

 

「しろはに持って行ってあげようと思って」

 

「食堂に行くんですか?」

 

「いや、午前中はたぶん家にいると思う」

 

「しろはさんの家って少し山を登ったところにある、あの家ですよね?」

 

「あれ、夏海ちゃんってしろはの家に行ったことあったっけ?」

 

「はい。しろはさんと出店をした時に、ペケモンの着ぐるみを一緒に持って行きました」

 

「あ、そっか」

 

 そういえばそうだった。あの時、海鮮野菜炒めをお土産にもらって帰ってきたっけ。

 

「せっかくだし、一緒に行く?」

 

「はい! 行きます!」

 

 ビニール袋に小分けされた魚は、結構かさばってしまっていたので、二人で持っていくことにした。

 

 

 

 その道中、夏海ちゃんが話してくれる。

 

「しろはさんって、あの家にこばとさんと二人で住んでるんですよね」

 

「こばとさん?」

 

「しろはさんのおじーさんです」

 

 あ、そっか。普段名前で呼ぶことなんてないから、うっかり忘れていた。

 

「そういえば、しろはの両親のことなんだけど……」

 

 楽しい話じゃないけど、一応話しておかないと。

 

「あ、しろはさんから聞いてます。大丈夫ですよ」

 

「あれ、聞いてるの?」

 

「はい、ペケモンの着ぐるみを持って行ったときに教えてもらいました」

 

「そうだったんだ。それなら良いけど」

 

 

 

 知ってるんなら、必要以上に話す必要もないよな。

 

 しろはだって、自分のいないところであまり触れて欲しくない話題だろうし。

 

 山道を少し登った先に、大きな家がある。そこがしろはの家だった。

 

「しろはー」

 

 玄関を少し開けて、名前を呼ぶ。

 

「はーい」

 

 家の奥から声が返ってきて、少し間を置いてしろはが顔を覗かせる。

 

「あれ、二人ともどうしたの?」

 

「昨日、良一と夜釣りに行っててさ」

 

「はい! 魚のおすそわけです!」

 

 二人して、両手に持ったビニール袋をしろはに差し出す。

 

「わあ、ありがとう」

 

 しろはは笑顔で受け取ってくれた。

 

「せっかくだし、上がっていく? お茶でも出すよ」

 

「それじゃ、お邪魔しようかな」

 

「しろはさん、お邪魔します」

 

 しろはに招かれて、家に入らせてもらう。

 

「羽依里、魚を冷蔵庫にしまってくるから、夏海ちゃんを居間に案内してあげて」

 

「わかった」

 

 両手いっぱいにビニール袋を持って、しろはが台所の方へ向かう。

 

「持とうか?」

 

「ううん、大丈夫」

 

 笑顔で断られてしまった。

 

「それじゃ夏海ちゃん、居間に案内するよ」

 

「はい!」

 

 しろはの背中を見送った後、夏海ちゃんを居間へと案内する。勝手知ったる他人の家だ。

 

「夏海ちゃん、この家の中に入ったのは初めてなんだね」

 

「はい。この前は玄関先で待っていたので」

 

 玄関から入って、長い廊下を進む。左手側にはガラス戸が続き、その向こうに広い庭が見えている。

 

 その廊下の途中、ふすまの前で立ち止まる。

 

「ここが居間だよ」

 

 引き手に手をかけ、ふすまを開ける。

 

「やー」

 

 鴎が座卓について、お茶を飲んでいた。俺たちに気づいて、笑顔で右手をあげる。

 

 ……俺はふすまを閉めた。

 

「えー、ちょっとちょっとー!」

 

 ふすまの向こうで、鴎が抗議の声をあげていた。

 

「家を間違えたかと思って」

 

「そんなわけないでしょー」

 

 再びふすまを開け、居間に足を踏み入れる。

 

 念のために部屋を見渡す。畳の敷かれた和室。壁には立派な掛け軸がかけられ、部屋の真ん中には大きめの座卓が一つ。見慣れた鳴瀬家の居間だった。

 

「それで、鴎はなんでここにいるんだ?」

 

 夏海ちゃんと隣り合わせに、居間の出口に近いところに腰を下ろす。

 

「昨日一晩泊めてもらって、朝ごはんをごちそうになったの!」

 

 見ると、鴎の前には食器が重ねて置いてあった。

 

「え、しろはは食堂だけじゃなく、旅館まで始めたのか?」

 

「そんなんじゃないよ。昨日はたまたま!」

 

 鴎はのみきと同じアパートに住んでるはずだけど、今朝はどうしたんだろう。

 

「鴎、部屋の鍵を落としちゃったんだって」

 

「しろしろ、言わないでー!」

 

 しろはがお茶とお茶菓子の乗ったお盆を持って、居間に入ってきた。

 

「え、鴎さん、それ本当なんですか?」

 

「なっちゃん聞いてよ、それがね……」

 

 

 

 鴎の説明を要約すると、昨日の夕方に自宅に戻ると、スーツケースに入れて持ち歩いていたはずの部屋の鍵が無くなってたらしい。

 

 同じ部屋に住んでいるのみきは寄合に出かけてしまっていて、いつ帰るかわからない。結局誰にも相談できずに島をさまよい、食堂に晩ごはんを食べに行った時、しろはが助け舟を出してくれたらしい。

 

 

 

「なるほど、それで泊めてあげることになったのか」

 

「うん。その、あまりにかわいそうで」

 

 鴎の食器を片付けたしろはが戻ってきたので、四人で座卓を囲んで、お茶をすする。

 

「本当に助かったよー。地獄に仏って、こういうことを言うんだよね」

 

 鴎は、ばりぼりと海苔巻きせんべいをほおばっている。

 

「もみみふぁんふぁら、ふぁいふぁぎをふぉって……」

 

「……とりあえず、せんべいを飲み込んでから喋ろうな」

 

 鴎はずずーっ、とお茶をすすって一息つく。

 

「のみきさんなら、合鍵を持ってるはずなんだけど」

 

「一応アパートのドアに、うちに泊まってることを知らせる張り紙はしてきたんだよね?」

 

「うん」

 

「それで、のみきから連絡はあったのか?」

 

「ううん。ないよ」

 

 まさか、昨日の寄合から一度も家に帰っていないってことは無いだろうけど。

 

「私の方からも、朝一番にのみきの家に電話してみたんだけど」

 

「出なかったのか?」

 

「うん。朝早くから寄合に行ってるのかも」

 

 あれで、のみきも色々と忙しいもんな。

 

「あ、良かったら羊羹もどうぞ」

 

「わーい! 端っこが美味しいよね!」

 

 鴎のやつ、さっき朝ごはん食べたって言ってなかったっけ。よく食べるなぁ。

 

「そういえばしろは、今日はじーさんは?」

 

「おじーちゃんは朝早くに漁に出かけていったよ。夕方までは戻らないんじゃないかな」

 

「そうなんだ。キャサリンの卵のお礼を言いたかったんだけど」

 

「キャサリン?」

 

「いや、なんでもないよ」

 

「……そう」

 

 その後もしばらく談笑して、頃合いを見てお暇することにした。

 

「しろしろ、お世話になりました!」

 

 玄関先で鴎がしろはにお礼を言っている。俺と夏海ちゃんは少し離れたところで、その様子を見ていた。

 

「ん……?」

 

 その時、俺の視界の端に年季の入った小屋が見えた。例の鶏小屋だ。

 

 ……ああ、キャサリンってもしかして。

 

「なぁしろは、あの鶏小屋なんだけど」

 

「どうしたの?」

 

「キャサリンって鶏がいる?」

 

「どうかな。でも鶏小屋の鶏には、それぞれ名前がついていたはずだよ」

 

「そうなのか。ちょっと見てこよう」

 

「待って。今は行かない方が良いよ」

 

 鶏小屋の方に足を運ぼうとしたら、しろはに止められた。

 

「え、なんで?」

 

 この時期の鶏は殺気だって危ないとか、そういうのだろうか。

 

「鶏小屋のすぐ脇に、ハチの巣ができてるの」

 

「そうなのか?」

 

「アシナガバチだから、巣もそこまで大きくないけど、刺されたら危ないよ」

 

「……ちょっと、どんな感じか見てもいい?」

 

「良いけど、小屋に近づきすぎちゃダメだよ?」

 

「わかってる」

 

 

 

 四人で安全な場所から、ハチの巣の様子を見てみることにした。

 

「あ。あれか」

 

「そう。最近ハチが多いなとは思っていたんだけど」

 

 鶏小屋の外側、ちょうど家の方からだと死角になっている軒下に、小さいながらハチの巣が見えた。

 

 数は多くないけど、周囲をハチが何匹か飛んでる。

 

「危なくて、鶏小屋に近づけないの」

 

「でもしろはさん、一昨日こばとさんがたくさん卵を持ってきてくれたんですけど」

 

「おじーちゃんはハチとか気にしないから。たぶん蚊が飛んでるのと同じくらいにしか思ってないと思うよ」

 

「ええー……」

 

「あの人はなんというか、色々な意味で変わってるからな」

 

 あのじーさんがハチに刺されるのは構わないけど、しろはが刺されたりしたら大変だ。もし顔とか刺されたら、俺は刺したハチを絶対に許せそうにない。

 

「羽依里、なんとかしてあげて」

 

 鴎に言われなくても、なんとかしてやりたい。

 

 頭の中で戦略を考えてみる。殺虫剤を使って、ヒットアンドアウェイで数を減らしていくのが一番かもしれない。

 

「しろは、殺虫剤とかないのか」

 

「あるにはあるけど……」

 

 そう言ってしろはが持ってきてくれたのは、一般的なカンチョールだった。巣の大きさからして、これだとちょっと心許ないかもしれない。

 

 「うーん……これじゃ火力不足だなぁ」

 

「あの、役所に連絡して、駆除してもらったらいいんじゃないですか?」

 

 夏海ちゃんが真っ当な意見を述べる。

 

「役所に連絡はしてるから、そのうち来るとは思うけど」

 

 田舎の『そのうち』ほど当てにならないものはない。

 

「そうだ鴎、一晩の宿のお礼に、駆除してくれないか?」

 

「え、どうやって?」

 

「ほら、スーツケースのスーちゃんでがぶりとさ」

 

「うう……怖いけど、恩は返さないとね。いくよ、スーちゃん!」

 

「……羽依里、無理強いしないの」

 

 意を決してスーツケースを構えた鴎だったが、しろはによって止められた。

 

「のみきだったら遠距離攻撃が得意だから、すぐに駆除してくれそうだけどな」

 

「……得意だが、私が駆除できるのは巣だけだぞ。帰る家を無くしたハチ達はどうすると思う?」

 

「そりゃ、家を壊した俺達に全力で襲い掛かって……って、のみき?」

 

 いつの間にか、のみきが俺たちの背後に立っていた。

 

「まさか、もう駆除に来てくれたのか?」

 

「残念だが違うぞ。ようやく寄合が終わったから、鴎を迎えに来たんだ」

 

「ちょうどいい。のみき、鴎を迎えに来たついでに、ハチの巣をハチの巣にしてくれ!」

 

「ハチの巣は最初からハチの巣じゃないか?」

 

「後半のは比喩だ」

 

「さっきも言ったろう。巣を壊すだけでは駆除にならない。専門の業者を頼んであるから。もう少し待つんだ」

 

 確かに、巣を壊してハチたちが暴れ出したら元も子もない。下手なことをして、しろはや夏海ちゃんにも被害が及んだら最悪だ。

 

 

 結局俺達では手出しできず、駆除業者に頼るしかないようだ。俺達は無力だ。

 

「近づかなければ危なくないし、そこまで気にしてくれなくても大丈夫だよ」

 

 住民のしろはがそういうのなら、従うしかなかった。

 

「ところでのみき、昨日家に帰ってないとかないよな?」

 

 そして今更ながら、しろはの家に連絡がないまま、のみきが鴎を迎えに来たことに疑問に感じた。

 

「帰るには帰ったが、どうした?」

 

「鴎がアパートのドアに伝言残してたと思うんだけど」

 

「ああ……寄合が長引いて、アパートに帰り着いたのは深夜だったんだ。当然ドアの張り紙には気がついたが、その時間に連絡を入れるのはさすがに失礼だと思ってな」

 

 なるほど、そういうことだったのか。

 

「後、鴎が落としたという鍵はこれだろう。今朝、漁師が役所に届けてくれたぞ。港に落ちていたそうだ」

 

 のみきが小さな鍵を鴎に手渡す。

 

「おお、これだよ! のみきさん、ありがとう!」

 

「これからは気をつけるんだぞ」

 

「うん!」

 

 その後、鴎は再度しろはにお礼を言って、のみきと一緒に帰っていた。

 

 しろはもこの後用事があるということなので、俺と夏海ちゃんもお茶のお礼を言って、しろはの家を後にすることにした。

 

「夏海ちゃん、これからどうしようか」

 

 坂を下って住宅地まで戻ってきたところで、腕時計を見る。まだお昼まで時間があるみたいだった。

 

「今日の屋台、何か出てるんでしょうか」

 

「そうだね。気になるし、ちょっと港に行ってみようか」

 

「はい!」

 

 

 

 

 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

 

 

「なぁ。お前さん所の船が流されたって本当か?」

 

「ああ、使ってねぇボロ船だったけどな。ロープも切れちまってたし、修繕してなかった俺も悪いんだけどよ」

 

「そりゃ大損だな。エンジンや燃料も積んでたんだろ?」

 

「いや、エンジンは外してたし、古い投網を置いてただけだから、大して損してねぇよ」

 

 

 港に着くと、少し離れたところで数人の漁師が話をしているのが聞こえた。漁が終わってからの世間話をしているみたいだった。

 

 

 

 

「あれ、何だあの店……?」

 

 そして、いつも屋台が出ている場所を見ると、見慣れない店が出ていた。

 

「竜太サンド……?」

 

 頭上に掲げられた看板には『竜太サンド』と書かれていた。

 

 カツサンドみたいに、竜田揚げを挟んだパンなんだろうか。あまり聞いたことがない。

 

 妙に気になったので、夏海ちゃんと一緒に店の方に近づいてみる。

 

 近づくにつれて、なんだか音楽も聞こえてきた。音が小さくて良く聞き取れないけど、少し時代遅れのヒップホップみたいだ。

 

「あのー、すみません」

 

「……あん?」

 

 店員らしい男性に声をかけると、気怠そうな返事が返ってきた。

 

「あれ、もしかして客?」

 

 屋台の奥に座っていたのは、金髪のにーちゃんだった。どう見ても島の人間じゃない。本土からやってきたんだろうか。

 

「絶対美味しいからさ、食べてってよ」

 

 急に営業スマイルになった。すごい怪しい。

 

「夏海ちゃん、やっぱり帰ろう」

 

 見れば見るほど怪しい。奥の方に土偶みたいな置物も置いてあるし。

 

「え、どうしてですか?」

 

「見るからに怪しいし、この店」

 

「え、なんでさ? 今風のナウいお店だろ?」

 

 俺の声が聞こえたのか、金髪のにーちゃんがショックを受けている。

 

「いや、むしろ怪しい」

 

「え、マジ?」

 

「ああ、マジで怪しい」

 

 音楽とか流れてるし、店番は見慣れない金髪のにーちゃんだし、島の人間は近づかないと思う。

 

「むしろ、今すぐ役所に行って、通報してやろうかと思った」

 

「あんた鬼ッスね!」

 

 

 

 その後話をしてみると、一応役所の許可はもらっているそうだ。

 

 先の旅芸人よりは、きちんとした手順を踏んでいるらしい。見た目は怪しいけど。

 

「あの、おにーさんは何を売っているんですか?」

 

「え? ああ、これだよ」

 

 夏海ちゃんの質問に、金髪のにーちゃんは紙袋に入った食べ物を差し出してきた。

 

 パッと見、コッペパンの間に揚げ物が挟まれていた。

 

「えーっと、これが竜田サンドですか」

 

「へへっ、違うんだよね。良く見てみてよ。『たつた』じゃないんだ。『りゅうた』なんだ」

 

「え?」

 

 言われてから、頭上の看板をよく見てみると『竜太サンド』の文字の上に、小さく『りゅうた』とルビが振ってあった。

 

「じゃあ、『りゅうたサンド』なのか」

 

「そうそう。僕の通ってる光坂高校の、隠しメニューみたいなものなんだよね」

 

 聞いたことがないので、どこか遠くの高校なんだろう。それでも、隠しメニューと言われると気になる。

 

「夏海ちゃん、食べてみる?」

 

「はい、食べてみたいです!」

 

「サンキュー、一つ200円だよ」

 

「それじゃ、一つくれ」

 

 おかしいな。相手の方が年上だと思うんだけど、俺もいつの間にかタメ口になっていた。

 

「まいどー!」

 

 見た感じ結構ボリュームがあるので、一つ買って二人で分けることにした。時間的にもお昼前だし。

 

「それじゃ、いただくよ」

 

「おにーさん、いただきます」

 

 とりあえず一口かじってみる。

 

「……」

 

 なんだろう、今まで感じたことがないような食感。そして未知の味。

 

「……」

 

 目の前の夏海ちゃんも、何とも言えない顔をしている。

 

「どう? おいしい?」

 

 金髪のにーちゃんは、笑顔で感想を聞いてくる。なんでだろう。本でも投げつけてやろうかと思える笑顔だった。

 

「えーっと……」

 

「と、とっても美味しそうでしたっ!」

 

 俺が言い及んでいると、夏海ちゃんが笑顔でそう返した。

 

「へへっ、そりゃ良かった」

 

 あまり美味しくなかったんだろう。夏海ちゃん、うまく逃げたね。

 

 ……それにしても、さっきからやけに夏海ちゃんにばかり話しかけている。

 

「……夏海ちゃん離れて。やっぱり通報しよう」

 

 夏海ちゃんと金髪にーちゃんの間に割って入る。

 

「え、どうしたんですか?」

 

「だってその人、夏海ちゃんの方ばっかり見てるから」

 

 最近は子供を狙った犯罪も多いと聞くし。

 

 夏休みの間は一応夏海ちゃんの保護者を自負しているし、都会からの不埒なシティーボーイからは護ってあげないと。俺もシティーボーイだったけど。

 

「いや、僕にもその子と同じくらい妹がいるからさ、話しかけやすかっただけなんだけど……」

 

「え、そうなのか」

 

「そうだよ……これくらいで警察に通報とか、やめてくれよ……」

 

 な、泣いてる……。

 

 ちなみに、俺が通報するのは役所だ。最悪でも水鉄砲でメッタ撃ちにされて強制退去になるくらいだろう。

 

「おにーさん、気を落とさないでください! この竜太サンド、とってもおいしそうでしたよ!」

 

 泣いている金髪にーちゃんを見かねて、夏海ちゃんがフォローを入れている。

 

「そ、そう? 実は、デザート向けのデーモンクロワッサンもあるんだけど」

 

「……それはやめておきます」

 

 そっちは笑顔で断っていた。

 

 

 その後、夏海ちゃんと二人で竜太サンドを食べた。

 

 挟まれている具材は、とりあえず鶏肉じゃなかった。そもそもお肉じゃない感じがした。

 

 なんだろう。こんにゃくでもないし、練り物にしても妙な食感だった。

 

 油っ濃い……わけでもないんだけど、なんというか、妙にお腹にもたれる感じがした。

 

「それじゃおにーさん、頑張ってください!」

 

「うん、ありがとう!」

 

 正直、けっこう無理をして食べ終わり、俺と夏海ちゃんは港を後にした。

 

 

 

 

 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

 

 

「うう……お腹が気持ち悪いです」

 

 帰宅して開口一番、夏海ちゃんがそう言った。相当無理していたに違いない。

 

 俺も最後の方は胃に来ていたし。竜太だかなんだか知らないけど、次はご遠慮願いたい。

 

「時間的にお昼だけど、夏海ちゃん、食べれそう?」

 

「な、何かあっさりしたものなら……」

 

 居間に入るとすぐに、夏海ちゃんは座布団を持ってきて横になってしまった。かなりきつそうだ。

 

「あっさりしたものと言われても……」

 

 俺は台所を探す。水屋の中には、見渡す限りカップうどんしかなかった。俺もそこまで濃い味のは食べられそうにない。

 

「あ、これならいけるかも」

 

 見つけたのはカップのざるうどん。

 

 説明書きを見ると、お湯を注いで三分待ってから湯切りをして、更に水で締めた後。付属のめんつゆをつけて食べるみたいだ。

 

 油っぽさは微塵も感じられないし、今はこれが一番食べやすそうだ。

 

 ちょうど二つあるし、お昼はこれにしよう。

 

 早速お湯を入れて、二人分のざるうどんを作り始める。

 

 

 

「夏海ちゃん、できたよ」

 

 普段より少し手間はかかったけど、俺でも作る事ができた。

 

「ありがとうございます……」

 

 夏海ちゃんに声をかけると、ゆっくりと起き上がって、手を合わせてから食べ始める。

 

 顔色もあまり良くない。かなり無理して食べてくれてるみたいだ。

 

 あまり食欲はわかないけど、俺も食べよう。

 

 インスタントとは思えない、見事なコシだった。できれば胃の調子が良い時に食べたかった。

 

 

 

 

 昼食後、夏海ちゃんは再びダウンしてしまった。額には脂汗をかいてる。大丈夫かな。

 

「夏海ちゃん、大丈夫?」

 

「さっき、カッパのマークの正論丸を飲んだので、もう少し休めば大丈夫だと思います……」

 

 例の竜太サンド、食べた量は俺と同じだったと思うんだけど。夏海ちゃんの方が体が小さい分、影響が大きいんだろうか。まるで毒物だ。

 

 その後、俺も夏海ちゃんと一緒に一時間くらい横になっていたけど、どうも調子が戻らない。

 

 そして、腹ごなしに歩きたくなった。

 

「ごめん夏海ちゃん、ちょっと歩いて来ていいかな?」

 

「は、はい。いってらっしゃいです……」

 

 息も絶え絶えだ。できるだけ早くに帰ってこよう。

 

 

 

 

 家を出た後、一本道を通って港へ向かい、ぐるっと一周する。お腹は妙に重たいけど、歩いているだけでだいぶ気が紛れる。

 

 少し気になって探してみたけど、もう例の竜太サンドの屋台はなくなっていた。

 

「さすがに売れなかったのかな……」

 

 そんなことを考えながら、俺はきびすを返し、一本道の方へ戻る。

 

「……あれ?」

 

 お腹をさすりながら一本道を歩いていると、ひときわ大きな木の下で、蒼が寝ているのが見えた。今度は隣にイナリも寝ているし、蒼で間違いないだろう。

 

「おーい。蒼ー」

 

 道の方から話しかけてみるけど、無反応。熟睡しているみたいだ。

 

「相変わらず、大らかな島だなぁ……」

 

 でも、蒼はもうちょっと警戒心を持った方が良いかもしれない。顔はかわいいんだし。この道は観光客だって通るから、その……色々と危ないかもしれないし。

 

 一応隣にイナリもいるから、大丈夫なんだろうか。そのイナリも寝てるけど。

 

 起こすのも悪いから、そのまま通り過ぎようとして……ふと、とある考えが頭をよぎった。

 

 そういえば夏海ちゃんが、あの木の下は日陰になってて気持ちいいとか言ってたっけ。

 

 昨日は藍に近づかせてももらえなかった手前、すごく気になった。お腹の調子もあるし、一休みしたい気分だった。

 

「ちょ、ちょっと座ってみるだけ」

 

 俺は足音を立てない様に近づいて、寝てる蒼の横に腰を下ろす。

 

「あー、これはいい塩梅だな……」

 

 確かに涼しくて気持ちがいい。

 

 蝉の声もどこか遠くて、風で木々の葉がそよぐ音がサワサワと耳に心地良い。まるで別世界にいるみたいだ。

 

 蒼や藍が眠くなるのもわかる気がする。

 

「やばい、俺も眠くなってきた……」

 

 隣からは蒼とイナリの寝息が聞こえてくるし、俺も必然的に眠くなってくる……。

 

「ぅうーん……」

 

 ……意識が飛びかけたところで、隣の蒼がもぞもぞと動く気配がした。

 

「おっと、これはそろそろ逃げないと」

 

 そう思った瞬間、蒼が俺の膝の上に倒れ込んできた。

 

「おわっ」

 

 これはやばい。これは起きる。怒られる。

 

「すぅーーー。すぅーーー……」

 

「……あれ?」

 

 ……と思ったけど、起きない。寝てる。

 

「ちょっと待って。これってどういう状況?」

 

 もしかしなくても、膝枕ってやつじゃないだろうか。

 

 しかも、これじゃ動けない。

 

「イ、イナリー、助けてー」

 

 俺は近くのイナリに助けを求める。

 

「クゥ、クゥ……」

 

 そのイナリ、爆睡中。

 

 し、所詮は畜生か……。

 

「どうしよう……」

 

 蒼は俺の膝に頭を乗せて、気持ち良さそうに寝てるし。

 

 空は青いし。風は心地良いし。

 

 俺は全力で現実逃避していた。

 

「ん……?」

 

 その時、目の前の道を天善と良一が歩いているのが見えた。天の助けだ。

 

「おい二人とも、助けてくれ」

 

「「……!!」」

 

 俺が声をかけると、二人は驚いた表情のまま固まった。

 

「……まさか、二股か!?」

 

「違うんだ。わけありだ。助けてくれ」

 

「ほう。しろはという彼女が居ながら……チャレンジャーじゃないか」

 

「あばよ、ダチ公……」

 

 ……どうやら、俺の声は全く聞こえていないようだった。

 

「おい、違うんだ。話を……」

 

「耳をふさげ! 目を瞑れ! 俺達は何も見ちゃいない!」

 

「ああ、そうだとも!」

 

「ダッシュ!」

 

「サー!」

 

 あああああ。行かないでーーー!

 

 

 二人はあっという間に、どこかに走って行っていまった。

 

「う、うーん……?」

 

 しかも間の悪いことに、今の騒ぎで蒼が目を覚ましてしまった。万事休すだ。

 

 寝起きの蒼が顔を上げると、俺と目が合う。

 

「あれ、羽依里……?」

 

「おはよう」

 

 こうなったら腹をくくるしかない。とびきりの笑顔で向けてやる。

 

「……!?!?!?!?」

 

 ようやく状況が理解できたのか、めちゃくちゃ驚いてる。目が覚めたら男に膝枕されてたら、そりゃ驚くよな。

 

「し、しろはって彼女が居ながら、まさかあたしを手籠めにするつもり!?」

 

 ……それやったら、俺本当に極悪人だから。

 

「本当に手籠めにするつもりなら、寝込みを襲ってるんじゃないか……?」

 

「そ、それもそうよね……うん。そうよね……」

 

 蒼がその身を起こす。

 

 あれ? 思いのほか怒られなかった。理不尽に怒られた藍とは、えらい違いだ。

 

「しろはが信じてる人だし。変な気は起こさないと信じてるから」

 

 それは信頼されてると喜ぶべきなんだろうか。膝枕に関しても、全くのノータッチだし。

 

「というか、真昼間から外で寝てるのもどうかと思うぞ。ここは観光客だって通るんだから」

 

「大丈夫よ。イナリもいるんだから」

 

 そのイナリは、今の今に至るまで眠り続けてるんだけど。

 

「それに、気持ちいいのよ。ここ」

 

 まぁ、それはわかる。藍も寝てたし。

 

「熟睡してたみたいけど、最近寝不足なのか?」

 

「そういうわけじゃないけど、ここにいると落ち着くのよ」

 

「まぁ、誰でもそういう場所あるよな」

 

「羽依里はそういう場所、ある?」

 

「俺は……やっぱり、しろは食堂かな」

 

「あー、やっぱりそうよね。聞くまでもなかったかも」

 

 そういう目で見るのやめてほしい。言ってから、めちゃくちゃ恥ずかしくなってきた。

 

「あれ、そういえば今日夏海ちゃんは?」

 

「色々あってね、家にいるよ」

 

 得体の知れない屋台で、得体の知れない物を食べて体調不良になってるなんて、口が裂けても言えない。

 

「……そういえば、夏海ちゃんは最近どう?」

 

「どうって?」

 

「ほら、夏休み楽しんでくれてるかなって」

 

「楽しんでると思うぞ。釣りも、天体観測も、ビーチバレーも、花火も、肝試しもさ。時々疲れ果てて、朝寝坊するくらいだし」

 

「あ、時々ラジオ体操にギリギリの時間に来るもんねー。あれって、やっぱり寝坊してたんだ」

 

「紬とも仲良いみたいだし、どのイベントも楽しんでると思うぞ」

 

「それならいいのよ。あたしたちもイベント考える甲斐があるってもんだしね」

 

 やっぱり、あの辺のイベントって皆が一生懸命考えてくれてたんだ。蒼をはじめ、この島の皆には感謝してもしきれない。

 

「部屋に思い出の品も増えてるみたいだったし、藍に言われた絵日記もちゃんと書き続けてるみたいだぞ」

 

「あ、そうなんだ。今度藍にも教えてあげないと」

 

 笑顔でうんうんと頷いている。

 

「それじゃ、夏海ちゃんの情報もゲットできたし、あたしはそろそろ行くわね」

 

「今日も駄菓子屋でバイトか?」

 

「今日のバイトは藍ね。あたしはちょっと別の用事」

 

 すっと立ち上がって、スカートについた草をはらう。やっぱり双子だ。その仕草が藍そっくりだ。

 

「イナリ、いくわよ!」

 

「ポン!」

 

 ご主人の呼びかけに、寝ていたイナリがようやく目を覚ます。

 

「それじゃね」

 

 イナリを連れて、一本道を港の方へ走っていってしまった。

 

 俺もそろそろ家に戻ろうと思って立ち上がると……。

 

「あれ、夏海ちゃん?」

 

 住宅地の方から、夏海ちゃんが歩いているのが見えた。

 

「あ、鷹原さん」

 

「気分、良くなった?」

 

「はい。だいぶ良くなったので、少し歩こうかと」

 

 昼食の時に比べると、顔色はだいぶ良くなってる。正論丸が効いたみたいだ。

 

「なら、一緒に歩かない?」

 

「はい、よろしくお願いします」

 

 夏海ちゃんと並んで、住宅地の方に向けて歩き始める。

 

「そうだ。せっかくだし、どこか行きたい所とかある?」

 

「それなら、秘密基地に行ってみたいです!」

 

「秘密基地か……」

 

 あそこなら、誰かいるかもしれない。もし居なくても、二人で卓球してもいいし。

 

「それじゃ、行ってみようか」

 

「はい!」

 

 俺は夏海ちゃんと二人で、秘密基地へ向かって歩き出した。

 

 

 

 

 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

 

 

「うわっ!?」

 

 秘密基地の扉を開けるなり、俺は叫び声をあげていた。

 

 中には、大量のスーツケースが所狭しと置かれていたのだ。

 

「な、なんだこれ? まさか、鴎のスーツケースコレクション?」

 

「残念だが違う。役所に処分を頼まれた品だ」

 

 そう言うのはのみき。なんだか険しい顔をしている。その背後には、なぜか魂の抜けたようになっている良一と天善の姿も見える。

 

「港にしなびたホテルがあるだろう。そこに長年置きっぱなしになっているスーツケースがあってだな」

 

「港のホテルは知ってるけど、何でスーツケース?」

 

「宿泊客が何故か忘れて行ったり、ホテルが所有していて古くなったものだな。それの処分を役所に依頼されたんだ」

 

 そうなのか。役所ってそういうこともやってるんだな。

 

「どう処分するかについて、緊急の寄合が開かれてな。激論が交わされたんだ」

 

「あれ、もしかして昨日、深夜までやった寄合って」

 

「ああ、このスーツケースの処分方法についてだ」

 

 その程度で深夜まで……平和な島だなぁ。

 

「だが結局、結論が出なくてな……しばらくこの場所に保管させてもらうことになったんだ」

 

「ああ……あの二人が死んだような顔をしてるのはそのせいか」

 

 大切な居場所である秘密基地を、大量のスーツケースによって突如として奪われる……良一と天善の受けたショックは計り知れないだろう。

 

「心中察するぞ、二人とも」

 

「おお、羽依里……」

 

 声をかけると、二人がすがるような目で俺を見てきた。

 

「トラックが横付けしてきてな。あっという間の出来事だった」

 

「俺達にはどうする事も出来なかった……」

 

 天善お気に入りの卓球台は折りたたまれ、隅に追いやられている。

 

 ビーダマンやミニ四駆が入っていた段ボールも、奥の奥に押し込まれてしまっている。

 

「元々ここは倉庫だから、収納場所として使うのは問題はないのだが……その、少々可哀想な事をした」

 

 二人のあまりの落胆ぶりに、のみきも罪悪感を感じているようだ。

 

「天善、そう気を落とすな……卓球台なら、パリングルスで作った奴が灯台にあるじゃないか」

 

「ああ、そうだな……」

 

 天善は上の空だ。目の焦点も定まっていないし、これはだめかもしれない。

 

「……」

 

 夏海ちゃんもかける言葉がみつからないようで、ただただ困惑している。

 

 

 

「お邪魔しまーす」

 

「あれ、鴎?」

 

 重苦しい空気を打ち破るように、鴎が登場する。

 

 良く見ると、その後ろにはしろはの姿もあった。

 

「おお、あった!」

 

 鴎は目の前に並べられたスーツケースを指差し、何故か嬉しそうだ。

 

「良かったらこのスーツケース、おかーさんが全部買い取りたいって!」

 

「なに、本当か?」

 

 突然の鴎の提案に一番に食いついたのは意外にも、のみきだった。

 

 そりゃ、寄合で散々話し合っても解決しなかったスーツケース問題を一気に解決できるかもしれないのだから、食いつく気持ちもわかるけど。

 

「でも、こんなに沢山のスーツケース、買い取ってどうするんですか?」

 

「うん。外国に送って再利用するんだって」

 

 鴎が夏海ちゃんの質問に答えてくれる。そういう活動があるんだろうな。

 

「……ところで、鴎の母親って何者?」

 

 鴎の母親って言うと、何度か会ったことがあるけど。

 

 スーツケースを買い取って外国に送るとか、一般市民がやることじゃない気がする。

 

「それはね……教えてあげないよ! じゃん!」

 

「言うと思った」

 

 ……まぁ、無理には聞かないけど。

 

「なんにしても、秘密基地からスーツケースが無くなるんなら、どんなことでもするぞ」

 

「ああ!」

 

 良一と天善の目に光が戻った気がする。

 

「それでね。夕方5時の船に間に合わせてほしいんだって」

 

「え、今日の?」

 

「うん」

 

 俺は思わず腕時計を見る。船の時間まで、後2時間もなかった。

 

「これだけの数のスーツケースを、今から港に……のみき、間に合うのか?」

 

「今から役所に戻ってトラックを手配してもらって……いや、とてもじゃないが間に合わないな」

 

「間に合わない場合、どうなるんだ?」

 

「向こうの業者さんの都合もあるから、たぶん……」

 

 鴎が顎に手を当てて、真剣に考えている。

 

「交渉破談になって取引そのものが無くなって、スーツケースはまたこの場所に残ることになると思う」

 

「「それは困る!」」

 

 同時に大きな声を上げたのは良一と天善。二人の気持ちは痛いほどにわかる。

 

「気持ちはわからないでもないが、現状ではどうしようも……」

 

「ううん! 一つだけ方法があるよ!」

 

 二人をなだめようとしたのみきを制止し、鴎が割って入る。

 

「このスーツケース、皆で一気に港まで運べばいいんだよ!」

 

「えーっと、つまり……?」

 

「皆でスーツケースに乗って、港まで突っ走るの! スーツケースレースだよ!」

 

 

 

 

 その後、鴎によってスーツケースレースの説明がされた。

 

 秘密基地が山の中腹にあることを利用して、ここからスーツケースに乗って加速。下り坂で勢いをつけた後、住宅地の中を突っ走って、小学校のある一本道へ。

 

 そこからしろは食堂の前の坂を一気に降りて、島の西側の港まで一気に運んでしまおうという作戦らしい。

 

 

 

 

「鴎……いくらなんでも、そんなこと可能なのか?」

 

「この秘密基地から港まで、ずっと下り坂が続いているし、転びさえしなければ5時までに行ける……はず」

 

「……はず?」

 

「試してる時間なんてないし」

 

 そりゃそうだ。

 

「それでね。できるだけ沢山の人に、手伝ってもらいたいんだけど……」

 

「……さ、さよなら」

 

「しろしろ、ストップ!」

 

「うぐっ」

 

 鴎からの視線を感じ、逃げようとしたしろはだったが、鴎に襟首を掴まれていた。

 

「のみきさん、あともう少し人数を集めて欲しいんだけど」

 

 秘密基地に置かれているスーツケースは全部で8個。

 

 鴎はマイスーツケースを使うとして、運搬役には最低8人必要だ。

 

「……わかった。あまりやりたくはないが、少年団の権限を使って召集しよう」

 

 そう言うのみきの手には、トランシーバーが握られていた。

 

 

 

 

「……で、なんであたしや紬まで呼び出されるわけ?」

 

「一度に運ぶには、これくらいの人数が必要なんだ」

 

 30分足らずで、秘密基地に蒼と紬が招集された。

 

 これでこの場に、俺としろは、夏海ちゃん、天善に良一、のみき、紬に蒼と、なんとか運搬役の8人を揃えることができた。

 

「それじゃ皆、好きなスーツケースを選んで―」

 

 そして各々、好きなスーツケースを選び、引いて表に出す。

 

 そこで鴎からスーツケースの乗り方や操縦方法のレクチャーを受ける。

 

 具体的にはスーツケースに座った状態でのバランスのとり方や、非常時の受け身の取り方などだ。

 

「なぁ鴎、いくらなんでもスーツケースで公道を走るのは危険なんじゃないか?」

 

 俺も茶色いスーツケースを選び、乗り心地を確認しながら、鴎に質問する。

 

「大丈夫! レース中は公道に全部交通規制をかけてもらってるから!」

 

「さらっと言ってるけど、それってすごいことじゃないの?」

 

 青色のスーツケースに乗ってバランスをとる練習をしていた蒼が言う。なんだかんだで練習してくれている。

 

「むぎゅ……難しいです」

 

「紬さん、頑張りましょう!」

 

 その隣でも紬や夏海ちゃんがバランスをとる練習をしている。二人は体が小さい分、操作が大変そうだった。

 

「しろは、大丈夫そうか?」

 

 俺は白いスーツケースに乗って体を左右に揺すっていたしろはに声をかける。

 

「……あまり自信ない。スーツケースとか、乗ったことないし」

 

「大丈夫だ。俺も押したことはあるけど、乗ったことはほとんどないから」

 

 というか、ここにいるメンバーでスーツケースに乗ったことがあるのは、鴎と夏海ちゃんくらいだと思う。

 

 

 

「……皆、喜べ。島民全面協力だ。道路沿いに出て、応援もしてくれるそうだぞ」

 

 さっきまでトランシーバーでどこかと連絡を取り合っていたのみきが戻ってきた。

 

「藍と水織先輩も、鉄塔から実況をやってくれるそうだ」

 

「なんだって?」

 

 静久はわからないけど、藍は確か駄菓子屋でバイトしてたんじゃなかったっけ。

 

「そろそろ、鉄塔から試験放送を始めるそうだが」

 

 

『えーっと、こほん。ただいま、マイクのテスト中よー……』

 

 のみきがそう言った直後、島の鉄塔から静久の声が聞こえてきた。いつもよりボリュームは抑えている感じもする。

 

『……住宅地の皆さん、間もなくスーツケースレースが開始されます。道路に飛び出たりしないよう、注意して応援してください』

 

 続いて藍の声も鉄塔から聞こえてきた。その声に反応するように、住宅地の方から歓声が聞こえる。すごく大規模なイベントの装いを呈してきた。

 

「鷹原さん、なんだか大変なことになってきましたね」

 

 夏海ちゃんもどこか不安そうだ。

 

 俺としても、腹ごなしの運動のはずが、とんでもないことになってしまった。

 

 でもこうなった以上、腹をくくるしかない。

 

「とりあえず夏海ちゃん、楽しもう」

 

「はい!」

 

 

 

「なぁ鴎よー、このレースは賞品があったりするのか?」

 

 鴎のレクチャーも終わろうとしていたその時、良一が誰もが気になっていたところをストレートに聞く。

 

「一位の人には、お米券3000円分」

 

「「え」」

 

 急に女性陣の目の色が変わった。

 

「なんだ、お米券かよー」

 

「何を言っているんだ良一、お米券だぞ」

 

「そうよ。まさか、お米券が賞品になるなんて思わなかったわ」

 

「うん。これは頑張らないと」

 

 かなり残念そうにしている良一に対し、女性陣は急にやる気が出たみたいだ。お米券って、そこまで魅力的なものだっけ。

 

「鷹原さん、頑張りましょう!」

 

 ……なんだか、夏海ちゃんもやる気になってるみたいだし、まぁいいか。

 

「それじゃ、おかーさんの待つ港へ向けて! 皆、頑張ろう!」

 

「「おー!」」

 

 お米券のおかげで一体感が生まれた感じだ。皆ノリノリだ。

 

「そろそろ準備完了の合図を送るよ! 皆、スーツケースに乗ってー!」

 

 俺たちはそれぞれスーツケースに乗り、一列に並ぶ。

 

「スタートしたら私が指示役を務めるから、皆はしっかりついて来てね!」

 

「あれ、鴎はレースに参加しないのか?」

 

「うん。私は皆に助言をするよ。一緒には走るけどね。ペースメーカーみたいなものかな」

 

 鴎が助言をしてくれるなら、ありがたい。

 

「……私が参加したら、圧勝しちゃうからね!」

 

 悪戯っぽく笑う。どこまで本気なのかわからない。

 

「それじゃ、準備完了の合図をするよー!」

 

 鴎はポケットから打ち上げ花火を取り出して、火をつける。

 

 一瞬の間をおいて、花火は上空へと飛び、大きな音を立てた。これが合図らしい。

 

『皆の準備も整ったみたいね。それじゃあ皆、位置についてー……』

 

 その花火の音を合図に、再び鉄塔から声が聞こえ始める。

 

『あ、水織先輩、レースの前に一言良いですか』

 

『え? ええ、いいわよ?』

 

『それでは……こほん。蒼ちゃん、愛しています。頑張ってください』

 

「ちょっと藍ー! 島内放送で変なこと言わないでーーー!」

 

 蒼は顔を真っ赤にして叫んでいた。さすがにここから鉄塔までは声は届かないとは思うけど。

 

『それでは皆さん、スタート位置についてください』

 

 そんなこっちの状況などつゆ知らず、藍の声が鉄塔から淡々と響く。

 

『では、よーい……』

 

 一瞬の静粛、子供の頃の運動会を思い出し、緊張してくる。 

 

『……どん!』

 

 スタートの合図を受け、俺達は足で一斉にスーツケースを下り坂へと押し出す。

 

「「うおおおおおお!」」

 

 一番最初に飛び出したのは、オレンジ色のスーツケースに乗った良一と、黒いスーツケースに乗った天善だった。

 

「こらー! 私より先に出ないでー! 危ないよー!」

 

 同時に、鴎の怒号が飛ぶ。

 

 良一と天善は自ら狙って先頭に立ったというよりは、勢いがつきすぎて先頭になってしまった風だった。男の場合、体重があるからどうしてもスピードが出るんだろう。

 

 その三人に俺とのみきが続き、その後ろに蒼、しろは、夏海ちゃん、紬と並ぶ。

 

 秘密基地からの下り坂は舗装されておらず、小石や木の枝も落ちていて、なかなかの悪路だ。

 

 そんな中を、良一と天善は高速で突っ走っていく。

 

「おい二人とも! 少しスピードを緩めたらだどうだ!?」

 

「緩められる方法があったら俺が知りたいところだ!」

 

 ……そうだった。スーツケースにブレーキなどついていない。

 

「皆、もうすぐ最初の難関だよ!」

 

 鴎いわく、スタートして最初の難関は山の途中にあるカーブらしい。

 

「ここを減速せずに通過するのは至難の業だよ!」

 

「鴎、そもそも減速できるのか?」

 

「上手く曲がれば減速できるよ! 曲がり方にコツがあるの!」

 

「うわああああぁぁ---!」

 

 その時、鴎より前を走っていた良一と天善が先にカーブへと突入し、曲がり切れずに草藪の中に突っ込んでしまった。

 

「だから、私より先に行ったら危ないって言ったのに!」

 

 ……二人とも、安らかに眠れ。

 

 俺は心の中で手を合わせていた。

 

「ここは体をカーブの内側に傾けて、うまくスーツケースを斜めにして減速しながら曲がるの! こう!」

 

 鴎がお手本を見せてくれる。

 

「こ、こうか?」

 

「そうそう!」

 

 俺も見様見真似でカーブをやり過ごす。

 

 背後の皆もなんとかカーブを曲がり切ったようだった。

 

「次はさっきと逆! こうだよ!」

 

 何故か、鴎のスーツケースさばきは目を見張るものがあった。

 

「この先はさっきと同じ! こう!」

 

 その後も鴎がお手本を示してくれ、山を下り切る頃には、俺達もそれなりにスーツケースをコントロールできるようになってきた。

 

 教え方がうまいのか、習うより慣れろなのか、できるもんなんだな。

 

 山を下る間にも、カーブの度にじわじわと順位変動が起こり、先頭を行く俺とのみきにしろはが並んできて、少し遅れて蒼と夏海ちゃん、その後ろに紬と続く。

 

「うおおおおっ!」

 

「チョレーーーイ!」

 

 その時、ずっと後ろの方で叫び声がした。振り返ると、紬の遥か後ろに良一と天善の姿が見えた。草藪に突っ込んだ二人だけど、早くも復帰してきたみたいだ。

 

 転倒して順位こそ落としているけど、全てのスーツケースを港に運ぶという目的上、リタイアはない。

 

 

 

 やがて秘密基地の山を下り切り、舗装された公道に合流する。

 

 山道ほどの急坂はないので、そこまでのスピードは出ないけど、道が舗装されている分、スムーズに進む。減速する気配はない。

 

『加納君と三谷君が、かなり後ろの方を走ってるわね。何かあったのかしら』

 

 鉄塔から静久の声が聞こえた。俺達の位置関係を正確に把握しているところからして、双眼鏡でも使って見ているんだろうか。

 

「もうすぐ住宅地だよ! 交通規制かけてくれてるから、思いっきり飛ばしちゃって大丈夫!」

 

 飛ばしていいと言われても、変速機も動力もついていない、ただのスーツケースだ。慣性に任せるがままに進むだけだ。

 

『観客の皆さん。まもなくスーツケースが住宅地に到着します。沢山の声援を宜しくお願いします』

 

「……え、ちょっと、なにこれ」

 

 住宅地に入ると、道の端を埋め尽くすほどの人。この島にこれだけ人がいたのかってくらい、人が集まっている。

 

「お、三谷さんとこのせがれ、ビリじゃねーか!」

 

「加納さんとこの卓球坊主も似たようなもんだな! もっと頑張れ!」

 

「しろはちゃーん、がんばってー!」

 

「その彼氏も頑張れよー!」

 

 近所のおばさんに漁師のおっちゃん、他にもすぐに名前は出ないけど、見知った人たちばかりだった。

 

「どうしよう羽依里、すごく恥ずかしい」

 

「俺も恥ずかしい」

 

 しろはとそんな話をする間にも、左右から声援が飛んでくる。恥ずかしくてしょうがない。これは、さっさと通り過ぎてしまうしかない。

 

 そして住宅地は分かれ道や細い道が多くて紛らわしいけど、コースを間違えないようにロープが張ってあったり、矢印でルートを示してくれていた。

 

 誰がやってくれたのかわからないけど、すごく助かった。

 

「皆、もうすぐ第二の難関だよ!」

 

 鴎がそう叫ぶ。

 

「今度はなんだ?」

 

「この先は上手く左に曲がらないと、勢いそのままに駄菓子屋に突っ込んじゃうよ!」

 

「そ、それは色々な意味でやばくないか?」

 

「もちろん、突っ込んじゃったら駄菓子の弁償は個人負担! ぷち最悪だよ!」

 

「全然プチじゃないぞ。中にはブルジョワなお菓子も混ざってるからな」

 

 駄菓子屋に突っ込まないように、細心の注意を払わなければならない。

 

 

 

 

 ……その後、いくつかの曲がり角を曲がると、駄菓子屋が見えてきた。

 

「がんばれ、ししょー!」

 

「あおちゃん、がんばるんだよー」

 

 駄菓子屋の前では常連の子供たちや、駄菓子屋のおばーちゃんが看板娘の蒼を応援してくれていた。

 

「スキあり! うりゃあっ!」

 

 ……その声援も力になったんだろうか。住宅地に入ってじわじわと順位を上げてきていた蒼が、駄菓子屋前のカーブでトップに躍り出た。

 

 スーツケースが慣性で動く関係上、コーナーをいかにうまく曲がれるかが勝負の分かれ目になる。蒼はそこに気がついていたみたいだ。

 

「やるな、蒼!」

 

 続いて、俺としろは、のみきも駄菓子屋前のカーブをクリア。ちょっと大回りになったけど。

 

 その後ろの紬と夏海ちゃんもなんとかクリアしていた。

 

「うわー!」

 

 遥か後ろで天善の声がした。

 

『加納君、また転倒しちゃったみたいね』

 

 距離の関係上、天善の様子はわからなかった。直後の放送によると、どうやらカーブを曲がり切れず転倒したみたいだ。

 

『自ら身体を投げ出したようにも見えました。駄菓子屋は無傷です』

 

 駄菓子屋に突っ込んで損害を出してしまうくらいなら、自らバランスを崩して転倒する道を選んだようだ。

 

 

 

 

 駄菓子屋を通過すると、すぐに住宅地を抜け切る。

 

 すると一本道に差し掛かる。ここは特に障害物もなく、見通しも良い。少し気を緩めることができそうだ。

 

『観光客の皆さん、スーツケースがご迷惑をおかけしています』

 

 ここら辺までくると、ちらほらと観光客の姿も見える。スーツケースレースについては周知徹底されてるみたいで、観光客も道の端を歩いて、笑顔で手を振ってくれている。これはこれで恥ずかしい。

 

 現在の順位は蒼が首位、その次が俺としろは、そのすぐ後ろに猛追してきた良一、少し離れてのみき、夏海ちゃん、紬、天善が続いている。

 

 蒼の背中は見えてるんだけど、平坦な一本道だから全く順位も動かない。

 

 ここは彼氏として、ぜひとも優勝してしろはにお米券をプレゼントしたいところだけど。

 

 ……よし、こうなれば奥の手だ。

 

「蒼、パンツ見えてるぞ!」

 

「へっ? うそ!?」

 

 ……慌ててスカートを押さえる。動揺してバランスを崩した。転倒はしなかったけど、失速してしろはの後ろまで順位を落とした。

 

 ちなみにパンツが見えてるなんて、もちろん嘘だ。

 

『羽依里さん! 蒼ちゃんのパンツを見るなんて許しませんよ!』

 

 え、まさか今の声が藍に聞こえたのか? そんな馬鹿な。

 

『自分だけ見るなんて! 後でこっそり色を教えてください!』

 

「だから藍、島内放送で言わないでーーー!」

 

「……よし、もらったーーー!」

 

 そんなことをしていると、良一に抜かれた。ずっと緩やかな下り坂が続いているので、体重のある男の方がどうしてもスピードが出る。まぁ、カーブを曲がりにくいという欠点もあるけど。

 

 

 

 一波乱あった一本道を抜けると、ゴールの港が見えてきた。

 

 ペースメーカーの鴎を除外して、現在は良一が先頭、それに続いて俺としろは、蒼、のみき、夏海ちゃん、紬、天善と続く。

 

 港が近づいてくると、また観客が増えてきた。半分くらいは観光客みたいだ。

 

「夏海ちゃーん、がんばれー!」

 

「出店のおにーさん!?」

 

 観客の中に、竜太サンドを売っていた金髪にーちゃんが居た。

 

「立つんじゃねぇ! 蒼さんが見えねぇだろうが!」

 

「ひぃぃぃぃっ!」

 

 夏海ちゃんの応援してくれていたけど、直後に後ろにいた男性に怒鳴られていた。まるでラグビー部みたいなガタイの良い人だったけど、あの人も観光客かな。

 

「皆、この先が最後の難関! 魔のカーブだよ!」

 

 そんなおどろおどろしい名前を付けないでほしい。

 

 しろは食堂を通り過ぎると、緩やかな下り坂。否が応にもスピードがつく。

 

 そして、目の前には真っ黒な、謎の壁が立ちふさがっている。

 

 目を凝らしてよく見てみる。カーブというか、ほぼ直角の曲がり角だった。ここを曲がればゴールの港は目の前だ。

 

 それにしても、あの黒い壁はなんだろう。普段はあんなところに壁なんてなかったはずだけど。

 

「ここで全力で右に曲がって! そうしないとーーー……おわーーーっ!」

 

 最後のレクチャーをしようとしていた鴎が魔のカーブを曲がり切れず、黒い壁に突っ込んでいった。

 

「ちょっ……鴎が曲がり切れないのに、俺たちが曲がり切れるわけが……う、うわあああーーー!」

 

 俺の前を行っていた良一が黒い壁に突っ込み、勢いが強すぎたのかスーツケースだけを残して、壁の向こう側へ吹っ飛んで行った。直後に波しぶきが上がる。

 

 え、もしかしてあの壁の向こうって海なのか?

 

 というか、あの壁って柔らかいのか? 良一がはじかれたぞ?

 

「羽依里! 曲がって―――!」

 

 鴎の声を受けて必死に曲がろうとするけど、直前の下り坂のせいで勢いがつきすぎている。

 

「うわあああーーー!」

 

 俺も努力むなしく、俺も黒い壁に突っ込んでしまった。

 

 反射的に身を守ろうとしたけど、黒い壁は思いのほか柔らかく、クッションのように衝撃を吸収してくれた。

 

「あれっ? 痛くない……」

 

 乗っていたスーツケースは盛大に地面を転がり、横転して止まる。

 

 自分がぶつかって分かった。この黒い壁、漁で使う網を一か所に集めて、壁みたいにしてあるんだ。

 

 この向こうが海だとすると、このカーブを曲がり切れずに海に落ちることを防ぐために、誰かがこの網を設置してくれたことになる。本当にありがたい。

 

「えっ? えっ? えっ?」

 

 そんなことを考えていると、俺の後ろを付いてきていたしろはが驚愕の表情のまま突っ込んでくるところだった。しろはも魔のカーブを曲がりきれなかったみたいだ。

 

「しろは、跳べ! 受け止めるから!」

 

「う、うん!」

 

 しろはがスーツケースを乗り捨てて、俺の方に跳んでくる。俺はうまくお姫様だっこで受け止める。

 

「おおー、さすが羽依里!」

 

 鴎が茶化してくる。ここまで完璧にしろはを受け止められるなんて、自分でも驚いたくらいだ。これも愛の力かな。

 

「どいてーーー!」

 

 直後、蒼もカーブを曲がり切れずに突っ込んでくる。俺たちは慌てて左右に避ける。

 

「ひゃーーー!」

 

 蒼が黒い壁に突っ込む。ぽよーんと弾かれていた。怪我はないみたいだ。

 

「わわわわーーー!」

 

 その次に夏海ちゃんが突っ込んでくる。もはや誰も魔のカーブを曲がり切れない。

 

「羽依里、夏海ちゃんも受け止めてあげて!」

 

「よしきた!」

 

 しろはに言われて、網の中央で構える。直後、飛ばされてきた夏海ちゃんをうまく受け止める。

 

「あ、ありがとうございます……」

 

 続いて、のみきもカーブを曲がり切れず、飛んできた。

 

「よいしょ!」

 

「……すまない」

 

 流れ的に次は紬か。いつでも来いと身構えていると……。

 

「むぎゅぎゅぎゅーーーーーー!」

 

「……あれ?」

 

 紬はむぎゅむぎゅ言いながら、ギリギリのところで魔のカーブを曲がり切った。

 

 そして、蛇行運転しながら港へと辿り着く。

 

『ゴ―――ル! 紬が一番最初にゴールしたわ!』

 

 鉄塔から静久の嬉しそうな声が聞こえた。

 

 俺たちは全員で顔を見合わせる。まさかの大逆転優勝だった。

 

 

 

 

 

 その後、俺たちは散らばってしまったスーツケースを各自で拾い集めて、港へと向かった。

 

「紬さん、優勝おめでとうございます!」

 

 港に着くと、夏海ちゃんが一番に紬を祝福しに行っていた。紬はむぎゅむぎゅ言いながら、すごく照れていた。

 

 ちなみに、俺が良一のスーツケースを持って行くと、港に全身ずぶ濡れの良一がいた。海に落ちた直後、港に待機していた係員に助けられたらしい。

 

「良一、大丈夫か?」

 

「ちくしょー、最近運がないぜ……」

 

 良一は俺からスーツケースを受け取りながらも、頭を抱えていた。あと一歩で優勝を逃したのだから、悔しいのもわかる。さらに海に落ちたわけだし、踏んだり蹴ったりだ。

 

「皆さん、お手数をおかけしました」

 

 その時、俺達の元に一人の女性が近づいてきた。鴎の母親の鷺さんだ。

 

「おかーさん、約束通り全部のスーツケースを持ってきたよ!」

 

「ありがとう。鴎も随分楽しんだみたいね」

 

「うん!」

 

 あれだけ島を挙げて大騒ぎしていたんだし、そりゃ鷺さんも気づくよな。

 

「……あら、スーツケースは全部で8つと聞いていたんですが、7つしかないですね」

 

「あ」

 

 そういえば、天善はどうなったんだろう。駄菓子屋の前で転倒して以後、音沙汰がない。

 

「えーっと、その……」

 

 どう説明したものかと、俺が頭を悩ませていると……。

 

「……ふっ! ふっ! ふーっ! ふーっ!」

 

 遅ればせながら、天善が港にやってくるのが見えた。

 

「おお天善、待っていたぞ」

 

 俺は天善に駆け寄る。

 

「駄菓子屋の前で転んだ時はどうなるかと思ったが、これはこれで良いトレーニングになったぞ」

 

 完全に失速してしまったので、どうやら駄菓子屋の前からずっとスーツケースを押してきたらしい。確かに良いトレーニングになりそうだ。

 

 紆余曲折あったけど、これで8つの全てのスーツケースを運ぶ事ができた。ミッションコンプリートだ。

 

 

 

 

「それではお米券、進呈です」

 

 全てのスーツケースが船に運び込まれた後、鷺さんから紬へお米券が進呈された。

 

「ありがとうございます!」

 

 紬が笑顔で受け取ったお米券は、なぜかそのまましろはへと手渡される。

 

「え?」

 

「シロハさん、この間の麻婆豆腐定食のお礼です! どうぞ!」

 

「そんな、受け取れないよ」

 

「受け取ってください!」

 

 困惑しているしろはに対して、紬は笑顔でお米券を差し出し続けている。

 

「シンテーです!」

 

「しろは、紬がああ言いだしたら聞かないぞ。大人しく受け取っておいた方がいい」

 

「で、でも……」

 

「また紬に食堂に食べに来てもらえばいいじゃないか?」

 

「うーん……」

 

 少し悩んで、しろははお米券を受け取る。

 

「それじゃ紬、今度はこのお米を使って、おにぎり定食を用意しておくね」

 

「はい! 楽しみにしています!」

 

 お米券を受け取ってもらえて、紬も満足顔だ。うぃんうぃんってやつだろう。

 

 ところで、おにぎり定食ってどんなのだろう。気になる。

 

 

 

 

 その後、しろはは食堂の準備があるからと足早に帰ってしまった。多少の恥ずかしさもあったんだろう。

 

 代わりに鉄塔の方からやってきた静久と藍が合流した。

 

 ちなみに、鴎は定期船の近くで母親と何やら話をしている。親子水入らずの時間だし、邪魔はしないでおこう。

 

 

 

 

「それにしても、まさか紬が優勝するなんてねー」

 

「やっぱり、紬は小さかったから安定してたんじゃないか?」

 

 軽くて必要以上にスピードが出なかったから、最後の魔のカーブも曲がり切れたんだろうし。

 

「紬はおっぱいが小さかったから安定してたんですって。良かったわね」

 

「タカハラさん、ゼッコーです」

 

 静久、微妙に言葉を加えないでほしい。

 

「ところで夏海ちゃん、恐くなかった?」

 

「いえ、楽しかったです!」

 

 夏海ちゃんも笑顔で答えてくれた。

 

 突発的なイベントだったけど、楽しんでくれたなら、それに越したことはない。

 

「それはそうと羽依里さん、蒼ちゃんのパンツの色ですけど……」

 

「秘密! 羽依里も言っちゃ駄目だからね!」

 

「あ、ああ」

 

 二人とも鬼気迫る表情だった。見てないんだけどさ。

 

「仕方ありません。夜に脱衣所でチェックしましょう」

 

「やめてーー!」

 

 

 

 その後、日が暮れるまで皆と賑やかに喋っていた。結局仲間達と過ごせれば、場所はどこでもいいのかもしれない。

 

 ……しろはももう少し一緒に過ごせれば良いんだけどな。

 

 

 

 

 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

 

 

 日没後、皆と別れて、港から直接しろは食堂へと向かった。

 

「いらっしゃい」

 

 今日もしろはが笑顔で迎え入れてくれた。

 

 スーツケースレースを終えて、少し前に食堂に向かったばかりのはずだけど、きちんと開店準備がされていた。さすがしろはだ。

 

「……二人とも、秘密基地の時から思ってたけど、もしかして体調悪い?」

 

 しろはが俺達におしぼりを渡してくれながら、そう切り出す。

 

「え、なんで?」

 

「いつもより少しだけ顔色が悪いし、お腹の辺りを気にしてるし」

 

「う……」

 

 実はスーツケースレースを経ても、胃の調子が完全に元に戻ることは無かった。竜太サンド恐るべし。

 

 他の皆は誤魔化せてたけど、しろはは誤魔化せないみたいだった。やっぱり敵わない。

 

「じ、実は……」

 

 俺は観念して、昼間の屋台について、しろはに洗いざらい話して聞かせた。

 

「……竜太サンド?」

 

「うん。これくらいの大きさのパンに、これくらいの四角い物体が挟まれてたんだけど」

 

 俺は両手で大体の大きさを示し、説明をする。

 

「どんな味だったの?」

 

「未知の味」

 

「食感は?」

 

「未知の食感」

 

「……ごめん。よくわからないんだけど」

 

「俺達もよくわからなかった」

 

「それが、胃にもたれたの?」

 

「たぶん」

 

「食べたの、半分なんだよね?」

 

「ああ、夏海ちゃんと半分こした」

 

「……」

 

 あ、しろはさんが何とも言えない顔をしてらっしゃる。

 

「そういう時は、先に羽依里が食べて、安全かどうか確かめてあげなきゃ」

 

「うん、次からはそうするよ……」

 

「それより、怪しい屋台の食べ物は口にしないのが一番だから」

 

「はい」

 

「次からは気をつけます」

 

 二人揃って怒られてしまった。心配かけてしまったんだし、仕方ない。

 

「二人とも、今日は軽いものにしようね」

 

 そう言ってしろはが用意してくれたのは、冷やし中華だった。

 

 甘酸っぱい中華ダレで味付けされた冷やし中華は、するすると食べる事ができて、とても美味しかった。

 

 

 

 

 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

 

 

 俺はしろは食堂から帰宅した後、居間で一息ついていた。

 

 夏海ちゃんが先にお風呂に入ってるので、俺の番が来るまでテレビでも見ることにした。

 

『あなただけは許さないから』

 

 テレビをつけると、またテレビドラマをやっていた。

 

 復讐劇だろうか。女の子が男に殴りかかっている。軽くあしらわれているけど。

 

『大きなおでん種……』

 

 例によって、見てもよくわからなかった。

 

 ただただ、女の子が食べていた肉まんが美味しそうだった。

 

 ……ぼんやりとテレビを見ていると、電話が鳴った。

 

「あれ……こんな時間に誰だろう」

 

 鏡子さんの姿も見えないので、受話器を取る。

 

 

「はい。えーっと、加藤ですが」

 

「あ、あの、えーっと……た、鷹原さんはご在宅ですか?」

 

「……蒼?」

 

 電話に出てみると、蒼からだった。

 

「えっ、あ、羽依里?」

 

「そうだけど」

 

 電話口だからか、いつもと声の感じが違う。

 

「ほら、あんたんとこに電話するなんて初めてだし」

 

「確かに初めてだよな」

 

「普段は名字で呼ぶこともないから、ぱっと出てこなかったしねー」

 

 蒼の声は明らかに緊張していた。

 

「それで、どうした?」

 

「えーっと、ほら、この前のビーチバレー大会、覚えてる?」

 

「あー、うん。あれだろ。蒼たちが優勝したから俺とデ、デ、デートするんだっけ」

 

 デートなんて言い慣れない言葉を言ったせいか、俺も舌がもつれた。

 

「そ、そう! それ! それなんだけど……」

 

 電話の向こうで、スー、ハーと深呼吸する音が聞こえた気がした。

 

「明日、空いてる……?」

 

「ああ、空いてるよ」

 

 なんだろう。蒼が初々しすぎて、俺も意識しすぎないようにするのに必死だ。

 

「そ、それじゃ、明日の朝9時に、港で待ち合わせ、しない……?」

 

「いいけど」

 

「も、もちろん藍も一緒だからね!」

 

「ああ、わかってるよ」

 

「本土の方で、行ってみたいお店があるの」

 

「羽依里、あたし達よりは本土のお店に詳しいでしょ?」

 

「えーっと、まぁ、それなりには」

 

「あ、勘違いしないでよ。あくまでその、ビーチバレー大会の賞品ってことで、デートするんだからね!」

 

「わかってるって」

 

「……蒼ちゃん、お風呂空きましたよ」

 

 その時、少し遠くで藍の声が聞こえた。

 

「……あれ? どこかに電話してるんですか?」

 

「うん。ちょっとね!」

 

「そ、それじゃ! 明日、楽しみにしてるから!」

 

 

 ……切れてしまった。

 

「明日の9時に、港か……」

 

 蒼との約束を反芻した後、ひとまずしろはにも電話をして、一言伝えておく。

 

「……良いよ。行ってきても」

 

「ビーチバレーで負けたから、仕方なくだし」

 

「でも、羽依里の彼女は私だから」

 

「お泊りは絶対ダメ」

 

 この辺りに念を押されて、ひとまずOKをもらうことができた。

 

「ふぅ……」

 

 しろはとの電話を切った後、大きく息を吐く。

 

 藍や蒼とデートって、ビーチバレーの結果とはいえ、凄い約束してしまったんじゃ……?

 

 しろは以外とのデートなんて、初めてだし。

 

 なんだろう。変に緊張してきた。

 

 俺、今夜眠れるかな……。

 

 

 

 

第十四話・完




第十四話・あとがき


おはこんばんちわ。トミー@サマポケです。

今回のメインはスーツケースレースでした。その前のハチの巣退治と、竜太サンドネタもそれなりのインパクトを残したんじゃないかと思います。

特に竜太サンドに至っては、皆さんお判りでしょうけど、もちろん店員は例のヘタレです。店の奥には、こっそりと土偶も置いてあります。

デザートとしてデーモンクロワッサンもありましたよね。スーツケースレース中にも春……ヘタレさんがいて、ラグビー部っぽい人に怒鳴られてましたね。

スーツケースレースは設定的に多少無理もありましたけど、やりたかったので。楽しんでいただけると幸いです。


■今回の紛れ込みネタ

・きゅっきゅっ。ナスを噛む。
これはAIRネタです。かなりコアなので、わかる人いますかね?

・竜太サンドの屋台
CLANNADです。上記にも記載しているので省きますw

・「と、とっても美味しそうでしたっ」
CLANNADで早苗さんのパンを食べた芽衣ちゃんがとっさに発した台詞ですね。

・ぷち最悪
CLANNADより風子の名言ですね。

・お米券、進呈です。
AIRより、美凪の名言ですね。

・『あなただけは許さないから』
恒例となりつつあるテレビドラマシリーズです。今回はkanonより、真琴との出会いのシーンです。肉まん食べたい。

以上になります。いくつお気づきになられたでしょうか。
感想など頂けましたら、泣いて喜びます。
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