即堕ちストラトス   作:しが

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タイトルがそのままな意味なわけないだろう!


突貫工事

IS学園は国からたっぷりと金が下りてくる。そのため施設も最新鋭の物ばかりであり寮においても非常に快適な暮らしをすることが出来る。冷暖房が全室に常備してるのはもちろん、これなんてホテルというような豪華なベッドもついてくる。そして、何よりも防音対策が凄い。壁と壁の間にはこれでもかと言わんばかりに防音シートが詰め込められており、隣の部屋の音は聞こえない快適な日常を送ることが可能だ…さて、長々と語って何を言いたいかというと…

 

 

この部屋の中ではいくら叫ぼうとも誰にもとがめられないのだ。

 

 

 

 

「何やってんだぁぁぁぁぁぁぁああああああ!!俺ぇぇぇぇぇぇぇえええええええええ!!!!」

 

 

 

赤べこのように壁に頭を打ち続ける銀髪の美少女、もとい俺、ラウラ・ボーデヴィッヒ。大丈夫、頑丈だからこの程度で怪我はしない。額が痛いがそんなことよりもっと心が痛い。というか胸が痛い、泣いていいですか。 後悔してもしきれねえぞ、おい…。

 

俺が何を後悔しているか、そんなものは言うまでもないだろう、朝の一件だ…そう、俺が、織斑一夏に…き…キスをしてお前を嫁に貰いに来た宣言をしたあの事件である。その後の俺を見るクラスメイトの目がドン引きだったのは語るまでもない。別にそれはどうでもいいのだが、問題は、俺が、あいつに、言った、言葉である!

 

「お前を嫁に貰いに来た」

 

 

馬鹿だろ、いや馬鹿だろ。百歩譲って求婚したことはまあいいよ、でもなんで嫁なのさ。俺よりも十数センチでかい男が何故嫁なのさ。そもそもなぜ織斑一夏なのさ。俺よ、織斑一夏が憎かったんじゃないのか。アイツがいたから、織斑教官は二連覇が果たせなかったのだぞ?…あいつは足手まといでしかないはずだぞ。…あんなにも朝は憎悪の炎を燃やしていたが、それは今も健在だ、織斑一夏を叩き潰して地に伏せさせたいという欲望も現在進行形で燃えている。気構えはよし、だが何故俺は今朝、奴の唇を奪った?というか男と、よりにもよって織斑一夏とのキスなど俺が一番嫌がることだ、なぜ俺は自分からそれを進んでやっている?わからない、あの時は大きな情動に体が、気持ちが揺れ動いていた。思考をクリアに、考え直せば疑問だらけだ、なぜ?そもそもあんな男に心奪われるわけがないだろう、もう一度織斑一夏のことを考えてみろ。

 

 

あの男は、腑抜けだ…それに極度の未熟者だ、力不足極まりない…弱いやつだ、弱い奴ほど見ていて俺に…守りたいものはない!それに守られる一夏、良いじゃないか。ずっと守ると気を張り続けて来た彼が誰かに守られることで安らぎを得れるというのならば、違うそうじゃない。

 

確かに顔立ちは整っているのかもしれない、それは認める、腐ってもラノベ主人公なのだからそこはツッコミはしない。だが、あの顔立ちは軟弱だ、そして女々しい。織斑教官とよく似ているというのになぜあれほど覇気がない…弱弱しい…それが苛つかせるほど…抱きしめたくなるじゃないか!生憎わたしの胸は小さいがふくらみがないわけではない、この胸にあの顔を…こう、抱き寄せたい。いや違う、そうじゃない。

 

 

そもそも体つきが軟弱だ、平均的な十五歳から比べれば別格なのかもしれないがあれを鋼の肉体とは言えない、よくて鉛だ。俺はドイツでもっとバケモノを見て来た、だからあの傷一つない皮膚はまさに赤子のようなものだ、赤子のように無垢なその肉体は俺の癪に障る…癪に障るほど悔しいが、あの体を抱いてみたいし抱かれてみたい。程よい筋肉の付き方だから絶対に居心地のいい筈だ。それにいい匂いもしそうだ、だから違うそうじゃない、いい加減にしろ俺。

 

ああ、もう埒が明かない。完全に心が奪われてるじゃないか。馬鹿みたい、というより馬鹿だ。

 

 

壁に頭を打ち続ける俺だが、ドアにノックが響いた。打ち付けを中止し、ドアを開けるとそこにはなんと、織斑教官が居たのだった。俺は姿勢をただすと彼女に部屋へと入って貰った。

 

 

「まあ、とにかく座れ、ボーデヴィッヒ。そうじゃなけれればまともに話も出来ない。」

 

「はい、織斑教官…いえ、織斑先生。」

 

「結構結構、感心なことだ。さて、話、というのは言うまでもないが今朝のお前の行動のことだ、ボーデヴィッヒ。何故あんな奇行に及んだ、か。しっかりと訳を聞かせてもらおう。」

 

「……正直、自分にも何故あんなことをしたのか。」

 

困惑した声音で答えるのは俺。あの時精神を支配していたのは訳の分からない衝動だった。

 

「なるほど、自分でもよくわからない、と。」

 

「はい。…あの時の自分は真っ白に塗り潰されていたような気分でした、目の前のあの男が許せなかったはずなんですが、それが霞むようなそんな気分でした。」

 

「ふむ…惚れたか?」

 

「そ、そんなことはありません。からかうのはよしてください、教官…。」

 

「織斑先生だ。…だがそれにしても意外だったぞ、狂犬のようだったお前があんな行動に出るのは正直私にも予想が出来なかったぞ。」

 

 

「…自分でもまだ自分がよくわからないんです。まるで…自分が二人に乖離しているようだ。例えも何もあったものではないですが…自分が、真っ二つに分かれている。」

 

 

「…気になるか?その真実が、お前の真実の気持ちが。」

 

 

「気にならないといえばウソになりますが…。」

 

「ならば、存分に確かめるんだな…入ってこい、織斑。」

 

彼女が声をかければ部屋のドアを開けて入って来たのは織斑一夏、その人だった…どうやって防音ドア越しに聞き取ったんだ…?と俺が疑問を抱えてる片隅、再びあの男と目が合った。

 

子宮がうずいた。ホムンクルス、とはいえその作りは人間と変わりない、つまり女として備えている子供を産むという機能はまず間違いなく備わっている。そしてその子供を育て産み落とす器官が今朝からアイツの顔を見るとうずく。やかましい。

 

 

「教官、これは。」

 

「織斑先生だ。そんなに気になるのならば確かめると良い、それにこの男からもお前と話がしたいと要望を受けてな。」

 

織斑一夏とじっと目が合う。…俺と話がしたい?まさか嫁になる覚悟が出来たのか…?いや違う、思考よ、冷静さを捨てないでくれ。大方今朝の事で何かしら文句があるのだろう。

 

 

「さて、私の仕事は終わりだ、あとは若い者同士でやってくれ。」

 

 

「ちょっ、千冬姉!」

 

「織斑教官!」

 

のらりくらりとかわしそのまま彼女は部屋の外にへと出て行ってしまった。残されたのは俺と、一夏だけだ。兎にも角にもこのままでは話も進まない。

 

 

「…とりあえず座ったらどうだ、何もないが茶くらい淹れてくる。」

 

「あ、いや…いい。そんな気を俺に遣わなくても。」

 

「そ、そうか。」

 

沈黙が訪れる。凄く空気が気まずい。…初対面で唇を奪った女と奪われた男が同じ部屋にいるというシチュエーションを考えるだけで気まずいというのにそれが実際に訪れたらどれだけ気まずいか…今俺が経験してるだけのしんどさが待っているぞ。

 

 

「えっと…俺は、織斑一夏だ。知っていると思うけど。」

 

「今更自己紹介か、だがなぜ今。」

 

「…一応、あの教室の時、ボーデヴィッヒさんに自己紹介されたから、かな。」

 

「…変なところで律儀だな。」

 

甘い、人間として甘すぎる。この男は真性のお人好しなのだろう。だが、甘すぎる。その甘さが命取りを何度も招くというのに…だがそれは人としての美点なのかもしれない。

 

「…朝はすまないことをしたな。」

 

 

「…え?」

 

「あのことだ。謝れば許されることではないが、謝罪はせねば筋が通らないからな。」

 

「いや、俺は全然気にしてない。それに役得だった、って思わせてもらうさ。」

 

「…役得?」

 

「ボーデヴィッヒさんは、凄く可愛いし、綺麗だからさ。そんな美人、美少女にキスをされたっていうのは俺としては役得だったってことだよ。」

 

…あー…もうこの男は、こうやって女をたぶらかしてきたんだなと改めて確信した。世辞じゃなく、それが彼の本音から繰り出されるセリフのため誑かされるのかもしれないが…恥ずかし気なセリフを微塵も恥ずかしがらずこの男は素面で言い切った。ある意味、この男は物凄い度胸の持ち主なのかもしれない。

 

 

「え?…あれ、何か気に障ることを言ったかな、顔も赤いし…。」

 

そう、耳まで真っ赤であろう、わたしも自分の体温がどんどん上がっていってることに気づいてる。それに腹の奥、子宮あたりがうずいてきている。熱暴走だ、目の前のこの男の遺伝子を取り込めと本能が叫んでいる。うるさい、少し静かにしやがれ。

 

 

「…とにかく、俺は気にしてないからボーデヴィッヒさんも気に追わないで欲しいかなって。」

 

「…ラウラ。」

 

「…ん?」

 

「私の名前はラウラ、だ。ボーデヴィッヒというのは呼び慣れてない、だからラウラと呼べ。」

 

「ラウラさん?」

 

「さんも不要だ。」

 

「じゃあ、ラウラ?」

 

「そうだ、それでいい。気安くても構わん。」

 

「じゃあさ、余計なことかもしれないけど俺のことも一夏って呼んでくれ。正直名字呼びは千冬姉と被るからややこしいんだ。」

 

「…分かった、ならば一夏、だな。」

 

 

一夏、ラウラ。…初対面の男女がお互いの下の名前を呼び捨てで言えるまでの関係に発達する…これはもう実質、夫婦なのでは…?いい響きであることには違いない、違うそうじゃない。俺はこの男が憎いんじゃないのか。いや、違う。

 

「…一夏、お前に会う前、私はお前が世界で一番憎かった。」

 

「…え?」

 

「織斑教官が、モンドグロッソで二連覇が出来なかったのはお前が誘拐されたからであると、お前が足手まといだったからあの人の名に傷がついたと、思い憎んでいた。…だが結局それは思い込みだったのかもしれん。」

 

「…思い込み?」

 

「…お前が、誘拐され織斑教官が棄権して助けに行かなければ、(わたし)はあの人と出会うこともなかった。出来損ないのまま、終わっていただろう。」

 

確かに織斑千冬の経歴に傷はついたかもしれないが、それでもそれがなかったことになると俺は今ここに存在していない。…ラノベとして読んだ織斑一夏に対しては不快感しか思い浮かんでこなかった。だが、今俺は誰なんだ?ラウラ・ボーデヴィッヒだ。その不快感を浮かべた男が主人公のライトノベルの登場人物だ。だが、俺は一人の人間だ。

 

そして目の前の織斑一夏も、一人の人間なのだ。

 

 

そう考えると、もう俺は目の前の男に不快感を抱くことはなかった……結論として、現実と化したこの世界においていつまでも空想の事を引きずっていたのは他でもないこの俺だったというわけだ。

 

 

「…そっか、千冬姉もそれだけ慕ってくれる教え子がいて、教え甲斐があったと思う。俺が言うのもおかしな話だけど、それだけ千冬姉のことを思っていてくれてありがとう、ラウラ。」

 

「…おかしな奴だ。」

 

 

そう…偏見から入ってしまったことで結局食わず嫌いになってしまったのだろう。今の俺はそれを自覚した。…だから変な偏見はなくなった…なくなったのだが

 

 

 

「よく言われる、でも今更むぐうっ!?」

 

 

唇に温かいものが当たっている感覚がある。今朝からこれで二度目だ。舌の先に絡まるものがある、それは唾液に濡れた生暖かい舌。むさぼるようにそれを食いついている。やがて顔を放すと糸が引く。それがとても蠱惑的に見えた。

 

 

「…やはり目に狂いはなかったな。お前は私の嫁にする。婿でも可だ。異論は認めん!」

 

 

お願いします、身体さん勝手に動かないでください。

 

 

 

 

 

 




なぜか好評だったので突貫工事で作りました
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