正直に言うと、ボクは織斑一夏に大して興味がなかった。父親には白式のデータを盗んで来いと送り込まれてきたけど、気乗りがしないのは事実だった。
彼と同室になった。彼の人柄の良さはわざわざ説明するまでもないだろう。日本に来たばかりの転校生であるボクに対して同じ男のよしみでありとあらゆる世話を焼いてくれる。ひとえに彼がお人好しだからだろう。卑屈なボクに対してもったいないくらいの人間だけれども、キミとは良い「男」友達でいられそうだ。
…さて少しボクの身の上を語ろう。ボクはシャルル・デュノア、本名シャルロット・デュノア。デュノア社の社長である父親と愛人の間に生まれた子。いわゆる妾の子だね…そして「インフィニットストラトス」という作品においてあざとさと花澤ボイスから高い人気を生み出したヒロインだと自負してるけど…
なんの因果か、ボクがシャルロットになるなんてね…正直人生っていうのは読めないものだと思う。うん、もう気が付いてると思うけどボクが彼と良い男友達になれると言ったのはボクの前世が男だから。原作ではシャルロットは一夏に対してだいぶほれ込んでたけど、元男のボクがそうなる確率は一ミリもないと言える。まあ、そんなものだよね。…デュノアには戻りたくないからしばらくはIS学園で平穏に過ごせるといいなぁ…。
あとは、彼に性別がばれないようにしなくちゃ、ね。
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転校初日。クラスの女子の皆に驚かれたのは予想してはいたが、それよりも彼女…ラウラ・ボーデヴィッヒの行動に驚かされた。…最初彼女は彼のことを憎んでいたんじゃなかったっけ。一夏の唇を奪って嫁宣言とか時系列跳んでない?大丈夫…?
彼に手を握られ走った。男の子なんだなぁって思うくらいには手が大きくてボクの今の無力さを考えるとちょっと嫌になるなぁって思う。
彼の背中を見た。15歳って聞いたけどいい筋肉の付き方をしていた。逆にボクは男の子ではないからその筋肉を見ると前の自分を思い出してちょっとだけ嫌な気持ちになった。とりあえず彼は水も滴るいい男という言葉が似あいそうだった。
転校してから二日目、朝。ボクが目を覚ますと一夏の布団がやけにもっこりと膨らんでいることに気づき非常に気になったので、興味本位で彼の布団を剥がしてみた。
「ん…?ああ…二度目の目覚めだな…。」
くぁぁとあくびをかみ殺す銀髪の少女がそこにいた。ボーデヴィッヒさんだ。
「なんだ、夫婦の同衾を見詰めるのは良い趣味とは言えないぞ。」
「ご、ごめんなさい…じゃなくて!なんでボーデヴィッヒさんが!?しかもなんで二人とも裸なの!?」
一夏は下は履いてた。けど上裸だ…だがいったいなぜ…?
「はぁ…ん…朝か…なんかやけにあったかい…へあ!?ラウラ!?」
「うむ、おはよう 伴侶よ。いい体温だったぞ。」
それからはもう阿鼻叫喚。幸いにも他の人には迷惑が掛からなかったらしいから…まあそれはそれでいいとして、大胆過ぎるよ…彼女は…。
昼、一緒に食べないかと誘われた。特に断る理由もないので参加することにした。彼は手先が器用であり、唐揚げを貰ったけど非常においしかった。レシピを教えてもらえることは出来ないだろうか。と聞くと喜んで教えてくれた。今度自分で作ってみよう。
午後、ダブルスで誰と組むか、まだ決まってはない。まだ締め切りまでは時間があるので考えてみよう。一夏に組まないかと聞かれたけれども、とりあえず保留。それのせいで性別が露見したら元も子もないからいっそ異性としてる同性と組めばばれる確率も減るんじゃないかとボクは踏んでいるがそこはどうなのだろか。
夜、彼の顔が非常に近かった。なんてことはない会話に過ぎないのだけど彼が意図せず顔を近づけてくるものだから驚かされた。
「…やっぱりシャルルは、あれだな。顔が綺麗だ。」
「綺麗?」
「うん、綺麗。男に対して言っても喜ばないとは思うけど綺麗だ。」
「そ、そっか…ありがとう、一夏。」
不意打ち極まりないが褒められるのは悪くない。結構いい気分だ。と少し浮かれながら眠りについた。朝起きたらまたボーデヴィッヒさんが、一夏の布団にもぐりこんでいた。引っぺがすのに時間がかかった。
三日目、今日はISの実施訓練。いつものことだけれどもやはり学校でやるとなるとそれなりに緊張する。ボクの場合はいつ正体がバレるんじゃないかという不安によるものだけれども…そんな風に気を散らしていたのがボクの致命的なミス…だったのかもしれない。
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シャルルは障害物を避ける飛行訓練をしていた。だが先ほどのモノローグの通りいつバレるのではないかと気を張り続けており注意散漫になっていた。一瞬、油断してしまった…そして障害物が彼女の頭部へと直撃する。…幸いにもISの防護があり重傷には陥らなかったものの、ショックは大きかったのか気絶してしまった。女子生徒たちが騒ぐ中、一夏が申し出た。
「あのすいません!俺が連れて行きますよ、保健室に。」
善意なのだろう。同じ男という認識のため、親切心からシャルルを保健室まで送り届けようと彼?を抱きかかえた。…その時、臀部の肉がくにゃんと彼の腕に柔らかく食い込んだ。…すさまじい違和感に襲われた。…だが今はそんなことを考えてる場合じゃないと、お姫様だっこの状態のまま保健室へと駆け出して行った。周りの黄色い歓声を無視しながら駆け出し、校医にその症状を見てもらった。
「…うん、軽い脳震盪だね。これなら救急車を呼ぶ必要もなさそうだししばらくすれば目を覚ますわ…じゃあ山田先生にこれだけ報告してくるから、織斑君はちょっとデュノア君を見ててくれない?」
「はい、分かりました。」
校医が保健室から出ていくが一夏はそれよりも右手に残った強烈な違和感が気になっていた。…試しに自分の尻に手を当ててみるが鍛えてあるため彼の尾てい骨は非常に男性的で堅い。筋肉も幾分か周りについているだろう。…目の前の彼は事故とはいえ触ってしまったとき、非常に柔らかかった。筋肉がついていないといえばそうなのだろうが、それでは説明しきれない違和感が拭いきれなかった。…悶々としながら彼は考えていたが、結論は出る前に、シャルルが目を覚ました。
「…そっか、ボク…気を失って…」
「突然倒れたから心配したぞ。…大丈夫か?」
「まだちょっとジンジンするだけかな。痛いところもないし、頭痛もすぐに収まると思う。」
「そうか…ならまあ良かった。」
「ごめんね、一夏 手間かけて。」
「いや気にするな…なあそれよりもシャルル。」
「うん…?」
「…いや何でもない、忘れてくれ。」
彼は思わず真実を聞き出したかったが、今ここでそれを問う気にはなれなかったため言葉を濁した。非常に複雑そうな彼の顔にシャルルは首を傾げていた。…どういうことだろ?
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夜、我ながらドジだった…と思う。このままではいつ露見するか分からない…明日からはもっと気を引き締めて行かないといけない。今日は一夏のフォローのおかげで何とかなったからよかった。シャワーを浴びてそんなことを考えていた。…一夏が入ってくることもなく、無事シャワーを浴び終わり彼に声をかけた。
「先にありがとう、開いたよ。」
「…ああ…。」
上の空だ。…今日の昼あたりから彼は上の空であり何故なのかボクはそれが気になっている。…いっそ問いただしてみようか。…もし彼が困っているならば助けになりたいというのは友人として間違いない本音だ。
「ねえ一夏、何か悩んでるの?ボクじゃ、相談相手にはなれないかな。」
「いや…別に俺は悩んでるわけじゃないんだ。ただずっと気になることがあるだけでな。」
「…気になること?」
「…ああ、シャルルのことだ…いっそ聞いてみるか…なあシャルル、無礼を承知で質問していいか?」
彼が問いかけて来たそれはとてもボクに対して緊張させるものだった。怖い
「…な、何かな?」
「…シャルルって女の子、なのか?」
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結局、そこからの流れはボクのよく知っているとおり、になってしまった。一夏に洗いざらいボクの事情を話し、彼をだましていたことを詫びた。
「…これからどうするつもりなんだ?」
「…フランスに帰るよ。スパイの対象にバレるなんて失態をしてしまったからね、退却だ。」
「お前には、バツが与えられるのか?」
「多分ね。失敗しちゃったもん、それは当然その報いを与えられると思うけど。」
「…なら、帰らない方がいいと思う。」
「無理だよ、ボクはフランスの…デュノア社の人形に過ぎないから。」
彼は、どうやってシャルロットを学園に引き留めたのか。そこの記憶だけがずっとずっと抜け落ちてる。何故なのか、誰がそんな意地悪をしたのか…だれが何のためにやったのか、何となく想像がついてしまった。
「…これは受け売りだけどさ、IS学園にはどこの国も干渉できない。…だからお前が無理に帰る必要はないぞ。…進んで帰りたいなら止めないが。」
「…ボクは。」
「俺に教えてくれ。…帰りたいのか?」
ああ、だめだよ…そんな遠慮なくボクのパーソナルスペースに入ってこないで。君はだからデリカシーがないんだよ。そんななのに、目の前の彼はとても頼もしく見える。
「…教えてくれ。誰にも言わないし、絶対に力になる。」
無責任なことを言わないで。
「俺を信用してくれなくても構わない。…けど、教えてくれないか、信用されてなくても…俺は自分の友達を守りたいんだ。」
それが無責任なんだよ。君は…
「…だ。」
「…ちゃんと、お前の言葉で教えてくれ。」
「…………嫌だ…よ、もう…帰りたくなよ…!」
誰が好き好んであの場所に帰りたがるだろうか。…どうしてこうも彼は頼りたくなってしまうのか…甘えたくなってしまうのか。
「いいんだよ、帰らなくて。」
「でも…ボクの居場所は…。」
「ここにある。…どこにもないっていうなら俺がお前の居場所になる。」
…ああ、君は卑怯だ。素でいい男を行っている…反則だ。
「…一夏。」
「…どうした?」
「胸、貸して。」
「…気のすむまでいつまでも貸してやる。」
その日、あの人が亡くなってから枯れていた涙を全て流した。
「ボクはシャルロット そう、呼んで欲しい。一夏」
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「ふぅ…いい湯だな。」
一夏は大浴場にへと来ていた。男子貸し切りの時間のため遠慮もいらない。それに彼は風呂好きを自称しているため、大浴場はドストレートの趣味だ。親父っぽいといわれるのはこれと親父ギャグが所以である。寛いでリラックスをしている彼だが、入り口に背を向けていたのが痛恨だった。…扉が開く音が聞こえた。そしてひたひたと歩く足音が聞こえ、その足音が彼の後ろで止まった。
「絶対、振り向かないでね。」
「…シャルロット…!?」
確かに彼女も扱い上は男子だ。だからこの時間に来てもおかしくないのだが…。ちゃぷりと湯に入る彼女。一夏とは背中合わせになる。
「…誰にも邪魔されず話がしたかったんだ。」
「そ、それはいいけど部屋じゃダメなのかよ…!」
「今すぐ、キミに伝えたかったんだ。…さっきはみっともなく泣いてごめんね。」
「いや、気にするなよ。気のすむまでやってくれって言ったのは俺だしな。」
「…それとありがとう。」
一夏には感謝してもしきれないと彼女が呟いた。
「まさかこのボクが落とされるなんてなぁ…。」
「落とされる?どういう意味だ…?」
「内緒だよ。多分一夏にもそのうち分かると思うよ。」
彼女が立ち上がる。そして歩き、一夏の目の前にへと来た。タオルは巻いてある、一応見えなくて済む…が健全な男子である彼にはすごく目に悪い光景だ。あろうことか、彼女はそのまま彼の膝の上に座った。一夏は慌てて下を隠した。
彼女は一夏の顔に自分の顔を近づけるとささやいた。
「だから、これはお礼だよ、一夏。」
見詰めた後、頬をついばみそのまま滑るように唇に唇を重ねた。意外な行動にフリーズしてる彼を差し置きシャルロットはそのまま舌を吸いつくす。彼の左手を持ち、自分の胸へと当てさせた。…30秒間 その状態が続き、ようやく彼女は離れた。
「一夏のえっち。」
彼は鋼の精神力で耐えた。
「…ふむ、これで一つ解決か。あらかじめ嫁にあの『校則』を教えておいたことが幸いしたな…さて、ライバルは一人でも多い方が楽しいからな。」
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