甘さは人の為ならず   作:ネコ削ぎ

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 息抜きに書いているんですけど、自分でもテキトー過ぎると実感した今日この頃です。


それそれ 3+4+5は?

 史上初のIS世界大会モンドグロッソ。各国の代表が競い合い頂点を決める戦いの優勝者が織斑万春であることは世間一般的に周知の事実だ。

 ただしそれは文面での事実。

 織斑万春はブリュンヒルデとして君臨することになったのだが、その試合ぶりは各国の代表が自分の至らなさに自信を喪失してしまうほどの圧倒的な実力差で絶望を振りまくものであった。

 次元の違う存在に各国は世界最強を打ち倒す人材の発掘に勤しむことになる。

 国の顔となって世界に向かっていくのだから実力と品位が求められるは当然のこと。だが、実力と品位の両方を兼ね備える人材など早々見つからない。たとえ見つかったとしても世界最強に届くものでなければならない。

 幾らかの国は代表にふさわしい人材を発掘していく中で、少数の国々は勝ちにいくことを求めて品位を犠牲にして代表にふさわしくない人材を発掘することに成功した。

 彼女たちは他者を圧倒する才能を持ちながらも、人格面に大きな問題を抱える扱い辛い存在であったが、国の上層部は勝つためには目を瞑らなければならないこともあると無理やり納得することにした。

 そして品位を捨てた国辱とも成りかねない無頼たちは見事にモンド・グロッソ上位ランカーとして君臨することになった。

 それでも織斑万春には及ばず。

 眼前で行われる戦いの凄まじさに楯無は生唾を飲み込んで注視する。

 世界三位と四位の二人が国境を越えた連携で絶え間ない攻撃を行う。

 カエデリアは自身の身の丈の二倍はある巨大な斧を振り回し、リストは両手にハンドガンを持って対象に的確に攻撃を繰り出す。

 巨大な斧は攻撃力全振りを表し、正面から受けてたとうものなら防ぎ切れずに防御したまま装甲を引き裂かれてしまうことだろう。少なくとも楯無には防ぐ手立てがない。真っ向勝負を捨てて回避に意識を割かなければならないだろう。

 強力な一撃の合間に、ハンドガンによる銃撃が襲い掛かってくる。数撃てば当たるばら撒きではなく、一発一発が相手の装甲を抉り取らんと的確に飛来する。

 しかし、織斑万春はその場を動くことなく迫りくる攻撃の全てを防ぎ切る。攻撃がどこから来ようが動じることなく適切な防御を展開していく。

 世界最強。

 ISに携わる者であれば誰もが知る存在。当然ながら楯無も知っている。知っていて実力を肌で感じたくしつこく試合を迫ったのだが、この試合を見るに身の程を知らずにいたことを痛感させられる。

 最強の盾。

 鉄壁。

 要害。

 要塞。

 不落。

 織斑万春を表す言葉の数々は彼女の戦闘スタイルをよく表現している。

 彼女はどんな戦いにおいてもひたすら防御を繰り返す。攻撃には防御を。一つの流れを忠実に守り相手の無力を知らしめるかのように防ぎ切る。

 カエデリアとリストの苛烈な攻撃を前にしても淡々と盾を構える万春。

 巨大な斧は逸らすように防ぎ、ピンポイント射撃は同じくピンポイントに弾く。それは挟み撃ちにされたところで変わらない。

 楯無は冷静に判断する。

 あそこにもう一人加わったところで切り崩しは不可能。実力が違い過ぎる。

 あそこまで強いとは。万春のISが性能で劣るためにスペックだけで少しは爪痕を残せると思ってしまったことは、暗部組織の人間として致命的な判断ミスだ。

 楯無はちらりと隣人たちの様子を盗み見る。

 従者である虚はポカンとした顔で万春を見ている。さきほどまでの不安が見当違いなものであることは確かだ。

 先輩であるダリルはイライラしている。何にイラついてるのか楯無には判断できないが、時折「冗談じゃねえぜ」とか「馬鹿なんじゃねえの」とか言っているので誰かが原因となっていることだけは分かった。

 同学年の友人フォルテは試合の様子を怠いと言わんばかりに半眼で眺めていた。未来視がなくても試合の結果が分かりそうな状況となると興味は薄れるというもの。塩試合と言われても言い返せない。

 同じく同学年の友人サラは冷静に試合を観察している。冷たいとも取れる感情の薄い相貌はここにきても変化はなく内情が全く読めない。

 楯無が視線を戻すと試合に変化が起こっていた。

 

 

 

 強いことは知っていた。

 伊達に世界最強の椅子に座っていたわけじゃない。高々数年経過しただけでは劣ること知らずに猛攻を防ぎ切っている。

 油断していたわけでも侮っていたわけでもない。

 カエデリアは高揚する気持ちを制御できずにも冷静に考えることもしていた。残念なことに気持ちと思考は別々に行動してしまっているが。

 冷静なカエデリアは思案する。

 世界ランキングでは三位と二つも位で負けてはいるが、引退してIS学園の整備科教師として勤務するに留めISの訓練もおざなりになっていたであろう万春に、いつか地につけてやろうと選手として引退してもなお自らを鍛え続けてきた自分。少しは劣ってもいいはずなのに、彼我の実力差が少しでも埋められていてもいいはずなのに。世界最強の壁は劣化することなく聳え立っている。

 かつてと違い状況は二対一と数の上では有利であっても防御を打ち破れない。綿かなんかで鉄を叩いている気分にさせられる。不毛と嘆きたくもなる。

 しかし、絶好調な気持ちよさで斧を振るうカエデリアは超えるべき壁の堅牢さに沈むどころか気持ちは鰻登り。なんとしてでも防御をぶった切ると鼻息荒く猛攻をかけていく。

 万春の打鉄の持つ鉄壁の守りは易々と突破できるものではない。

 打鉄は万春の戦闘スタイルを十全に発揮できるISなのだ。

 両肩のアンロックユニットの盾は万春を隠せるほどに大きく側方を十分にカバーできてしまう。両腕にもまた小型の盾が装着されていて、化け物クラスの反射神経と弾道予測により迫りくる全ての攻撃を弾き返してくれる。

 ただの盾であれば防御を打ち崩す攻撃で楯をぶっ壊せばいいのだが、生憎なことに打鉄の盾はそんじょそこらの盾とは強度が天と地ほどの差がある。異常な耐久性はカエデリアの全力で振りかぶった斧にも傷がつかない。そもそも今までにも打鉄の盾に傷がついたところをカエデリアは見たことがない。それほど硬い盾だ。

 防御型を売りにしているだけあって盾の性能は一級品というわけだが、それに反するように機動力は並みのISを大きく下回るほどに低い。カエデリアのISの低速域が、万春の打鉄の高速域となってしまうほどに鈍足で車よりも速い程度でしかない推進力は高速戦闘を主にするISでは致命的な弱点となる。

 とっても硬いが救いようのないノロマ。

 だからこそ、あの打鉄は鈍足を補う為に大量の火器を装備している。武器庫と言っても差し支えないほどの銃火器を詰め込むだけでなく、詰め込み切れないものは両肩の盾の裏側に懸架し、武器をたらふく積む為に更に機動力や無駄な装置を削ぎ落とし、パススロットを無理矢理広げる始末。結果、大部隊と一戦どころか何戦かやらかせるレベルの継戦能力を獲得してしまったのだ。

 しかし現在、万春は盾で攻撃を防ぎつつ隙をついてハンドガンで反撃するだけと、高火力を以て勝利を手繰り寄せる気配を見せない。

 相変わらずチマチマした戦い方だ。

 圧倒的な攻撃力で豪快に攻め立てるカエデリアとは大違いだ。

 

「カエデリア。苦戦しているじゃないの。やっぱり最強である私をなくしては万春の防御を打ち破ることはできないのよ」

 

 どうやってか千冬を倒したレアヴェールがどや顔で合流してくる。

 

「勝ったか。番狂わせだな」

 

 レアヴェールは決して弱いわけではないが千冬の方が圧倒的に強い。せいぜい数分くらいは足止めできればいいか程度の認識で放っておいたカエデリアだが、さすがに勝つとは予想できなかった。

 

「番狂わせ言うな!!」

「番狂わせだよー。だってチフユはストロングだ。ワタシならともかくレアヴェールじゃインポッシブルだもの」

「リストも言ってくれるじゃないの。でもでも勝ったのは私よ。事実は事実として真実も真実として受け止めなさい。私が最強であることを。私のワンオフアビリティも最強であると」

 

 胸を張って声高々に宣言するレアヴェール。気のせいか戦いの熱が若干冷めた気がしないでもない。とりあえず観客席は確実に白けた。

 

「そういえばチフユは練習機の打鉄を使っていたねー」

「そりゃあ勝てなきゃ不味い。専用機と練習機でならばな」

「ワンオフも使ったみたいねー」

「練習機相手に専用機でワンオフも使っちゃあ勝てるな。勝てなきゃ無能もいいとこだ」

「でもさ。そこまでやんなきゃ勝てないのは駄目じゃないの」

「だな。やっぱりお前無能だ。おい無能。いますぐ特攻して死んでこい」

「言いたい放題言ってんじゃないわよ!! どうせ嫉妬でしょ。最強の私の最強のワンオフに嫉妬してんでしょ。見苦しいのそーゆーの」

 

 両腕を振り回して叫び散らすレアヴェールを無視して、カエデリアとリストは戦闘を再開する。遅れてレアヴェールも参戦するが、三人寄ったところで万春に傷を負わせることはできなかった。

 

「硬いけど。あの時の本気じゃなかった私と違ってぇ!! 今の私は本気の本気で挑んでんのよ!! 勝てると思わないこと!!」

 

 マシンガンと細身の剣を巧みに操っての攻撃も万春の防御は崩せない。機動力で翻弄しようにも背中を取ったところで反応されて防がれる。

 業を煮やしたレアヴェールは早々に切り札を切ることにした。

 

「ワンオフアビリティ発動!!」

 

 千冬を打ち倒した力。

 

「攻楽闘戦!!」

 

 それを見たリストもまた切り札を盤上に出すことを決めた。

 

「ワンオフアビリティ発動!!」

 

 口角を釣り上げ恰好の獲物を見つけたとばかりに叫ぶ。

 

弧陣弾骸再番(こじんだんがいさいばん)!!」

 

 二人が切り札を出す中でカエデリアは極めて冷静に状況を見定めた。レアヴェールのワンオフがどのようなものか分からないが、リストのはチーム戦においても使い勝手のいいワンオフだ。しかし、自分のワンオフはあくまで一対一を前提としたワンオフでチーム戦では仲間を巻き込む恐れがある。切り札を使えばもしかしたら一矢報いることもできようか。しかし、この状況では仲間の動きを悪くする危険性がある。どうするべきか。

 冷静に冷静考えた末にカエデリアはいつの間にか重くなっていた口を開く。

 

「ワンオフアビリティ発動」

 

 考えるのは捨てた。

 

巨刃ノ刃(きょじんのやいば)!!」

 

 そして彼女たちは全力で負けにいく。

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