戦姫絶唱シンフォギア≠忘却の戦士   作:みすちー

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コレジャナイ感が半端ないです


出発

出発

 

 

 

 

 

“気がつくと”、悠斗は既にその世界に立っていた。

 

ぼんやりとした視界が段々はっきりしてきただとか光に包まれながらだとか、そのようなものはない。

“既に立っていた”のだ。

 

ハッキリした視界ののみが悠斗の目に映る。

 

「んっん〜。さて、デネブを探すかな。」

 

もう何回目かは忘れたが何故か悠斗とデネブが世界から消え、他の世界へ飛ばされる時は必ず悠斗とデネブ、二人共少し離れた違う場所に飛ばされる。

理由は良く解っていないがまぁそういう事だ。

 

悠斗は意気揚々と相棒を探す為、歩き始めた。

 

その裏腹に、不安を抱えて。

 

この世界が自分の世界であるかは後回しにして。

 

 

 

 

 

 

 

「(はてさて、どうしたものか…)」

 

一方、少し離れた場所にて黄色の鴉仮面に武蔵坊弁慶の様な格好、デネブはこれからの事を考えていた。

 

まずお金はあるが暫く寝食を過ごす住居がない、それを探さなくては。

 

次にこの世界について調べなくてはいけない。

 

後悠斗のピーマン嫌いも今度こそ直して……あれをやってこれをやって……。

 

「(悠斗は良い子だけど素直じゃないからなぁ…)」

 

それはまるで反抗期の子に対する親の様だった。

過保護さが目立つが過保護というよりお節介に近い。

 

「よし!とりあえず悠斗を探すぞぉ!」

 

未知の世界。気合いを入れ、デネブはややがに股走りでその場を去った。

 

 

 

 

 

 

 

暫く歩いていると、悠斗は大体“この世界”についてわかってきた事があった。

 

一つ目は直ぐに気づいた。

この世界は近未来的で、道の脇にニュースを流すディスプレイがある事など、発展している事。

 

二つ目はそのディスプレイを閲覧して解った。

この世界には“ノイズ”という怪人……というより怪物がごく稀に現れ人々を襲っているらしい。

“ノイズ”がどんな姿で、どんな能力があるのか等はわからなかったがこれはそのうち解るだろう。

 

 

「…それにしても腹が減ったな……。」

 

 

よく考えたら前の世界で最後の戦いをしてからというものの悠斗は何一つ飲み食いしていなかった。

最後に食べたのはデネブの手作りシチュー。

 

「腹減ったぁ…。」

 

デネブのシチューを思い出すと余計に空腹感を感じた。

デネブの料理は大体が美味しいし、下手なレストランに行くよりずっとずっと良い。

 

久しぶりに食べた大嫌いなピーマンが入っていなかったあのシチューはアツアツで、まろやかで、美味しくて……

 

 

 

「何か食うか…。」

 

デネブを見つけるまでもう少し時間がかかるだろうと悠斗は考え、何処かの店か何かで腹を満たす事にした。

 

 

 

 

 

 

 

その頃、デネブはある大きな建物に目を奪われていた。

学校のようだがとても綺麗で、学校というより生徒が居なければ国際美術館だとかではないかと見間違えそうなものだ。

 

「うわぁー、おっきいなぁー…。私立リディアン音楽院かぁ…。」

 

しかもそのリディアン音楽院から聞こえてくる校歌、とても温かいような歌でそれもまたデネブを引き止めていたものの一つだった。

 

 

「(悠斗も高校に通えていれば友達も沢山出来ていたのかなぁ…)」

 

と、感慨深くなっているとそこであっと気づいた。

 

「ってそれよりも悠斗だ!悠斗を探さないと!」

 

デネブはすぐさまリディアン音楽院から走り去って行った。

やはり少々ガニ股気味で。

 

 

 

 

 

 

「“お好み焼きふらわー”か。いいな、ここにするか。」

 

適当にウロウロしていると、花丸と共に“お好み焼きふらわー”と描かれた看板を見つけた。

気まぐれで近づいた所、ソースとマヨネーズ、肉の焼ける美味しそうな匂いが悠斗の胃袋を直撃する。

 

堪らず悠斗はニヤケ顏で暖簾をくぐり店内へ入った。

 

 

暖風が新春のまだ冷たい風を遮り、悠斗を暖める。

 

「あらいらっしゃい。」

 

迎えてくれたのは初老の女性の笑顔と二人の女子高生のふとした目線だった。

 

「 おばちゃん、豚玉二つ。」

 

悠斗は適当なカウンター席に座り、注文する。

 

おばちゃんは鉄板のカスをヘラで片付け、慣れた手付きで準備を始め出した。

 

「はいよ、見ない顔だけどこの辺は初めてかい?」

 

「当たり。今さっき来たばかりでこの街についてあんまり知らないんだ。」

 

店の規模と様子からして彼女一人で切り盛りしているのだろう。

 

 

「へぇ、最近よくノイズがこの辺りに出てるっていうのに。物好きだねぇ。」

 

「少しやっておく事が出来たんだ。」

 

そこで悠斗はあっと気づき、彼女へジャケットの内ポケットから取り出した、ケースに入れられた自分の相棒が写った写真を見せ。

 

「そうだおばちゃん、こいつを見てないか?今探してるんだ。」

 

写真にはデネブのバストアップ姿がのっている。

 

「うーん……こんなに目立つ人見てないねぇ…。未来ちゃんと響ちゃんは知らない?」

 

 

おばちゃんが目を向け未来ちゃん、響ちゃんと呼んだ女子高生二人へと悠斗も写真をその女子高生二人へと渡す。

 

「俺の仲間なんだけどはぐれたんだ、知らないか?」

 

響ちゃんと呼ばれた、クリーム色でまるで鳥の様な髪をした少女は「うむむ……」とうなった後に。

 

「ごめんなさいッ!全く知りませんッ!!」

 

キリッと、大声で悠斗へ返答した。

 

「お、おう…。」

 

あまりにも迫力のある返答だったので、思わず悠斗は尻込みしてしまった。

 

 

「うーん……あれ?」

 

一方、“未来ちゃん”はデネブの写真を見て何か思いついたらしい。

 

「見覚えがあるか?」

 

“未来ちゃん”から返して貰った写真をジャケットの内ポケットに仕舞う。

 

「はい、確かさっきリディアンーーーー私立リディアン音楽院の付近をウロウロしていました。」

 

「本当か!ありがとな。」

 

 

「はい、お待ちどうさま。」

 

丁度その時、おばちゃんがお好み焼きを焼き終えたらしく、悠斗の前に二枚のお好み焼きが乗せられた皿が置かれた。

 

香ばしいソースや肉の匂いが先程と違い、今度は間近から悠斗の胃袋に腹パンを入れる。

たまらない感覚だった。

 

「うおっ、うまそー!いただきますっと。」

 

 

箸を受け取り、悠斗ははふはふもぐもぐもお好み焼きを食べ始める。

 

「二人共ありがとな、お陰で直ぐにデネブを見つけられそうだ。」

 

「い、いえいえ!偶然見かけただけですから…。」

 

「いやぁ小日向君、お手柄だよ。」

 

 

“未来ちゃん”は悠斗の褒めに少々頬を赤らめ、“響ちゃん”はポンポンと“未来ちゃん”の肩を叩く。

 

「良かったわねぇ、お友達が見つかったみたいで。」

 

「おばちゃんもありがと。今度はデネブを連れて来るよ、期待しといて。」

 

お好み焼きの鰹節やら海苔を口元に付けながら悠斗はお冷を飲み干す。

それを見た“響ちゃん”は「いい食べっぷりですねぇ!」と煽り“未来ちゃん”は「私達以外にここに来る常連さん以外、多分初めてなのでは?」とおばちゃんに話かけていた。

 

 

「何言ってんだい、他にも来る人は来るよ。」

 

「ほぉ…。」

 

「あ、おばさん。おかわりください。」

 

「それにしても美味いな、今迄色んなせkーーー色んな場所で飯を食ってきたがこの店のお好み焼きは間違いなくトップクラスに入ってる。」

 

「あら、嬉しいねぇ。」

 

「へぇーっ!もしかして旅人ってやつですか!?羨ましいなぁ〜。」

 

「旅人っていうか、ただの物好きかな。」

 

「へぇ…あの、お名前をお伺いしても宜しいですか?」

 

悠斗も“響ちゃん”もお好み焼きを食べ終え、話を弾ませている所で“未来ちゃん”が悠斗と名前を聞いてきた。

 

 

…悠斗は“名前を聞かれて”少し……ほんの数瞬のみ顔を苦しそうに歪めたが直ぐに笑顔に戻り

 

 

「悠斗、桜井悠斗だよ。」

 

「桜井さんですか!よろしくです!私は立花響、好きなものはご飯&ご飯です!」

 

お好み焼き屋でその自己紹介は無いだろうと悠斗は心の中で苦笑する。“未来ちゃん”は表情に浮かべ、立花の自己紹介に苦笑していた。

 

「もう響…。私は小日向未来です。響はこの通り残念な子でして……。」

 

「あっ、ひどいよ未来〜!」

 

 

仲がいいんだな、と悠斗は立花と小日向の漫才を見る。

 

 

 

「(……ま、これが最初で最後の話だろうけどな)」

 

会おうが会わまいが、話そうが話さないが、自己紹介しようがどうが二人……いや、おばちゃんを含め“三人”共、悠斗に関する記憶がすっぽり抜け落ちる。

今度もし会っても“この人、何処かで会ったかな?”と感じるぐらいだ。

 

そして時が経てば三人に限らず悠斗を知らない人すらも悠斗について“忘れる”。

 

 

「ありがとおばちゃん、ご馳走様。」

 

忘れる存在と別に深く関わる必要もない。悠斗は丁度の金を置き店を出ようと席から立つ。

 

 

「あっ、あの!!」

 

と、立花が悠斗の腕を掴んできた。

やれやれといった具合で悠斗は振り向く、これ以上関わりたくないと心で考えながら。

 

 

「リディアンまで案内しますよ!この辺りは結構知ってます!」

 

 

…どうやら、まだ彼女達と関わらなければならないらしい。

 

 

 

立花の向日葵が咲いた様な笑顔を見せられ、悠斗はやや引きつった笑顔で立花にリディアン音楽院まで案内を頼んだ。


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