Summer Pockets #2   作:トミー@サマポケ

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まえがき

サマポケ#2の3万UAを記念して、一年半ぶりに短編を書きおろしました。
夏海ちゃん中心のお話となりますが、どの日付にも当てはまらない外伝作品となります。
ギャグ要素強めですので、#2本編と似た別の世界のお話だと思って、お気軽に読んでいただけると幸いです。

それでは、久々の#2の世界を、どうぞ!


Summer Pockets #2・外伝

 

 

 ――とある夏の、とある日。その朝。

 

「ない……! ないない……! ないですよ……!」

 

 まだ夜が明けたばかりの時間帯。廊下を走り回る音で声で目が覚めた。あの声は夏海ちゃんだ。

 

「夏海ちゃん、どうしたの?」

 

 眠たい目を擦りながら布団から起き上がって、襖を開ける。ちょうど目の前に夏海ちゃんがいた。

 

「あ。羽依里さん……お、おはよーございます……」

 

 声をかけると、あからさまに視線を泳がせた。なんだか様子が変だ。

 

「夏海ちゃん、おはよう。何か探しもの?」

 

「えーっと、まぁ……そんなところです……」

 

 そして、再び泳ぎ出す視線。肯定はしたけど、なんか煮え切らない言い方だった。

 

「探しものなら、俺も手伝うよ。今日も特に予定ないしさ」

 

「い、いえ! その、羽依里さんには関係ないのでっ!」

 

 全力で拒否された。えぇ……これでも長いこと一緒に夏休みを過ごしてきたのに、関係ないとか言われるなんて。ショックだった。

 

「そんなこと言わないでさ。俺と夏海ちゃんの仲じゃない」

 

「えー、でも、そのー……えっと……」

 

「確かに俺は頼りないかもだけどさ。一人で探すよりいいと思うんだ。是非、手伝わせてよ」

 

「わ、わかりました。それじゃ、お願いします」

 

 俺の願いが通じたのか、渋々ながら了承してくれた。多少強引だった感じも否めないけど、これで夏海ちゃんの力になれる。

 

「任されたよ。それで、何を探してるの?」

 

「わ、私の……つです……」

 

「え?」

 

 思わず聞き返してしまった。後ろのほう、声がしりすぼみになって聞き取れなかったし。

 

「……私のぱんつです! 一枚、見つからないんです!」

 

 開き直ったのか、大きな声で言った。ええ、探してたのって、それなの。

 

「ほーら、嫌そうな顔してます! だから、言いたくなかったんです!」

 

「そ、そんなことないよ。俺も夏海ちゃんのぱんつ、探したいなぁ!」

 

 勢いで言ってから、自分がとんでもない発言をしたことに気づいた。正直、恥ずかしいことこの上ないけど、あれだけ啖呵を切った手前、今更手伝えないなんて言えない。

 

「ところで、鏡子さんに聞いてみなかったの? その……ぱんつ……」

 

「なんで羽依里さんが恥ずかしそうに言うんですか! 恥ずかしいのは私ですよ!」

 

 うがー! と頭を掻きながら天井を見上げた。その後の話によると、鏡子さんは朝から寄合なのか、この時間からすでに部屋にいないらしい。

 

「だから困ってるんですよ……物干し台の周りはもちろん、自分の部屋の引き出しも、鞄の中も、脱衣所も、洗濯機の中も全部見てみたんですが、見つからないんです」

 

 先程までの元気が嘘のように、がっくりと肩を落としてその場に座り込む。その様子からして、俺が起きるよりずっと前から一人で探していたんだろう。

 

「でも、そんな時ってあるよね。必死に探すときほど、探し物は見つからないっていうさ。そのうち、ひょっこり出てくるかもしれないよ?」

 

「えぇ……でも気になるじゃないですか。羽依里さんだって自分のぱんつがどこか行ったら、気になりません?」

 

「いや、ならないけど」

 

「……もういいです。自分で探します」

 

「いやいや、気になる。気になるから手伝うよ」

 

 口をへの字に曲げながら立ち上がり、すたすたと廊下を進んでいく夏海ちゃんを慌てて呼び止める。難しい年頃だなぁ。

 

 

 

 

 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

 

 

 手早く身支度を整えた後、とりあえず探し物の基本として、夏海ちゃんがぱんつを最後に見た場所を聞いてみることにした。

 

「昨日の夕方まで干してありました。それは確実です。それから取り込んだはずなんですが」

 

 腕組みをしながら、必死に思い出していた。昨日は夏海ちゃんが洗濯当番だったし、そこは間違いないだろう。

 

「取り込む時に取り落として、植え込みとかにあったりしないの?」

 

「一応、探してはみたんですが……」

 

「もう一回、手分けして探してみようよ。二人で探せば、簡単に見つかるかもしれないしさ」

 

 ……というわけで、夏海ちゃんと一緒に物干し台の置かれた庭へとやってきた。ぱっと見た感じ、何かが落ちているような感じはしない。

 

「……そういえば、探してるぱんつってどんなの?」

 

「え」

 

「その、柄とか特徴を教えてもらわないと、探しようがないんだけど」

 

「え、えーっとですね、その」

 

 夏海ちゃんは耳まで真っ赤になってしまった。何聞いてるんだろう俺。

 

「薄い青色で、真ん中にリボンがついてるんで……す……」

 

「ありがとう。リボンのね」

 

 努めて冷静に答えたけど、俺の内心は穏やかじゃなかった。夏海ちゃん、ごめんね。

 

 

 

 

 ……夏海ちゃんが決死の覚悟で特徴を教えてくれたものの、いくら探してもぱんつは見つからなかった。

 

 ふと、加藤家の敷地内に落ちていたらそれは夏海ちゃんのなんだから、わざわざ特徴なんて聞かなくても良かったんじゃないか……なんて考えがよぎったけど、今更だった。

 

「昨日の夕方は風が強かったし、もしかして敷地の外に飛ばされちゃったのかもね」

 

「そんな……ぷち最悪です」

 

 どこかのヒトデ好きな女の子みたいな台詞を口走りながら、再び肩を落とす。もし風に飛ばされたとなると、探すのは大変そうだ。

 

「うー! こうなったらヤケチャーハンです! 朝ごはん食べて体力つけたら、外に探しにいきましょう!」

 

 踏み石を力いっぱい踏みつけながら、すごく悔しそうに夏海ちゃんが言う。まぁ、腹が減ってはぱんつ探しはできないし、いいんじゃないかな。

 

 

 

 

 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

 

 

 恒例の朝チャーで気力と体力を回復した後、俺たちはぱんつの捜索範囲を加藤家の外に広げた。

 

「ないなぁ……」

 

「ないですねぇ……」

 

 二人揃って地面を見ながら、住宅地を徘徊する。道中に島民から「二人一緒に散歩かい? 相変わらず仲が良いねぇ」とか、声をかけられたけど、まさかぱんつを探しているだなんて言えず、俺たちは早くも途方に暮れていた。

 

「この島、交番とかありませんでしたよね?」

 

「ああ……あわよくば、落とし物が交番に届けられているかも……って話? 残念だけど、この島に交番はないなぁ」

 

 基本、治安の良い島だから……なんて思いながら、俺は晴れ渡った空を見上げる。蝉たちも元気よく鳴いているし、鉄塔も朝日を反射して輝いている。うん。今日も島は平和そうだ。

 

「……あ」

 

 鉄塔を見たその時、俺にある考えが浮かんだ。

 

「夏海ちゃん、一ヶ所だけ思い当たる場所があるんだ。そこに行ってみよう」

 

「え? どこか、ぱんつの辿り着く場所があるんですか?」

 

「それは着いてのお楽しみ。こっちだよ」

 

 まるで昔のゲームのエンディング曲みたいなことを言う夏海ちゃんの手を引いて、俺はある場所へと向かった。

 

 

 

 

「……ついた。ここだよ」

 

「え、なんで役所なんですか?」

 

 そして辿り着いたのは、鉄塔の袂。島の役所だった。

 

「島の落とし物は基本ここに集まるんだ。だから、可能性は一番高いかと思って」

 

「あー……でもぉ……」

 

 役所の職員の視線が集まる中、「ぱんつの落とし物が来てないですか?」なんて問いかけをする場面を想像したんだろうか。夏海ちゃんが何とも言えない顔をした。

 

「そんな顔しなくても、俺が聞いてあげるから大丈夫だよ。ほら、行こう」

 

 微妙な顔をする夏海ちゃんをそう諭して、俺は役所の扉を開ける。すると、目の前のカウンターにのみきの姿があった。

 

「のみき、ちょっと聞きたいことがあるんだ。島で発生した落とし物についてなんだけど……」

 

「ああ、島民が落としたものはたいてい持ち主が分かるから、ここにあるのは観光客が忘れていった傘や水筒が主だな。ほとんど持ち主が現れることはないが、一定期間保管する決まりになっているんだ」

 

 そう言いながら、奥から大きなプラスチックケースを運んできてくれた。のみきの言う通り、中にはお洒落な水筒や花柄の傘がいくつも入っていた。

 

「それで、二人は何を探しているんだ?」

 

「それがさ……」

 

「ぱんつです!」

 

「なに???」

 

「ぱんつを探しているんです!」

 

 俺が言おうと思っていた単語を、夏海ちゃんが役所中に響く声で言っていた。どうやら、開き直ったらしい。

 

「ぱ、ぱんつ……は、さすがにないな……その、すまない……」

 

 のみきも恥ずかしさを隠しながら、がさごそとプラスチックケースの中を一応探してくれたが、夏海ちゃんのぱんつはなかった。

 

「本当に、すまない……」

 

 何度もそう謝るのみきにお礼を言って、俺たちは役所を後にした。

 

 ……唯一の希望が潰えてしまったけど、これからどこに行こう。

 

 

 

 

 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

 

 

 しばらく住宅地を彷徨った末、俺たちは駄菓子屋を訪れていた。

 

「……別に新しいのを買いたいわけじゃないんですけど」

 

 ガラス戸に手をかけたところで、夏海ちゃんがぽつりと言う。ジト目で見ないで。わかってるから。

 

「駄菓子屋は鑑定大会とかやってるからさ。もしかしたら誰かが拾って、ここに持ってきてるかもって思ってさ」

 

「……自分のぱんつがお宝として持ってこられたら、それはそれで微妙なんですけど」

 

 だからジト目やめて。痛いから。

 

「あ、いらっしゃーい。夏海ちゃん、何か探し物?」

 

「ぱんつを探してるんです!」

 

「へっ、パンツ!?」

 

 役所の時もそうだったけど、単刀直入過ぎるよ。夏海ちゃん。

 

「えーっと、女性用下着があるにはあるけど……夏海ちゃんサイズ? えーっと、どうだったかしらねー」

 

「蒼、ストップ」

 

 目を白黒させながら奥の倉庫へと向かおうとする蒼を呼び止めて、俺が理由を説明した。

 

 

 

 

「なーんだ。そういうことねー」

 

 勘違いしちゃったー。と付け加えながら、蒼は後ろ頭を掻く。まったく、早とちりしないでもらいたい。

 

「それで、ぱんつは届いてたりしませんか?」

 

「残念だけど、来てないわねー。第一、そんなもの持ってくる子がいたら、そのまま回収して役所に送ってるわよ。役所、行ってみた?」

 

「はい。なかったです」

 

「そう……」

 

 返答を聞いて、蒼は心配顔で夏海ちゃんを見る。足りないんなら一枚買っとく? 半額にしたげるわよ? みたいなことも言ってくれていたし、やっぱり、女性同士で通じる部分もあるんだろうか。

 

「……ちょっと待って。ぱんつ探してるってことは……夏海ちゃん、今はぱんつ……」

 

「穿いてます! ちゃんと穿いてますから! 見てください! ほら!」

 

 続けて変な勘違いをした蒼の元へダッシュしていき、ズボンのフロント部分を少し広げてみせていた。俺の方からは当然見えないけど、夏海ちゃんも必死だった。

 

 

 

 

 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

 

 

 ……駄菓子屋でも成果を上げられず、俺たちは一旦加藤家に帰宅。少しの休憩をはさんだ後、ぱんつの捜索範囲をいよいよ島全域に広げるため、ガレージからバイクを引っ張り出した。

 

「行きましょう! ぱんつ探しの旅に出発です!」

 

 後ろの夏海ちゃんもだいぶ壊れちゃってるなぁ……なんて考えながら、俺はバイクのエンジンを噴かした。今度は女性陣中心に話を聞いてみるかなぁ。

 

 

 

 

「あ、羽依里、なっちゃん!」

 

 住宅地から港へと続く一本道を進んでいると、道の反対側から歩いてくる鴎に声をかけられた。

 

「話は聞いたよー。なっちゃん、災難だったねぇ」

 

 バイクを止めると、同時にそんなことを言われた。鴎、誰から聞いたんだろう。

 

「ぱんつ、良一君に取られちゃったんだって? 今、のみきさんが討伐隊を組織しているみたいだから」

 

「「え?」」

 

 続く鴎の言葉を聞いて、俺と夏海ちゃんの声が重なった。良一がなんだって?

 

「いや鴎、俺たちは確かにぱんつを探してはいるけど、良一がどうこうって話は初耳なんだけど」

 

「そうなの? 私はその話、ツムツムから聞いたんだけど」

 

 紬から? どこからそんな話になったんだろう。噂が広まっていく過程で、尾ひれがついてしまったのかな。誰も悪くないはずなのに、急に不安が襲ってきた。

 

「た、大変です。このままじゃ、良一さんが酷い目に遭ってしまいます!」

 

 事の重大さに気づいた夏海ちゃんが俺の背中を叩きながら言う。正義感の強いのみきのことだし、噂を鵜呑みして、良一を徹底的に叩きのめすつもりに違いない。

 

「のみきを止めよう。鴎、ありがとうな!」

 

「なんかよくわからないけど、頑張ってね!」と、エールを送ってくれる鴎にお礼を言って、俺はバイクを反転させる。向かう先は役所だ。

 

 

 

 

 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

 

 

「くそ、誰もいない……!」

 

 バイクを飛ばし、ものの数分で役所に到着するけど、既にのみきの姿はなかった。青年団の人たちもほとんどいない所を見ると、鴎の話は本当みたいだ。

 

「皆さん、どこに行ったんでしょうか」

 

「この時間帯に良一がいる場所といえば、秘密基地だと思う。討伐隊の皆も、そこに向かったに違いないよ」

 

「それじゃ、急いで向かいましょう!」

 

 バイクにまたがって待っていた夏海ちゃんに急かされながら、俺もバイクに飛び乗る。次に目指すは秘密基地だ。良一、無事でいてくれ……!

 

 

 

 

 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

 

 

 ……秘密基地に到着してみると、時すでに遅し。その周囲は無数の水鉄砲を持った青年団の人たちに包囲されていた。どうしてこんなことに。

 

「あれ、羽依里さんと夏海ちゃんじゃないですか」

 

 俺たちはただ、ぱんつを探していただけなのに……なんて無力感を味わっていると、見知った声が聞こえた。見ると、藍がその集団の中から抜け出し、こっちに歩いてきた。

 

「え、なんで藍がこんなところに?」

 

「たまたまおかーさんの用事で役所に行ったら、良一ちゃんの討伐隊を組織するとか言う話が出ていたので、用事そっちのけで参加した次第です」

 

 せめて、用事済ませてからにしようよ……なんてツッコみたくなったけど、今はそれどころじゃない。

 

「藍、これは誤解なんだ! 確かに俺たちはぱんつを探していたけど、良一は関係ない!」

 

「そうです! 私たち、こんなこと望んでいませんよ!」

 

 俺と夏海ちゃんは必死に訴えるけど、藍は困ったような顔をしていた。

 

「薄々そんな気はしてましたけど、一度大きくなった流れは止められませんよ。ほら、見てください」

 

 そう言って藍が集団を指差すと同時、スピーカーからのみきの声が響いた。

 

『こちらは少年団有志及び、青年団執行部。ハイドロ部隊だ。お前たちは完全に包囲されている。自らの罪を認め、大人しく投降しろ!』

 

「待ってくれ! 俺たちが何したっていうんだ!」

 

「そうだぞ! 少なくとも、俺はとばっちりだ! 開放してくれ!」

 

 のみきの言葉に、秘密基地内の良一と天善が必死の訴えを見せていた。彼らの言葉は事実だ。

 

「……ところで藍、ハイドロ部隊って何?」

 

「みきちゃん直属の部隊らしいですよ。島の有事に召集され、迅速な対応で事態を処理するんです」

 

 確かに迅速な対応を見せてるけど、これは勘違いだから! 止めないと!

 

『……投降の意思なしと見なす。総員、ハイドロを構えろ!』

 

 俺が大声を出して制止する前に、のみきが叫ぶ。駄目だ。もう止められない。

 

「きっと皆さん。ストレスのはけ口を探しているんですよ。ストレスの発散って大事だって言うじゃないですか」

 

 己の無力さを痛感していた俺に、藍は水鉄砲のポンプを動かしつつ、全てを悟ったかのように言う。この人たち、島でストレスとは無縁の生活をしてそうだけど。

 

『各自、安全装置解除! ジェノサイドモード! ファイア!』

 

「「ぎゃーーーー!」」

 

 ……そして次の瞬間、無情な虐殺が開始された。余りに凄惨な光景に、俺は夏海ちゃんの顔を覆い隠した。

 

 

 

 

 そして討伐隊は秘密基地を半壊させた後、家宅捜索を始めた。でも、当然のように夏海ちゃんのぱんつは見つからなかった。

 

 その代わり、良一のコレクションとか天善の愛蔵書とか、とてもじゃないけど夏海ちゃんに見せられない本が多数押収された。二人とも、本当にごめん……!

 

 

 

 

 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

 

 

 引け目を感じた俺たちは、逃げるように秘密基地を後にして、加藤家へと帰宅した。

 

「うー。もう諦めます! きっと、私のぱんつは誰かが島モンのエサにしたんですよ!」

 

 バイクをガレージにしまって戻ってくると、夏海ちゃんが庭の土を蹴りながら訳の分からないことを言っていた。

 

「風に乗って戻ってきたりは……してないよね?」

 

 ダメ元でもう一度、物干し台の周囲を見てみる。やっぱり落ちていない。

 

「しっかり干してあったのは見たんです。それで、間違いなく取り込んだんですよ」

 

 物干し台を見つめながら、大きなため息をつく。他の洗濯物と一緒に取り込んで、きちんと畳んでそれぞれの部屋に運んだんだと。俺の部屋にも洗濯物は届いていたし、間違いないだろう。

 

 ……あれ? 俺の部屋?

 

 ……その時、俺の中にある可能性が浮かんだ。よもやと思いながら、俺は自分の部屋と向かう。

 

 そこには昨日、夏海ちゃんが届けてくれた洗濯物が綺麗に畳まれた状態で積まれていた。夜のうちにタンスにしまおうと思っていたのに、すっかり忘れていたんだ。

 

 俺はその洗濯物を一枚、また一枚と丁寧にどけていく。するとその中に、見慣れない布があった。

 

「……あった。夏海ちゃん、これじゃない!?」

 

 嬉しさのあまり、部屋の中から庭の夏海ちゃんに呼びかける。「えっ、本当ですか!?」と、当の本人も踏み石を蹴とばす勢いで庭から縁側を経由して、俺の部屋に駆け込んできた。

 

「そうです! これです! 見つかりました! ありがとうございます!」

 

 自分のものだと確認すると、心底嬉しそうにお礼を言って、俺の部屋を飛び出していった。色々あったけど、見つかって良かった。まさか、俺の部屋にあったなんて。灯台下暗しとはこのことだ。

 

「……あら? 夏海ちゃん、パンツなんて持ってどうしたの」

 

 その時、廊下から鏡子さんの声がした。気がつけばお昼前だし、寄合から帰ってきたらしい。

 

「はい! 朝から私のぱんつが無くなってですね。あちこち探したら、なんと羽依里さんの部屋にあったんです!」

 

「え、それって……お、お姉さんに電話しなきゃ!」

 

 続いてそんな台詞が聞こえ、バタバタと遠ざかっていく足音。

 

 ……え? ちょっと待って。夏海ちゃんの言い方は間違ってないけど、あれだと俺、思いっきり誤解されてる?

 

「待ってください鏡子さん! そんなんじゃないんです! 話を、話を聞いてください!」

 

 俺は部屋を飛び出して、全力で鏡子さんの後を追う。

 

 その後、とりあえず電話線を引っこ抜いて通報を阻止した後、夏海ちゃんも交えて鏡子さんに理由を説明するのに、小一時間を要した。

 

 ……そんな、夏の一日。

 

 

 

Summer Pockets #2・外伝 完




あとがき

おはこんばんちわ。トミー@サマポケです。
こちらでのあとがきは一年半ぶりになりますね。皆様お久しぶりです。
前書きにも書きましたが、今回の作品はサマポケ#2の3万UA突破記念に書いた外伝的な作品になります。本編の完結から1年半以上経っておりますが、未だに皆様から読んでいただけていると実感しています。本当にありがとうございます。

さて、今作の本来のタイトルは『ぱんつはどこに消えた!?』だったのですが、題名に使うとあまりに浮いてしまったのでここに乗せる形となりました。

お決まりのオチですが、一度でいいので夏海ちゃんを主役にして、後先考えずにこういったものを書いてみたかったので、書けて満足しています。

では、今回のあとがきはこのあたりで。最後まで読んでいただきまして、ありがとうございました!感想など頂けましたら、泣いて喜びます。
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