Summer Pockets #2   作:トミー@サマポケ

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第三十八話 8月22日(後編)

 

 

           1 2 3 4 5 6 R

 

 リトルバスターズ  0 3 2 0 0 - 5

 鳥白島チャーハンズ 0 0 1 2 2   5

 

 

 

 五回裏の攻撃で俺たちはなんとか同点に追いつき、勝負は延長戦へと突入する。

 

 延長戦を始める前に10分間の休憩時間が設けられ、その際に徳田スポーツから両チームへ、飲み物の差し入れがあった。

 

 氷水で冷やされていたらしいスポーツドリンクは冷たくて、すごくありがたかった。

 

 

 

「……よし皆、このまま押し切ろう!」

 

「「おーーー!」」

 

 休憩時間の最後に、もう一度円陣を組んで気合いを入れた後、俺たちは各ポジションへ散っていった。

 

 ちなみに、前の回に代打で打席に入った静久は、天善に代わってそのままショートの守備についてもらった。

 

 

 

『お待たせしました。それではただ今より、延長戦を開始します。六回表、リトルバスターズの攻撃。迎えるバッターは6番、井ノ原さんです』

 

「よし、今一度、筋肉打法だ!」

 

 西園さんに名前を呼ばれ、真人がブンブンとバットを振りながら打席に入る。相変わらず、すごく逞しい筋肉だ。

 

「(夏海ちゃん、ここは低めに集めよう)」

 

 キャッチャーの俺はそうサインを送り、ミットを低めに構える。夏海ちゃんもそれに頷き、投球モーションに入る。

 

「行きますよ! えい!」

 

「……ふん! ありゃ!?」

 

 真人がバットを振る。強い風切り音が聞こえてくる程の強烈なスイングだったけど、空振りだった。

 

「えい!」

 

 続く二球目。夏海ちゃんには先程と同じコースを狙って投げてもらう。今度は見極められ、ボール判定だった。

 

 そして三球目。俺は若干内側にミットを構える。

 

「……よし、もらったぜえぇぇーーー!」

 

 しかし、そのボールを狙われた。

 

 真人の筋肉から生み出されるパワーによって半ば強引に打ち返されたボールは、青空に高々と舞い上がった後、観客席を遥かに超えていく。

 

「うひゃーーー。すごーい……」

 

 ライトの鴎も一度はボールを追いかけたものの、あまりの飛距離に打球を見送ることしかできなかった。本当に、目が覚めるようなホームランだった。

 

「いやっほーう! 見たかよ、謙吾!」

 

 その結果を受けて、真人はベンチに向かって高らかに叫びながら、ダイヤモンドを回る。俺も夏海ちゃんも、ただ笑うしかなかった。それくらい、気持ちの良い飛びっぷりだった。

 

 

 

『ま、まさかの先頭打者アーチだったな。これで5-6。再びリトルバスターズがリードしたぞ』

 

『鳥白島チャーハンズはいきなり出鼻をくじかれましたね。続くバッターは7番。三枝さんです』

 

 実況ののみきが動揺の色を隠せない中、次の打者である葉留佳がバッターボックスに立つ。

 

「ほらほらセンターバーック! 二者連続ホームランだぞー!」

 

 びしっと予告ホームランのポーズまで決めていた。あの自信はどこから出てくるんだろう。葉留佳、まだノーヒットなのに。

 

 それより、真人にホームランを打たれた夏海ちゃんのメンタルは大丈夫だろうか。

 

 俺はそう思って、夏海ちゃんの表情を見る。まっすぐに葉留佳を見据えているし、影響はなさそうだ。

 

「(夏海ちゃん、ここだけど……)」

 

 夏海ちゃんと再びサイン交換をする。あえて、ここはど真ん中にナックルを投げてもらうことにした。

 

「……葉留佳さん、行きますよ!」

 

「とーーーう! って、ありゃーーー!?」

 

 そして俺たちの思惑通り、葉留佳は初球のブレ球に手を出し、大きく打ち上げてしまう。

 

「おおー。いらっしゃいませー」

 

 そのボールはレフト方向へ飛び、紬が笑顔でキャッチしていた。これでワンアウトだ。

 

 

 

『守備はすごいですが、相変わらず打撃はからっきしの三枝さんはレフトフライに終わりました』

 

「うう、みおちんの言い方がヒドい……」

 

 葉留佳は泣きながらベンチへ戻っていった。西園さんって、時々心に刺さるようなこと言うよね。

 

『続くバッターは8番。能美さんのようですが……ここでリトルバスターズも代打を使うようです』

 

「え、代打!?」

 

 確かにクドも打ててないから、この場面での代打は十分ありだと思う。でも、誰がいたっけ。

 

「能美に代わって、代打! 小毬!」

 

「ようしっ。がんばりますっ!」

 

 困惑していると、恭介によって小毬さんの代打が宣言された。彼女の存在をすっかり忘れていた。

 

「小毬さーん、私の代わりに、頑張ってくださーい!」

 

「頼んだぞ! 小毬ー!」

 

 ベンチの皆に応援されながら、小毬さんが打席に立つ。どうしよう。彼女の実力は未知数だ。

 

 夏海ちゃんも、どうしましょう? みたいな顔で俺の方に視線を送っていた。

 

 「(……うん。夏海ちゃん、ここは落ち着いて行こう)」

 

 よく考えてみたら、打者がクドから小毬さんに代わったからと言って、そこまで劇的に打撃力が上がるとは思えない。

 

 俺はミットを低く構えて、夏海ちゃんのボールを待つ。

 

「……えい!」

 

 第一球はフォークボールだった。

 

「ほわぁっ!?」

 

 そのボールを小毬さんは豪快に空振っていた。いきなり変わった軌道に驚いたのか、思いっきり尻餅をついていた。

 

「え、ちょっと小毬さん大丈夫?」

 

 ボールを捕球した直後、俺は思わず小毬さんに話しかけていた。

 

「う、うんー。びっくりさせてごめんねぇ」

 

 立ち上がった小毬さんはお尻についた砂をはたき落としながら、苦笑いを浮かべていた。正直、彼女が運動できるイメージはない。どちらかというと、練習場の端っこで談笑しながらお菓子を食べているほうがしっくりくる。

 

「さあ、なっちゃん、どうぞ投げてきてください!」

 

 小毬さんは素振りを何度かして、気合を入れ直していた。本人がそう言うんだし、こっちも試合を進めよう。

 

 そう思いながらミットを構える。それを見て、夏海ちゃんが投球モーションに入る。

 

「……えい!」

 

「はいっ!」

 

 夏海ちゃんの投げた直球を、小毬さんが打ち返した。しかし、そのボールは力なく、転々と内野を転がる。これはショートゴロだ。

 

「蒼ちゃん、行くわよ!」

 

 待ち構えていた静久がそのボールを捕球し、一塁へと投げる。これでツーアウ……ってあれ!? 小毬さん速い!?

 

「一塁、セーフ!」

 

 一塁塁審の斉藤さんがそう判定を下していた。特に静久の送球が遅れたわけでもないのに。純粋に小毬さんの足が速かった。

 

「やったよー」

 

 一塁上の小毬さんはリトルバスターズのベンチに向かって、朗らかに手を振っていた。もしかして、厄介なランナーを出してしまったかもしれない。

 

 

 

『よもや、彼女の足があそこまで速いとは思わなかったぞ。思わぬ伏兵だな』

 

『一塁にランナーが出たところで、次のバッターは9番、鈴さんです』

 

『むむむ……次もなかなかに厳しい相手だな。ここを併殺に抑える事ができれば最高なんだが……』

 

 のみき、簡単に言ってくれるけど、併殺ってなかなかに難しいんだから。

 

「りんちゃーん、ファイトですよー」

 

 打席に立つ鈴を、一塁から小毬さんが応援していた。あの状況、すごくやりにくいだろうな。

 

「……こい、なつみ」

 

 一塁の方に一度だけ手を振り返して、鈴がバットを構える。もう何度目の勝負になるだろうか。

 

「鈴さん、行きますよ! えい!」

 

 しかし、相手が鈴と言うこともあって、夏海ちゃんもどうしても慎重になる。ギリギリを狙ってボールを投じ続けるけど、三球続けてボール判定になってしまった。

 

「むむむ……えい!」

 

「もらった……! ほわちゃーーーっ!」

 

 そして、明らかに悩みながら投じた四球目。ど真ん中のナックルボールを狙い打たれた。

 

「うおおおーーーっ!」

 

 センターとライトの間に落ちるヒットだった。良一が全力で追いかけて捕球するけど、すでに小毬さんは三塁へ到達。鈴も一気に二塁へ到達していた。これでワンアウト二、三塁。ピンチが広がってしまった。

 

 

 

『ま、また打たれてしまったか……ああもヒットを量産するピッチャーというのも、なかなかいないんじゃないか?』

 

『ポジションの関係で9番打者になってはいますが、3番打者辺りでも十分通用する打撃成績ですね』

 

『全くだ。こっちとしては下位打線だからと気が抜けないじゃないか……』

 

『野村さんの心配はさておき、次は打順が先頭に戻りまして、1番、来ヶ谷さんです』

 

 ……まずい。このピンチで来ヶ谷さんなのか。のみきじゃないけど、本当にリトルバスターズの打線は気が抜けない。

 

「……そうです。皆さん、ここはまたゆいちゃん作戦で行きましょう!」

 

 その来ヶ谷さんが打席に立つのを見て、藍が皆にそう呼びかけていた。しばらくして、再び観客席を含めた会場全体が『ゆいちゃん』コールに包まれる。

 

「「ゆーいちゃん!」」

 

「「ゆーいちゃん!」」

 

「ゆいちゃん頑張ってー」

 

 いつの間にか三塁の小毬さんまで混ざっていた。なんにしても、これは着実に来ヶ谷さんにダメージを与え、その集中力を乱しているはずだ。今のうちに仕留めないと。

 

 俺はそう考えつつ、夏海ちゃんに投球を促す。

 

「はい! いきますよ……えい!」

 

 すぐに投球モーションに入り、第一球。外角ギリギリを狙うナックルボールだ。

 

「……フッ。残念だが、今回は対策として耳栓をしているぞ」

 

 来ヶ谷さんはそう言うと、初球を華麗に打ち返す。

 

「あ!」

 

 俺と夏海ちゃんは同時に打球の行方を追う。勢い良く打ち返されたボールは、ショートの静久の頭上を越えていく。これはまずい。

 

「帰ってきたよー」

 

 ボールが地面に落ちたのを見て、三塁を蹴った小毬さんがホームイン。これで2点差だ。

 

「鳴瀬さん、いくわよ!」

 

 レフトの紬からボールを受けた静久が三塁へとボールを送るけど、鈴は余裕でセーフだった。これでワンアウト一、三塁だ。

 

 

 

『5-7。これで2点差か……皆、頑張ってくれ……』

 

 のみきの祈るのような実況が聞こえ、同時に観客席からの声援にも悲痛なものが混じる。確かに2点取られたのは痛いけど、取られてしまったものはしょうがない。切り替えて行こう。

 

『続くバッターは2番。恭介さんです』

 

 それにしても、相変わらず怖いバッターが続く。恭介にも今日はかなり打たれているし。

 

「恭介おにーさん、いきますよ!」

 

 敬遠という手段も一瞬頭をよぎったけど、夏海ちゃんは勝負する気満々みたいだ。ここは俺も、夏海ちゃんの心意気を買うことにしよう。

 

「えい!」

 

 夏海ちゃんが意を決して投じた一球目はストライク。続く二球目、三球目は共に際どい位置だったけど、ボール判定だった。

 

 恭介は選球眼があるし、どうしてもボール球が先行してしまう。

 

「フハハハハ!」

 

 その時、不敵な笑いが聞こえた。

 

 見てみると、一塁にいたはずの来ヶ谷さんが一瞬で二塁へ移動していた。これでワンアウト二、三塁だ。

 

「え、いつの間に盗塁したんですか?」

 

「ただのイリュージョンだ」

 

 ベースカバーにつくはずの藍も動けず、俺や夏海ちゃんも全く反応できなかった。あの常人離れした運動能力は一体何なんだろう。

 

「むぎぎぎぎ……」

 

 夏海ちゃんも悔しがっていたけど、気にしてもしょうがない。後続を抑えればいいんだ。

 

「……えい!」

 

 一呼吸おいての、四球目。恭介は低めのナックルにタイミングをずらされ、大きく打ち上げていた。

 

「……しまった。これは駄目か」

 

 ちょうど俺の真上にボールが来たので、マスクを外しつつしっかりと捕球。なんとか恭介を打ち取った。夏海ちゃんも大きく息を吐いて、これでツーアウトだ。

 

 

 

『なんとか恭介氏を打ち取ったか。息が詰まるな、この試合は』

 

『息が詰まっているのは野村さんだけですよ』

 

 二人のやりとりに観客席から笑いが漏れる。この二人のやりとり、段々と漫才みたいになってきた。

 

『次のバッターは3番の直枝さんですね。今のところノーヒットですが、頑張ってください』

 

「西園さん、それ言わないでよ。気にしてるんだからさ……」

 

 ぶつぶつ言いながら理樹がバッターボックスに立つ。言われてみれば、確かに彼もノーヒットだった。

 

「いきます! えい!」

 

 そして夏海ちゃんの投じた一球目は、内角ギリギリに決まるナックルボール。先の打席で、理樹にナックルが有効だったのを覚えているみたいだ。

 

「えい!」

 

 続く二球目。同じくナックルボール。理樹はそれをうまく打つも、ボテボテのサードゴロだった。

 

「……ほい」

 

 しろはが捕球して、そのまま一塁へボールを送り、理樹をアウトにする。これでスリーアウト。なんとかこれ以上の失点は防ぐことができた。

 

 

 

           1 2 3 4 5 6 R

 

 リトルバスターズ  0 3 2 0 0 2 7

 鳥白島チャーハンズ 0 0 1 2 2 - 5

 

 

 

『それでは六回裏。鳥白島チャーハンズの攻撃です』

 

『せっかく追いついたというのに、重たい2点を加えられてしまったな』

 

『後がない鳥白島チャーハンズ、先頭打者は9番、夏海ちゃんからですね』

 

「例えデッドボールになろうとも、塁に出てきます!」

 

 延長戦だから、この回に追いつけなければ当然そのままゲームセットだ。それを理解している夏海ちゃんは決死の覚悟でバッターボックスに立つ。

 

 そして相手投手に鋭い眼光を向けるけど……そこに鈴の姿はなかった。

 

「あれ?」

 

『……リトルバスターズ、ここでピッチャーの交代をお知らせします。鈴さんに代わりまして、小毬さんです』

 

 その時、西園さんのアナウンスが響く。

 

 見ると、鈴はクドに代わってレフトの守備についていて、鈴の代わりに小毬さんがマウンドに上がってくる。

 

「え、小毬さんって投げれるんですか!?」

 

「うんー。りんちゃんに習って、ほんのちょっとだけね」

 

 小毬さんが投球練習をするため、球審の指示で夏海ちゃんが一旦打席を離れる。

 

 ……それにしても、これは予想外の展開だ。まったくデータがない。

 

「理樹君、リードよろしくねぇー」

 

「うん。小毬さん、ゆっくりでいいからね!」

 

 その後、数回の投球練習をした後、試合が再開される。

 

 小毬さんの投球、どんな感じなんだろう。俺たちはベンチから、固唾を呑んで夏海ちゃんの打席を見守っていた。

 

「……はいっ!」

 

 小毬さんが振りかぶって、第一球。

 

「ストライク!」

 

 すごく微妙な位置に決まったけど、球審の斉藤さんによると、ストライク判定。

 

 球威は夏海ちゃんのそれと同じくらいだけど、コントロールは上かもしれない。

 

「はいっ!」

 

「えい!」

 

「……はいっ!」

 

「えーい!」

 

 その後も、夏海ちゃんは小毬さんのボールを必死に見て、時にはファールで粘りながら、実に8球ものボールを小毬さんに投げさせていた。

 

 もしかしなくても、夏海ちゃんは鳥白島チャーハンズの皆に小毬さんの投球を見せるため、頑張ってくれてるんだろうか。

 

「……ストライク! バッターアウト!」

 

「あう……」

 

 続く9球目。小毬さんの投球が内角の絶妙な所に決まり、三振に倒れた夏海ちゃんがベンチに戻ってくる。

 

「夏海ちゃん、気にしないで!」

 

「は、はい! ありがとうございます!」

 

 夏海ちゃんはベンチでは努めて明るく振る舞っている。俺たちもそれに合わせるように、空気を明るくする。

 

「ここからは打順もトップに戻るし、蒼がやってくれるよ」

 

「そうです。蒼ちゃんにお任せですよ」

 

「ちょっと二人とも、それってすごいプレッシャーなんだけど」

 

 蒼が苦笑いを浮かべながら、バットを手に立ち上がる。

 

「あ。蒼さん、ちょっと待ってください」

 

 そんな蒼を、夏海ちゃんが呼び止める。

 

「え、どうしたの?」

 

「他の皆さんも聞いてください。小毬さん、たぶんチェンジアップしか投げられないんだと思います。あれだけ投げても、球種を変えてきませんでした」

 

「そうなのか?」

 

「はい! コントロールはすごく良いですけど、球筋は変化しないので、惑わされずによく狙えば打てるはずです!」

 

 そして、投手視点からそう教えてくれた。これは俺たちにとって、心強いアドバイスだ。

 

「……ありがと。夏海ちゃんの助言、無駄にはしないから!」

 

 助言を受けた蒼は、夏海ちゃんに笑顔を向けながら、打席へと向かっていった。これは小毬さんも、最初に夏海ちゃんを相手にしたのはアンラッキーだったかもしれない。

 

 

 

『粘られましたが、小毬さんが夏海ちゃんを三振に切って取りました。これでワンアウトです』

 

『だが、これで鳥白島チャーハンズも打順1番に戻り、蒼の打席だ。次はそうはいかないぞ』

 

「あおちゃーん、お手柔らかにねー」

 

 小毬さんがマウンドから蒼に手を振っていた。本当に独特な空気を纏ってる人だ。

 

「なんだか調子狂うわね……うりゃあっ!」

 

 そんな中、蒼は夏海ちゃんからの助言を元に、二球目のボールを狙い打った。

 

「ほわぁっ!?」

 

 打たれた小毬さんは目をドーナッツのように丸くしながら打球の行く先を追う。ボールはセンター前にポテンと落ち、その間に蒼は一塁へ滑り込む。これでワンアウト一塁だ。

 

 

 

『鳥白島チャーハンズ、ランナーが出ました。続くバッターは2番、藍さんですね』

 

『ああ。藍には何が何でも、蒼に続いてもらわないとな』

 

「言われなくてもそのつもりです」

 

 そうは言っているけど、藍はバントの構えだった。ツーアウトにしてでも、確実に得点圏にランナーを進ませる作戦で行くんだろうか。

 

「な、なんだぁ……バントなら、そこまで怖がらなくてもいいよねぇ。あいちゃん、いきますよー」

 

 その様子を見て、小毬さんは少し安心した様子で一球を投じる。

 

 

「……かかりましたね。ていっ!」

 

 次の瞬間、藍はバントの構えを解いて、思いっきりバットを振る。いわゆる、バスターと言うやつだった。

 

「えええーーー! あいちゃん、それひどいーーー!」

 

 小毬さんの絶叫が響く中、大きく飛んだ打球はレフト前に落ちる。藍が一塁に到達すると同時に蒼も二塁へ進み、これでワンアウト一、二塁だ。

 

 

 

『鳥白島チャーハンズ、チャンスが広がりました。迎えるバッターは3番、三谷さんです』

 

「よし、また打ってやるぜ!」

 

『頼んだぞ良一! ここで決めて男になれ!』

 

 実況席に座ってることを忘れてるんじゃないかってくらい、のみきが気合いを入れて良一を応援していた。まぁ、気持ちはわからなくもないけど。

 

「良一君、いきますよー……はいっ!」

 

 理樹の指示だろうか。小毬さんはボールを低めに集めてきた。

 

 対する良一はそのボールを二球続けて見逃す。初球は外れ、二球目はストライク判定だった。

 

「ああっ!?」

 

 その二球目のボールを受けた直後、理樹の声が響き渡った。見ると、それぞれ一塁と二塁にいた空門姉妹が揃って盗塁をしていた。まさかのダブルスチールだった。

 

「蒼ちゃん、お見事です」

 

「藍もさすがねー。タイミング、ピッタリじゃない」

 

「……羽依里、いつの間に指示を出したんだ? 思いっきりやられたぞ」

 

 恭介がそう感心していたけど、俺は別に指示なんて出してない。まさに、双子の以心伝心が為せる技だった。

 

 何にしても、これでワンアウト二、三塁。更にチャンスが広がった。

 

 

「空門さんちの双子ちゃん、やるねぇ」

 

「三谷のせがれ、ここで一発出れば、サヨナラだぜ!」

 

 長打で同点、ホームランでサヨナラという場面がやってきたせいか、おのずと観客席のボルテージも高まっていた。

 

 

「……夏海ちゃん、良一ちゃんにブーストをかけるため、例のアレをもう一回お願いします! 今度はより一層可愛らしく!」

 

「えええ、もう一回ですか!?」

 

 そんな中、藍が二塁から叫んでいた。呼ばれた夏海ちゃんはベンチから飛び出して、思いっきり嫌そうな顔をしていた。

 

「早くしてください! このままだと、最悪ダブルプレーで試合終了ですよ!」

 

 ちょっと藍、縁起でもないこと言わないでほしいんだけど。

 

「わ、わかりました……が、がんばって、おにーちゃん♪」

 

「うおおおーーー! 妹よーーー!」

 

 またしっかりとブーストがかかったらしく、良一のバットが快音を響かせた。

 

「ほわぁーーー!?」

 

 小毬さんが打球の行く先を見つめる。大きく飛んだボールはライト前に落ちる。

 

「くそっ……良一、やるじゃないか」

 

 恭介がそのボールを素早く捕球し、一塁に投げるも……セーフの判定。その間に三塁の蒼が生還し、1点を返した。

 

 藍も三塁まで進み、ますますチャンスが広がった。

 

 

「よーっし、あと1点よー!」

 

 生還した蒼をハイタッチで迎えていると、ベンチの端ですすり泣く声が聞こえてきた。

 

「う、うう……」

 

「辛かったですね。ナツミさん。よしよし」

 

 見てみると、夏海ちゃんが紬にすがりついて泣いていた。良一を打たせるためとはいえ、二度目となると、さすがに堪えたんだろうか。

 

 そんな夏海ちゃんには悪いけど、妹ブーストのおかげでワンアウト一、三塁。最高の場面で4番の鴎を迎えることができる。

 

 

 

『リトルバスターズ、一転サヨナラのピンチを迎えてしまいました。そして迎えるバッターは4番。今日全打席でヒットを放っている、久島さんです』

 

『ちなみに、西園さんも冷静を保っているように見えるが、さっきから必死に汗をぬぐっているんだぞ』

 

『野村さん、バラさないでください。そう言う貴女こそ、六回の表には半分涙目だったじゃないですか』

 

 この二人のチーム愛はこの際置いといて、ここは4番の鴎に試合を決めてもらうしかない。

 

 

「頼んだぞ、鴎!」

 

「期待してるわよー!」

 

「頼むぞ、助っ人外国人!」

 

 

 ベンチから観客席から、期待に満ちた声援が送られる。鴎の今日の成績を見れば、それも納得だ。

 

「小毬さん、落ち着いて行こう!」

 

「り、理樹君、頼りにしてるからねぇ……」

 

 見た感じ、今回も塁を埋める作戦は取らないらしい。下手に敬遠していたら、前の打席みたいにまた敬遠球を打たれてしまうかもしれないし。

 

「勝負だよ! コマリマックス!」

 

「かもちゃん、いきますよー……はいっ!」

 

 小毬さんが振りかぶって、第一球。

 

「てりゃーーー! って、あれー?」

 

 ……明らかに遅い球だったけど、鴎は空振っていた。

 

「はいっ!」

 

「今度こそー! って、ありゃーーー?」

 

 どうしたんだろう。ライジングニャットボールですら打ち返したはずの鴎が、小毬さんの投球に苦しんでいる。これでツーストライクだ。

 

「とーうりゃーーー!」

 

 小毬さん渾身の一球……と言っても、半分すっぽ抜けた、超スローボールが外角ギリギリを狙って飛んでくる。

 

「えーーーい!」

 

 鴎はそれも豪快に空振ってしまい、三球三振となってしまう。まさかの展開で、ツーアウトになってしまった。

 

「うう、ごめんなさい……なっちゃんの助言も受けていたはずなのに」

 

 鴎が心底申し訳なさそうにスーツケースを引きながら、ベンチに戻ってきた。もしかして鴎、速いボールはよく見えるけど、遅いボールは見えにくいとかあるんだろうか。鳥だけに。

 

 

 

『ま、まさか、4番の鴎が三振に倒れるとは……』

 

 これまで全打席出塁していた4番の三振に、実況席でも動揺が広がっていた。

 

『これでツーアウト。いよいよ後がなくなってきましたね』

 

『西園さん、言葉の端々に喜びの感情が見え隠れしているぞ』

 

『き、気のせいです。さて、次のバッターは5番。鳴瀬さんですね』

 

「しろちゃーん、お手柔らかにねー」

 

 相手が誰だろうと、小毬さんは投球前に一声かけるようにしているらしい。常にニコニコ笑顔だし、ある意味すごいと思う。

 

「はいっ!」

 

 理樹がミットを下に構えたのを見て、小毬さんが第一球を投じる。

 

「……」

 

 しろははその初球を見逃し、続く二球目。

 

「……ほい!」

 

 センター前に鮮やかに打ち返した。小毬さんの投球に対しても、やっぱりチャーハン打法は有効みたいだ。結果、シングルヒットになり、これでツーアウト満塁だ。

 

 

 

『おお……これで満塁。一打で同点じゃないか』

 

『そ、そうですね』

 

 さっきとは逆にのみきの語気が上がり、西園さんの声のトーンが下がっている。うん。実にわかりやすい。

 

 

「……なぁ、これはいけるんじゃないか?」

 

「そうだな。次のバッターは誰だ?」

 

 

『見てくれ。観客席も今日一番の盛り上がりを見せているぞ』

 

 のみきの言う通りだった。鴎が三振した時はどうなるかと思ったけど、満塁となったことで観客席も再び盛り上がりを見せている。

 

 ところで、次のバッターは誰だろう。この中で打席に立つのは、かなりのプレッシャーだと思うんだけど。

 

『この絶好機で立席に立つのは、6番。鷹原さんですね』

 

「……え、俺?」

 

 どことなく他人事に思っていたら、まさかの俺の打席だった。

 

「羽依里、頑張って!」

 

「羽依里さん!」

 

「羽依里!」

 

 ベンチから仲間たちが応援してくれている。うん。ここは怖気づいてる場合じゃない。

 

 俺は覚悟を決めて打席に立つ。今度は相手ピッチャーも変わっているし、なんとかして打ちたい。

 

「羽依里君、いきますよー……はいっ!」

 

 初球。小毬さんのチェンジアップは、外角ギリギリに決まっていた。本当にコントロールが良い。

 

 ……これはもう一回、しろはの愛情パワーが欲しいかも。

 

 そう思いながら、一塁のしろはに視線を送る。

 

「……!?」

 

 それに気づいたのか、しろはは赤面しながら視線を逸らしてしまった。これは愛情パワーは無理っぽい。

 

「……はいっ!」

 

 再び小毬さんのコントロールされた球が内角ギリギリに決まる。これでツーストライク。早々に追い込まれてしまった。

 

 

 ……こうなったら、俺もチャーハン打法を使うしかない。しろはがチャーハンを作る様子を思い出せ。あの手の動きが、チャーハン打法の原点だ!

 

 俺は必死にその姿を思い浮かべる。しろはがチャーハンを作るところは、他の誰より見てきたはずだ。俺なら、脳内再生余裕だ!

 

 

「……よし」

 

 かりそめだけど、脳内でチャーハン打法を修得した。俺は今一度気合を入れてバットを握りしめる。

 

「……はいっ!」

 

「ここだ!」

 

 続けて投じられた三球目。内角に飛んできたボールをジャストミートする。

 

「ほわぁっ!?」

 

 小毬さんの悲鳴を受けながら、俺の打球はセカンドを守る佳奈多の頭上を越え、地面に落ちる。それを見た藍がホームベースに滑り込む。

 

『よし、藍がホームインだ! これで7-7。鳥白島チャーハンズ、再び同点に追いついたぞ!』

 

 のみきの放送を受け、観客席が湧く。

 

 その声援に後押しされるように、更にサヨナラのランナーである良一が本塁へと突っ込んでいく。

 

「させるかっ! いくぜ、理樹!」

 

 その様子を見て、恭介が拾ったボールを全力でホームへ投げ返す。

 

「うおおおおおっ!」

 

 

 ……理樹がボールを捕球するのと、良一が本塁へ飛び込むタイミングはほぼ同じだった。どっちだろうか。

 

 

「……本塁タッチアウト! スリーアウト! チェンジ!」

 

「ちっくしょーーー!」

 

 球審の斉藤さんがそう判断を下していた。良一は心底悔しそうに地面を叩く。

 

 恭介のボールは本当に好返球だったし、あれは仕方がない。

 

 

 

           1 2 3 4 5 6 7 R

 リトルバスターズ  0 3 2 0 0 2 - 7

 鳥白島チャーハンズ 0 0 1 2 2 2   7

 

 

『……鳥白島チャーハンズ、サヨナラのチャンスを逃しました』

 

『同点止まりだったか……皆、惜しかったぞ』

 

 実況の二人からも緊迫感が伝わってくる。なかなか、凄いゲームになってきた。

 

『それでは最終回表。リトルバスターズ最後の攻撃です。よもや、ここまで長引くとは思いませんでした』

 

『本当だな。そろそろ試合開始から二時間が経とうとしている。お互いに疲労困憊といった状況だが、最後まで頑張ってくれ』

 

『そんな中、迎えるバッターは4番、宮沢さんですね』

 

「先程、真人に目の前でホームランを打たれているからな。ここは、俺も狙うしかあるまい」

 

 そう言いながら、謙吾が打席に立つ。相変わらず、ものすごい威圧感だ。

 

「夏海ちゃん、ここはしっかり抑えて、裏の攻撃に繋げよう!」

 

「はい!」

 

 夏海ちゃんは元気よく返事をして、投球モーションに入る。

 

「……あ!」

 

 投げたと同時にそれとわかる、明らかに失投だった。さすがに一人で投げ続けてるし、疲れが出ちゃったのかな。

 

「もらった! ンメーーーン!」

 

 そして、そのボールを謙吾が見逃してくれるはずもなく、思いっきり打たれた。白球は快音を残し、観客席の遥か向こうへと消えていく。

 

『六回に続いて、再び先頭打者ホームランだと……!?』

 

『これで7-8。ここまで抑え込んでいた主砲の一振りがここで出ましたね』

 

 まだホームランの余韻が残る中、ダイヤモンドを回り終えた謙吾がベンチでリトルバスターズの面々に迎えられる。

 

「ふっ、見たか。真人よ」

 

「へっ、なに言ってやがる。俺の方がボールはよく飛んでたぜ?」

 

「謙吾君いいなー。その打撃力、分けて欲しいですヨ」

 

「三枝も毎日筋トレしていれば、打てるようになるさ」

 

「だな。まずは手始めにスクワット1000回だ!」

 

「なるほどー……って、スクワット1000回もできるかこの筋肉ダルマ―!」

 

 リトルバスターズのベンチは本当に賑やかだ。彼らは本当に楽しそうに野球をやっているし、俺たちも負けてられない。

 

 

 

『さて、宮沢さんの後も怖いバッターが続きます。次は本日ホームランを放っている二木さんですね。前の打席に続いて、抑えることができるでしょうか』

 

 謙吾の次は佳奈多か。本当にリトルバスターズの打線は気が抜けない。俺は外角低めにミットを構える。

 

「えい!」

 

 俺のミットめがけて、夏海ちゃんは全力で投げてくれたけど、体力的にきついんだろう。どうしても高めに浮いてしまう。

 

「……夏海、さすがに疲れちゃってるみたいね」

 

 そう言いながら、二球目を狙い打たれた。打球は勢いよく一、二塁間を抜け……。

 

「させるかぁーーー!」

 

 ……いや、抜けそうになったところを、蒼がダイビングキャッチしていた。超ファインプレーで、ワンアウトだ。

 

「……蒼、やるじゃない。抜けたと思ったんだけど」

 

「ふっふーん。これ以上の点は与えないわよ! 皆で守ったげるんだから!」

 

 悔しそうにベンチに下がる佳奈多を見送った後、蒼は夏海ちゃんに向けてサムズアップしていた。

 

「蒼さん、ありがとうございます!」

 

 ここに来てのファインプレーに、謙吾のホームランで意気消沈していた夏海ちゃんも元気を取り戻したみたいだ。

 

 

 

『蒼さんの好プレーでワンアウトを取りました。続くバッターは6番、井ノ原さんです』

 

『あの筋肉も先の打席でホームランを放っている。本当に危険な打者が続くが、頑張ってほしい』

 

「……ふん!」

 

「ああっ!?」

 

 しかし、のみきの願い空しく、再び真人に打たれてしまった。レフトの紬の頭上を超えるスリーベースヒット。これで、ワンアウト三塁だ。

 

 真人は先のホームランで完全に覚醒してしまった感がある。恐ろしい筋肉だった。

 

 

 

『さすが井ノ原さんです。筋肉にものを言わせた打席でしたね』

 

『これでワンアウト三塁。再びリトルバスターズのチャンスだな』

 

『続くバッターは……7番、三枝さんですか。ここまで猛威を振るった打線も、さすがにここまでですね』

 

「だから、みおちんヒドい……」

 

 半泣きで打席に立つ葉留佳だったけど、正直俺たちも安堵している。言い方は悪いけど、謙吾、佳奈多、真人の三人に比べると、葉留佳の打撃力は見劣りするし。

 

「くっそー! 今度こそヒット打ってやるぞー!」

 

 葉留佳はそう叫びながら、バッターボックスに立つ。俺たちは細心の注意を払いながら配球する。

 

「行きますよ……えい!」

 

「うりゃあーーー!」

 

 夏海ちゃんの初球は外に大きく外れていたけど、葉留佳は思いっきりバットを振っていた。やっぱり、よくボールを見ていないみたいだ。

 

「えい!」

 

「よしきた絶好球ーーー!」

 

 葉留佳は続く二球目を打つ。大きく打ち上げられた打球はフラフラと、三塁ファールゾーンの深い所に飛んでいく。

 

「……ほいっ」

 

 サードのしろはがそれを追従し、フライをキャッチする。これでツーアウトだ。

 

「よし、筋肉特急だ!」

 

 しろはがベースから離れているのを見てか、三塁の真人が一気に本塁を目指して突っ込んできた。犠牲フライにしては微妙な打球だったけど、ここで来るんだ。

 

「くそっ……しろは! 思いっきり投げろ!」

 

「う、うん!」

 

 その状況を察して、俺はしろはに返球を促す。

 

 同時に本塁を守るように飛び出して、まるで巨大なダンプのように突っ込んでくる真人の前に立ちふさがる。

 

「羽依里、そこをどけぇぇぇぇ!」

 

「どけるわけないだろ! ここは通さないぞ!」

 

 しろはからのボールを受けると同時に、俺は真人と交錯する……。

 

 

「……本塁タッチアウト! スリーアウト! チェンジ!」

 

「ふぅ……」

 

 タイミング的には俺の方が早かったけど、相手はあの真人だ。筋肉の鎧を纏って突っ込まれるわけだし、ものすごい恐怖感だった。

 

 なんにしても、皆のおかげで最少失点で抑えられた。1点差なら、まだ望みはある。

 

 

 

           1 2 3 4 5 6 7 R

 リトルバスターズ  0 3 2 0 0 2 1 8

 鳥白島チャーハンズ 0 0 1 2 2 2 - 7

 

 

 

『それでは最終回裏。鳥白島チャーハンズの攻撃です』

 

『いよいよ最後の攻撃だ。皆、頑張ってくれ……』

 

 実況席も観客席も、俺たちの逆転を信じる声で溢れていた。泣いても笑ってもこれが最後の攻撃だ。

 

 ちなみに、リトルバスターズのピッチャーは鈴に戻っていた。なるほど、小毬さんが投げることで、少しの間だけでも鈴を休ませることができたわけか。

 

 そしてその鈴がマウンドに上がった代わりに、小毬さんはレフトにコンバートされていた。

 

『さて、鳥白島チャーハンズのバッターは7番の静久だ。代打からの途中出場だが……』

 

「……あの、ちょっといいですか」

 

 のみきがこの回の先頭打者を読み上げていると、藍が実況席に赴いて、何か話しかけていた。

 

「先のデッドボールの影響を考慮して、ここはのみきちゃんに代打をお願いしたいんですけど」

 

『なに、私か!?』

 

「はい。よろしくお願いします」

 

『ちょ、ちょっと待っていてくれ!』

 

 藍から代打に指名されたのみきは、慌ててバットを持って、バッターボックスへと向かっていく。

 

『……では、代わりに私が実況をします。のみきちゃん、頑張ってください』

 

 のみきが打席に立つと同時に、実況席からは藍の声が聞こえ始めた。

 

 

「お、満を持して美希様の登場だ!」

 

「ダンチョー、がんばれー!」

 

「待っていたぞー!」

 

 

 観客席からも歓声が飛ぶ。先頭打者だし、勢いをつけるためにも、のみきには頑張ってもらいたい。

 

「……いくぞ、のみき」

 

 鈴はのみきを一睨みすると、大きく振りかぶる。

 

「うりゃっ!」

 

「しかし、大した準備運動もなしに打席に立つ羽目になるとは思わなかったぞ……おっと」

 

 のみきは何かぶつぶつ言っていたけど、初球のフォークボールに釣られることなく、見送っていた。ボール判定だ。

 

「これで、どうだっ!」

 

 続けて、鈴はニャックルを繰り出した。

 

「……よし、この球だ!」

 

 のみきはそのニャックルを狙い打つ。球威が違うとはいえ、夏海ちゃんのナックルボールで散々打ち慣らしてきたし。見事にライト前に打ち返して、ノーアウト一塁になった。

 

 

 

『……野村さん、なかなかやりますね』

 

『でしょう。ちっちゃいですが運動神経は良いんですよ。そのギャップが萌えるんですよね』

 

 藍が入ったせいか、なんか実況の感じが変わった。これ、このまま放送続けさせて大丈夫かな。

 

『先頭打者が塁に出ました。続きまして、紬ちゃんの打席ですが、ここで再び代打の登場です』

 

「むぎゅ!?」

 

 バットを持って打席に向かいかけていた紬が、そのまま固まる。

 

 ちょっと待って藍。もう代打で出せるような選手は居なかったはずだけど。紬もせっかく調子が良いんだし、勝手なこと言わないでほしい。

 

 ベンチはもちろん、観客席もざわついている。そんな中、一人の恰幅の良い男性がバッターボックスに立った。

 

『それではご紹介します。今回、特別に力添えをいただきました、鳴瀬小鳩さんです』

 

「……は?」

 

「おじーちゃん!?」

 

 ゆらりと打席に登場したしろはのじーさんは、真人顔負けの速度でスイングをしている。とても70歳を超えているとは思えない。

 

『あ、何か文句がある方がいましたら、ご本人に直接どうぞ?』

 

 藍がそう付け加える。同時に、先程まで騒がしかったベンチや観客席が水を打ったように静まり返った。

 

「さあ、小娘。来るがいい。四天王打法の神髄、見せてくれよう!」

 

「……っ!?」

 

 ぎろり、と相手投手を一睨みする。ものすごい眼力だ。あの鈴がすくみあがっている。ところで、四天王打法ってなんだろう。

 

「い、いくぞっ……ライジングニャットボール!」

 

 その恐怖心を振り払うためか、鈴は持ちうる最高の球を投じた。

 

「……ふん!」

 

 しろはのじーさんはその球を容易く打ち返した。しかし、若干打ち損じたのか、大ファールだった。レフト方向に外れた球は、そのまま見えなくなってしまった。

 

「あのじーさん、やべぇぜ……」

 

 三塁手の真人が冷や汗をかきながらそう言っていた。心なしか、震えている気もする。

 

「……てりゃっ!」

 

「ふん!」

 

 続くボールはライト方向への大ファール。もし、この状況でホームランが出ればサヨナラなんだけど。まさか、ここに来てじーさんが試合を決めたりするのかな。

 

「もう一度だ! ライジングニャットボール!」

 

 鈴は再び全力投球をするけど、その球はかなり内角に寄っていた。

 

「あ!」

 

 どむっ、と鈍い音がして、鈴のボールがじーさんの二の腕に当たっていた。

 

「デッドボール! ランナー一塁!」

 

「ご、ごめん」

 

「……別に構わん」

 

 球審の斉藤さんにデッドボールを宣言されて、鈴はすぐに謝っていたけど、じーさんは全く痛がる様子もなく、平然と一塁へ歩いていった。あの速度のボールが直撃して、無事で済むはずがないんだけど。不思議だった。

 

 

 

『どうして鳴瀬さんは、鈴さんのあのボールを受けて無反応なんですか? 信じられないんですけど』

 

『しろはちゃんのおじーさんにとって、あれくらい蚊に刺された程度にしか思ってないんじゃないですか? これでノーアウト一、二塁。鳥白島チャーハンズ、サヨナラのランナーが出ました』

 

 狼狽えている西園さんを余所に、藍はひょうひょうと実況を続けていた。

 

「藍、こうなれば総力戦よ! しろはのおじーさんの代走に、イナリをお願い!」

 

 そして今度は蒼が実況席に走り、藍にそう伝えていた。

 

『わかりました。しろはちゃんのおじーさんに代わりまして、代走イナリです』

 

「ポーン!」

 

 じーさんの次は野生動物の登場だった。もう、なんでもありになってきた。

 

「いい、イナリ? あそこの人がボールを打ったら、向こうの白い板まで全力で走るのよ? その次はあっち。ボール持った人にタッチされたら駄目だから、全力で逃げるのよ!」

 

「ポン!」

 

 次のバッターの夏海ちゃんが打席に立つ中、蒼がイナリにルールを教えていた。それにしても、イナリに野球のルールが理解できるんだろうか。

 

 

 

『さて、次のバッターは9番。夏海ちゃんです。リラックスしてくださいね』

 

 それにしても、藍は実況が上手い気がする。のみきと同じく、物怖じしない性格ってのもあるけど。

 

「ポーン! ポンポーン!」

 

「うー、気が散るんだが……」

 

 イナリはポンポン鳴きながら、一塁ベースの周りをうろちょろしている。確かにあれは気になる。

 

「えぇい! いくぞ、なつみ!」

 

 鈴は何度か頭を振った後、夏海ちゃんと勝負する。

 

 しかし、結果はストレートのフォアボールだった。鈴としても疲れはあるんだろうけど、やっぱりイナリのせいで集中できなかったらしい。

 

 なんにしてもノーアウト満塁。これはビッグチャンスだ。

 

 

 

『ノーアウト満塁。一打サヨナラの大ピンチです。リトルバスターズの皆さん、頑張ってください』

 

『西園さんのその願い、蒼ちゃんが打ち砕いてみせます。それでは蒼ちゃん、打席にどうぞ』

 

「そ、そんな風に紹介されると、すごくやりにくいんだけど……!」

 

 藍からそう実況され、複雑な顔をしながら蒼が打席に立つ。

 

「いくぞっ……えいっ!」

 

 鈴は大きく息を吸い込むと、蒼に向けて初球を投じる。

 

『手元の集計によると、本日の蒼ちゃんの成績は四打数二安打。打率は五割に達しています』

 

「……てりゃっ!」

 

『一度のバントが含まれていますが、併殺打を放ってしまった私より遥かに良い成績と……』

 

「ちょっと実況席! うるさいわよ! 集中できないじゃない!」

 

『ごめんなさい。でも最後に一つだけ。蒼ちゃん、愛しています。頑張ってください』

 

「だから、放送で言わないでーーー!」

 

「……ストライク! バッターアウト!」

 

 シスコンの姉に集中を乱され、蒼は絶好のチャンスで空振り三振を喫していた。ちょっと藍、何してくれちゃってるの。

 

 ワンアウトになってしまったけど、依然として満塁。次のバッターに期待するしかない。

 

「……って藍、次はお前の打席だぞ!」

 

 俺は打順表を確認した後、慌てて実況席に藍を呼びに行く。

 

『そうでしたね。それでは行ってきます。皆さん、応援よろしくお願いしますね』

 

 藍はそう言いながら実況席を離れる。なかなかに自由だなぁ。

 

「そうです。羽依里さん、私の代わりに実況席へどうぞ」

 

「え、俺?」

 

「はい。頑張ってくださいね」

 

 そのまま藍に押されるように実況席に座らされてしまった。どうしよう。

 

『蒼さんが三振に倒れまして、続くバッターは2番。藍さんです。満塁のチャンスは続いていますが、鷹原さんは藍さんに何を期待しますか?』

 

 そこで、至って自然に西園さんが俺に話を振ってきた。やめて。話さないといけなくなるじゃない。

 

『え、えーっと、その……』

 

 こういう時って、なんて話せばいいんだろう。散々、のみきたちのやりとりを聴いてきたはずなのに、いざ自分がその立場になると言葉が出てこない。

 

『ダ、ダブルプレー以外なら……ほら、藍は一度やっちゃってるしさ』

 

「……羽依里、人のやる気を削ぐような発言は駄目だよ」

 

 言った直後、しろはにそう突っ込まれた。うう、わざとじゃないのに。

 

「……見切りましたよ! えい!」

 

 ……自分の失言に頭を抱えていると、快音が響いた。

 

 見ると、藍がレフト前にヒットを打っていた。小毬さんが捕球する間に、三塁ののみきが生還。これで再び同点に追いついた。

 

 藍は一塁で止まり、満塁は変わらず。今度はサヨナラのチャンスがやってきた。

 

 

 

『そうだ、のみき! 生還したんなら、実況代わってくれ!』

 

 次のバッターを迎える前に、俺は思わずそう叫んでいた。

 

「わ、わかったから、いちいちマイクで言わないでくれ。恥ずかしいぞ」

 

 言われてから、俺もマイク越しだったことに気がついた。どうしよう。すごく恥ずかしい。

 

『えーっと、これで8-8。鳥白島チャーハンズ、再び同点に追いついたな』

 

 そしてすぐにのみきが実況を代わってくれた。助かった。

 

『未だに満塁。三塁にタヌキさんが居座るという不思議な状況ですが、どちらも頑張ってください』

 

 西園さんがそう続ける。じーさんの代走で塁に出たイナリは、ジワジワと三塁まで進んでいた。イナリが生還すれば、サヨナラ勝ちだ。

 

『続くバッターは3番、良一だな』

 

「夏海ちゃん、また妹作戦をお願いします!」

 

「え」

 

 良一が打席に立ったのを見て、一塁の藍が二塁の夏海ちゃんにそう声をかけていた。夏海ちゃんは無言のまま、涙目でふるふると首を横に振っていた。これは無理っぽい。

 

「……スキありだ! えい!」

 

 その時、鈴が身体を反転させて、二塁へ向けて牽制球を投じてきた。夏海ちゃん、危ない!

 

「……はっ!」

 

「二塁セーフ!」

 

 しかし、夏海ちゃんは素早くベースに戻っていた。良かった。あの状況でも集中力は途切れていなかったみたいだ。

 

「……ほう、夏海君もやるな」

 

「一度やられてますから!」

 

 ベースカバーに入った来ヶ谷さんが、鈴にボールを戻しながら感心していた。

 

「……それなら、こっちはどうだっ!」

 

 ボールを返してもらった鈴は、今度は三塁方向へ牽制球を投じる。

 

「……ポン?」

 

「よっしゃ、タヌキ、ゲットだぜ!」

 

 そのボールを捕球した真人が、僅かにベースから離れていたイナリに触れる。まさかのタイミングで、イナリがタッチアウトになってしまった。

 

「ポンー」

 

 イナリは申し訳なさそうに尻尾を引きずりながら、ベンチに戻ってきた。そういえば、蒼も牽制球については何の説明もしていなかったと思うし、これはしょうがない。

 

『これでツーアウトか。頼むぞ良一、妹パワーとやらは望めそうにないが、なんとか打ってくれ』

 

「いくぞ、ライジングニャットボール!」

 

「どわあ!?」

 

 あと一人抑えれば引き分けに持ち込めるということで、鈴も全力投球だった。気がつけば、あっという間にツーストライクと追い込まれてしまっていた。

 

「……なぁ蒼、夏海ちゃんがダメなら、お前が代わりに『おにーちゃん』って呼んでくれないか?」

 

「はぁぁぁ!? なんであたしなの!?」

 

 追い詰められた良一が突拍子もないことを言っていた。蒼の反応も至極当然だろう。

 

「蒼ちゃんがそんなこと言うわけないじゃないですか! アホですか!?」

 

 一塁の藍も会話に割って入っていた。すごい状況だ。

 

「この通りだ! お前も妹だろ!」

 

「蒼ちゃんは私の妹であって、良一ちゃんの妹ではないですよ!」

 

「蒼頼む! 俺を男にしてくれ!」

 

 藍の猛抗議を敢えて流して、良一は必死に頭を下げていた。鈴は今にも投球しそうだし、一刻の猶予もない。

 

「……蒼、俺からも頼む。一度でいいから、良一を『おにーちゃん』と呼んでやってくれ!」

 

「え、ええー……」

 

 俺は考えた結果、蒼にそう言って頭を下げる。今はこれが最良の手段のはずだ。

 

「は、羽依里がそこまで言うなら……いい、わよ……」

 

 そこまで言って、蒼はなぜか顔を赤らめながら了承してくれた。そして、バッターボックスの方に向き直り、大きく息を吸い込む。

 

「……おにーちゃん! 打たなきゃ駄目だよーーー!」

 

「い、妹よ―――!」

 

 半分声が裏返っていたけど、良一には届いたみたいだった。鈴の剛速球をセンター前に打ち返し、再び満塁とする。

 

 

 

『紆余曲折あったが、良一がヒットを放ち、再び満塁となったな』

 

『ここで迎えるは、4番の久島さんです。鈴さん、頑張ってください』

 

 実況席の二人もそれ以上は何も言わず、言葉少なに状況を見守る。

 

「……いくぞかもめ、最後の勝負だっ!」

 

「来い、りんちゃん!」

 

 最終回裏、ツーアウト満塁。この上ない状況で鴎に打席が回ってきた。

 

「……えいっ!」

 

 鈴の投じた初球は内角ギリギリに決まって、ストライク。続く二球目は僅かに外れ、ボール判定。

 

 今や、その場に居る全員の視線はこの二人に注がれていた。

 

「ええーい!」

 

 三球目が外れた後の、四球目。真ん中に飛んできたボールを鴎は思いっきり振るけど、途中で落ちるフォークボールだった。見事に引っかかってしまい、これでツーストライクと追い込まれた。

 

「……うりゃっ!」

 

「ボール!」

 

 鈴が投じた五球目は低めに外れ、これでフルカウントになった。

 

「「ふー……」」

 

 鈴と鴎、二人が同時に大きく息を吐く。次の一球で試合が決まる。

 

 しかし、鈴が投球モーションに入る直前、鴎は夏海ちゃんのいる三塁を見る。

 

「……なっちゃん! 今から最高の瞬間をプレゼントするからね!」

 

 そして、そう高らかに宣言する。

 

「いくぞっ……真・ライジングニャットボール!」

 

 その刹那、鈴が投じた最後の一球。これまでのどのボールより速い、入魂の一球だった。

 

「てりゃーーー!」

 

 鴎はその剛速球を、類まれなる打撃センスをもって完璧に打ち返す。

 

 快音と共に飛んだ打球は、ライトを守る恭介の頭上を越えた。これは間違いなく、サヨナラヒットだ。

 

 ボールが地面に落下したのを確認して、夏海ちゃんが本塁へ飛び込んでくる。恭介はその様子を見ながら、拾ったボールを投げ返すこともなく、ただ静かに目を閉じていた。

 

『……ゲームセット! サヨナラゲーム!』

 

 

 

           1 2 3 4 5 6 7 R

 リトルバスターズ  0 3 2 0 0 2 1 8

 鳥白島チャーハンズ 0 0 1 2 2 2 2x 9

 

 

 

 

 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

 

 

「勝った……勝ちました―――!」

 

 夏海ちゃんがサヨナラのホームを踏んだ瞬間、俺たちは全員ベンチから飛び出していた。

 

 サヨナラヒットを打った鴎と合わせて、夏海ちゃんと二人を皆でもみくちゃして祝福する。

 

「よーし、胴上げだーーー!」

 

 やがて良一がそう言うと、おのずと皆が夏海ちゃんを中心に輪を作る。

 

「えっ、わ、私ですか?」

 

「最後まで投げ切ってたし、勝利投手を最初に胴上げするのは当然でしょー!」

 

「ほら、いきますよ。せーの!」

 

「「わーっしょい! わーっしょい!」」

 

「わーーーっ!?」

 

 ぽんぽんと夏海ちゃんが宙を舞う。軽いし、すごくよく飛んでいた。

 

「まるで鳥さんみたいだねぇ。私も頑張った甲斐があったよー」

 

「鴎、笑顔で見てる場合じゃないぞ。次はサヨナラヒット含め、猛打賞の活躍をしたお前の番なんだからな」

 

「え。私、鳥みたいな名前だけど、実際に飛びたくはな」

 

「「それ、わーっしょい! わーっしょい!」」

 

「うひゃーーー! ひえぇーーー!」

 

 一瞬逃げようとした鴎だったけど、すぐに捕まって胴上げされていた。文字通り、鴎が空を飛んでいる。

 

「よーし、俺たちも負けじと胴上げだぁー!」

 

 その時、リトルバスターズの皆も輪に入ってきた。そんな彼らの言動には、敗北のショックなど、微塵も感じない。

 

「え、胴上げって誰を?」

 

「もちろん、鳥白島チャーハンズの連中に決まってるだろ! まずは羽依里、お前からだ!」

 

 そう言うや否や、真人に腕を掴まれる。ものすごい力だ。これは逃げられない。

 

「いっくぜーーー! わーっしょい! わーっしょい!」

 

「「わーっしょい! わーっしょい!」」

 

「うわあああーーー!」

 

 リトルバスターズの皆に抱え上げられ、俺の身体が宙を舞う。胴上げってテレビとかでよく見るけど、実際にされるとこんな気分なんだ。

 

「次はあおちゃんたちですよー」

 

「順番に胴上げしてやるぞー! ミニ子、捕まえろ―――!」

 

「がってんなのですーーー!」

 

 数回宙を舞った俺が地面に降ろされた直後、今度は空門姉妹が捕まっていた。

 

「ちょ、ちょっと待ってください!」

 

「離してーーー!」

 

「「そーれ! わーっしょい! わーっしょい!」」

 

「ひゃーーー!?」

 

 抵抗空しく、空門姉妹が揃って宙を舞っていた。一方で、その次の胴上げ候補なんだろうか。向こうに紬やしろはも捕まっていた。これはもう、全員観念して胴上げされるしかなさそうだ。

 

『それにしても、劇的な逆転劇だった。これは島の歴史に残る試合になったと……おわっ!?』

 

「のみき、最強の代打が何やってるんだ」

 

「そうよ。パイ打のみきよ!」

 

「いやその、私はパイ打では……うわあああーーー!」

 

 我関せずと言った感じで締めの放送をしていたのみきが、天善と静久に捕まった。そのまま実況席から引きずり降ろされ、胴上げの輪の中へ飲み込まれていった。

 

「「それ、わーっしょい! わーっしょい!」」

 

「や、やめてくれーーー!」

 

 のみきも夏海ちゃんばりに軽そうだし、良く飛んでいた。

 

『鳥白島チャーハンズの皆さん、勝利おめでとうございます。観客の皆さんも、どうぞ近くで選手を祝福してあげてください』

 

 そして、西園さんが放送でそんなこと言うもんだから、鏡子さんをはじめとした島の皆が観客席からグラウンドになだれ込んできた。

 

 

「羽依里君、皆、おめでとう」

 

「見ごたえのある試合だったぜ!」

 

「夏海ねーちゃん、かっこよかったよ!」

 

 皆から沢山の祝福の言葉が贈られる。嬉しい反面、ものすごく恥ずかしい。

 

 最後の方には、どこからか優勝カップまで運ばれてきた。もうすごい騒ぎで、これはしばらく収まりそうにない。

 

 ちなみに、その優勝カップには『徳田スポーツ杯』とか書かれていたけど、ここは見なかったことにしよう。

 

 

 

 

「ほら、きちんと並んで。撮るよー」

 

 歓喜の輪がようやく収まった頃、俺たちは優勝カップを中心に整列していた。どうやら、記念写真を撮るらしい。

 

 カメラを持つのは鏡子さん。島の誰かから借りてきたものらしい。

 

「ほら、リトルバスターズの皆も、もっと寄らないと。全員入らないよ?」

 

 前の列、優勝カップの目の前に夏海ちゃん。その両サイドを俺としろはが挟む感じにしながら、鳥白島チャーハンズの皆が並ぶ。その後ろにはリトルバスターズの皆が同じように列を作っていた。

 

「それじゃ、撮るよー」

 

 その合図で、俺たちはカメラに視線を送る。直後にシャッター音がした。

 

 全員が砂と埃にまみれていて、とても記念写真とは呼べないものだけど、自然と笑顔をがこぼれる。

 

 たくさんの仲間たちと、かけがえのないこの夏を共に過ごせたことに、心から感謝したかった。

 

 

 

 

 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

 

 

 野球の試合が終わった後は、先の約束通りに食堂前でバーベキューをすることになった。

 

 試合が長引いたおかげで、着替えて再集合した頃にはちょうどお昼時。皆、お腹はペコペコだった。

 

「……それじゃ、飲み物が行き渡ったところで」

 

「「かんぱーい!」」

 

 今回のお別れバーベキューは俺が発起人ということで、のみきに促されて、乾杯の挨拶なんてさせられた。もともと挨拶とか苦手だし、緊張で何を喋ったのか全く記憶になかった。

 

「……はい。こっちのお肉はもう焼けてるよ」

 

 いくつものバーベキューコンロが並ぶ前で、しろはが肉焼き係を務めてくれていた。こういう時、本当にしろはは頼りになる。

 

「うおお、食うぞー!」

 

「いっただきまーす!」

 

 肉が焼けていると見るや、すぐに男連中が箸を伸ばす。

 

「こら、りょーいち、肉ばっかり取るなっ。女子にも分けてあげろっ」

 

「そうだぞー、野菜の方が身体に良いんだぞー!」

 

 そんな男子を、鈴と葉留佳が注意していた。お肉はたくさんあるけど、二人の言うことはもっともだ。皆で分け合わないと。

 

「でも葉留佳、そう言う貴女のお皿、肉しか乗ってない気がするのだけど?」

 

「え。いやーそのー、ビヨーとケンコーのために、野菜はおねーちゃんに全部差し上げようかと」

 

「わけのわからないことを言わないの。ほら、ピーマンとニンジンも食べなさい」

 

 佳奈多はそう言いながら、焼きたての野菜をひょいひょいと葉留佳の紙皿に乗せていく。

 

「うう、ピーマン苦手なのに……」

 

 本当に苦手なのかもしれない。葉留佳は泣きながらピーマンを食べていた。

 

「三枝さん、お野菜もしっかり食べないと大きくなれないのですよ!」

 

「ぶーぶー。ミニ子に言われたくないぞー」

 

「わふー!? 胸の方を見て言わないでくださいー!」

 

 葉留佳が口を尖らせながら、何か言っていた。どうしてすぐそっちの話になるんだろう。

 

「……そうね。綺麗なおっぱいのためには、お肉と野菜のバランスが大事よ」

 

「うむ。その通りだな」

 

 そんなことを考えていると、静久と来ヶ谷さんが唐突に話に入ってきた。この二人、おっぱいセンサーでもついてるんだろうか。

 

「ほらほら、ミニ子にむぎゅ子、聞いたかー? しっかりメモしておくんだぞー」

 

「み、水織さん、他に重要なことがあったら教えてほしいのですー!」

 

「シズク、教えてください!」

 

「……そうね。やっぱり牛肉と、それに付随して牛乳も大事よ」

 

「そうだな。その牛乳に紅ショウガを入れてみるのも良いぞ」

 

「紅ショウガですか? それは初耳です!」

 

「だってそうだろう。牛丼だって紅ショウガはつきものだ」

 

「おおー、なるほどです!」

 

 紬は感心していたけど、紅ショウガの方は、たぶん来ヶ谷さんの嘘だと思う。現に紅ショウガが嫌いのはずの蒼も、結構胸は大きいし。

 

「……羽依里さん、なんで蒼ちゃんを見てるんですか?」

 

 そこで藍に睨まれた。いや、見てないから。そんな軽蔑したような視線を送ってこないで。

 

「はっはっは。鷹原少年も、結局は男の子だな」

 

「……羽依里?」

 

 来ヶ谷さん、意味深な発言をしないでください。今度はしろはからすごく睨まれてるんだけど。変な誤解されたらどうするの。

 

「そ、そうだしろは。焼けてる食材があったらくれないか? 皆に配ってあげようと思うんだ」

 

 居心地が悪くなった俺は、しろはが焼いてくれた肉や野菜を配りながら、皆の様子を見てみることにした。

 

 

 

 

「夏海ちゃん、楽しんでる?」

 

「はい! 楽しんでます!」

 

 恭介と並んで座っていた夏海ちゃんに声をかけながら、お肉とカボチャをその紙皿に移してあげる。

 

「ありがとうございます!」

 

「相変わらず、恭介と話をしていたの?」

 

「はい! 今ちょうど、奥さんと友人に、ラスボスが瞬殺されたところです!」

 

「……ごめん。唐突過ぎて話が見えないんだけど」

 

「幼稚園で人形劇をやった時の話だな。個人で人形を持ち寄った結果、そんな状況になってしまってな」

 

「ああ、そうなんだ」

 

 恭介がそう話を補足してくれた。彼らはそんな行事にも参加しているんだろうか。

 

「ダンベルと鉄アレイの熱い友情を描く人形劇にならなかっただけ、まだマシでしたね」

 

「ああ、まったくだぜ……」

 

 二人が揃って、何とも言えない表情をしていた。ダンベルと鉄アレイで人形劇? どんな状況だろう。

 

「面白い話と言えば、まだあるぞ。学食をリトルバスターズだけで切り盛りした話だ」

 

「あ、それも聞いてみたいです!」

 

 リトルバスターズを中心とした恭介の話は破天荒なものが多いし、夏海ちゃんは興味津々と言った感じだった。

 

 邪魔しちゃ悪いし、他の人の所に行ってみよう。

 

 

 

 

「はむはむはむはむ」

 

 食材の乗った紙皿を手にさすらっていると、奇妙な声がした。見ると、鴎が焼きたてのトウモロコシを食べていた。

 

「鴎、トウモロコシばっかり食べてないで、肉も食べたらどうだ?」

 

 俺はそう言いながら、手元の肉を鴎の皿に移そうとするけど……その皿には、すでに大量のトウモコロシの芯が積まれていた。

 

「鴎、さすがにこれは食べ過ぎじゃないのか?」

 

「え。トウモロコシ、美味しいよね?」

 

「いや、美味しいけどさ……」

 

「……久島さん、トウモロコシばっかり食べていたら、太りますよ。穀物ですから」

 

「うぐっ」

 

 その時、隣にいた西園さんが冷静に告げていた。

 

「みおちんこそ、たくさん食べないと大きくならないよ! ほら、お肉!」

 

 鴎が俺の皿を奪い取って、そこに乗っていたお肉を次々と西園さんの皿に移す。

 

「それなりに食べてはいるつもりですし、もう身長は平均値だとは思いますが」

 

「……うむ。鴎君が言いたいのは、きっと胸の話じゃないか」

 

 また唐突に来ヶ谷さんが現れた。やっぱりこの人、おっぱいセンサー持ってるんだろうか。

 

「……」

 

 特に言葉は発してないけど、西園さんは今まで見たことないような鋭い目つきで来ヶ谷さんを睨みつけていた。当の本人は涼しい顔をして受け流していたけど、こっちはすごく怖かった。

 

 

 

 

「……お前たち、楽しんでいるようだな」

 

 その時、背後から声がした。振り返ってみると、そこにはしろはのじーさんがいた。

 

「あれ、おじーちゃん?」

 

「どうかしたんですか?」

 

 突然の年長者の来訪に、俺やしろは以外の人間は反射的に背筋が伸びていた。相変わらず、その場にいるだけですごい威圧感だ。

 

「お前たちに差し入れを持ってきた」

 

 そう言って、じーさんはしろはにビニール袋を手渡す。中には魚のみりん干しが大量に入っていた。

 

「今日も漁は禁止だからな。だいぶ前に干したやつだが、肉ばかりだと飽きるだろう。適当に火であぶって食べるといい」

 

「おおー、コバトさん、ありがとうございます」

 

 皆が呆気に取られている中、紬が一番にお礼を言っていた。今更だけどこの二人、面識があるんだろうか。

 

「後、これは駄菓子屋のばーさんからの差し入れだ」

 

 じーさんは左肩に乗せていた箱を地面に置く。どすっと音がしたし、結構な重量がありそうだ。

 

「あの、これは?」

 

「ラムネ30本らしい。それじゃあ、確かに渡したぞ」

 

 じーさんは魚とラムネを俺たちに渡すと、すぐにきびすを返し、去っていった。

 

「……あのじーさん、良いとこあるんだな」

 

「おい、謙吾」

 

「あ……いや、すまん」

 

 謙吾が思わず、そう口にしていた。直後に恭介に睨まれ、すぐにしろはに頭を下げる。

 

「いいよ。気にしてないから。それより、せっかく持ってきてくれたんだし、皆しっかり食べてね」

 

 しろはは大して気にする様子もなく、袋からみりん干しを取り出して、網の上に並べていく。

 

 俺もそれに倣って、ラムネの入っている箱に手をかける。箱には、ご丁寧に熨斗までついていた。

 

「……あれ、重い!?」

 

 実際に箱を手に持ってみると、予想以上に重かった。考えてみれば、ラムネが30本も入ってるんだし。重いのも当然だった。

 

 ……あのじーさん、これを片腕に担いで運んできたんだよな。

 

 俺はじーさんの年不相応なパワーに感心しながら、皆にラムネを配ったのだった。

 

 

 

 

 ……しばらくすると、周囲に肉の香りとはまた違った、魚の焼ける良い香りが広がってきた。

 

「わふー、おいしそうなのですー」

 

 クドが焼ける魚を楽しそうに眺めていた。犬っぽいけど、魚の方が好きなんだろうか。

 

「そろそろ焼けたよ。熱いから気をつけてね」

 

「はい! いただきますなのですー」

 

「それじゃ、俺も一つ」

 

 せっかくなので、クドと一緒に焼きたてのみりん干しをいただくことにした。

 

「これは、ほこほこでおいしいのですー」

 

 クドの言う通り、身がほこほこで美味しい。この甘辛さも最高で、おにぎりが欲しくなる。

 

 

「なあ蒼―、タレ取ってくれないかー」

 

「いいわよー。これ?」

 

「ああ、サンキュー」

 

 俺や女性陣の多くがみりん干しを堪能している中、男子数名はバーベキューを続けていた。やっぱり、魚じゃ物足りないのかな。美味しいのに。

 

「すまない。俺もタレをもらえないか」

 

「紬も少し貰ったら? お肉、もう少し食べるんでしょ?」

 

「はい! もう少し食べます!」

 

 そろそろ何人かタレが無くなった人がいたんだろうか。良一に続いて、天善や紬、謙吾もタレを継ぎ足していた。特に、紬はたくさん食べてる気がする。もしかしなくても、さっきの静久や来ヶ谷さんの話を真に受けてるんだろうか。

 

「……あれ?」

 

 でもなんか、足されたタレの色が元と違う気がする。こんな色だったっけ?

 

 

「……ぐっ!?」

 

「……むぎゅ!?」

 

「ぐはっ!?」

 

 

 そんな事を考えていたら、そのタレを使ってお肉を食べた四人が苦しみだした。どうしたんだろう。

 

「なんだこれは、すごく辛いぞ……!?」

 

「え、辛い?」

 

 俺としろはが用意したのは、普通に市販されてるタレだ。辛さも中辛だし、そこまで苦しむ程のものではないはずだけど……。

 

 俺は疑問に思いながら、良一のタレを少しだけ割り箸の先につけて、舐めてみる。

 

「か、辛い……!」

 

 な、なんだこのタレ。明らかに俺たちが準備したものと辛さが違う。これは、明らかに何か混ぜられている。

 

「こ、こんな悪戯をする人物と言ったら……」

 

 そして全員の視線が、一斉に葉留佳に向けられた。

 

「……え? いやーそのー、ナンダ? ワタシジャナイデスヨ?」

 

 そうは言っていたけど、明らかに目が泳いでいる。

 

「じゃあ葉留佳、後ろ手に持ってる七味トウガラシやワサビは何?」

 

「ひゃうぅ! 見つかってしまったぁ―――!」

 

 そして、直後に背中に隠し持っていた証拠を佳奈多に掴まれていた。これは言い逃れできそうにない。

 

「はるちゃん、そんなイタズラしたら、つむちゃんがかわいそうだよー」

 

 小毬さんが葉留佳を叱責していた。ところで、それって聞きようによっては、他の男子にはイタズラしても良いって風にも聞こえるんだけど。考えすぎかな。

 

「うう、辛いのは苦手です……けほけほ」

 

「つむぎ、だいじょうぶか」

 

 顔を真っ赤にして苦しむ紬を、鈴が介抱してくれていた。

 

「こまりちゃん、何か甘いものを持ってないか」

 

「はい、つむちゃん。ワタアメをどうぞー」

 

 鈴に促され、小毬さんが笑顔でワタアメを紬に手渡していた。激辛タレの辛みをワタアメの甘さで中和するとか、ナイスアイディアだ。

 

「うう、小毬、俺たちにも甘いものを……!」

 

「うむ。少年たちには、おねーさんがキムチをくれてやろう」

 

 喉を押さえながらそう懇願する良一たちの前には、容赦なくキムチの瓶が置かれた。まさに泣きっ面に蜂と言うやつだった。

 

 

 

 

 その後、辛さにもだえ苦しんでいた良一たちは、差し入れに貰ったラムネを浴びるように飲んで、事なきを得ていた。まったく、葉留佳のイタズラにも困ったもんだ。

 

「パーーーージ!」

 

「チョレーーーーイ!」

 

 ところがそのラムネを飲んだ直後から、良一と天善のテンションがおかしい。奇声を上げながら、道路で暴れている。

 

「ねえ野村さん、どうしてあの二人はラムネであそこまでハイテンションになってるの?」

 

「いや直枝、私に聞かれても困るんだが……」

 

 のみきはそんな二人を見ながら、何とも言えない顔をしていた。どうするべきか、対応に困っているらしい。

 

「筋肉筋肉―――!」

 

「俺のちょんまげを知らないか―――!」

 

「リトルバスターズ最高―――! イエェェーーー!」

 

 気がつけば、その中に真人や謙吾、果ては恭介まで混ざり、謎の言葉を発していた。

 

 やっぱり島のラムネ、変な成分でも入ってるんじゃないんだろうか。真人や良一、すでに上半身裸になっちゃってるし。

 

「……そろそろ目に余るな。彼らにも少し、冷静になってもらうとしよう」

 

 のみきはそう言いながら、背中に背負っていたハイドログラディエーター改を正面に構える。

 

「一応確認するが……直枝、友人を撃ってしまっても構わないか?」

 

「うん。良いと思うよ。お手柔らかにね」

 

「わかった。ハイドログラディエーター改、殲滅モード。ファイア!」

 

「「ぶわああああ!?」」

 

 次の瞬間、狙いすました無数の水弾が良一たちを襲った。うん。予想はしていたけど、一瞬で静かになった。

 

 

 

 

 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

 

 

 楽しい時間はあっと言う間に過ぎ去り、リトルバスターズの皆が島を離れる時がやってきた。

 

 夕方近くになって港にやってきた船は、まもなく出港時間を迎えようとしていて、既に港の周囲には俺たち以外に乗客の姿はなく、船の係員が一人、静かに立っているだけだ。

 

 夕日に照らされた船の前で、俺たちはそれぞれリトルバスターズの皆との別れを惜しんでいた。

 

 

 

「みおちん、またね……」

 

「ちょっと久島さん、そんなに抱きつかないでください。暑苦しいです」

 

 感情を抑えきれなくなったのか、鴎は思いっきり西園さんに抱きついて泣いていた。この島で久しぶりに再会したようなものだし、気持ちはわかるけど。

 

「ほら、まずは涙と鼻水を拭いてください。ひどい顔になっていますよ」

 

「う、うん……」

 

 鴎は西園さんからティッシュを受け取って、ちーん、と鼻をかんでいた。こんな時でも、西園さんは落ち着いている。

 

「また手紙を送りますからね」

 

 そう言いながら、鴎の背中をぽんぽんと叩く。なんだろう。おかーさんと子供みたいに見える。

 

「……うん。今度はこっちも、ちゃんとした招待状を出すからね」

 

 招待状ってなんだろう。よくわからないけど、再会を誓っているようだった。

 

「楽しみにしています。それでは、お世話になりました」

 

 西園さんは俺たちに向けて一礼すると、そのままタラップを登っていった。

 

「うう……ぐすっ……」

 

 西園さんの姿が見えなくなると、鴎はまた鼻をすすり始める。

 

「鴎、しっかりしろ。お前が泣いてどうするんだ。リトルバスターズの皆は誰も泣いてなんか……」

 

「ひっく、うう……」

 

 ……いや、思いっきり泣いてる人がいた。小毬さんが大きな瞳に涙を浮かべながら、しろはの手を握っていた。

 

「しろちゃん、羽依里君と末永くお幸せにね……」

 

 ……泣きながら、大きな勘違いをされている気がする。

 

「ち、違うし! まだそこまで進展してないし!」

 

「そ、そうだぞ! まだお風呂も一緒に入ってないからな!」

 

「是非、結婚式にはまた呼んでくださいっ! それじゃあっ!」

 

 しろはと一緒になって慌てて弁解するけど、俺たちの言葉など耳に入らないようで、小毬さんは俺やしろはとしっかりと握手を交わした後、タラップを登って行ってしまった。

 

 ……どうしよう。思いっきり誤解されたまま別れてしまった。俺としろはは、ひたすらに頭を抱える。

 

 

 

「……ぐすっ」

 

 そんな俺たちの隣でもう一人、今にも泣きそうな子がいた。夏海ちゃんだった。

 

「あたしに勝ったんだぞ。なんでなくんだっ」

 

 昨日と同じく、必死に堪えてはいるみたいだけど。鈴を見送りに来たらしい島の猫たちも、心配そうにその様子を見ていた。

 

「しょーがないな……なつみ、これをやるから、なくな」

 

「え……これは?」

 

 鈴が取り出したのは、鈴が普段髪につけているのと、同じ鈴だった。

 

「予備のやつだ。おまえにやる」

 

「……あ、ありがとうございます」

 

 夏海ちゃんは差し出された鈴を、両手を重ねて受け取る。

 

「……また勝負しよう。次は負けない」

 

「は、はい! 私も負けません! 鈴さん、さよならです!」

 

「……ん」

 

 慌てて涙を拭いた夏海ちゃんと握手を交わした後、鈴はちりん。と鈴を鳴らし、軽やかにタラップを駆けあがっていった。

 

 鈴も夏海ちゃんもどこか猫っぽいし、この二人は良いライバルと言った感じだった。

 

 

 

「……せいりゅう! せい! せい! すざく!」

 

「ざく! ざく!」

 

 その時、聴き慣れた掛け声が聞こえてきた。

 

「お前ら、ここまで来て四天王スクワットなのか?」

 

 恭介が呆れ顔でその様子を見ていた。どうやら、良一と真人、謙吾、天善の四人がお別れの四天王スクワットをやっているみたいだった。おかげで、鈴と夏海ちゃんの別れの余韻が台無しになっちゃったんだけど。

 

「……ふう。楽しかったな」

 

 満足したらしく、むさ苦しいスクワットが終わった。

 

「真人、いつかまた、一緒に四天王スクワットやろうぜ!」

 

「おう、筋肉さんがこむらがえったもな!」

 

 汗をぬぐいながら、四人ががっしりと拳を突き合わせていた。男同士の熱い友情だった。

 

「今度島に来る時は、筋肉かき氷の大食い競争とかやったら面白いかもしれねぇ」

 

「いいな。考えておこう」

 

 筋肉かき氷って何だろう。シロップの代わりに、焼き肉のタレとかかかってるんだろうか。

 

「ちょっとやめてよ。かき氷大食い競争なんてやられたら、あたしの腕が死ぬから」

 

 不穏な空気を感じ取ったのか、蒼が会話に参加していた。

 

「じゃあよ、次来る時までにその細い腕っぷしを鍛えとこうぜ」

 

「お断りします。ムキムキな蒼ちゃんなんて嫌ですから」

 

 妹の危機を感じ取ったのか、藍も会話に参加していた。何というか、リトルバスターズの男性陣は本当に変わらない。

 

「この島の四天王スクワットも良かったが、俺は天善との秘密基地での卓球勝負が一番の思い出だ。あの激闘を、俺は一生忘れないだろう」

 

 その時、謙吾が目を細めながらそう言っていた。そういえば、彼は滞在中に天善と秘密基地で卓球勝負をしたって言ってたっけ。

 

「……そうだな。ラケットが二本壊れ、衝撃で卓球台が歪み、ネットを二回は縫い直す羽目になったが、悔いはない」

 

 天善も思い出すように目を細めていた。俺は実際に見てはいないけど、話を聞く限り、男同士の壮絶な戦いだったんだろう。

 

「ねえ、羽依里はあの中に混ざらなくていいの?」

 

 その時、背後の理樹からそう声をかけられた。

 

「そのまま返すよ。理樹は混ざらないのか?」

 

「あーうん……僕はその、のみきさんと話してたからさ」

 

「あ、そうなのか」

 

「うん。バーベキューの後から、のみきさんと意気投合しちゃってさ」

 

 リトルバスターズの次期リーダー候補と、少年団の団長。お互いの立場は違えど、個性的なメンバーをまとめていく者同士、絆のようなものが生まれたんだろうか。

 

「のみきさんも、これからもめげずに頑張ってね」

 

「ああ、直枝も大変だろうが、諦めずに頑張るんだぞ」

 

 二人の視線は、さっきまで四天王スクワットをしていた四人へと向けられていた。その視線が全てを物語っている気がした。

 

 

 

「クドさん、お別れにあたって、このぬいぐるみを差し上げます!」

 

 その隣では紬が犬のぬいぐるみをクドに渡していた。

 

「わふー!? おっきな犬のぬいぐるみなのですー!」

 

「サイゴーさんです!」

 

 確かに、あの偉人は犬を連れているイメージがあるし、ぬいぐるみもそれっぽい眉毛がついている。

 

「ぜひ、宇宙にも連れて行ってあげてください!」

 

「はい! お世話になりましたっ!」

 

 宇宙? 何の話だろうか。よくわからないまま、クドはマントを翻しながらタラップを登っていった。

 

 クドも紬も、独特の髪色が夕日に照らされてすごく綺麗だった。

 

 

 

「……水織女史、貴女とはまたいつか、じっくりと語り合いたいものだな」

 

「ええ、その時はオススメのパイ菓子を用意しておくわ。それに紅茶でも飲みながら、おっぱいについて熱く語り合いましょう」

 

 紬と一緒に船の方を見ていると、背後からそんな会話が聞こえた。振り向かなくてもわかる。この会話は間違いなくおっぱい同盟。静久と来ヶ谷さんのものだった。

 

「……それと藍君。紬君の写真は、野球の集合写真と一緒に送ってくれて構わないからな」

 

「わかっています。住所も恭介さんから聞いています。学生寮だったんですね」

 

「むぎゅ!?」

 

 自分の名前が出たためか、お別れの余韻に浸っていた紬が思わず振り返る。

 

 紬の写真ってもしかして、今朝言ってた演舞の写真だろうか。あれ、写真にできたんだ。

 

「フフフ。楽しみにしているぞ。それでは、達者でな」

 

 来ヶ谷さんは不敵な笑みを残しながら、タラップを登っていった。

 

 今更どうすることもできないけど、紬は悲壮感溢れる表情になっていた。

 

「……ねぇ藍、本当に紬の写真送ってあげるの?」

 

 そんな紬の様子を知ってか知らずか、蒼がそう聞いていた。

 

「もちろんです。代わりに来ヶ谷さんがクドちゃんと小毬ちゃんの小恥ずかしい写真を送ってくれるそうですし」

 

 藍は嬉々としてそう言う。二人の間で、そんな闇取引が成立してたんだ。

 

「……葉留佳、なんとか来ヶ谷さんを止められないの?」

 

 蒼が葉留佳にそう質問していた。紬は元より、写真を勝手に送られてしまうであろう小毬さんやクドを心配しているんだろう。

 

「うーん、姉御は一度決めたらそう簡単には止められないからなー。たぶん、おねーちゃんと二人がかりでも軽くあしらわれるかも」

 

「そうね……あの人は手強いのよ」

 

 葉留佳と佳奈多、二人が全く同じ顔でため息をついていた。どうも、なかなかに厳しいらしい。

 

「以前、葉留佳と入れ替わってあの人の弱みを握ろうとしたことがあったのよ。カラコンまで用意してね」

 

 どういう経緯でそういう流れになったのか気になったけど、ここは敢えて何も聞かないことにしよう。

 

「葉留佳に成りすましていたはずなのに、あの人、私の大嫌いなピクルスを食べさせようとするのよ? あれ、絶対にバレていたわ」

 

 平静を装っているけど、佳奈多は涙目だった。と言うか、この場で何の話をしてるんだろう。

 

「でも、双子の入れ替わりというのは面白いかもしれませんね。私もそのうちやってみましょうか」

 

 藍が顎に手を当てながらほくそ笑んでいた。嫌な予感がする。何をするつもりだろう。

 

 

 

 ……その時、船の汽笛が高らかに鳴った。タラップの脇にいた船の係員が、何やら無線で話しているのが聞こえる。いよいよ時間らしい。

 

「おまえら、そろそろ船に乗れ!」

 

「……時間みたいね。それじゃ二人とも、元気でね。また会いましょ」

 

「あいちゃん、あおちゃん、またねー! あでゅー!」

 

 恭介の声が響き渡ると、葉留佳は左手を大きく振りながら船のタラップを駆けあがっていった。

 

「もう、葉留佳ってば……お別れの挨拶くらい、ちゃんとしなさいよ。恥ずかし屋なんだから、まったくもう……」

 

 佳奈多も最後にそんな台詞を残しながら、船へと乗り込んでいった。

 

 その二人を皮切りに、最終盤まで残っていたリトルバスターズのメンバーも、別れの言葉を交わしながら次々とタラップを渡っていった。

 

 

 

 ……気がつけば、その場には恭介だけが残っていた。

 

「……今回、鳥白島チャーハンズと試合ができて光栄だった。俺たちとしては結果は残念だったが、全力は出し切った。悔いはない」

 

 恭介は俺たち一人一人の顔を見ながら、そう言ってくれた。彼にそう言ってもらえると、俺たちも頑張った甲斐がある。

 

「恭介氏、良ければ皆を連れて、また来てくれ」

 

「もちろんだ。ここの島民は皆、温かいしな。また来させてもらうさ」

 

「今度来る時は野球は抜きにして、ゆっくり遊びましょー?」

 

「この島には、まだまだ魅力的な場所がたくさんありますからね」

 

「ああ。その時はまたよろしく頼む」

 

 のみきから始まり、恭介は一人一人としっかり言葉を交え、握手をかわしていく。

 

 

 

「……羽依里、俺たちと夏休みを過ごしてくれて、ありがとうな」

 

 最後に俺の番が来た。お互いに目を合わせて、がっしりと握手をする。

 

「……なぁ恭介」

 

「ん、どうした?」

 

 その時、俺は恭介にしか聞こえないくらいの声で質問をしてみた。

 

「練習試合の最後、ライトに飛んだサヨナラヒットさ。あれ、もしかして恭介なら取れてたんじゃないか?」

 

「……さあ。どうだろうな」

 

 恭介は首をかしげながら、左手で俺の肩を軽く叩く。

 

「……いくら俺でも、あれだけ強い思いが乗った球は取れないさ。じゃあな。良い島だったぜ」

 

 恭介も俺にしか聞こえないような声でそう返すと、握っていた手を離し、俺たちの方へ軽く右手を上げながら、タラップを渡って行った。

 

 最後に恭介が乗り込んだことを確認すると、係員がすぐにタラップを外し、船が港を離れていく。

 

 俺たちはその様子を静かに見送る。

 

 

「おーーーい!」

 

 

 ……その時、船から叫び声がした。

 

 見ると、リトルバスターズの皆が船のデッキに集まって、俺たちに向かって笑顔で手を振ってくれていた。

 

 そしてデッキの柵には手作りの横断幕が掲げられていて、そこには『ありがとう』の文字。

 

「皆さーん、ありがとでしたーーー!」

 

「楽しかったですヨー!」

 

「お前ら、またなー!」

 

「元気でねぇー」

 

 リトルバスターズの皆から、たくさんのお礼の言葉が聞こえる。俺は思わず、目頭が熱くなるのを感じた。

 

「……羽依里、色々と頑張った甲斐があったね」

 

 隣のしろはが、優しい声色でそう言ってくれた。

 

「……うん。俺、泣きそうだよ」

 

「ちょっとくらいなら、良いんじゃない?」

 

「……いや、我慢する。せっかく皆笑顔なんだしさ」

 

 俺はちらりと、横に並ぶ皆の顔を見る。鴎も、夏海ちゃんも、皆が笑顔だった。ここで、俺が泣くわけにはいかない。

 

「皆、また来てくれよー!」

 

「ありがとうございましたーーー!」

 

 俺たちも彼らに負けないくらいの笑顔で、いつまでも手を振り返していた。

 

 

 

 

 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

 

 

 すっかり日も落ちた19時過ぎ、俺と夏海ちゃんは夕食を食べに、しろは食堂に足を運んでいた。

 

 今日はしろはも疲れているはずなのに、俺たちのためだけに食堂を開けてくれたらしい。

 

「しろは、わざわざ食堂を開けてもらってごめんな」

 

「別に良いよ。その代わり、出せる料理は一品だけだからね?」

 

「ああ、全然構わないよ」

 

 まだバーベキューの片付けも完全には終わっていないし、食べさせてもらえるだけで十分だった。

 

「すぐにできるから、ちょっと待っててね」

 

 二人分のおしぼりを用意してくれた後、しろはは手早く調理に取りかかる。俺たちもいつもの席に並んで座り、お冷を飲みながら料理の完成を待つ。

 

「静かだな……」

 

 昨日の今頃はリトルバスターズの皆が夕食を食べに来ていて、上へ下への大騒ぎだったはずだ。普段の食堂に戻っただけだというのに、本当に静かだった。

 

「……あの人たちが帰ったら、急に静かになったね」

 

 しろはも同じ心境だったんだろう。手元から視線を動かさずに、そう口にしていた。

 

「はい。本当に楽しい人たちでした」

 

 夏海ちゃんもそう言いながら、ポケットからボールを取り出して眺めていた。

 

「夏海ちゃん、そのボールは?」

 

「えへへ、今日の試合のウイニングボールです」

 

 笑顔でそう言っていた。正確にはちょっと違うと思うけど、夏海ちゃんの夏の思い出がまた一つ増えたんだし、ここで妙なことを言うのは野暮だと思う。

 

 試合が終わって一度着替えてはいるんだけど、思い出の品だし、大事にポケットに入れていたみたいだ。

 

「夏海ちゃん、思い出の品も良いけど、さすがにごはんの前には、もう一度おしぼりで手を拭いてね?」

 

「わ、わかってます!」

 

 しろはにそう促され、夏海ちゃんはボールをポケットにしまって、もう一度おしぼりでしっかりと手を拭いていた。その様子が何故か微笑ましく感じる。

 

「……はい、おまちどうさま」

 

 そして夏海ちゃんが手を拭き終わるのを待ち構えていたように、料理が提供された。

 

「え、もうできたんですか?」

 

 夏海ちゃんも驚いていたけど、目の前には確かに湯気が立ち昇る大きなお椀と、小皿が置かれていた。

 

「しろは、これってお茶漬け?」

 

「うん。鯛茶漬けだよ」

 

「え、鯛ってあの魚の?」

 

 確か、昨日今日と漁に出られないんじゃなかったっけ。なのに鯛があるとか、不思議だった。

 

「何日か前にね、漁港でもらったの。その身をすぐにさばいて、漬けダレに漬けておいたんだよ」

 

 しろははそう言うと、カウンター越しにタッパーを見せてくれた。調味液に漬かった魚の切り身が見える。

 

「出汁はあらかじめ作っておいたから、ごはんをよそって、この切り身を乗せて、最後に温めた出汁をかけるだけ。お手軽なんだよ」

 

「お手軽な割に、凄くおいしそうだ」

 

 お椀の中を見ると、琥珀色をした出汁の中に、ご飯と鯛の切り身がまるで小島のように盛られていた。一番上にはご丁寧に、三つ葉まで添えられている。

 

「そっちの小皿には漬物とワサビがついてるから。出汁にワサビを加えると風味が変わって美味しくなるよ。でも、夏海ちゃんは入れ過ぎないようにね」

 

「わかりました!」

 

「出汁も昆布と削りがつおから取った出汁だし……」

 

「……しろは。今のダジャレ?」

 

「え?」

 

 しろはが饒舌に料理の説明をしていたけど、俺はつい、そう突っ込んでしまった。

 

「……べ、別にダジャレじゃにゃいし!」

 

 言われて気づいたのか、思いっきり噛んでいた。

 

「そ、そんなのいいから、冷めないうちにめしあがれ!」

 

 急に恥ずかしくなったらしく、しろははそこまで言うと、顔を赤くしながらそっぽを向いてしまった。

 

「それじゃ、いただきます」

 

「いただきまーす!」

 

 そんなしろはを見て和みながら、俺は夏海ちゃんと一緒に手を合わせて、熱々の鯛茶漬けを食べ始める。

 

 最初に鯛の切り身を一切れ、口に運んでみる。うん。漬けダレと胡麻の風味が効いていて、美味しい。

 

 次に、出汁とご飯を一緒にかき込む。この出汁も美味しい。お昼がバーベキューだったし、胃に優しい感じがする。

 

「……うん。しろは、美味しいよ」

 

「はい! おいしいです!」

 

 夏海ちゃんは猫舌なのか、ふーふーと冷ましながら鯛茶漬けを食べていた。まぁ、夏にここまで熱々なものを食べるなんて、あまりないかも。

 

 俺はそう考えながら、箸休めに漬物を口に運び、同じ小皿のワサビを少量取って出汁に混ぜる。ちょっと味を変えてみよう。

 

 ……うん。このワサビの風味も良い。考えれば鯛も魚だし、ワサビが合わないはずがない。出汁も海のものを使った出汁だし。

 

「んんんーーー!?」

 

 しろはのダジャレを思い出していると、隣から素っ頓狂な声がした。思わず視線を向けると、夏海ちゃんが鼻を押さえて悶えていた。どうやら俺を真似てワサビを入れたのは良いけど、その量が多すぎたみたいだ。

 

「夏海ちゃん、しっかり混ぜないとワサビは溶けないよ。はい、お水」

 

「あ、ありがとうございます」

 

 近くで声が聞こえたと思えば、しろはが自分の鯛茶漬けを持って、夏海ちゃんの隣に座っていた。今日はしろはもここで夕飯にするみたいだ。

 

「……いただきます」

 

 やがて、しろはも手を合わせてから食べ始めた。最初に出汁をすする。

 

「……ちょっとかつお節の出汁が薄いかも」

 

 そう言って表情を曇らせていた。俺は美味しいと思うけどなぁ。

 

「それに、さっき噛んだところに出汁がしみる……」

 

 小さな声でそう言って、左の頬を押さえていた。やっぱり噛んでたんだ。口内炎とか、ならないといいけど。

 

 

 

 その後は三人がお茶漬けを食べる音だけが、静かに響いていた。いつもの鳥白島が戻ってきたと実感する、本当に静かな夜だった。

 

 気がつけば、夏休みも残り一週間。これから先、どんな楽しいことが待っているだろうか。

 

 

 

 

第三十八話・完




第三十八話・あとがき



おはこんばんちわ。トミー@サマポケです。
今回でようやく野球勝負が終わりました。長かったです……ええ、書く方としてもw書きなれないスポーツものということもあり、たくさんの指摘やご意見をいただきました。本当にありがとうございます。

さて、これでリトルバスターズとのクロスオーバーは終了となります。野球もバーベキューも、書きたいものは全部詰め込んだ感がありますが、楽しんでいただけましたでしょうか?
そして終盤に食堂で言っていた通り、次回からいつもの鳥白島が戻ってきます。ここしばらくリトルバスターズの皆がいたせいもあり、いつも以上に賑やかだったので、書く方としてもギャップが凄そうです。

また、次からはストーリーの方も少しずつ進めていきたいと思っています。羽依里君たちの夏休みも残り一週間。よろしくお付き合いください。

今回も、最後まで読んでいただいてありがとうございました!
感想など頂けましたら、泣いて喜びます。
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