甘さは人の為ならず   作:ネコ削ぎ

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食べられるのなら食べてみたいじゃない

 緊張はひとつもない。自分自身のことではないけれども、顔をみればすぐに分かってしまうのだから付き合いの長さを感じざるを得ない。あと、多大なる好意とか。

 顔の作りは非常に織斑千冬にそっくり。そりゃあ一応双子なのだからそっくりなのは当たり前かもしれない。

 でも雰囲気は全然違うね。

 千冬の奴は堅物なんて言葉が似合いそうだね。よく刀とかに例えられるけど、確かに下手に触ると怪我させられそうなほどに冗談が通じないんだよ。危にゃいんだよねぇ、こっちは頭脳労働を専門としているところがあるのに頭ぶっ叩いてくるから。何度も何度も叩いてくるから困る。ちょっとアイツのISに細工してやろうかと思っちゃったほどに困ったさ。冗談の一つくらい寛容になってくれないものかにゃあ。

 それに比べてまはにゃんは全体的に柔らかい。

 本人が甘いもの好きなところを加味してマシュマロみたいに柔らかい。やばい食べたくなってきた。ああ、もちろんマシュマロのことじゃなくてまはにゃんのことをだよ。決まってんじゃん。

 と言ってもまはにゃんが柔らかくなってきたのはお菓子作りに目覚めたころからかな。それよりも前は柔らかいというよりもフワフワしているといった感じだったかな。ちょっと地に足ついていない感じ。冗談とかにもちゃんと応えてくれるんだけど、どっか壁があったかな。でも当時から千冬よりも好感は持てたよ。というか私としては出会った当初から友達だったよ。あ、千冬は知り合い程度ね。

 まぁ、まはにゃんのバックボーンが意外にも重いことを知ったときには地に足ついてない理由が分かった気がして嬉しかったけど。

 まはにゃんは生粋の戦闘マシンだったけど私には個性的な友達の認識。だって、今更になって戦闘マシン扱いできるわけないしさ。

 それにお菓子作りに目覚めてからまはにゃんはストンと地面を踏みしめて生き始めたみたいだし。お菓子もちょー美味しいし。

 私としてはまはにゃんは最高の友達なのさ。

 そんな友達のコンディションなんて顔みりゃあ分かる。

 個人的には友達ポジで終わっちゃあ困るんだにゃあ。

 惚れてるんだよ。

 愛したいんだよ。

 特別な存在になりたいんだよ。

 もうね、私が男なら合意の上でパコパコしているよ。だって可愛いじゃん。柔らかいし、甘い匂いがするし。

 

「性転換する薬開発したい」

 

 うん。ISスーツ姿は非常に興奮します。アレだね、甘いの好きな割にはスタイル抜群じゃないの。

 私が欲望をぶちまけてしまったことでまはにゃんが首を傾げて「どうして?」と小声で聞いてくる。相変わらず常人を大きく下回る声量。可愛いじゃないの。

 どうして、と問われたら赤ずきんちゃんの一幕を思い出す。どうしてお婆さんの口は大きいのみたいな。

 

「そりゃあもちろん」

 

 お前を食べるためだよ。

 

「まはにゃんとパコパコしたいからだよ」

 

 もうね。欲望が止まらない。嘘を立て掛けて本音を隠すまどろっこしさは要らないや。

 あんまりに隠さな過ぎたけど、まはにゃんは冷静な顔して「パコパ……コ」と呟きながらも段々と顔が赤くなってきていた。あれ、脈ありじゃないかにゃあ。いける、この恋愛成就するぞ。

 おうおう。こんな可愛い反応を見せるまはにゃんを自称最強の五位女の前に出すわけにはいかない。何か話題を変えて冷静さを取り戻させよう。

 

「ところで新型はどうかにゃあ?」

 

 倉持研究所が開発した新型機。その出で立ちは鎧武者の如く。

 まはにゃんは新型ISを装着しながら「名前が被ってる」と一言。

 

「んふふ。まはにゃんの専用機の本来の姿を量産機として再設計した機体だからね。名前はまはにゃんのと同じ打鉄。正確には量産型打鉄といったところかにゃ」

 

 まはにゃんの装着している打鉄は、まはにゃんの専用機である打鉄を素人でも扱えるように性能を変化させて量産仕様にしたIS。

 

「まはにゃんのに比べるとだいぶ防御力は落ちちゃっているけど、その代わりに致命的だった機動力はかなり上昇しているから飛び回っての戦いができちゃうよ」

 

 まはにゃんの打鉄は超防御型で重装甲が売りだったけど、この打鉄は防御型でしかなく一般のISに比べて防御に重きを置いているだけ。素人でも扱えるようにしているからしょうがないけど。

 でも機動力はある。まはにゃんの鈍重過ぎてデブ扱いされる打鉄とは違って、ビュンビュン飛び回って切り結ぶことだってできる。

 うん、さすが倉研の新しい顔。まはにゃんの打鉄と千冬の暮桜のデータを参考にしただけある。ちょっと普通過ぎてつまらないISになっちゃった。

 

「さてさて。相手さんもお待ちだし、まはにゃん行ってらっしゃい」

 

 手を振って送り出せば、まはにゃんは小さくもはっきりと「行ってくるね。終わったらケーキ食べよう」と言ってくれた。

 そう、私にとってのメインイベントはまはにゃん特性のケーキだ。こんな勝つことの分かっている出来レースじゃない。

 

「残念です。マスコミがこの場にいないなんて。我がフランスの最新鋭機と敏腕パイロットの雄姿を公に披露できませんね」

 

 管制室に向かえばフランスのデュノア社の職員がもう勝った気でいた。

 

「ああ、すみませんね。そちらとしてはこの方が良かったのでしょう。織斑万春の公式戦負けなしの戦績に傷がつかなくて済むのですから。たとえ新型機の模擬戦といえど、負けたとなればマスコミも書き立てるでしょうからね」

 

 ポロポロと言葉が出てきているようだけど馬鹿なんじゃないだろうかな。新型のラファール・リヴァイヴとかいうのと五位の女に肩入れしているけど。

 くひひ、負けた時が見ものじゃないの。

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