もしもおお振りの三橋くんがTestosteroneの『筋トレが最強のソリューションである』を読んだら   作:ふぁもにか

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Testosterone氏の御言葉②(抜粋)
「手首の代わりに筋繊維をカットしろ。傷の代わりに筋肉が増えるし、『何目指してるの? 大丈夫?』と人々に心配して構ってもらえるし、ダンベルという親友もできて死角がない」

 どうも、ふぁもにかです。この作品が思ったより多くの読者の方々に評価されたため、とりあえず連載することにしました。私はちょろい人間なのです。しかし、こうもこの作品が評価されたのはひとえに、読者の皆さんがおおきく振りかぶってと筋肉とプロテインとダンベルを愛しているからこそですよね。私もTestosterone氏を好ましく思う一員として、この作品を通して筋トレの素晴らしさをもっともっと喧伝していきたいものです。

P.S.この作品は三橋くんを強化した上での原作沿いになりますが、あまり原作の発言を引用するのはよろしくないと考えられるため、微妙にセリフを変えてる部分がありますが、あしからず。また、私のおおきく振りかぶっての知識はアニメだけです。なので基本的にアニメの展開を参考にした上でこの作品は進んでいくと思われます。



2.VS.田島悠一郎

 

 

「三橋!」

「ぅあ!?」

 

 三橋の140キロ級のまっすぐを何度か投げてもらった後、阿部は三橋の元へと駆け寄ってくる。対する三橋の表情は目に見えて青ざめている。阿部くんが怒っていると、俺が阿部くんの想像よりもヘボPだから幻滅して怒ってるんだと怯えを見せる。

 

 

「球種は!?」

「へ?」

「球種は!?」

「えっと――」

 

 が、阿部は三橋を怒鳴らない。なぜか嬉々とした表情で三橋の投げられる球種を尋ねてくる。三橋は阿部の思わぬ反応に戸惑いながらも、シュート、カーブ、スライダー、ナックルカーブ(※未完成)を投げられることを説明した。が、三橋は投球指導を受けていないため、自分が本当にちゃんと変化球を投げられているか確信を持てておらず、それゆえにしどろもどろの回答となった。

 

 

(自分の投げられる変化球を断言できないってことは、もしかして)

「三橋。投球指導、受けたことある?」

「な、ない……ごめんなさい」

(なるほど。だからこその、あのくせ球(まっすぐ)か。高校入学の段階で、140キロのくせ球に、4つも変化球を投げられる投手。しかもコントロールがずば抜けて良い投手。……使ってみたい! 三橋を、試してみたい!)

 

 三橋が投球指導を受けていないという事実から、阿部は三橋がくせ球を持っている理由を即座に察した。そうして三橋のまっすぐへの疑問が氷解した後、阿部の中で三橋という名の高校球児として既にトップクラスの実力を誇る三橋を試してみたいとの欲求が一気に膨れ上がった。

 

 

「よし。三橋、サインを決めよう。それと――田島。打席に立ってくれないか? 3打席勝負、しようぜ」

「お、いいの? マジで? やるやる!」

「え、え?」

 

 ゆえに、阿部は田島を指名して3打席勝負の提案を行った。三橋の球を打ってみたいとうずうずしていた田島が阿部の願ってもない提案にすぐさま快諾し、三橋が話の流れについていけず困惑の度合いを深める中、阿部は田島に聞かれない場所でサインを決める名目で、一旦三橋を連れてベンチへと向かった。

 

 

「三橋。使ってたサイン、あるだろ。俺が覚えるからそれ、そのまま使おう」

「サインなんて、久しぶり」

「は?」

「俺、贔屓でエースになった、ヘボPだから。キャッチャーの畠くんには凄く嫌われてて、その……サイン、くれなかった」

(何だよそいつ。こんなに凄いピッチャーをヘボP扱いとか、節穴かよ)

 

 阿部は三橋にサインを出さなかったらしい三星のキャッチャーに対し、内心で苛立ちを見せる。サインを出さないというキャッチャーの役目を放棄する行為や、三橋の実力をまるで把握できていない節穴っぷりが阿部の気に障ったのだ。

 

 

(それとも三星にはこの三橋がヘボP扱いされるほど、凄い投手がいたのか? もしそうなら化け物だな、そいつは。……けど、それくらいしか考えられないよな。信じがたいが、三星には三橋よりももっと凄い投手がいたんだ。その投手がいたからこそ三橋の実力があってなお贔屓だと貶された。そいつと自分を比べていたからこそ、三橋には自信がない。これだな)

「あ、阿部くん。本当に、3打席勝負、やるの? 俺のせいで、阿部くんが負けちゃうよ? それにあの人、サードで4番だったって……」

「だから選んだんだよ。あいつは名門シニアチーム、荒川・シーブリームスの田島だ。並の投手じゃ打ち取れない、ここにいる中じゃ一番実力のある打者だ。けどな、三橋。お前なら田島だって抑えられるんだ。配球さえきちんと組み立てればな。それぐらい、お前は凄い投手なんだよ」

「お、俺が凄い投手って、そんなわけないよ。俺は、ヘボい球しか投げられないダメPだし……」

「三橋。1年であんな剛速球を投げられるピッチャーなんてそうはいない。お前は間違いなく凄い投手だよ。だけど、お前がそれを信じられないっていうなら……俺が、お前を最強のエースだって証明してやる。――だから、俺のサインに首を振るなよ。俺は、首を振る投手は大嫌いなんだ」

「う、うん。わかった、よ」

 

 三橋は田島との3打席勝負に非常に後ろ向きだったが、阿部の熱意を受けて、3打席勝負に挑む覚悟を決めた。その後、三橋と阿部はサインを決め始める。球種や球を投げる場所、ストライクカウントとボールカウントのどちらを狙うかといった指示内容を阿部主導でパパッと決めていく。そして、しばしの時を経て。

 

 

「えーと、3打席勝負。プレイ!」

 

 球審を担当する泉が、田島がバッターボックスでバットを構えたのを確認し、宣言する。栄口、巣山、花井、沖、水谷の5名はそれぞれ守備についている。

 

 

田島(3打席勝負だし、まずは2ストライクまではじっくり見ようっと。ストレートと変化球、球筋を全部見ておきたいし……さて、何を投げてくるかな?)

阿部(まずは、真ん中にまっすぐだ。田島が1球目を見るタイプの打者ならストライク1つ取れるし、いきなり振ってきたとしても、三橋のまっすぐに一発で対応はできないだろう。それに、三橋が俺のサインに首を振るかどうかも試せるしな)

三橋(う、わぁ。リードだぁ――って。え、真ん中に、まっすぐ!? ダメだよ、そんな所に投げたら、打たれちゃうよ! ……で、でも、阿部くんは俺を最強のエースだって証明してくれるって言ってくれた。あんなこと言われたの、初めてだ。――だから、阿部くんを、信じたい!)

 

 田島が悠然としたたたずまいで三橋の投球を見据える中、三橋は阿部がサインをくれることに内心で歓喜したのも束の間、真ん中にまっすぐを投げることを怖がり、首を振ろうとする。が、先ほどの阿部の『首を振る投手は大嫌いなんだ』や『俺が、お前を最強のエースだって証明してやる』といった言葉が三橋の脳内で何度も反響した結果、三橋は意を決して阿部の指示通りに投球する。田島は全く動かなかったため、三橋の1投目はストライクとなった。

 

 

三橋(俺のまっすぐ。打たれ、ないぞ?)

田島(ん? 今の球、三橋が投げれるって言ってた変化球じゃないよな? でもストレートでもないし、何か浮いて見えたし、何だこれ? ……次も投げてくるかな?)

阿部(田島は全然動かなかったな。完全に見るつもりだった、ってわけか。この様子だと、次も見てくるだろうな。ならここはまっすぐ以外を投げてもらうか。田島の目がまっすぐに慣れてもらっちゃ困るからな)

三橋(アウトローに、シュート)

 

 絶対に打たれると思った、真ん中のまっすぐ。しかし実際には打たれなかった。そのことに三橋は戸惑いつつも、阿部の指示に従い、シュートを投げる。一方の田島は三橋のまっすぐに違和感を抱き、次もまっすぐが投げられることを期待して完全に見る態勢だったため、三橋のシュートはストライクカウントとなった。

 

 

田島(今のはシュート、130キロ後半くらいはありそうだ。にしても、打席から見ると凄ぇ速く見えるなぁ。……阿部は三橋にボール球を投げさせるつもりなさそうだし、次は振ってみよう)

阿部(2ストライクになったんだ。次は振ってくるだろ。ならもう一度、まっすぐだ。真ん中高めにまっすぐを投げさせて、田島が140キロの球に合わせてこれるかどうかを確かめよう。仮にタイミングが合ったとしてもこの位置にまっすぐならフライで打ち取れる)

 

 田島は様子見をやめて次の球を打つ意思を固める一方、阿部は速球に対する田島の対応力を見るためのサインを三橋に出す。三橋は阿部のサイン通りに投げれば打たれないと信じ、頭の中で9分割されたストライクゾーンを思い起こしながらまっすぐを投げる。田島はバットを振るも、タイミングが遅かったために空振りとなり、田島の1打席目は三振に終わった。

 

 

三橋(ア、アウト1つ、取れた? 俺のヘボい球で、名門のシニアチームで4番だった人から、三振を取れた?)

田島(んー。結構早めにバットを振ったつもりだったのに、全然タイミングが合ってないなぁ。よし。次からはもっと積極的に振って、タイミングを掴もっと)

阿部(よし、これでワンナウト。順調だな。で、今度の田島は1球目から打つ気になってるな。ここはカーブで球速に緩急をつけて、バットを振るタイミングを掴ませないようにしよう)

三橋(内角低めに、カーブ。……よくわからないけど、阿部くんのリードのおかげなんだ。阿部くんのリードがあれば、ヘボPの俺でも、4番の人からアウトを取れるんだ!)

 

 田島から三振を取れた。その事実から三橋は段々と阿部のサインへの盲信を始めていく。ゆえに、田島が三橋の球速に慣れるために方針を切り替えたのを察した阿部のサインに、三橋はうなずき、阿部のミットの構える場所へと正確にカーブを投げる。

 

 

田島(って、ここでカーブ!? タイミング、ズラされた!)

水谷「オッケー」

 

 ここで初めて三橋の比較的遅めな変化球:カーブを見た田島は、カーブの軌道を予測してバットを振るう。結果、田島は三橋のカーブにバットを当てることこそできたものの、打ち損じのセカンドゴロとなり、水谷が捕球する形で、田島の2打席目はアウトで終了した。

 

 

田島(くっそー、上手く打てないなぁ)

三橋(阿部くんのリードには力がある。ボールを加速させる力がある!)

 

 三橋が、捕手が心強い味方になってくれることの効果を実感している中。水谷が「ナイスピッチ!」との掛け声とともに三橋へとボールを投げたのを機に、守備についている面々が「ナイピ!」「ナイスボール!」「あと1つ!」などと三橋へ声援を送ってくる。

 

 

三橋(ち、違う! このツーアウトは阿部くんが凄いから取れただけで、俺は全然凄くないんだ。……でも、もしかしたら俺はこのチームで、エースになれるかもしれない)

阿部(これでツーアウト。次は内角高めにまっすぐだ。120キロのカーブの後に140キロのまっすぐだ。この球速差には早々対応できないはず)

田島(次は何で来るかな? カーブで緩急をつけたなら、次は速い球だよな? あのよくわからない浮く球か、シュートか。それともまだ投げてないスライダーか。……選択肢多いなぁ。けど、絶対に打つ!)

 

 田島が改めて気合いを入れる中、3打席勝負の経過とともに少しだけ心境が前向きになった三橋は、阿部の要求通りに140キロのまっすぐを投じる。結果、田島はタイミングこそ合わせられたもののボールの下を叩いてしまい、ショートフライとなった。

 

 

(このチームでなら、俺は――贔屓じゃない、本当のエースになれるかもしれない……!)

 

 フライを栄口が捕球し、三橋が3打席勝負を制する中。

 三橋は思わずグッと力強く拳を握って勝利の喜びを表現するのだった。

 

 




○主な登場人物
三橋廉:西浦高校投手。Testosterone氏の著書に感化されて中3から筋トレを開始。結果、140キロのまっすぐを投げられるようになったが、自分をヘボPだと心から信じている。中学時代は自分の頭の中でリードを考え、しかし打たれまくっていたため、此度の3打席勝負で田島からアウトを取れるという展開を受けて阿部への盲信具合を深めている。
阿部隆也:西浦高校捕手。原作では花井相手に3打席勝負を挑むが、ここの三橋なら田島相手の3打席勝負でも勝てると考え、阿部は田島に3打席勝負を持ちかけた。しかし、田島相手に内野だけ守備に入ってもらうのは少し心配だったため、普通に全員に守備をお願いしていたりする。
田島悠一郎:西浦高校野球部員の中で最も実力のある打者。野球を純粋に楽しむタイプなため、投手として凄まじい三橋との3打席勝負を心から楽しんだ模様。


阿部(三星には三橋よりももっと凄い投手がいた。これだな)
叶「えッ」

 というわけで、2話は終了です。さすがに原作と同じ展開にすると花井くんが非常に可哀そうなことになるため、ここでは田島くんと3打席勝負をすることとしました。しかし、私には野球の知識があんまりないので、阿部くんの思考をきちんと再現できてるか心配なのです。


 ~おまけ(3打席勝負の中、特に描写のなかった一部の方々の心境(抜粋))~

栄口(阿部に言われて守備に入ったのはいいけど……)
水谷(俺たちの仕事、なくね? あんな剛速球、絶対打たれないって)
泉(うわッ。三橋の球、ここから見ると超速いな。怖いんだけど。……球審なんて引き受けるんじゃなかった。誰か今からでも代わってくれないかな)
沖(三橋もだけど、何気に阿部も凄いよなぁ。あの球をよく取れるよ)
花井(って、え!? あいつ、三橋の球を打ったぞ!? マジかよ!?)
水谷(――っとと、呆けてないで、ボール取らないと)
西広(セカンドゴロになったけど、いやでも当てられるだけでもう凄いって)
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