即堕ちストラトス   作:しが

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一夏になんか屈服しない!

…いい加減俺ははっきりさせておきたい。

 

それは実に簡単なことだ。これだけは譲れないということでもある。

 

 

俺は「一夏になんか屈服しない」ということだ。俺はこれ以上子宮に主導権を取られることはない、つまり一夏に負けることなんてあるわけがない、ということだ。それを今から証明してやるさ。

 

 

「…悪い、少し待たせたな。」

 

聞き覚えのある声だ。というより一夏しかいない。待ち合わせをしてるのも一夏しかない。

 

 

「どうせ集合前だ。遅刻も何もあるま…」

 

…そういえば一夏の私服を見るのはいつぶりか、経った数週間ぶりだが…

 

「一夏、お前…その服。」

 

「ああ、やっぱり分かるもんだよな。そうだよ、ラウラに選んでもらった服だ。」

 

 

…以前水着を買いに行ったとき、気まぐれに一夏に服を選んだことはあった。…いや、まさか一夏が覚えていたとは。

 

「実は袖を通すのがこれが初めてでさ。」

 

「…ということはつまり、お前は今日のためだけにわざわざ着て来たのか?」

 

「まあ、そうなるかな。」

 

「何故?」

 

「ん?」

 

「何故、そんな手間を。」

 

「一番最初に見せるのはラウラって決めてたからな。」

 

…分からないぞ、一夏、お前の考えが。

 

 

「何故だ?なぜ、私に一番最初に見せたかった?」

 

「選んでくれただろ?で、似合ってるとも言ってくれた。だから、カッコつけたくなった。」

 

さも当然のように言い切る一夏、だが彼の攻撃はまだ終わってなかった。

 

「似合うと考えて選んでくれたってことは、かっこいいと少しでも思ってくれたってことと勝手に思ってるけれど…少しでもら…いや、リエルの前ではカッコつけていたんだ。好きな女の子の前じゃ男なんてみんなそうなんだよ。」

 

 

…駄目だ、子宮が降りてくるのを体中が噛みしめている。そのこっぱずかしいセリフをその眩しい笑顔で言うか!?言えるのもおかしいだろ!?過去最高に濡れ始めてるんですケド、どうするのこれ、どうすればいいの?織斑家の弟さんはバケモノですか?存在が精子みたいなものですか?言動の一つ一つが孕ませに来てるよ。ヤらなくても妊娠できそうだよ、これ。

 

「…お前は…そういうことを素面で…」

 

「…どうしたんだ?」

 

「いいぞ、もっとやれ。さあ、行こう一夏。」

 

「え、えっと ショッピングモールはあっちだぞ…?」

 

「ショッピングモールは後回しだ、さあ行くぞ。」

 

待て、身体どこに行く。お前が向かおうとしているのは公衆トイレだな、しかも人の滅多に通ることのない、やたらと個室が広い公衆トイレだな。分かってるんだぞ、お前が何をやりたいかは、否、ヤりたいかは。だがやらせねえからな!体の主導権返せ!!!

 

俺はその時、身体を押さえるのが必死だった。故に周囲に気を配ってる余裕はなく、どう見えるかなんてのは気にしてもなかった。一夏曰く、右足が後退して、左足が前進していたらしい。馬鹿なの?馬鹿だわ。…一分に近い死闘の末に何とか理性が踏みとどまり、ちゃんと俺に体の主導権が戻って来た、許さねえぞ、本能。

 

「ふう…ふう…今までのどんな敵よりも手ごわかった…」

 

「あ、あのリエル、さん?」

 

思わずさんをつけてしまう一夏かわいい。いやだから待て、そもそもこいつは男だ、イケメンなのは認めるが可愛くはないだろ、ほらよくもう一度顔を見てみろ…

 

 

「…恥ずかしいんだが。」

 

目を背けてしまった。どことなく頬が赤みを持っている、つまり照れているという事だろう。…まあ、なんだ。織斑教官にもよく似ているのは分かっていたことだ、顔立ちは実にキレイだ。美形という言葉がよく似合う。…そんな彼が、美しい彼が恥じらって視線を逸らした。ふむ、なるほど。

 

 

 

一夏かわいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!

 

 

IS学園の一般女子生徒なんかより女子力全然高い一夏かわいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!

 

素面で口説き文句言えるくせに見詰められたら照れる一夏かわいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!

 

でもデフォルトでイケメンムーブ見せる一夏かっこいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!

 

 

…いや、落ち着け、今の俺は何をどう考えても以上だ。そうだ、俺は今から一夏をただ性的に食いたいだけだ。いや、むしろ食われたいだけだ。発情期の獣のように激しく種付けがされたいだけなのだ。

 

 

…思考まで侵食されてきているような気がする。いや、気のせいやない。思い切り侵食されてる、理性さんももうだめかもしれない、理性が働いたら負けだと思ってるとか言ってるし、もう仕事してくれなさそう。熱心に仕事して、理性。

 

そして俺は、賢者モードに近い何かになった。

 

「…さて、行くか。」

 

「お、おう。」

 

ドン引きしないでもっとこっちに来てくれや。しかし醜態を見せてしまったな…

 

 

「えっと、今日はリエルの買い物に付き合うだけでいいんだよな?」

 

「ああ、プランはこちらで立てている。話題の映画とやらの情報を集めるのは苦労したが…安心しろ、特に支障はないはずだ。」

 

「…つまり、これってデートってことだよな?」

 

「私の中ではそういう扱いだ。」

 

「じゃあ、手を繋がないか?」

 

…は?

 

「デートならそうやるべきなんじゃないかって思っただけだけど…。」

 

お前は時々認識がずれている…というより古風だな、いつの時代の人間なんだ。

 

 

「恋人握りのやり方は私も知らん。そうだな…では、腕を貸せ。」

 

一夏の腕に自分の腕を通す。そして彼に寄りかかるように歩く。これもまた一つの手をつなぐ方法だろう。

 

 

…そういえば先ほどの一夏の発言を思い出そう。…本能が暴走したせいで流しかけたが思い出したぞ、さっきのデート云々で。

 

『似合うと考えて選んでくれたってことは、かっこいいと少しでも思ってくれたってことと勝手に思ってるけれど…少しでもら…いや、リエルの前ではカッコつけていたんだ。好きな女の子の前じゃ男なんてみんなそうなんだよ。』

 

もっと拡大をしろ、してください

 

『少しでもら…いや、リエルの前ではカッコつけていたんだ。好きな女の子の前じゃ男なんてみんなそうなんだよ。』

 

もう少しだ、最後らへんだ。

 

 

『好きな女の子の前じゃ男なんてみんなそうなんだよ。』

 

好きな女の子の前じゃ…ええと、今ここにいるのは俺と一夏だけ、つまり男と女だけ。一夏の発言は俺に向けられていた。女は俺しかいない。

 

 

…え?

 

 

つまり、一夏の言う好きな女の子っていうのは俺の事?それしかないとは思うけど…え?

 

 

…いや、待て。一夏のことだ、後先考えず使った可能性もある。けれども一夏はすくなくとも俺という異性を好きとは思っているのは違いないだろう。だが恋愛感情があるまでかはわからない…だがお互い好き合ってるのならばもはや結婚するべきでは…?まあ、結婚可能年齢ではないんですけどね。

 

 

 

 

…また子宮が降りてきてしまった。…その後、俺は一夏とさまざな場所を回ることになる、回ることになるのだがその都度、身体が一夏をトイレに連れ込もうとして理性と激闘を繰り広げることになったので時間をその分食ってしまったのはもはや愛嬌だろう。…久しぶりに子宮が大暴走してやがる!!!

 

ああ、もうかっこいいな畜生!!!

 

 

 

——————————————————

 

 

 

 

一夏とリエルは最後のイベント…映画鑑賞を終えて、映画館から出て来た。

 

 

「前評判通りだったな、良い映画だった。」

 

「面白かったよ…まあ前知識が一つもなかったからいまいちわからないところもあったけど。」

 

時刻は既に9時を過ぎている。幾ら夏場とはいえとっくに日が沈み、夜になっている。だが外の気温は温かく、風は生ぬるい。

 

 

「少し歩いて行くか、一夏。」

 

彼女の提案に一夏はうなずいた。そしてそのまま海浜公園を通り帰路に着くことになった。…その帰り道のさなか、リエルは不安そうな声で、一夏に尋ねた。

 

 

 

 

「…一夏、一つ聞きたいんだ。」

 

「ん?どうしたんだ、リエル。」

 

 

「…わたしは、そんなにお前にとって女性的魅力がないか?」

 

「…え?ど、どういうことだ?」

 

 

「…二度だ、わたしは二度お前を誘惑した。この体をお前の好きなように使っていい、どのような欲望でも受け止めると。…だがお前は一度たりともわたしに触れることはしなかった…一夏、わたしはそんなに魅力がないのか?」

 

 

…彼女は実に不安そうだった。だが、一夏は微塵たりともそう思ったことはなかった。

 

 

「…正直俺がこんなに熱い好意を寄せられるなんて今まで一度も夢にも思ってなくてさ。…リエルの誘惑は確かに魅力的だった…けど、俺は一時の欲求に任せて大切な人を穢したくないんだ。」

 

一夏は彼女の方に手を置くとそのまま言葉を続ける。

 

 

「それに俺はまだリエルに相応しくないんだ。ただの俺の自己満足にすぎないけれど俺はまだまだ半人前にもなってない。だから…待っていて欲しい。」

 

「…待つ?」

 

 

「…ああ、俺は相応しい男になってくるまで…その時まで返事は待っていて欲しい。」

 

焦らすように一夏は言う。

 

「その時に、きっと迎えに行くからさ。」

 

あどけない少年の笑顔から、多感な青年の顔へと彼の顔は少しずつではあるが変化していた。

 

 

 

「だから…」

 

 

一夏はリエルを抱きとめる。そして彼女の顔を見る。

 

「今はこれで許しておいて欲しい。」

 

 

外灯の僅かな光は、顔を近づけ唇を交わした男女の影をしっかりと映していた。

 

 

 

 

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