Summer Pockets #2   作:トミー@サマポケ

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第三十五話 8月21日(後編)

 

 

 

 

 駄菓子屋の前で唐突に始まったバトルトーナメントも、二回戦に突入していた。

 

「それでは、続けて二回戦を始めるぞ。選手は前へ!」

 

 二回戦最初の対戦カードは恭介と藍。恭介が選手として出場するため、例によって謙吾が司会を務める。

 

「藍―、頑張んなさいよー!」

 

「藍さん、頑張ってくださーい!」

 

「恭介さん、ファイトですー!」

 

「筋肉の仇を取ってくれぇぇーーー!」

 

 リトルバスターズから、島の皆から、各々声援が送られる。

 

「藍、お前とはいつか本気の勝負をしなきゃいけないと思っていたぜ」

 

「奇遇ですね。私も同じ気持ちです。リトルバスターズのリーダーさんが相手でも、負ける気はありませんよ」

 

 沢山の観客に囲まれて、道路の中央に立つ。二人とも全く物怖じしていない。さすがだった。

 

「お前ら、武器を投げ込んでくれ!」

 

 恭介がそう叫ぶと、周囲の観客たちから様々な武器が投げ込まれる。

 

「よし、俺はこれだっ!」

 

 恭介は目をつぶって武器を掴み取る。

 

 掴んだのは、ガムテープだった。

 

「おっと。これは恐るべき武器を引いちまったな……」

 

 どう見ても普通のガムテープだけど。あれでどうやって戦うんだろう。

 

「私はこれにします」

 

 続けて藍が選び取ったのは、洗濯バサミ(10本セット)だった。

 

「本当はボールとか、飛び道具が欲しかったんですけど。一回戦に比べて、明らかに武器のグレードが下がっていませんか?」

 

「仕方ないだろ。あくまで観客が用意してくれるものだし、基本くだらないものだからな」

 

「そ、それはそうですが……」

 

 藍は手に持った洗濯バサミを見つめていた。あの武器でどう戦うか、悩んでいるようだった。

 

「この武器はやっぱり、挟むんですよね?」

 

「ご明察」

 

「わかりました。やってやろうじゃないですか」

 

「オーケー。よし謙吾、俺はいつでも準備できてるぜ」

 

「よしきた。藍も準備はいいか?」

 

「いつでも構いませんよ。この洗濯ばさみで挟みまくってやります」

 

 藍は両手に洗濯バサミを持って、恭介を睨みつけていた。

 

「ではいくぞ! バトルスタート!」

 

 司会の謙吾が高らかにバトル開始を宣言をする。同時に、観客たちが一斉に沸く。

 

「先手必勝です。えい!」

 

 藍は持ち前の身体能力の高さを活かして、素早く恭介に近づくと……恭介の鼻と両耳に洗濯バサミを挟む。

 

「いてててて!」

 

 恭介は痛みのあまり、その場に膝をつく。うん。あれは絶対痛い。

 

「あの耳は痛いよ。絶対痛い」

 

「私は鼻の方が痛そうな気がします。あれは耐えられません」

 

 鴎とクドが半分顔を覆いながら、指の隙間からその光景を見ていた。確かに、見てるこっちが痛くなってくる。

 

「ふっふっふ。今度は両頬です! 覚悟してください!」

 

 恭介が怯んでいる隙に、藍は更なる追撃を仕掛ける。

 

「……なーんてな」

 

「はっ!?」

 

 藍が再度近づいたその時、恭介が大きく引き出したガムテープを構えて迎え撃つ。

 

「え、ちょっと……ひゃ!?」

 

 そして勢いよく突っ込んできた藍に対し、目にも留まらぬ速さでガムテープを巻き付け、その両手を封じる。

 

「それ、もう一丁!」

 

 動きが止まった隙を見逃さず、今度は素早く藍の両足をガムテープで絡み取る。

 

「ひゃーーー!?」

 

 両手両足の動きを封じられた藍は、まるで蒼みたいな悲鳴をあげながら地面に倒れてしまう。

 

「うう……業腹です。まさか、こんなプレイがお好みですか?」

 

「ド変態だな」

 

「鈴、変な言い方はよしてくれ。ガムテープの本来の使用方法で戦っただけだ……いててっ」

 

 恭介は顔に挟まれた洗濯バサミを、丸めたガムテープで取り外していた。あれはあれで痛そうだけど。

 

「うう、屈辱です」

 

 藍はもそもぞと動いているけど、さすがに起き上がるのは無理みたいだ。だって、ガムテープだし。

 

「これは……どう見ても試合続行不可能だな。このバトル、恭介の勝ち!」

 

 その状況を見ていた謙吾が、堪らず試合終了を宣言する。バトル終了と同時にハサミを持った葉留佳が飛び出して、藍を救出していた。

 

「……ガムテープでべとべとじゃないですか。どうしてくれるんです?」

 

 ガムテープから解放された藍は、手首をさすりながら恭介を睨んでいた。

 

「そう睨まないでくれ。これでも、その綺麗な髪にガムテープがくっ付けないよう、細心の注意を払ったんだ」

 

「そ、そうですか。それはしゅしょーな心掛けですね」

 

 藍は紬みたいなことを言いながら顔をそらしていた。どうしたんだろう。なんか顔も赤いし。

 

 そういえば、紬や静久はどうしたんだろう。見たところ、バトルトーナメントの見学にも来てないみたいだし。用事が忙しいのかな。

 

「それでは恭介さん、あいちゃんに称号をどうぞ」

 

「そうだな……『シスコンお姉ちゃん』」

 

「シスコンお兄さんにだけは負けたくなかったです……蒼ちゃん、ごめんなさい」

 

 藍はそのままがっくりと肩を落としていた。称号は本人にピッタリ過ぎて、笑えなかった。

 

 

 

「よし、それでは第二試合を開始する。選手前へ!」

 

 バトルが終わったことで恭介が司会に復帰し、次の選手を呼び出す。

 

「よーし、やってやるわよー!」

 

「蒼ちゃん、私の分まで頑張ってください」

 

「鈴ちゃんも頑張ってー」

 

「あお、勝負だ」

 

 前に歩み出てきたのは蒼と鈴だった。今回は妹対決だった。

 

「よしお前ら、気合いを入れて武器を投げ入れろ!」

 

 例によって恭介がそう叫ぶと、様々な武器が投げ込まれる。

 

「ポーン!」

 

「ぬお~」

 

 その時、多種多様な武器に混ざって、イナリと、これまた大きな猫が投げ込まれた。

 

「よし、イナリ、あんたに決めたわ!」

 

「あたしもだっ。ドルジ、お前に託すぞ!」

 

 二人は待っていたかのように、それぞれの相棒に手を伸ばすが……。

 

「お前ら、ルールを忘れたのか。二試合続けて同じ武器を選んでは駄目だぞ」

 

「「うぐっ」」

 

 二人が同時に固まった。どうやら、完全に忘れていたらしい。

 

「うう、別のねこと言われてもな」

 

 鈴はそう言って視線を泳がせる。鈴にとっては武器=猫なんだろうか。

 

「にゃあー!」

 

「にゃにゃー!」

 

 その時、人ごみをかき分けて、何匹もの猫が鈴の元に集まってきた。

 

「なんだ? お前らもしかして、一緒に戦ってくれるのか?」

 

「「うにゃー!」」

 

 鈴の問いに答えるように、猫たちが大きな声で鳴いた。よく見ると、その猫たちは鈴に懐いていた、この島の猫たちだった。その数、6匹。

 

「ちょっと、多すぎやしませんか?」

 

「だが、いくら束になったところで猫だぞ?」

 

 藍とのみきがそう話していた。まぁ、所詮猫と言えばそれまでだけど。

 

「でもよ、実際には投げ込まれたわけじゃねぇ猫たちを武器に使っていいのか?」

 

「別に良いだろ。そこら辺に転がってる武器の方が、攻撃力が高そうだしな」

 

 真人が当然の疑問を投げかけていたけど、恭介が理由をつけて了承していた。確かに、ボールとかダンベルとか落ちているし、あっちのほうが強力そうだ。

 

「それじゃ、えーっと……あたしはどうしようかしら」

 

 相棒のイナリを禁じられたせいか、蒼は足元の武器を見ながら、選びあぐねていた。虫取り網とかあったら、得意そうなんだけど。

 

「……もす!」

 

 その時、ピンク色の生き物がやってきて、蒼の足に顔を摺り寄せてきた。なんだろうあれ。犬かな。

 

「え、何?」

 

「もすもす!」

 

「よくわかんないけど、もしかしてあんた、あたしと一緒に戦ってくれるの?」

 

「もっす!」

 

 その謎生物は、しばらく蒼と会話を交わした後、ぴょんと跳ねる。任せて! と言っているような気がした。

 

「それじゃ、期待しちゃうわよ? よろしくね。もす!」

 

「もっすもす!」

 

 よくわからないけど、どうやら蒼の武器はあの犬に決まったみたいだ。ピンク色だし、蒼にピッタリかもしれない。

 

「恭介、鈴の猫じゃないが、蒼の犬は武器として認めるのか?」

 

「許可しよう。猫と犬の対決だろ? 良い勝負が出来そうで、燃えるじゃないか」

 

 投げ込まれた武器を拾って戦うルールはどこに行ったんだろう。確かに、面白そうなバトルにはなりそうだけど。

 

「オーケー。それじゃ、お互いに武器も決まったところで、バトル開始だ!」

 

 そうこうしているうちに、恭介が試合開始を宣言し、バトルが始まる。

 

 

「お前ら、後でツナ缶やるからがんばれ!」

 

「「うなぁーーー!」」

 

 鈴の言葉を聞いて、猫たちの士気が一気に上がった。

 

「いけぇーーー!」

 

「「にゃにゃにゃーーー!」」

 

 そして猫6匹による、怒涛の先制攻撃が始まった。

 

「あたたたたた! 猫パンチいたい! ひっかかないで! うひゃーーー!?」

 

 うわぁ。防御できないし、あの攻撃は地味に痛い。

 

「ちょ、ちょっと、もす! あんたも戦って!」

 

「もす?」

 

 首をかしげていた。なんだろう。特別な命令でも待ってるんだろうか。

 

「あいたたた! もす、ちびっとで良いから頑張って!」

 

「……もす!」

 

 蒼のその言葉を聞いた直後、ピンク犬はジャンプして手足を収納。空中でピンク色の球体に姿を変える。

 

 そして着地するや否や、そのまま地面を高速で転がって周囲の猫たちに体当たりをかます。犬離れした動きだった。

 

「うにゃーん!」

 

「にゃごー!」

 

 ……あっという間に、6匹の猫の半分近くが吹き飛ばされていた。

 

「ちょっと、ストップストップ! もす、もういいわよ!」

 

「もっす!」

 

 くるくると回転していたピンク犬は、次第にその動きを止めて、蒼のすぐ隣に納まる。

 

 一方の猫たちだけど、上手く受け身を取って、怪我はしていないみたいだ。でも、明らかに戦意喪失している。

 

「ああ、おまえらっ、にげるなっ」

 

 そして鈴の制止も聞かず、猫たちは散り散りになって人ごみに消えていった。

 

「武器である猫が逃げてしまったため、武器消失とみなし、このバトル、蒼の勝ち!」

 

 恭介が試合終了宣言をすると、これまた観客が盛り上がる。

 

「やりましたね。さすが蒼ちゃんです」

 

 姉は妹の勝利を称えていたけど、今回の勝因は明らかにあのピンク犬だと思う。

 

「ポンーポンポン!」

 

「もす? もっすもす!」

 

 なんかそのピンク犬、イナリと会話が成立していた。やるなお前。それほどでもー。みたいな会話をしてるんだろうか。

 

 

「おお。ちび、こんなとこにいた!」

 

 そんなことを考えていると、観客の中から髪の長い女の子が飛び出してきた。変わった髪飾りをつけて、髪の一部を三つ編みにしている。

 

「コタさん、ちびもすいたよー」

 

「おお、いたか。小鳥、でかした」

 

 そう言いながら、一人の青年が女の子の後について出てきた。

 

「まったく、お前どこほっつき歩いてんだ?」

 

「もすもす!」

 

 青年は小鳥と呼ばれた女の子の足元にすり寄っていたピンク犬を見下ろしながら、呆れ顔だった。

 

「まぁいいや。ちびもすも見つかったし、行こうぜ」

 

「そうだねー。ようやく鳥白島まんじゅうを売ってる場所も見つけたし」

 

「俺はまんじゅうより、四天王せんべいのほうが気になるんだけどさ」

 

「気になるんなら、一緒に買えばいいよ。ほらほら善は急げだよー」

 

「もすもす!」

 

 二人と一匹はそのままきびすを返すと、人混みの中に消えていった。

 

「……あのワンちゃん、見慣れない種類だと思っていたら、旅行者さんのペットだったみたいですね」

 

 彼らが消えていった先を眺めながら、夏海ちゃんがそう言っていた。今日は本当に色々な人が島に来ているんだな。

 

 ちなみにその後、称号発表が行われ、鈴には『猫まっしぐら!』の称号が贈られていた。

 

 

 

「さて、次は第三試合。テンポよく行こう。選手は前へ!」

 

 恭介がそう言いながら選手の入場を促す。今回はのみきとしろはの試合らしかった。

 

「しろはー、頑張れよ!」

 

「のみきも頑張れー!」

 

 気がつけば、鳥白島の出身者同士のバトルだった。これは、どっちを応援するべきだろうか。

 

「お二人とも、頑張ってくださーい!」

 

「どっちも頑張ってねー!」

 

 夏海ちゃんも鴎も、両方を応援していた。俺もそれに倣って、二人を応援することにした。本心では、しろはを応援したいけど。

 

「良い感じに盛り上がってきたな。それじゃ観客の皆、武器を投げ込んでくれ!」

 

 例によって無数の武器が投げ込まれる。

 

「よし、私はこれにしよう」

 

 そんな武器の中から、のみきが選んだのはバドミントンラケットだった。

 

「恭介氏、これで叩いて構わないのだろう?」

 

「ああ。それが本来の使用方法だ」

 

 あのラケットはリーチが長いし、背の低いのみきにピッタリだった。

 

「……ところでしろは、なぜ中華鍋なんて持ってるんだ?」

 

 そののみきが、何とも言えない顔でしろはの武器を見ていた。しろはは大きな中華鍋を両手で持っていた。

 

「こ、これは違うの。気がついたら持ってしまっていたというか、これで戦う気は毛頭なくて。本能で手に取っちゃって。今選びなおすからもう少し待っ」

 

「よし、バトルスタート!」

 

「あああああ」

 

 必死に言い訳していたしろはをよそに、無情にもバトルが始まってしまった。

 

「勝ち進めば、いつかはこのような試合もあるだろうとは思っていたが……まさか、いきなりしろはとのバトルになるとはな。いくぞ!」

 

 のみきはバドミントンラケットを構えて、一気にしろはとの距離を詰めていく。

 

「なぁ恭介、ところで中華鍋の本来の使用方法って?」

 

 ふと気になったので、俺は恭介に聞いてみた。まさか、この場で料理をするわけにもいかないし。

 

「そうだな……頭に被って良いことにしよう。戦国時代には、兜の代わりに鍋を被ったという話もあるしな」

 

「そ、そういうことなら……ほい!」

 

 話を聞いていたしろはが、とっさに中華鍋を頭に被る。

 

「えい!」

 

 直後、のみきが振り下ろしたラケットが中華鍋を直撃。カーンと甲高い音を立てる。

 

「うああああ……」

 

 それと同時にしろはの動きが止まる。

 

 そっか。鉄製の中華鍋を被ってるんだから、外側から叩かれたら頭に思いっきり響くわけか。あれはきつい。

 

 しろはは中華鍋を脱いで、ぶんぶんと頭を振っていた。大丈夫かな。

 

「うう……でも、これで攻撃する時はどうすればいいの?」

 

 未だ焦点が定まらない目で恭介の方を見ながら、しろはがそう問うていた。

 

「頭に被って良いんだから、そのまま頭突きでも食らわしたらいいんじゃないか?」

 

「わかった。やってみる。かたじけのうござる!」

 

 恭介の答えを聞いて、そのまま中華鍋を被りなおして頭突きを仕掛けていく。ちなみにしろは、そのゲームはもう終わったから!

 

「く、来るな!」

 

 対するのみきも避けることができないので、苦し紛れに中華鍋をラケットで叩く。再び甲高い音がする。

 

「うああああ……」

 

 のみきの攻撃が頭に響いているんだろう。再びしろはが動きを止め、悲鳴を上げる。悪い意味で攻防一体の武器だった。

 

「か、かたじけのうござ」

 

「すまない、しろは!」

 

 気を取り直して再度攻撃……としていたところに、とどめの一発。一層大きな音が響き渡る。

 

「あうあうあうあう……」

 

 しろははそのままふらふらとよろめいて……地面に倒れてしまった。

 

「勝負あり! このバトル、のみきの勝ち!」

 

「すまない、しろは。大丈夫か」

 

 のみきはバトル終了宣言がされると同時に駆け寄り、頭の中華鍋を取り払って、しろはを抱き起こす。

 

「ううう、中華鍋は料理以外に使っちゃ駄目……」

 

 しろはは目を回しながら、うわごとのようにそう呟いていた。

 

 

 

「それでのみき、しろはへの称号なんだが」

 

 少し時間を置いて、恭介が言いにくそうにのみきに聞いていた。

 

「すまないが、私はこれ以上幼馴染を辱めることはできない。鷹原、お前が考えてくれないか?」

 

「え、俺?」

 

 そこで、何故か俺に話を振られた。

 

「ああ、頼む。この通りだ」

 

 のみきは深く頭を下げていた。そこまでされると、むげに断れない。

 

「わ、わかった。それじゃ、中華鍋を被っていたのもあるし……しろはの称号は『チャーハンかけばばあ』で」

 

 咄嗟に思いついた言葉を並べてみたけど、なんだかすごい単語が出来てしまった気がする。

 

「ど、どうせチャーハンかけばばあですよ」

 

 口をとがらせて、しろはが拗ねていた。うう、そんなつもりじゃなかったのに。

 

 

 

「さて、次で二回戦も最後だ。選手は前へ!」

 

 恭介に呼ばれて前に出てきたのは、鴎と西園さんだった。

 

「幼馴染同士の対決だね!」

 

「だから、その言い方は語弊がありますから」

 

「俺にはよくわからないが、これまた因縁のある対決となりそうだな。それじゃ、武器を投げ入れてくれ!」

 

 恭介が言った直後、次々に武器が投げ込まれる。

 

「よし、今回はこれにしよう!」

 

 そう言って鴎が選んだのは、巨大な紙だった。

 

「鴎、なんだそれ?」

 

「ペーパークラフトだね。ステゴザウルスだって! がおがお♪」

 

「でもこれ、組み立てる前じゃないの?」

 

 蒼がそう言っていた。作り方を書いた紙がついてるし、完成前だった。

 

「組み立てたら、これで叩いていいんだよね?」

 

「ああ、時間かかると思うけどな」

 

「今から作っていいの?」

 

「いや、バトルが開始されてからだ」

 

「それじゃ、説明書だけ目を通しておくね!」

 

 鴎はそう言うと、ステゴザウルスの作り方の書いた紙を熱心に読み始めた。

 

「ところで恭介さん、同じサイバー兵器でも種類が違うのであれば続けて使ってもOKですか?」

 

「ああ、OKだ」

 

「では、これにします」

 

 そんな西園さんが選んだのは、アニメとかSF映画に出てきそうなビームライフルだった。

 

「ほう。良いチョイスだな。西園君」

 

「「いいチョイスっす! 西園さーん!」」

 

 西園さんが武器を選ぶと同時、また科学部部隊が出てきていた。

 

「よし、NYP値を測定しろ!」

 

「了解っす!」

 

 なんかよくわからないけど、また数値を測りだした。彼ら、毎回出て来るんだろうか。

 

「上々っす」

 

「良い感じだな。思いっきりやれ。西園君!」

 

「「思いっきりいくっす! 西園さーん!」」

 

 科学部部隊の皆から声援が飛ぶ。本当に、どういう関係なんだろう。

 

「よし、それじゃ、バトルスタート!」

 

 お互いに武器選びも終わったということで、恭介が試合開始の宣言をする。

 

「よーし、説明書もしっかり読んだし、一気にいくよー!」

 

 バトル開始と同時に、鴎が物凄い早さでペーパークラフトを組み立て始めた。

 

 対する西園さんも、ビームライフルのエネルギーチャージを始めた。うん。俺も何言ってるかよくわからないんだけど。とりあえず、銃口に何か淡い光が収束していた。

 

 観客もすごく盛り上がっているけど、皆、逃げなくていいのかな。

 

「がおがおーっと! よし、完成ー!」

 

「え、もうできたの?」

 

「うん! 簡単だったよ!」

 

 鴎はあっという間にペーパークラフトを完成させていた。普通に早いんだけど。さすが手先が器用だった。

 

「というわけで、みおちん覚悟ーーー!」

 

 鴎の手を離れたステゴザウルスは、火を噴きながら自立駆動し、西園さんへ向かっていく。

 

「ちょっと待って鴎。あれって材料は紙だけだったよね?」

 

「うん、そうだよ!」

 

「なんで自走したり、火を噴いたりするの!?」

 

「知らないよ! 説明書にはそう書いてあったの!」

 

 というか、本来ステゴザウルスは火なんて吹かなかったはずだけど。

 

 何にしても、ペーパークラフトは猛スピードで西園さんへ迫っていく。西園さん、どうするのかな。

 

「……エネルギーチャージ完了。ビームライフル、発射です!」

 

「うひゃーーーー!?」

 

 そのタイミングで、西園さんもチャージ完了したらしい。ギリギリまで引き付けて、一撃でステゴザウルスを消し飛ばしてしまった。

 

「せ、せっかく作ったステゴザウルスが……」

 

 武器を破壊されてしまい、鴎はがっくりと膝をつく。

 

「勝負あり。武器消失につき、このバトル、西園の勝ちだ」

 

「うう……せっかく作ったがおがおを、みおちんがビームで焼き払っていきました」

 

 鴎は恨めしい表情で西園さんを見ていた。

 

「……少し、やりすぎたかもしれません」

 

 ビームライフルが命中した地面は少し陥没し、黒く焦げていた。ステゴザウルスは所詮は紙だし、跡形もなかった。

 

「それで西園、鴎の称号だが」

 

「そうですね……特に思い浮かばないので『カモメマックス』で良いですか」

 

「ふぎゃー!」

 

 それは鴎の初戦で来ヶ谷さんが贈ろうとしていた称号だった。その時は結局鴎が勝ったので、贈られずに済んだのだけど。今回は逃げられなかったみたいだ。

 

 

 

「さて、バトルトーナメントも終盤戦だな。選手は前へ!」

 

 いよいよ準決勝が始まる。まずは、恭介と蒼の試合だった。

 

「蒼ちゃん、恭介さんをちみどろにしてください」

 

 だから藍それ、別の人の台詞だから。

 

「藍の仇、取らせてもらうわよー!」

 

「フッ。返り討ちだ。お姉ちゃんと同じ目に合わせてやる」

 

 二人ともやる気に満ち溢れている。そしてすぐさま、無数の観客たちから様々な武器が投げ込まれる。

 

「よし、俺はこれだっ!」

 

 目をつぶった恭介が選び取ったのは、見慣れない機械だった。

 

「恭介、なにそれ」

 

「これは数取器だな」

 

 カチカチと上のボタンを押すと、画面に数字がカウントされていた。道路の交通量調査とかで使われてる、あの道具だった。

 

「よし、あたしはこれよ!」

 

 蒼が選んだのは、三つのサイコロだった。

 

「え。ちょっとこれ、どうやって戦うの!?」

 

 自分で選んでおきながら、その反応はないと思うけど。

 

「そうだな……そのサイコロを振って、三つ全て同じ数が出たらその場で勝ちというのはどうだろう。俺の方は、この数取器で999までカウントを進められたら勝ちだ」

 

「面白そうね。それでいいわよ」

 

「よし。それなら武器も決まったことだし、さっそくバトル開始を宣言してくれ」

 

 その提案を蒼が了承したことで、恭介は謙吾に試合開始を促す。

 

「ああ、いくぞ。バトルスタート!」

 

「うおおおおお!」

 

 試合開始と同時に、恭介は全力で数取器のボタンを連打する。

 

「うりゃあっ!」

 

 対する蒼も、地面に向かって無心でサイコロを振る。

 

 最初に出た数字は『5』『2』『4』。

 

 その次は『4』『5』『2』。まだ揃う気配はない。

 

 これは、地道にコツコツやる恭介が勝つか、運を味方につけた蒼が勝つか、手に汗握るバトルになりそうだ。

 

「うおおおお!」

 

 カチカチと小さな音を立て、恭介のカウントが進む。

 

「てい! うりゃ!」

 

 カランコロンと、蒼がサイコロを投げる。揃わない。

 

「……ねぇ羽依里、どうしよう。すごく地味だよ」

 

「そうですよ。とても準決勝の試合とは思えません」

 

 鴎と夏海ちゃんが小さな声で俺にそう言ってきた。

 

 確かに地味だけど、それは選んだ武器のせいだし。やってる本人たちは真剣そのものだし。

 

「鴎、お前実況でもやらないか?」

 

「……やめとく」

 

 一瞬前に出かかったけど、足が止まった。さすがの鴎でも、入り込む余地はないと悟ったんだろう。

 

 

 

 ……そのまま数分が経過した。

 

「ふう、なかなかにきついな」

 

 手が疲れてたんだろうか。恭介は数取器を持つ手を変えて、再びカウントし始めた。ちらっと見えた数字は『512』。ようやく半分を超えた感じだ。

 

「ていっ!」

 

 時を同じくして、蒼が投じたサイコロの目は『6』『6』『1』。惜しい。

 

「……」

 

「れいげんいやちこなれー」

 

 ちなみに、向こうの方では藍としろはが蒼の勝利を必死に祈っていた。なんか妙なオーラを纏っていて、声をかけるのもはばかられる。

 

「いやーしかし、見てるだけで指や腕がおかしくなりそうな戦いですネ」

 

「さすがの恭介氏も疲れが見えているな」

 

「わふー。ものすごい汗なのですー」

 

「……こりゃ、明日の試合に響くかもな」

 

 恭介は痙攣する右腕を時折揉みながら数取器のボタンを押し続けていた。リトルバスターズの皆も心配そうに戦況を見つめている。

 

 

 

 ……それから更に数分後、ようやくバトルは佳境を迎える。

 

「うおおおおおっ!」

 

 恭介は最後の力を振り絞って、すごい速さで数取器のボタンを押す。今の数値は790。だいぶ進んできた。

 

「てい! うりゃっ!」

 

 対する蒼が投げたサイコロが示した数は『1』『5』『4』。次点が『4』『6』『3』。こっちもなかなか揃わない。

 

 そうこうしているうちに、恭介の数取器のカウントは『850』。終わりが見えてきた。

 

「いい加減揃いなさいよ! このっ!」

 

 その時、蒼が渾身の力を込めてサイコロを投じる。出た目は……。

 

 

『2』『2』『2』。

 

 おお、ついに揃った。すごい。

 

「やったーーー!」

 

 蒼が思わず両手を高くつき上げる。

 

「勝負あり! このバトル、蒼の勝ち!」

 

 サイコロの目を確認した謙吾がすぐさま蒼の勝利を宣言する。

 

「ちくしょー。もう少しだったんだがな……」

 

 己の敗北を知り、恭介は力なくその場に座り込む。その手に握られた数取器には『960』の数値が刻まれていた。

 

「いやー、本当に手に汗握るバトルでしたネ」

 

「あたしたちは全身汗だくだけどねー」

 

 決勝進出が決まった後、蒼も恭介と同じように座り込んでいた。数えていないけど、蒼もサイコロを何十回投げたんだろう。

 

「蒼ちゃん、本当におめでとうございます。私は信じていましたよ」

 

 藍が嬉しそうに駆け寄ってくる。揃った数字も双子の『2』だし、藍の願いが届いたんだろうか。

 

「それであおちゃん、きょーすけさんへの贈る称号なんだけど」

 

「あ、そーねー……ちょっと今、何も考えられないかも」

 

 例によって葉留佳が称号を伺いに来たけど、蒼は息も絶え絶えだ。

 

「……なら、蒼ちゃんの代わりに私が称号を贈りましょうか」

 

 そう言って藍がほくそ笑む。これはもしかしなくても、やり返すつもりだ。

 

「じゃあ、藍に任せるわー」

 

「では『ド変態おにーさん』で」

 

 蒼からの了承も得たので、藍がさっさと称号を発表していた。

 

「冗談はよしてくれ。シスコンおねーちゃん」

 

「なんですか? ド変態おにーさん」

 

 蒼を挟んで、お互いがにらみ合う。どっちもどっちな気もするけど。

 

 

 

「それでは準決勝・第二試合を始める」

 

 恭介はさっきまでの戦いの疲れも見せず、司会を務める。

 

 ちなみに蒼はというと、藍に膝枕されながら駄菓子屋前のベンチで横になって、決勝へ向けて英気を養っていた。

 

「よし、選手は前へ!」

 

「……いよいよか。お手柔らかに頼むぞ」

 

「いえ、こちらこそお手柔らかにお願いします」

 

 恭介に促されて、のみきと西園さんが前に出てくる。

 

 それと同時に、待ってましたとばかりに観客から様々な武器が投げ込まれる。もはや、見慣れた光景だった。

 

「よし、私はこれだ!」

 

 最初にのみきが手に取ったのは、三輪車だった。

 

「って、誰だ!? 三輪車を投げ込んだのは!?」

 

 だから、不満があるんなら、最初から選ばなきゃいいのに。なんだろう、本能で選んでしまったんだろうか。

 

「一度選んだ武器を代えるのは……駄目だったな?」

 

「駄目。羽依里の時のような特例を除いて、最初に手にした武器で戦うこと」

 

「それでは、私はこれにしましょう」

 

 そう言って西園さんが手に取ったのは、一回戦でも使ったサイバーヨーヨーだった。

 

 それにしても、サイバー兵器のローテーション使用は鬼畜だと思う。

 

「その武器も、だいぶ君の手に馴染んできたようだな。西園君」

 

 西園さんが武器を選ぶと、すぐにまた観客の中から科学部部隊が出てきた。例によって何かの数値を測り始める。

 

「あ、駄目っす」

 

 何が駄目なんだろう。よくわからないけど、科学部部隊に動揺が広がっていた。

 

「うーむ、気をつけていけ。西園君!」

 

「「気をつけるっす! 西園さーん!」」

 

 科学部部隊の声援を受け、西園さんがサイバーヨーヨーを構えるけど……なんか変だ。良一を瞬殺した時みたいに、ビカビカ光ってない。どう見ても普通のヨーヨーだった。

 

「では、お互いに武器も行き渡ったようだし、バトルスタート!」

 

「うう、何故私はこんな武器を選んでしまったんだーーー!」

 

 恭介の試合開始宣言と同時。のみきがなんか叫びながら、三輪車をこいで西園さんに突っ込んでいく。ものすごくカオスだった。

 

「おまんら、ゆるさんぜよ」

 

 対する西園さんは、そんなのみきが射程に入ったのを確認して、サイバーヨーヨーを振るう。

 

「あたっ」

 

 投げ放たれたヨーヨーはのみきを直撃するけど……普通にはじき返されていた。良一の時のように痺れたりしない。

 

「……やっぱり、駄目ですか」

 

「なんだかよくわからないが、その武器は本来の力を失っているんだな。なら、今がチャンスだ!」

 

 その隙を突いて、のみきは猛烈な勢いで三輪車をこぎ進め、西園さんに体当たりを食らわせる。

 

「きゃ!?」

 

 もちろん大したダメージにはならないのだけど、普段から運動していない西園さん転ばせるには十分だった。

 

 そして転んだ拍子に、手に持っていたサイバーヨーヨーは西園さんの手を離れ、ころころと転がりながら観客の中へと消えていった……。

 

 あれ。これってもしかして。

 

「武器消失により、勝負あり。このバトル、のみきの勝ち!」

 

 その状況を確認した恭介がバトルの終了を宣言していた。

 

 サイバー兵器で無双するかと思われた西園さんだけど、予想外に実力を発揮できずに終わってしまった。

 

「今回に限ってNYP値が低かったのが災いしたな……惜しかったぞ。西園君」

 

「「惜しかったっす! 西園さーん!」」

 

 科学部部隊の皆が西園さんの善戦をねぎらっていた。確かに、西園さんが準決勝まで進んでくるなんて、誰も予想してなかったけど。

 

「その……すまない。本気でぶつからないと、やられると思ったんだ」

 

 のみきが申し訳なさそうに謝っていた。それまでの西園さんの戦いを見ていれば、その判断は正しいと思う。

 

「いえ、構いません。決勝進出、おめでとうございます」

 

「正直なところ、喜んでいいのか微妙だがな……」

 

「それではみきちゃん、みおちんに称号をどうぞ」

 

 お決まりに葉留佳が飛び出してきて、そう伺いを立てる。

 

「そうだな、鷹原、またお願いできないか?」

 

「え、また俺?」

 

「ああ、頼む」

 

「それじゃあ……『サイバー少女・みらくる☆みおちん』」

 

「「……」」

 

 ちょっと皆、可哀想なものを見るような目で見ないで。

 

 のみきに頼まれたとはいえ、また妙なものを創造してしまった。

 

 

 

 

「さて、バトルトーナメントもいよいよ決勝戦だ。選手は前へ!」

 

 恭介に呼ばれ、優勝を争う蒼とのみきが皆の前に出てくる。

 

「まさか、この二人の決勝になるとはな思わなかったな」

 

「うむ。おねーさんもリトルバスターズが全滅するとは思わなかったぞ」

 

「蒼ちゃん、ファイトです」

 

「のみき、応援してるぞー!」

 

「どっちも頑張ってくださーい!」

 

 決勝戦ということで、口々に声援が飛び、観客も一層盛り上がる。

 

「それじゃ、お前ら気合い入れて武器を投げ入れろっ」

 

 恭介の言葉に応えるようにして、無数の武器が投げ込まれる。

 

「じゃあ、あたしはこれよ!」

 

 投げ込まれた武器の山に手を突っ込んで、導かれるように青色の生き物を引っ張り出す。

 

「よろしくね、イナリ!」

 

「ポン!」

 

 蒼はやっぱり、最後はイナリでいくらしい。

 

「よし、私はこれだ!」

 

 そう言ってのみきが手にしたのは、どこからどう見てもハイドログラディエーター改。彼女の愛銃だった。いつも背負っているはずなのに、誰が投げ込んだんだろう。

 

「ちょっとのみき! それって本物の武器じゃないの!?」

 

「同じ武器を続けて使えないルールが地味に痛くてな。結局、最後まで取っておく羽目になった」

 

 のみきが笑顔で言っていた。結果論なんだろうけど、現状ではまさに鬼に金棒だった。

 

「お互いに武器が行き渡ったな。それでは決勝戦……バトルスタート!」

 

 恭介はそんなこと知ってか知らずか、早々に試合開始宣言をする。

 

「……悪いが、さっそくイナリを攻撃させてもらうぞ」

 

 のみきはそう言うと、ハイドロの照準をイナリに合わせる。

 

 どうやら、蒼の武器であるイナリを吹き飛ばして、武器消失を狙う作戦らしい。

 

「ふっふーん。のみきの作戦はお見通しよ! やれるもんなら、やってみなさい!」

 

 何か作戦があるんだろうか。蒼も自信満々にのみきを煽っていた。

 

「いいだろう。後悔することになるぞ」

 

 のみきも完全に戦闘モードだ。さすがのイナリでもハイドロ持ったのみき相手だと厳しいかもしれない。

 

 俺は夏海ちゃんの話を思い出す。謙吾の武器を吹き飛ばしたように、イナリは山の向こうまで吹き飛ばされてしまうんじゃないだろうか。

 

「すまない。許せイナリ。ファイア!」

 

「びゃあああーーーーっ!?」

 

「な、なに!?」

 

 のみきがハイドロを発射した直後、のみきとイナリの間に蒼が割って入った。

 

「うう、冷たっ……」

 

「蒼、どういうつもりだ!?」

 

「あたしが盾になれば、こうやってイナリを守れるでしょ!?」

 

 蒼はそう言って胸を張る。まさかの我が身を盾にした作戦だった。

 

「確かに相手の攻撃を避けてはいけないルールだが、武器を守るため、自ら攻撃に当たりに行くなんてな……」

 

 蒼のまさかの行動に、恭介は驚愕の表情を浮かべていた。

 

「イナリ、あたしが盾になるから後ろに隠れて! ゆっくり近づくわよ!」

 

「ポ、ポン!」

 

 背後のイナリにそう指示を出し、ゆっくりと前進していく。その間にも、蒼はのみきから無数の水弾を受けて、全身ずぶ濡れになっていた。

 

 ……その時、俺は大変なことに気づいてしまった。

 

「な、なあ蒼、お前も少し、前を隠した方が良いと思うぞ」

 

「へ?」

 

「いやその、目のやり場に困るから。す、透けてるし……」

 

「……」

 

 俺の言葉の意図に気づいたんだろう。蒼はゆっくりと視線を下げる。

 

 ……蒼の服は思いっきり透けていた。うん、下着の色さえもわかっちゃうレベルで。

 

「えええ、ちょっと~~~~!」

 

 蒼は反射的に身体を隠すようにしながら、その場にしゃがみ込む。

 

「男の子たちは全員目をつぶってください。さもないと、後でひどいですよ!」

 

 状況に気づいた藍がそう訴える。そんなこと言われても、せっかくの決勝戦なのに。

 

 結局、正直に目をつぶった男子は少数みたいだ。俺もできるだけ蒼を視界に入れないようにしながら、バトルの行方を見守る。

 

「ポンポーン!」

 

 その時、そんな蒼を守るようにイナリが前に出る。

 

「見ろよあのタヌキ。飼い主を守ろうってんだ。男気あるぜ」

 

 真人がそう言っていた。イナリはメスだけど。

 

「すまないな。不本意だが、これで終わりに……」

 

 のみきが改めてイナリに銃口を向けた……その時。

 

 

「ねぇねぇ、このバトルトーナメントって、そういえば優勝賞品とかないの?」

 

 鴎が良く通る声で恭介に質問していた。

 

「いや、特に考えていないな」

 

「だったら、優勝した方が羽依里とデートするってのは?」

 

 ……ちょっと鴎、またその流れにするの? もう何度目だっけ。

 

「よくわからないが、羽依里はしろはと付き合っているんじゃないのか?」

 

 恭介が当然の疑問を口にしていた。うんうん。もっと言ってやって。

 

「羽依里は他の女の子全員とデートしてるから大丈夫だよ! 優勝したら、のみきさんは初デートだし、蒼ちゃんは今度は藍ちゃん抜きで、羽依里と二人っきりでデートすればいいんじゃない?」

 

「「え」」

 

 そんな鴎の声がのみきと蒼の耳に届いたらしい。二人は揃って俺の方を見て、顔を真っ赤にしていた。

 

「そうですね! 二人っきりでスタパに入るとか、楽しそうですよね!」

 

 夏海ちゃんが笑顔で追い打ちをかける。たぶん、本人には悪気はないと思うんだけど。

 

「そうだね。腕組みもしたらいいと思うよ」

 

 しろはも乗っかって、そう言っていた。無表情なのがすごく怖いんだけど。

 

「いや、そんな、いくらなんでも、私と鷹原が……腕組み……は、はじゅかしすぎるぞ……」

 

「ちょっと待って。今度は二人きりって……それってつまり、やっぱりその……」

 

 あああ、二人とも頭から湯気が出てる。ダブルピンクになってる。しっかして。バトルしないと。

 

 

「「……はぅ」」

 

 しかし俺の願いは届かず……ぼふん、と音がして、二人とも顔を紅潮させたまま、その場に倒れてしまった。

 

「ありゃ……これは引き分けだな」

 

 一瞬の静粛の後、恭介がそう宣言する。待ってましたとばかりに藍や良一が飛び出してきて、気絶してしまった二人を回収する。

 

「予想外の結末になったが、バトルトーナメントはこれにて終了だ。観客の皆、協力ありがとう!」

 

 恭介が最後をうまく締めてくれる。観客たちからは笑いと共に、温かい拍手が送られていた。

 

 その後、片づけやら何やらでバタバタしていたこともあって、優勝賞品の話はうやむやになってしまった。

 

 俺としては、助かったような残念なような、複雑な心境だった。

 

 

 

 

 バトルトーナメントが終わった後、夏海ちゃんと一緒に加藤家に帰宅する。居間の時計を見ると12時を少し回っていた。

 

 13時からは祭りの準備が控えているし、急いでお昼ごはんを食べることにした。

 

「今日のお昼、この鳥ごぼううどんで良いですか?」

 

「うん、それでお願いするよ」

 

「はい! それじゃ、むぎゅっとお湯入れておきますね!」

 

 夏海ちゃんはそう言って急ぎ足で台所へと向かっていった。ところで、むぎゅっとってどういう意味だろう。

 

 一方、俺は玄関先にタオルや軍手を用意しておいた。それに、午後からも暑くなりそうだし、水分も用意しておいた方が良いだろう。

 

「夏海ちゃん、あとで水筒に水入れておこう!」

 

「わかりました! 用意しておきます!」

 

 

 ……それから数分後、完成した鳥ごぼううどんを食べた。

 

 鴨の出汁がきいていて、なかなかに美味しかった。できることなら、もう少しゆっくり味わって食べたかったけど。

 

 

 

 

 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

 

 

 きっかり13時。夏海ちゃんと一緒に役所前に行くと、既にリトルバスターズのメンバーも揃っていた。

 

「鷹原たちも来たか。さっそくだが、仕事を割り振らせてもらうぞ」

 

 その集団の中心にのみきがいた。どうやら彼女が役割分担を決めてくれているらしい。

 

「まず、リトルバスターズの男子には組み立て式のテントや看板を漁港まで運んでほしい」

 

 テントって、あの袋に入ってるあれだろうか。よく運動会で見る白いテントだ。

 

「……結構重たそうだな」

 

「すまない。本来ならトラックを手配したいところなんだが、あいにく全て出払っていてな。数人でゆっくり運んでもらって構わない」

 

 役所から漁港まで、そこまで距離はないけど、あれを人力で運ぶのは骨が折れそうだ。

 

「のみき、そんな心遣いは無用だぞ。こっちには筋肉担当が二人もいるからな」

 

 恭介はそう言うと、真人と謙吾の方を見やる。

 

「へっ、望むところだぜ! よし謙吾、どっちが多く運ぶか、競争だ!」

 

「いいだろう。受けて立ってやる!」

 

 そう言うと、二人はテントの入った袋を軽々と持ち上げ、漁港へ向けて全速力で走り去っていった。

 

「ありゃ、せっかちだなあいつら」

 

 さも当然のように見送ってしまったけど、あのテントって二人で持たないと運べないくらい重かった気がするんだけど。

 

「それじゃ理樹、俺たちは二人で運ぶか」

 

「そうだね。さすがにあんな速度は無理だけど……」

 

 残っていた恭介と理樹は二人で一つのテントを持ち上げると、漁港へ向かって歩いていった。

 

 

 

「では次に、夏海ちゃんは神北さんや西園さん、能美さんと一緒に、小学校に置いてある灯篭を漁港へ運んでもらいたい」

 

「わかりました!」

 

「おっけーですよー」

 

「了解なのですー」

 

 四人は快諾していた。でも小学校からだと、漁港までは結構距離がある。灯篭はたくさんあったけど、四人だけで大丈夫なんだろうか。

 

「地元の小学生たちも手伝ってくれるはずだから、一緒に運んでくれ。大変だろうが、頼んだぞ」

 

「わかりました。それでは皆さん、行きましょう」

 

「「はーい!」」

 

 そのまま西園さんを先頭にして、夏海ちゃんたちは小学校の方へ歩いていった。

 

 

 

「そして残りの女性陣だが、神社から漁港へ向かう道に順路の案内板を設置してもらいたい」

 

 のみきはそう言いながら、葉留佳と佳奈多、来ヶ谷さんや鈴に配置図らしき紙を配っていた。

 

「おおー、これはこれは、なかなかの数ですネ」

 

「既に看板そのものは各所に置いてある。後は組み立ててもらうだけで良いんだが、いかんせん数が多くてな。手分けして行ってほしい」

 

「よーし。それじゃ、ちゃちゃっと終わらせますヨー!」

 

「葉留佳、手抜きなんかしちゃ駄目よ? 後でチェックするから」

 

「ぶーぶー、信用ないなー」

 

「よし、おねーさんは頃合いを見て抜け出して、コマリマックスたちと戯れるとしよう」

 

「来ヶ谷さんも逃がしませんからね!」

 

「フ……。元風紀委員長は厳しいな」

 

 紙を受け取った四人は神社の方へ向かって歩いて行った。気がつけば、役所前には俺とのみきだけが残される。

 

「あれ、俺は?」

 

「鷹原はバイクを持っていたろう。それでやって欲しいことがある」

 

「やって欲しいこと?」

 

「ああ。この島では祭りの前に、島民が神社にお供えをする風習があるんだ。鷹原には、そのお供え物の収集をお願いしたい」

 

 のみきはそう言いながら、俺の方に笑顔で地図を渡してきた。所々に、丸印が書いてある。

 

「つまり、バイクでこの丸印がつけられた家を回って、お供え物を集めてくればいいんだな?」

 

「察しが良くて助かる。島民の中には、足腰が悪くて神社まで来られない方も居てな。集めた品物は、そのまま神社に預けてほしい。話は全て通しておく」

 

「わかった。それじゃ、さっそく行ってくるよ」

 

「ああ、よろしく頼むぞ。収集が終わったら、また役所に戻ってきてくれ」

 

 俺は挨拶を交わした後にのみきと別れ、一旦加藤家へと戻る。

 

 ガレージからバイクを引っ張り出していると、あることに気づいた。

 

「そういえば、たくさんの荷物を積むのに、この荷台じゃ心許ないよな……」

 

 少し考えて、以前キャンプの準備をした時に、港の商店で大きめの箱を借りたことを思い出した。お供え物の収集を始める前に、もう一度あの箱を貸してもらえないだろうか。

 

 そう思い立って、まずは島の反対側、港の方へ向けてバイクを走らせた。

 

 

 

 

 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

 

 

「えっと、確かこの辺りだったんだけど」

 

 俺は港の入り口にバイクを止めて、そこから歩いて商店を探していた。

 

 祭り当日ということもあって、島の玄関口である港はたくさんの観光客でごった返していた。とてもじゃないけど、バイクで乗り入れるなんて無理だった。

 

「お姉ちゃん、こっちだよぉ」

 

「はっはっはっ。佳乃、そんなに急がなくても祭りはまだ始まらないぞ」

 

 ちょうど船が到着したみたいで、また何人もの観光客が島に上陸していた。

 

「祐一くん、沢山お店が出てるよ!」

 

「あゆ、そんなに急がなくても出店は逃げないぞ」

 

「たい焼き売ってるかな?」

 

「いや、夏にたい焼きはないだろ……」

 

「それじゃ祐一、イチゴサンデーならあるかな?」

 

「いや、あっても氷イチゴくらいじゃないか……?」

 

 期待に胸膨らませながら、次から次へと観光客が通り過ぎていく。これは藍の言う通り、夕方にかけてますます人が増えそうだ。

 

 それにしても、港には普段は見ないような出店がたくさん出ていて、賑やかだった。

 

「クレープいかがですかー? 竜太サンドもありますよー!」

 

 向こうに見える屋台では、元気のいい売り子さんがクレープを売っていた。その隣に金髪の……春原さんの姿も見える辺り、あの人が妹さんなのかな。どっかで見たような気もするけど。

 

「さあ、俺の人形劇で大いに笑ってくれ!」

 

「「ヒャッホー! 国崎最高ー!」」

 

 出店が集まっている場所の反対側には特設ステージが設けられていて、なにやら催し物が行われていた。気にはなったけど、今は商店に行かないと。

 

 

 

 

 

 その後、人波をかきわけて、ようやく商店に到着した。

 

「あのー、すみませーん!」

 

 アルミサッシの引き戸を開けて、店内に呼びかける。

 

「はいはいー」

 

 すぐに商店のおじさんが出てきてくれたので、箱を貸してほしい旨を伝える。

 

「ああ、もしかして、祭りの準備かい?」

 

「はい。お供え物を収集を任されまして」

 

「それはそれは。明日は野球の試合だっていうのに大変だねぇ。ちょっと待ってておくれ」

 

 おじさんはそう言うと、すぐに店の奥から箱を持ってきてくれた。『鳥白島漁協』と書かれた箱で、たぶん、以前借りたものと同じだろう。

 

 ところで、なんでほとんど面識のない商店のおじさんまで明日野球の試合があるって知ってるんだろう。

 

「そうだ、この後、神社に行くんだろ?」

 

 そんなことを考えていると、店の奥からおじさんにそう声をかけられた。

 

「はい。行きますけど……?」

 

「ついでで悪いんだけど、これも神社に届けてくれないかな?」

 

 そう言っておじさんが持ってきたのは『奉納』の熨斗がつけられたお米だった。どうやらお供えの品らしい。

 

「構わないですよ。お預かりします」

 

「よろしくね。あ、箱はいつ返しに来てくれてもいいから」

 

「はい、ありがとうございます」

 

 俺は借りた箱をバイクの荷台に固定すると、のみきから預かった地図を広げる。回らなければいけない場所はそこまで多くない。

 

「港の近くは2件か。後は住宅地の端っこに5件と……」

 

 一通り場所を確認してから、バイクを走らせる。とりあえず、近い場所から始めてみよう。

 

 

 

 

 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

 

 

 のみきが話を通してくれていたおかげか、特に問題なく全てのお供え物を集め終わり、神社に到着した。

 

 さすがに境内まではバイクで上がれないので、石段の下にバイクを止めて、荷物を抱えて石段を登る。

 

「ふう。結構きついな」

 

 お供え物として預かったのは、5kgの米が二袋に、お酒が三本。他に野菜がたくさん。なかなかの重さだった。

 

「お、鷹原じゃないか」

 

 その時、背後から声がしたので振り返ると、そこには天善と……もう一人、見たことはあるんだけど名前が出てこない男子がいた。確か、同い年じゃなかったっけ。

 

「えっと天善、そちらは……」

 

「徳田です。徳田実篤です」

 

「あ、ご丁寧にどうも。鷹原羽依里です」

 

 丁寧に自己紹介をしてくれた。そうだった。彼が徳田だった。

 

 ラジオ体操にも来てるんだけど、まったくと言っていいほど話さないから、すっかり忘れてしまっていた。

 

「えっと、二人もお供えを持ってきたのか?」

 

「ああ、毎年のことだからな」

 

 そんな話をしながら石段を登り終わる。荷物を持ってお堂に近づくと、役所の人が対応してくれた。

 

「奉納品だね。御苦労さま」

 

「徳田スポーツです。今年もお願いします」

 

 徳田を先頭に、俺たちも品物を奉納する。お堂の前には、俺が持ってきたのと同じような品が並んでいた。

 

 奉納品の中に魚がないのは、祭りの間は釣りが禁じられている、この島の風習と関係しているのかもしれない。

 

「それじゃ、俺はこれで」

 

「あ、ちょっと待って」

 

 大量のお供え物を運び終わり、神社を後にしようとしていると、役所の人に声をかけられた。

 

「君、これだけの品を運んできたっていうことは、何か乗り物に乗ってきてるよね?」

 

「はい、バイクで来てます」

 

「ついでで悪いんだけど、このローソクとお酒を漁港に届けてくれないかな」

 

「構わないですけど、このローソクは何に使うんです?」

 

「暗くなってから灯篭を海に流すんだけど、その灯篭に入れるローソクだよ。確か、まだ持って行ってないはずだからね」

 

「わかりました。そういうことでしたら、持って行きます」

 

「悪いね。よろしくお願いするよ」

 

 

 

 

 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

 

 

 俺は神社で預かった品物を持って、漁港へとやってきた。

 

 既にたくさんのテントが立てられ、島民の皆がせわしなく動き回っている。ここには、観光客の姿はほとんど見られない。

 

「すみません。神社からお酒とローソクを預かってきたので、ここに置いておきます」

 

 港で作業をしていたおじさんたちにそう声をかけて、お酒とローソクを適当な場所に置く。

 

「お、加藤さんとこの。お使いを任されたか?」

 

「今日ばかりは彼女とイチャイチャするわけにもいかねぇだろ? どうだい、この後俺たちと一緒に飲むってのは?」

 

「あはは、せっかくですが、今回は遠慮させてもらいます」

 

 おじさんたちは笑顔で誘ってきてくれたけど、それをやんわりと断って、バイクの方へ戻る。さすがに未成年だしなぁ。

 

「ふぅ……」

 

 それにしても暑い。空は雲一つないし、太陽が憎たらしくなってくる。

 

 俺はさんさんと輝く太陽を見やってから、水筒を取り出して一口飲む。

 

「おっ、羽依里じゃねーか」

 

 その時、野太い声がした。見てみると、真人が日陰で何か飲んでいた。

 

「真人、何飲んでるんだ?」

 

 気になったので、近づいてみる。真人が持っているのは、2リットルのペットボトルだった。

 

 パッケージはウーロン茶のそれだけど、ガムテープがぐるぐるに巻かれていて、内容物が見えない。

 

「何なら飲むか? 俺特製、マッスルエクササイザーだ」

 

「いや、やめておくよ」

 

 真人のオリジナルドリンクだろうか。名前はかっこいいけど、中身が見えないし、なんか怖い。

 

「連れねぇ奴だなぁ。良い筋肉してるくせによ」

 

 いやその、筋肉基準で言わないでほしいんだけど。

 

「良一のやつは飲んでたぜ。直後にトイレに駆けこんでたけどよ」

 

 駄目じゃん。それ、駄目なやつじゃん。

 

 

 

 

 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

 

 

 俺は真人と別れて、借りた箱を返しに港へ向かった。

 

「すみません。助かりました」

 

「こんなに早く返しに来てくれなくても良かったのに……あ、そうだ」

 

 バイクの荷台から箱を外し、おじさんに渡そうとした時……おじさんが思い出したように言う。

 

「悪いんだけど、もう一仕事お願いできるかな」

 

「え? 今度は何でしょう?」

 

「ついさっき、青年会館から電話があってね。料理に使う砂糖と醤油が切れたから、大至急届けてくれって言われたんだよ」

 

「いいですよ。乗り掛かった舟ですし」

 

 一度外しかけた箱を再び荷台に取り付け、おじさんから砂糖と醤油を預かる。

 

「すまないね。青年会館は役所の隣だから。看板も出てるし、行ったらすぐ分かると思うよ」

 

「わかりました。それじゃ行ってきます」

 

 どのみち、のみきに報告するために一度役所にも戻らないといけないし。ちょうど良かった。

 

 

 

 

 俺は強い日差しの中、バイクを走らせる。

 

「……あれ?」

 

 一本道に差し掛かったところで、例の大きな木の下にのみきを見つけた。

 

「のみき、どうした?」

 

 思わずバイクを止めて、近づいてみる。

 

「ああ、鷹原か。ちょっと休んでいただけだ」

 

 そう言うのみきは、ちょっと顔が赤い気がする。これだけ暑いし、もしかして歩いてる途中に日射病にでもなったんだろうか。

 

「そうだ、水筒に水が入ってるんだけど、飲むか?」

 

「そ、そうだな……少しもらえるか」

 

「ああ。全部飲んでくれて構わないからな」

 

 のみきは俺から水筒を受け取ると、ごくごくと喉を鳴らしながら飲んでいた。そこまで冷たくはないけど、今は冷たすぎない方が身体に良いかもしれない。

 

「……ふぅ。すまない。助かった」

 

 のみきは大きく息を吐きながら、俺に水筒を返す。ほとんど空になっていた。

 

「のみき、どこか出かけていたのか?」

 

「ああ、ちょっと港で騒動があってな。それを解決してきたんだ」

 

「え、騒動?」

 

 俺もついさっきまで港にいたけど、あれだけ観光客がいて賑やかだったし、全然気がつかなかった。

 

「観光客同士の喧嘩らしい。すでに解決してあるから、問題はないぞ」

 

「ならいいけどさ……」

 

「しかし参ったな。至急役所に戻らないといけないんだが」

 

 まだ頭がぼうっとしているのだろうか。のみきが気怠そうに頭を振る。

 

「そうだ。のみき、良かったらバイクの後ろに乗っていかないか?」

 

「なに?」

 

「ほら、なんだか本調子じゃないみたいだしさ。役所まで送らせてくれよ」

 

「いや、しかし……」

 

「俺もどのみち青年会館まで行かないといけないし、荷物があって後ろは狭いけど、のみきならなんとか乗れると思うから」

 

「……なら、今回ばかりはお言葉に甘えるとしよう」

 

 のみきは少し悩んで、そう返事をしてくれていた。俺はバイクにまたがって、その後ろを促す。

 

「すまない。よろしく頼む」

 

 すぐ後ろの荷台に箱がついてあるせいか、かなり体を密着させないと乗れない。

 

「いやその、これはかなり恥ずかしいぞ……」

 

「悪いけど、役所に着くまで少し我慢してくれな」

 

「ああ。鷹原の背中は広いし、いい匂いがする」

 

「え?」

 

 背後でのみきが何か言っていた。

 

「そ、それじゃ、できるだけゆっくり走るから」

 

 妙な恥ずかしさを感じた俺は、それを隠すようにバイクを走らせた。

 

 

 

 

「それで鷹原は、まだお供え物の収集をしていたのか?」

 

 そろそろ住宅地に差し掛かったころ、のみきが荷台の方を見ながらそう言っていた。風に当たったせいか、だいぶ体調も良いみたいだ。

 

「いや、それは結構前に終わったんだけどさ……」

 

 俺は神社からこれまでの流れをのみきに説明する。

 

「……というわけで、島中を走らされていてさ。なかなか役所に報告に行けなかったんだ。ごめん」

 

「いや、別に謝る必要はないぞ。鷹原も島の皆に協力してくれていたわけだしな」

 

「そう言ってもらえると助かるよ」

 

「……む!?」

 

 その時、背後ののみきが急に動いた。サイドミラー越しに見てみると、のみきは即座にハイドロを構えて、道路を歩いていた三人を狙い撃っていた。

 

「ぶわっ!?」

 

「げふっ!?」

 

「どわっ!?」

 

 直後、撃たれた三人はもんどりうって倒れた。すれ違い様だったから顔はよく見えなかったけど、上半身裸だった。

 

「良一に謙吾、もう一人いたな。眼鏡をかけていたら天善かと思って撃ってしまったが、知らない顔だったな。観光客だろう」

 

 のみきが水鉄砲をしまいながら、呆れた口調で言っていた。

 

「いくら暑いからといって、人前で裸になるとはな。その度胸だけはすごいと感心するが」

 

 俺にしてみれば、すれ違いざまで三人を正確に射抜くのみきもすごいと思うけど。まるで流鏑馬(やぶさめ)だった。

 

 

 

 

 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

 

 

 役所の前に到着し、そこでのみきを降ろす。

 

「鷹原、手を煩わせてしまってすまなかったな」

 

「気にしないでくれ。それより、体調は大丈夫か?」

 

「ああ、だいぶ良くなった。鷹原からもらった水のおかげだな」

 

 のみきはそう言って笑顔だった。だいぶ顔の赤みも引いた気がするし、役所の中は冷房が効いているという話だ。もう大丈夫だろう。

 

「それじゃ、俺はこれで」

 

「ああ。青年会館に用があるんだったな。さっき通り過ぎた、あの建物だぞ」

 

「わかった。ありがとう」

 

 のみきと別れた後、俺はバイクを反転させて、青年会館へと向かった。

 

 

 

 

「お邪魔しまーす」

 

 建物に足を踏み入れると、正面には大広間が広がっていた。奥にはステージらしきものも見えるし、島の敬老会とか、ここでイベントをやるんだろうか。

 

 移動中にのみきに聞いた話によると、入って右側に調理室があるらしい。確かにそっちの方から、煮物のいい匂いが漂ってきていた。

 

 玄関で靴を脱ごうとすると、思いのほか沢山の靴が置いてあるのに気がついた。婦人会のおばさまたちが集まっているんだろうか。

 

「すみませーん。頼まれていた醤油と砂糖を持ってきたんですけどー」

 

 調理室の入口を少しだけ開けて、そう声をかける。室内は思いのほか広く、皆忙しそうに作業をしていた。

 

「あ、わざわざありがとうございますー」

 

 俺の声に気がついたのか、近くにいた女性が俺の方にやってきた。

 

「って、蒼?」

 

「あれ? 羽依里じゃない。配達でもやらされてるのー?」

 

 汗だくの顔でそう笑う。割烹着に三角巾だったから、全然わからなかった。

 

「ああ。バイクを持ってたのが仇になったよ。蒼も、手伝い大変そうだな」

 

「まぁねー。しろはに藍もいるわよ?」

 

 蒼が指差す先で、しろはと藍が盛り付けを担当していた。姿が見えないと思ったら、こんな所にいたのか。

 

「ここで何を作ってるんだ?」

 

「神社にお供えする料理とか、お祭りの後に出す食事とかね。結構大変なのよー」

 

 祭りと言えば男の力仕事ってイメージがあったけど、女性も大変そうだった。

 

「蒼、砂糖届いたの?」

 

「うん。羽依里がバイクで持ってきてくれたわよー」

 

 その時、しろはがやってきた。白い三角巾が似合っていた。

 

「しろはも大変そうだな」

 

「盛り付けはお店で慣れてるから大丈夫。味付けしなくていい分、楽だよ」

 

「え、味付けしないの?」

 

 意外だった。しろはの煮物、美味しかった記憶があるんだけど。

 

「うん。味付けとかは、おばさまたちの担当なの。そう言う決まりなんだよ」

 

 よくわからないけど、婦人会にも年功序列みたいなルールがあるんだろうか。それ以前に、しろはたちがすでに婦人会に入会してるってのも不思議な話だ。

 

「そうだ羽依里、バイクがあるんなら、お願いしていいかな」

 

 しろははそう言うと、引きずるようにしながら大きなピッチャーを運んできた。昔懐かしい四本足の、巨大なピッチャーだった。

 

「これ、中に麦茶が入ってるんだけど、小学校のグラウンドまで届けてくれないかな?」

 

「え、小学校?」

 

「うん。小学校で明日の準備をしてくれている人たちがいるから、差し入れしてあげて」

 

「わかった」

 

「あとこれも。おにぎりが入ってるから」

 

 ピッチャーの上に、どすっ、と袋が乗せられる。

 

「羽依里は食べちゃ駄目だよ?」

 

「いくら何でも食べないよ。それじゃ、行ってくるから」

 

「うん。お願いね」

 

 醤油と砂糖を二人に渡し、代わりに巨大なピッチャーと大量のおにぎりを預かった俺は、再びバイクを走らせることになった。

 

 

 

 

 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

 

 

「よいしょっと……」

 

 小学校の正門前にバイクを止めて、ピッチャーとおにぎりを持ってグラウンドへ向かった。

 

 作業をしてくれている人たちに差し入れの品を渡し、再び正門前へと戻ってくると……子供たちと並んで歩く、夏海ちゃんたちの姿が見えた。

 

「あれ、夏海ちゃん」

 

「あ、羽依里さん。どうしたんですか、こんなところで」

 

 俺に声をかけられて振り返った夏海ちゃんの手には、以前皆で作った灯篭が抱かれていた。

 

「灯篭運び、まだ終わらないの?」

 

「……はい。実はこれ、三往復目なんです」

 

「え、三往復?」

 

「えっと、実はですね……」

 

 夏海ちゃんの話によると、どうやら祭りで使う灯篭は子供たちが作ったものだけじゃ数が足りないらしい。

 

 確かに、先日プールサイドで作った灯篭だけだと、パンフレットにあるみたいに海を灯篭で埋め尽くす……とまではいかないかもしれない。

 

 それを踏まえて、学校の先生たちが追加で作ったものもあったみたいで、その数はおよそ100。それを夏海ちゃんたちだけで、小学校から漁港まで運んでいたらしい。

 

 当然、子供たちが持てる数も限られるので、何度も往復する羽目になったらしい。

 

「それは……大変だったね」

 

「はい……葉留佳さんたちが手伝ってくれなかったら、まだまだ終わりが見えなかったかもしれません」

 

「え、葉留佳さん?」

 

 夏海ちゃんに言われて、改めて集団を見てみると……子供たちの中に特徴的なツインテールや、黒髪の女性が見える。

 

「葉留佳や来ヶ谷さんも手伝ってくれてたのか」

 

「うむ。ちょうど小学校の前で頭を抱えていた夏海君を見かけてな。助け舟を出したまでだ」

 

「やはは、私たちの仕事もちょうど終わってたしねー」

 

「クドリャフカや神北さんも困っていたようだし、ちょうど良かったのよ」

 

「そうだ。手伝わない理由はない」

 

 先の二人に加えて、佳奈多に鈴も居た。元々参加していた小毬さんたちを合わせると、総勢7人のリトルバスターズの皆が手伝ってくれていたことになる。

 

「それでですね羽依里さん。三往復目で終わらせようと頑張ったんですけど、どうしてもあと二つ、持てきれずに残っていたんです」

 

 夏海ちゃんが申し訳なさそうな顔で俺を見てきた。この流れはもしかして。

 

「良かったら、手伝ってもらえませんか?」

 

「いいよ。俺も一仕事終わったところだしね」

 

「ありがとうございます!」

 

 子供たちを含め、皆必死に手伝っているんだし。放ってなんかおけなかった。

 

「プールサイドに置いてあるんだよね? 取ってくるよ」

 

 俺はプールサイドまで走り、置いてあった最後の二つを手に取って戻ってくる。

 

「みんな、これが最後だからね。頑張って行こう!」

 

「「おー!」」

 

 夏海ちゃんが子供たちをそう鼓舞していた。年齢が近い分、リトルバスターズの皆より慕われている気がした。

 

 その後は皆で、漁港目指して歩く。

 

 手に持ってみてわかった。この灯篭は紙と木で作られてるだけあって、ちょっとした衝撃でも壊れてしまいそうだ。これは人の手じゃないと運べない。

 

「よく見ると、この灯篭は細かい模様がたくさん描いてあって、綺麗なのですー」

 

 クドが手にした灯篭をまじまじと見ながら、そう言っていた。

 

「毎年この時期に、小学校で作ってるんだよ。たぶん、クドとかなら混ざってもいいんじゃないかな」

 

「そ、それは私が小さな子供に見えるということでしょーかー」

 

「当たり前じゃないか。何を今更な。ミニ子だしな」

 

 その時、背後の葉留佳が声色を変えながら会話に入ってきた。

 

「というか葉留佳、それ俺のマネ?」

 

「ああ、似ているだろ。さしずめ俺は、傷ついたズッキーニ」

 

「いや、全然似てないから」

 

 傷ついたズッキーニってのも意味が解らない。そのまま廃棄処分されるんだろうか。

 

「……馬鹿なこと言ってないで、しっかり歩きなさい。動く拡声器さん」

 

 佳奈多がそう言うと、子供たちの間から笑いが起こる。

 

「そういえば、クドの称号って何だったの?」

 

「わふ?」

 

 灯篭を持ったまま、クドが首をかしげていた。本当に犬みたいだ。

 

「ほら、バトルトーナメントでしろはに負けたじゃない。その時贈られた称号だよ」

 

 俺はちょうど見逃していたし、夏海ちゃんもしろはの勝利に興奮していたのか、特に触れてなかった。今更ながら、少し気になった。

 

「えーっと、それはー……」

 

 クドはなんかごにょごにょ言ってる。やっぱり、恥ずかしいものなんだろうか。

 

「私は覚えてるぞー! ミニ子の称号は『101匹クーちゃん』だ!」

 

 そんなクドを尻目に、葉留佳が大きな声で叫ぶ。さすが、動く拡声器だ。

 

「ううう、情けないのですー」

 

 クドは見るからに落ち込んでるけど、101匹のクドとか、一部の人にとっては天国みたいな状況だと思うけど。

 

「うむ。鷹原少年あたりはムヒョッス最高だぜ、と思っているに違いない」

 

「いや、思ってないけどさ……」

 

 そんな会話をしながら歩く。喋りながらだと、そこまで疲労感を感じないから不思議だった。

 

 

 

 

 漁港に全ての灯篭を運び終え、用意しておいたローソクを灯篭の中に入れる作業に入る。

 

 ちなみに、夏海ちゃんは島の女の子と仲良くなったらしく、ずっと一緒に作業をしていた。

 

「……夏海ちゃん、このローソク逆さま」

 

「あ、本当ですね。ぼーっとしてました」

 

「おいおい」

 

 見た感じ、夏海ちゃんより少し年下って感じかな。碧色の髪飾りとショートヘアが印象的な子だった。

 

 

「……うん、これで全部入れ終わったね。皆、お疲れ様」

 

 全ての灯篭にローソクがきちんと入っていることを確認して、ようやく漁港での作業も終わった。

 

「それじゃ、俺はちょっと箱を商店に返してくるから」

 

「はい! 羽依里さん、ありがとうございました!」

 

 夏海ちゃんたちと別れ、バイクの方に向かう。

 

「お、加藤さんとこの!」

 

 ……その矢先、漁師風の男性に捕まってしまった。嫌な予感がする。

 

「少し頼みたいことがあるんだけどよ。にーちゃんバイク持ってたよな?」

 

「は、はい。持ってます、けど……」

 

 結局その後も、俺はあちこちで用事を頼まれ、島中をバイクで駆け巡ることになった。たぶん、灯台以外のあらゆる場所に行った気がする。

 

 そして祭りの直前になって、なんとか解放されたのだった。

 

 

 

 

 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

 

 

 水平線が赤く染まり始めた頃、俺たちは神社の境内に集まっていた。

 

「祭りが始まるまでのこの独特な雰囲気、何回味わっても慣れないわよねー」

 

 周囲には俺と夏海ちゃんの他に、空門姉妹にしろは、のみきの姿がある。少し離れたところで、リトルバスターズの皆も同じようにお堂を見つめていた。

 

「今から何が始まるんですか?」

 

「夏鳥の儀よ。もう少したら、あのお堂から夏鳥の役に扮した女の子が出てきて、舞を披露しながらゆっくりと海へと向かうの」

 

「その夏鳥の後には船神輿が付き従うんだ。良一たちが担ぐんだぞ」

 

 蒼の説明を、のみきが引き継いでいた。演舞だけじゃなく、神輿も出るんだな。

 

 しばらくして祭り囃子が流れ始めた。いよいよ始まるみたいだ。

 

 やがてお堂の扉が開き、今年の夏鳥の役を任された少女が出てくる。いつもは騒がしいリトルバスターズの皆も、今は神妙にその様子を眺めていた。

 

 少女はそのまま境内の中央へゆっくりと歩みを進めると、静かに舞い始めた。なんだろう。初めて見るはずなのに、胸が締め付けられるような気がする。

 

 夏鳥の少女が舞うたびに、澄んだ鈴の音が周囲に鳴り響き、身に着けた装束が華麗に舞う。

 

 同時に、その艶やかな髪が夕日を受けて黄金色に輝く。

 

 

 ……いや、夕日を受けなくても、金色に輝いていた。

 

 

 というか、俺はあの夏鳥の少女に見覚えがある。

 

 

「……紬!?」

 

「紬さん!?」

 

 俺と夏海ちゃんは同時に大きな声を出してしまっていた。

 

 直後に顔を見合わせて口をふさぐけど、時すでに遅し。皆に注目されてしまった。

 

「な、なんで紬さんが夏鳥の役をしてるんでしょう……?」

 

「わ、わからない。そんな素振りは全然……」

 

 そう言いかけて、ふと思い出した。

 

 そういえばここ数日、紬は用事があるとかでラジオ体操に来なかったり、野球の練習に遅れて来る時があった。

 

 午前中のバトルトーナメントも見学にすら来てなかったし、もしかして、ずっと練習していたんだろうか。

 

「ふふ。紬、頑張っていたのよ」

 

 声のした方を見ると、いつの間にか静久が立っていた。どうやら、静久は全部知ったうえで秘密にしていたようだ。

 

「お祭りの一週間前に寄合で決まったみたいでね。紬、すごく練習していたのよ」

 

「でもこう言うお役目って、それこそ伝統とか、血筋とか厳しそうだけど」

 

 それこそ、やりたいと言ってできるものでもないはずだし。

 

「紬の夏鳥の役は、鳴瀬翁が推してくれたんだぞ」

 

「え、そうなの」

 

 のみきがそう教えてくれた。あの人こそ、伝統とか血筋とか言いそうだけど。

 

「あの娘こそ、誰よりも島のことを知る、鳥白島の生き字引……みたいなことを会合で言っていたらしい。あの鳴瀬翁が冗談を言うとも思えないのだが、その場の勢いで、今年の夏鳥の役は紬に決まったんだ」

 

 それを本人抜きで決めてるところがすごい。酒の席じゃあるまいし、さすが島の寄合だった。

 

 事後報告を受けた紬が、むぎゅむぎゅ言いながら頭を抱えているところまで想像できた。

 

「それにしても……」

 

 当の紬は大勢の人に見られながらも、凛とした表情で舞を続けている。見惚れてしまうほど、優雅な舞だった。

 

 普段の紬を知っていればいるほど、別人のようだった。まるで、紬であって、紬じゃないような。

 

「……まるで紬じゃないみたいだね」

 

 振り向きながら夏海ちゃんに話かける。

 

「……えっ?」

 

 ……あれ。夏海ちゃん。もしかして、泣いてる?

 

「……あ、いえその、感動しちゃって。すみません」

 

 言葉には出さなかったけど、俺の視線で気がついたのか、夏海ちゃんは手の甲でごしごしとその涙をぬぐう。

 

「まぁ、気持ちはわからないでもないけど」

 

 ズッ友の紬が頑張ってるんだし、感動する気持ちも理解できる。でも、一瞬見えた夏海ちゃんの表情は……その言葉とは裏腹に、すごくもの悲しいものに見えた気がした。

 

「ほらほら、良一たちが来たわよー」

 

 その時、蒼にそう言われて視線を前に戻す。

 

 すると、舞を終えて歩みを進める紬の後ろに船の形を模した神輿がついて出てきた。その上にはお堂のようなものもついているし、神輿舟というやつかな。

 

 それを担ぐのは、良一や天善といった、島の男たちだった。

 

「羽依里、お前は担がないのかよー」

 

「鷹原も、ほとんど住人みたいなものだろう」

 

 ちょうど横を通りかかった時、そんなことを言われた。というか、神輿が出る事すら知らなかったんだけど。

 

「全く。担ぐ資格は十分にあるというのに、情けない奴だ」

 

 そう言うのはしろはのじーさんだった。なんだろう、ふんどしにねじり鉢巻き。その逞しい肉体に、ものすごく似合っていた。

 

「すみません。来年は参加します」

 

「当然だ。ならば、今年はせいぜい、この島の祭りをその目に焼き付けるがいい!」

 

 そう言うが早いが、若い衆を先導して行った。あのじーさん、元気すぎだろ。

 

 ……待てよ。来年やるってことは、俺もあの格好をしないといけないって事なのかな。それはちょっと嫌なんだけど。

 

 

 

 その後は、その20人ほどの行列がゆっくりと石段を下りて、町へ向かう。

 

 昼間、葉留佳たちが設置した看板が順路を示しているみたいで、それに沿うようにたくさんの観光客が沿道に並んでいた。

 

 道中でも、紬は立ち止まって演舞をし、その度に金髪が華麗に舞う。

 

 一団は本当にゆっくりと海へ向かって進んでいった。

 

 

 

 

 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

 

 

 俺たちが漁港に辿り着いた時には、すっかり日も沈んでいて、その海には明かりがついた灯篭が無数に浮かべられていた。

 

「きれーなのですー」

 

「うわぁ、これは壮観っすネ」

 

 リトルバスターズの皆も、その幻想的な光景に思わず声をあげていた。

 

 その幻想的な海を前にして、紬が最後の演舞を行った後、神輿船が静かに海へ流される。

 

「あの船、本当に流しちゃうんですね」

 

「そうみたいだね。なんだか、ちょっともったいないよね」

 

「後でちゃんと役所が回収する。心配はいらないぞ」

 

 そう言うのはのみきだった。日中散々準備に走り回っていたこともあり、達成感に満ち溢れた表情をしていた。

 

 やがて船は灯篭と一緒に、ゆっくりと沖へ向かって進んでいった。これで、全ての祭事は滞りなく終了したみたいだ。

 

 

 

 

 簡単な片づけが行われる中、俺たちは紬を中心に集まっていた。

 

「ツムツム、きれいだったよー!」

 

「はい! 本当に綺麗でした!」

 

「まさか、紬が夏鳥の役をやるなんてねー」

 

 紬が夏鳥の役をすることは、本当にのみきと静久以外は知らなかったらしい。その演舞を称賛する声と同じくらい、驚きの声があがっていた。

 

「むぎゅ、さぷらいずというやつです! 驚きましたか?」

 

「うん。すごく驚いたよ」

 

 そりゃもう、思わず声が出ちゃったくらいに。

 

「でも、凄いね紬、一週間くらいの練習であそこまで踊れるなんて」

 

「む。むぎゅー……」

 

 恥ずかしそうに、衣装の袖で口元を隠していた。

 

「……昔はあれくらいは舞えないと、笑われてしまいましたから」

 

「え?」

 

「むぎゅ?」

 

 なんだろう。今一瞬、紬だけど紬じゃない誰かがその場にいたような。

 

「なぁ、紬ばっかりじゃなく、俺たちの方も褒めてくれよー。頑張ったんだぜー?」

 

 その時、ふんどし姿の良一と天善がこっちにやってきた。

 

「「美しくないので駄目です」」

 

 西園さんと藍の声がハモっていた。まぁ、気持ちはわからなくもないけど、ちょっと可哀想だった。

 

「……そうだ。こんな時ですまないが、皆に話があるんだ」

 

 その時、恭介が手を挙げて、遠慮がちに発言していた。

 

「ちょうど鳥白島チャーハンズの皆が揃っているようだから、明日の試合について話しておきたくてな」

 

 そうだった。俺たちのチーム名は鳥白島チャーハンズだった。すっかり忘れていた。

 

「明日の試合だが、朝8時半から、いつものグラウンドでいいか?」

 

「構わないと思うよ。皆もそれでいいよね?」

 

 俺は皆の意見を聞いてみる。誰も異議はないみたいだった。

 

「朝が早くて悪いな。帰りの船の都合上、明日はそのくらい余裕を持っておきたくてな」

 

 恭介の気持ちもわかる。なにしろ大人数だし、あれだけ個性的なメンバーだし。どんなアクシデントが発生するかもわからないし。

 

「帰りの船……あ! そうでした! すみませーん!」

 

 その時、夏海ちゃんが思い出したように、近くの役所の人に話しかけていた。

 

「今日の最終便って、何時になりますか?」

 

 

 

 

 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

 

 

 役所の人に船の時間を聞いて、俺と夏海ちゃんはオッサンたちの見送りに港へ向かった。

 

 俺たちが到着した時、ちょうど最終便がやってきたところだったらしく、次々と観光客が乗り込んでいた。

 

 そのタラップに近い所に、オッサンや早苗さん、岡崎さん一家の姿があった。

 

「ん、もしかして、見送りに来てくれたのか?」

 

 俺たちの姿を見つけて、朋也さんがそう声をかけてくれた。

 

「明日の試合、頑張れよ。できたら見てやりたかったけど、仕事があってな」

 

 続けて、申し訳なさそうにそう言ってくれた。大人の夏休みは短い。わかっていたことだけど、仕方がないことだ。

 

「いえ、朋也さんたちもお元気で」

 

「ああ、ありがとうな。良い島だし、また来るよ」

 

「汐ちゃんも、元気でね」

 

「うん。さようなら」

 

 俺が朋也さんたちと別れのあいさつを交わしている間、夏海ちゃんは少し後ろの方でその様子を見ていた。見送りに行きましょうって言ったのは夏海ちゃんのはずなんだけど、どうしたんだろう。

 

「……オッサン、先に乗ってるぞ」

 

「ああ」

 

 その様子に何かを察したのか、岡崎さん一家と早苗さんの四人は一足先早く船へと乗り込んでいった。

 

 その頃になると、船に乗り込む人はまばらになり、俺と夏海ちゃん、オッサンの三人だけが埠頭に残されていた。

 

「ほら夏海、こっちに来な」

 

 三人だけになったのを見計らって、オッサンが夏海ちゃんを手招きする。それに応えるように、夏海ちゃんはゆっくりと歩み寄ってくる。

 

「明日の試合、頑張れよ」

 

「は、はいっ……」

 

 オッサンが夏海ちゃんの肩に手を置いて、優しく言っていた。なんだかんだで、俺たちのチームの中でオッサンが一番気にかけていたのは夏海ちゃんだった気がする。

 

 夏海ちゃんは必死に堪えてるけど、今にも泣き出しそうだ。たぶん、さっきまでは汐ちゃんもいたし、泣き顔を見られないように離れていたのかな。

 

「あー、俺様は子供の涙には弱ぇんだ。だから泣くな」

 

 涙をこらえながら鼻をすすってる夏海ちゃんを見かねてか、オッサンはポケットから四つ折りにした紙を取り出して、手渡す。

 

「……あの、これは?」

 

「俺様んとこの住所が書いてある。泣くほど心残りがあるなら、それを全部明日の試合にぶつけやがれ。それで、その試合結果を手紙で送ってこい」

 

「あ……」

 

「ただし、俺様は負けた試合の言い訳なんて興味ねぇからな。手紙を送ってくるなら、勝利報告だけにしろ」

 

「わ、わかりました! 絶対、絶対勝ちます!」

 

「おう。その意気だぜ」

 

 笑顔になった夏海ちゃんの頭をぽんと撫でてから、オッサンは俺の方に向き直る。

 

「それとな、羽依里」

 

「え?」

 

 ……オッサンから初めて名前を呼ばれた気がする。

 

「お前らが組むバッテリーってのは、お互いの信頼関係が一番大事だ。明日の試合は、羽依里がしっかり夏海をリードしてやれ。負けんじゃねぇぞ」

 

「わかってるよ。オッサン、ありがとうな」

 

「ふん、礼を言われるほどのことはやってねぇよ」

 

『宇都港行き最終便。間もなく出港いたします』

 

 その時、乗船を急がせるアナウンスが流れた。

 

「……おっと。さすがに限界だな」

 

 アナウンスが鳴り響く中、オッサンは急ぎタラップを渡っていく。

 

「……いい結果を期待してるぜ。元気でな」

 

「はい! ありがとうございました!」

 

 オッサンは俺たちに背を向けたまま、右手を軽く上げながら船内へと入っていった。

 

 俺たちはその後、船が島から遠く離れるまで見送っていた。

 

 

 

 

 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

 

 

 船を見送った後、俺たちはしろは食堂へ向かった。

 

「お祭りの夜なのに、しろはさんの食堂は開いてるんですか?」

 

「うん。俺たちやリトルバスターズの皆のために、少しの間だけ店を開けてくれてるらしいんだ」

 

「嬉しいです。すごくお腹空いてましたし」

 

 その頃になると、夏海ちゃんはすっかりいつもの調子だった。

 

「しろはー」

 

「しろはさーん」

 

 食堂の扉を開けて中に入ると『本日、トンカツ定食かアジの開き定食の二択です』と書かれた張り紙が目についた。

 

「あれ、今日はメニューが二種類あるんだ?」

 

「うん。本当はトンカツ定食だけだったんだけど、漁師さんからアジの開きをたくさん貰ったから、急遽追加したの」

 

 カウンターに並んで座る真人と謙吾、それに小毬さんの三人にトンカツ定食を提供しながら、しろはがそう教えてくれた。

 

 店内を見渡すと、カウンターの三人の他に、座敷の方にクドと佳奈多が座っていた。この二人はアジの開き定食を食べていた。

 

「クド、うまいもんだね」

 

「はい。おじーさまが日本通なので、教え込まれました」

 

 クドは箸を使ってアジの小骨を上手に取っていた。すごく手慣れた感じだった。

 

「クドリャフカ、しょうゆ取って」

 

「はい! おしょうゆです!」

 

 一方で、佳奈多がクドからしょうゆを取ってもらっていた。アジの開きってそれなりに塩味がついてる気がするけど、物足りなかったのかな。

 

「羽依里たち、いつまでも人が食べるのを見てたら失礼だよ。早く座って」

 

「ああ、うん」

 

 しろはにそう注意されて、俺たちはカウンター席に向かい、小毬さんの隣に並んで座る。

 

「ふたりとも、どっちの料理にする?」

 

「じゃあ、俺はトンカツ定食にしようかな」

 

「私はアジの開き定食にします!」

 

 おしぼりを受けとりながら、各々の注文を済ます。食事が用意されるまでの間、おのずと同じカウンターに座る謙吾と真人のやり取りが気になった。

 

「なぁ謙吾、あれ見てみろよ。あそこにあるの、クライストのサインじゃね?」

 

「ん? どれだ?」

 

 真人が食堂の一角を指さし、謙吾の注意がそちらに向く。その直後、謙吾のトンカツ一切れを真人がかっさらっていった。

 

「サインなんて、どこにもないじゃないか」

 

「悪い、見間違いだったぜ」

 

 その時、真人たちのやりとりを見ていた小毬さんが、こっそりと自分のトンカツを一切れ、謙吾の皿に移していた。まるで天使の所業だった。

 

「おい謙吾、あれはなんだ」

 

 それで味を味を占めたのか、その後も同じやりとりが繰り返される。真人が謙吾の気をそらし、トンカツをかっさらう。その減った分を健気に小毬さんが補填する。

 

 どうしよう。止めた方が良いだろうか。このままだと、小毬さんのトンカツがなくなってしまう。

 

「……ちょっと真人、謙吾のトンカツ取っちゃ駄目だよ。さっきから、ずっと見えてるんだからね」

 

 そんなことを考えていると、しろはがジト目で真人の方を見ながらそう言っていた。カウンター越しのはずなんだけど、なんでしろはには見えるんだろう。

 

「え、というかこれ、食っても減らない魔法のカツじゃなかったのか!?」

 

「わけのわからないこと言ってないで、食べたのと同じ数だけ、小毬に返してあげて。さもないと、今日の食事代は全部真人の筋肉で払ってもらうよ?」

 

「お、おう……」

 

 しろはに気圧されて、真人が素直に言うことを聞いていた。食べ物に関しては、しろはも引かなかった。

 

 

 

 

 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

 

 

 夕飯を堪能した後、加藤家に帰宅する。鏡子さんはまだ祭りの後片付けが終わらないのか、はては打ち上げに行っているのか、家には誰も居なかった。

 

 手早く入浴を済ませた後、俺は自室で野球のメンバー表と向き合っていた。

 

 明日はいよいよリトルバスターズとの試合だ。オッサンと約束した以上、良い勝負をしたい。

 

 でも、明日の試合が終わるということは、リトルバスターズの皆との別れを意味する。

 

 彼らと過ごしたのは、ほんの数日だったけど、ものすごく密度の濃い数日間だった気がする。

 

 今日の夏海ちゃんじゃないけど、明日の別れの時、泣かずにいられるかな。

 

「……って、俺が暗くなってどうするんだ」

 

 ぱしぱしと頬を叩いて、気合いを入れる。感傷的になる前に、明日の試合のことを考えなきゃ。

 

「できれば夜のうちに、打順を決めておきたいけど……」

 

 いくつかパターンは考えたけど、どうもパッとしない。

 

「うーん……」

 

 悩んだ結果、俺は夏海ちゃんに相談することにした。

 

 なんだかんだで、鳥白島チャーハンズ唯一の経験者だし。いいアドバイスをもらえるかもしれない。

 

「夏海ちゃん、まだ起きてる?」

 

 俺は夏海ちゃんの部屋の前に行き、ふすま越しに声をかける。

 

「はい! 起きてますよ!」

 

「入ってもいい? 明日の試合のことで、ちょっと相談に乗って欲しいことがあるんだけど」

 

「いいですよ、どうぞ!」

 

 許可をもらって部屋に入ると、夏海ちゃんは絵日記を書いていた。

 

「あ、今日も絵日記書いてたんだね」

 

 確かこの島に来てすぐ、藍から手渡されたんだっけ。

 

「もちろんです。途中でやめたりなんかしたら、藍さんに何をされるかわからないですから」

 

 夏海ちゃん、笑顔が引きつってるよ。やっぱり怖いのかな。

 

「それで、どうしたんですか?」

 

「明日の打順についてなんだけどさ。どうもうまくまとまらなくて……」

 

 俺は自分の部屋から持ってきたメモを夏海ちゃんに見せる。

 

「そうですねー。やっぱり、一番は蒼さんじゃないでしょうか」

 

「え、蒼?」

 

 俺の中では、天善か良一くらいにしようと思ってたんだけど。

 

「それじゃ、一番バッターを蒼にするとして、二番は?」

 

「二番はですねー……」

 

「うんうん」

 

 その後、俺と夏海ちゃんは夜遅くまで打順表と向き合っていたのだった。

 

 

 

 

第三十五話・完




第三十五話・あとがき

おはこんばんちわ。トミー@サマポケです。

今回はバトルトーナメント(バトルランキング)の続きからの、祭りの準備、そして祭り本番へと流れていきました。

バトルトーナメントの間は正直かなり遊んでしまいました。笑って許してもらえたら幸いです。

決勝戦はあえて引き分けにしました。先の新聞紙ブレード大会も一勝一敗のの引き分け、今回のバトルトーナメントも引き分けということで、真の決着(?)は、野球の試合に引き継がれた形になります。

そして皆さんが今回一番気になったのは、祭りで紬が夏鳥の役をやったことじゃないでしょうか。

最初はしろはを予定していたのですが、野球の練習に食堂の準備にと多忙なことを踏まえると、なかなか厳しい日程になりまして。

かといって蒼は空門の家の人間ですし、鴎は島民じゃないし……と考えた結果、紬に白羽の矢が立ちました。まだ堀田ちゃんは幼すぎますし。

実はこの小説では、Pocketルートのラストシーンで紬がクマのぬいぐるみを持って歩いていたのに倣い、クマが本体の『紬』と、元々の『ツムギ』がお互いに記憶を共有しつつ、両方存在しているという設定にしています。これはオリジナル設定です。

普段はほとんど『紬』の方が皆の前に現れているのですが、これまでに二回だけ、『ツムギ』が出てきている回があります。

一回目は灯台でのお弁当大会の時です。灯台の中に、クマのツムギちゃんが置いてあったのを覚えていらっしゃいますでしょうか。

二回目は今回の夏鳥の儀の時です。羽依里と会話をした時に、つい本来の口調が出てしまい、慌てて誤魔化していました。

ちなみに、なぜ祭りのタイミングで入れ替わることになったのかは、本編の紬ルートで、祭りの日に紬がどうなっていたかを思い出していただけるとわかっていただけるかもしれません。
原作はこの8/21の前後、紬は姿を消していました(実際にはクマの姿に戻っていたらしいです)。つまり、力が弱くなる日らしいですね。今回はツムギが代役を果たしましたが、記憶は共有しているので問題なし、といった感じで受け取ってもらえると助かります。

また、今後は入れ替わる予定はないので、これからは基本的にいつもの『紬』になると思います。

余談になりますが、羽依里君とデートに行ったのはちゃんと『紬』の方ですので、ご安心ください。

さて、次回はいよいよリトルバスターズとの練習試合です。リトバスのBGM音源をお持ちの方は、試合の間はぜひとも『死闘は凛然なりて』を聞きながら読んでいただけると、臨場感が増すと思われます(現に、聞きながら書いてます)。

ついにここまで来ました。この試合がリトルバスターズとのクロスオーバーの集大成であり、最終目標なので、全力で頑張らせていただきます。


■今回の紛れ込みネタ(リトバス、CLANNAD以外)
・変わったピンクの犬
Rewriteよりちびもすです。相変わらずの強さでした。もっす!

・ステゴザウルス、がおがお。
AIRより、ステゴウルスTシャツを着た時の台詞ですね。

・港の観光客
AIRより佳乃と聖さん、kanonより祐一、あゆ、名雪にこっそり登場してもらいました。一部名前出てましたし、こっそりも何もありませんけどw
また、今回は徳田や堀田ちゃんにも登場してもらってました。総出演ですね。

・良一や謙吾と一緒にのみきに撃たれた上半身裸の観光客
眼鏡をかけているという描写くらいしかありませんが、どっちでしょうか。高松でしょうか。高城でしょうか。そのへんはご想像にお任せします。

・食堂に置いてあるクライストのサイン
AB!より、某竹山のサイン……かもしれません。ぜひ、クライストと呼んであげてください。

以上になります。いくつお気づきになられたでしょうか。
今回も、最後まで読んでいただいてありがとうございました!
感想など頂けましたら、泣いて喜びます。
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