掲げる正義は特に無いそんな女海兵の物語   作:キキ

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あらすじでも書かせて頂きましたが ご意見、ご感想、評価の方お待ちしております!!


第一章0項 始まりの始まり

 粉雪がしんしんと降り注ぎ大きくうねる波の上を一隻の大型のガレオン船が威風堂々と突き進む

大きく張られた帆には特徴的なカモメのマークと『MARINE』の文字

武力を持たない一般市民や政府や軍に籍を置く者には安堵を 後ろめたい何かがある者には恐怖を与えるその船の見張り台にて 一人の年若い女性海兵が使い古され錆も目立ってきた単眼鏡を覗き込みながら 周辺の警戒にあたっていた

 

 

(っっ 寒ッ! 手が悴むなんてレベルじゃないよ これは、、ッ!)

―――ぷる ぷるぷるぷる がちゃ

 

「モモンガ大佐! こちらクイン 未確認船を発見しました 方角は南南西 およそ13km 海賊旗は発見できませんでした」

『了解だ こちらの甲板からは未だ目視できない クイン少尉は引き続き見張り台より監視を続けてくれ』

「了解しました 引き続き監視を続けます、、通信終了」

―――がちゃ

 

(う~ん 見える範囲では マストの上に旗はなし 船体は比較的細身で小回りがきくから一見商船に見せかけてるけど 砲門が1、2...8門と異様に多いと

そして船首は迷いなくこっちに向いて進んでくるって事は まぁ 決まりかな?)

 

 

『…として直ぐに砲撃を開始する 繰り返す こちらは海軍だ 民間の船である場合は直ぐに白旗を掲げ 船を完全に停止させなさい さもなくば戦闘の意思ありとして直ぐに砲撃を開始する 繰り返す...』

 

 

―――ぷるぷる がちゃ

『こちらモモンガだ 甲板からも目視した 現状の報告を』

「距離は10㎞を切りました 砲門の数 船体の破損具合からして武装船かと推察します 船体が細身なのを見るに密売船ではなく海賊の可能性が高いかと」

『そうか 相手の船長らしき人物の特徴はわかるか?』

「えぇ そうですね、、薄っすら見える限りですと 特徴的な星型の帽子を被っています それと左腕に義手代わりでしょうか 黒光りしたフックが見えます」

『わかった 部下に確認させる    そうか わかった この海域で活動していて特徴に当てはまる海賊は2つ だが海賊旗を揚げてないとすると 懸賞金9700万ベリー 騙し討ちのスターリッチ海賊団の可能性が高いな』

 

 シャボンディ諸島周辺を縄張りに持ち 商船への騙し討ちや周辺諸島の一般市民への略奪、殺傷などを働き 海軍 民間人共に少なくない被害を出している

だが逃げ足がとことん早く中々捕まらない事から目下 海軍が手を焼いている海賊の一つでもある

 

「目標更に加速し始めました 距離7㎞」

『決まりだな 砲撃準備!相手が撃ち次第左側面全門一斉砲撃!その後接舷する! 総員衝撃に備えろ! それとクイン少尉少し波が高いが狙撃出来そうか?』

「余裕です」

『ふっ では頼んだぞ 合図は送らん 相手の砲撃に合わせ確実に仕留めろ 船長の捕縛の必要は無い 他の船員については無力化だけしろ 通信終了』

―――がちゃ

 

(これでしくじったらカッコ悪過ぎるからね いっちょやったりますかね~)

 

 足元に置いてあった縦長のバックを開くとそこには二つ折りにされた狙撃銃とスコープが

そして手慣れた様子でそれらを組み立てると横に備え付けていたポケットより弾薬バックを取り出し弾を詰めていく

手早く完成したその銃は 全長1m40㎝にもなる大型のボルトアクション式狙撃銃MSR-011(マリンスナイパーライフル) 海軍でも使用者は一人しか居ない程に取り回しづらく癖も大きい そして弾丸は当然風の影響をモロに受けるモノ

この銃の開発者でさえ海上での使用など全く想定して無かった

そんなじゃじゃ馬を手足のように操ることが出来るのは 並外れた狙撃能力を持つ彼女と 潮風等を受けても錆びつかずに使用できるよう改造した海軍が誇る天才科学者の二人が揃った結果だ

 

―――ガッチャッ、、カチャンッ!!

 

ボルトアクションを引き絞り弾を装填した瞬間 彼女の纏う空気が豹変する

余裕を持った表情は変わらずともどこか張り詰めた糸を思わせるような緊張感が辺りを漂う

 

そこに存在するは一人の狙撃手

 

海軍(せいぎ)として海賊(あく)捉え 成敗するのとは違う

 

ただ相手の額へと無慈悲の弾丸を打ち込むことだけに全身全霊を掛ける 唯一人の狙撃手となって

 

構えたスコープを覗き込む

 

彼女の口元は 弧を描いていた

 

 

 

 

 

 

(それにしても今日は波が高いなぁ 目標5km 狙撃可能範囲まで残り1kmと少し 風は西から強めの6、いや7mくらいかな そして波の高さを修正しなくちゃならない

その上 船長と思しき男は甲板の奥の方にいるから射線に誰か入ったらその時点でOUT 狙撃がバレたら中に引っ込むだろうからねぇ

 

男を一発で仕留めて その後2分以内に砲手を出来る限り無力化っと!)

 

スコープを片目で覗き込みながら相手の位置情報を整理していく

最後に狙撃対象の確認に移り

 

(頭についてるあれ、、あんなクリスマスツリーの先端についてる星みたいな帽子被って恥ずかしくないのかな?

そのこだわりは私には ちょっと 理解できないかなぁ〜。

 

まぁ そのこだわりに免じて そのハイファッション?な帽子に風穴は開けずに 冥府に送ってあげるよ

 

 

それにもう その距離は 私の射程圏内に入ってるしね、、)

 

 

狙撃対象の男が砲手へ指示を出し今まさに砲撃を開始する合図を送ろうと

 

高く

 

その右手を掲げて、、、振り下ろしたその合図は

 

皮肉にも狙撃手へ絶好のタイミングを教える事にもなってしまった

砲撃が開始されるその音に乗じて狙撃銃のマズルフラッシュが光る

 

 

―――ド「バァァン」オォォン ドオォォン ドオォォン

(よし 額にヒット! 残りは砲手の無力化!)

 

 

 

―――カチャ バァァン、、カチャ バァァン、、カチャ バァァン

3人負傷 残り6

 

―――カチャ バァァン、、カチャ バァァン

一つ外して 一人負傷 残り5

 

―――カチャ バァァン、、カチャ バァァン

2人負傷 残り2

(警戒して隠れたかぁ そろそろ潮時かな?)

 

 

―――ぷるぷる がちゃ

「こちらクインです! 船長と思しき男の狙撃に成功 能力者でない限り即死! 手前側の砲手も6人程負傷! ですが隠れられたため狙撃不可能!」

『了解した! こちらでも目視していたが恐らく即死だろう! あと2分で接舷する! 少尉は引き続き監視を続けてくれ!』

「了解! 通信終了!」

 

―――がちゃ

 

 

『接舷次第 1班から3班は敵船へ乗り込み無力化しろ! 繰り返す...』

 

 

(単眼鏡で見る限り 能力者も居なさそうだし そのまま額を撃ち抜いた男も起き上がってこないから私の出来るお仕事は終了かな? 下手に乱戦だと援護射撃もし辛いし

という事で今日もご苦労さま ワンワン君(MSR-011)! 今日もいいお仕事だったよ!)

 

 

そう呑気に左手で愛銃に触れながら単眼鏡を再び覗き込むと 船長及び砲手数名が負傷した事でパニック状態となっている敵船と その敵船の甲板へ次々と梯子やロープを掛け 乗り込んで行く味方の白兵部隊が 確認出来る

元々この海域を根城にするだけあり相手の海賊団も中々の練度がある筈だが 頭を失って少なくない負傷者を出した船は 最早ただの烏合の衆 そこへ海軍本部所属の練度の非常に高い海兵たちに囲まれれば 何も出来ずその命を散らすか 素直にお縄につくか どちらにしろ勝てる見込みなどなく 30分と経たずに戦闘は終わる。

 

 

『直ぐに甲板に捕縛した海賊共を集めろ!』『負傷した海兵は急ぎ治療を行え! この寒さだ! 傷痕が凍傷になると事だぞ!』『モモンガ大佐! 船長と思しき男の確認が取れました! 間違えありません!』『そのまま別の場所に移しておけ!』『揺れで海に投げ出された海兵を回収!』『医務室へ急げ!!』『モモンガ大佐! 船室に盗難された…』

 

戦闘を終えた海兵達は 海賊の捕縛や死体の見聞などの事後処理に追われていた。

その中でも特に仕事に追われている モモンガ が メインマストに近づき見張り台へ声を掛けた

 

「クイン! 周辺に船は見えるか!」

「え〜、今のところ発見できません!」

「なら見張りを交代だ! そこは冷えるだろう! 降りてきて1度船内で休め!」

「了解しました!」

 

 

モモンガのその言葉に従って手早く銃から残弾を回収し慣れた手つきで銃を折り畳み、バックへ詰め込んだ そして最後に落ちた薬莢を拾い上げ単眼鏡と共に雑にバック横のポケットに放り込んでいた所 マストに取り付けてある梯子より1人の年若い海兵が登ってきていた

 

「クイン少尉! 監視の交代に来ました!」

「えぇ 助かるわ それと雪のせいで視界がだいぶ悪いから注意してね?」

「はい! あ、それと先程の狙撃!毎度の事ながら流石です! 損傷も少なく検分がしやすいと軍曹も仰っていましたよ! 」

「それなら良かったわ! 次の交代は2時間後ね、それまでお願いね?」

「はい! 全力で見張り頑張ります!」

 

その言葉に軽く微笑みながら 愛用の縦長のバックを斜め掛けに背負い スルスルと梯子を降りていった。

 

 

 

 

 




遅れながら 第一話完成しました!
本当はもう少しだけ話を進めようかとも思いましたが 第一話ですので 作品の雰囲気だけ伝え 世界観の説明や生い立ちへ進む話は次話で行おうかと考え ここまでとさせて頂きました!

今後10話程度のプロットは出来上がっておりますので 投稿間隔は少しゆっくりながら 確実に進めて頂きたいとも思っております!

そして 感想やアドバイスを送って頂いて本当に有難う御座います!
励みになります!

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