「つべこべ言わないの。さっさと測らせなさいよ。」
「分かったよ・・・。」
「・・・・・・。」
「なんだ?私の顔をまじまじと見て・・・。」
「貴方、低血圧で毎回遅刻してくるわりには背高いのね・・。何センチなのよ。」
「160だ。まぁ、食べるものは食べて、寝るときにはしっかり寝ているからな。例え、眠くなかろうと意地と気合で寝る。」
「それが入ってると逆に寝れなくなるんじゃないの・・・?」
「案外寝れてしまうものなんだ。さて、これで測定は終わりか?」
「あ、待って。貴方だけ特別メニューあるから。脚出して。」
「脚?まぁ、構わないが・・・。」
「ふぅん・・・。はい終わり。これで全部よ。」
「脚の長さなんぞ測ってどうするんだ?」
「さぁ・・・?会長の指示だったし。」
「そ、そうか。・・・杏の奴、何を企んでいるんだ?」
サンダースとの試合の日、いつものごとく戦車倉庫の前に集合すると、何やら複数の袋を持って生徒会が待ち構えていた。
「さて、今日はサンダースとの初戦だ。皆にも様々な思いがあると思う。だが、全国大会でも制服で出場するのは示しがつかん。そこでだ―――」
杏が袋から取り出したのは濃い藍色をした制服のような服であった。
「パンツァージャケットだ。これは戦車道の試合で着る服、いわばユニフォームだ。各員には試合時にこれを着て出てもらう。安全の意味も兼ねているから必ず着て欲しい。」
そう言うとチーム全員に生徒会からパンツァージャケットを渡される。
なるほど、この前の身体検査はこれの採寸でもあったのか。
俺もパンツァージャケットを受け取り、着心地を確かめる。見た目はほとんど普通の服と大差ない。
「麻子、お前にはこれもだ。」
そう言われると、杏から袋が手渡される。中身が入っているのが分かるととりあえず中身を確認する。中に入っていたのはベージュ色のズボンであった。
「これは?」
「パンツァージャケットと同じ素材でできたズボンだ。スカートはあまり慣れんと言っていただろう?」
「よく覚えていたな。一年以上も前のことだっただろう?」
「私もスカートに関しては思うものがあったのでな。因みに私の分もある。ひとまず、履いてみてくれ。」
奴にそう促され、履いていたスカートからズボンへと履き替える。
うん、悪くない。脚が涼しく感じないのはとてもありがたい。
「似合ってるじゃん!!麻子!!」
「ええ。とてもよく似合ってますよ。」
「か、カッコいい・・・・。」
「・・・最近、麻子殿が女性として見れなくなってきました・・・。」
前半の沙織と華はともかく、後半の西住と秋山はじっくりと俺の姿を見てくる。見世物ではないんだがな・・・。と言うか秋山、それは言わないでほしい。俺自身、女子としての体面をかなぐり捨てているのは自覚しているんだ。
「冷泉センパイかっこいいー!!」
「具体的に言うと、クールビューティー!!その黒くて長い髪にとっても似合ってる!!」
今度はウサギさんチームの桂利奈と優季が駆け寄ってくる。
二人はこの腰辺りまで伸びた髪を褒めてくれているが・・・・
「これか・・・。正直に言うと切るのが面倒で伸ばしているだけなんだがな・・・。」
そういい、髪の毛をたなびかせているとふと視線を感じ、そちらに顔を向ける。
そこには歴女チームが神妙な顔持ちで見つめていた。
「むぅ・・・。ドイツには黒髪の美貌を持つものは思い浮かばんな・・・。」
「ローマにもだな・・・。特にこれといった人物は思いつかないな・・。」
「新撰組一番隊隊長の沖田総司はどうぜよ?」
「いや、ここは内面的な美貌の持ち主として明智光秀はどうだ?」
『それだっ!!』
・・・彼女らは何をしているんだ・・・?
俺は歴史はあまり詳しくないからな。名前だけなら知っているが、それまでだ。
「では、試合会場へ向かうとしようか。隊長、号令を頼む。」
「わ、私ですかっ!?・・・では、試合会場へ出発してください!!」
さて、時間は少し進んで、俺たち大洗女子学園は試合会場に来ていた。
試合会場は緑豊かな自然が広がる草原で所々にちょっとした森も確認できる。
今はとりあえず、戦車の最終確認をしている、といったところか。
「ふむ・・・自動車部の整備技術には脱帽物だな・・・。アストナージとレベルは然程変わらんか・・・?」
俺は確認を手早く済ませ、Ⅳ号の中でくつろいでいると、外からーー
「Hey!!オッドボール三等軍曹!!」
誰かの声が聞こえた。Ⅳ号の中に聞こえるということはそれなりに近いところにいるのだろう。だが、オッドボール?オッドボール・・・。秋山の撮ってきたサンダースのビデオにそんな名前が出てたような。・・・・思い出した。サンダースのミーティングで名前を聞かれた秋山が咄嗟に出した名前か。
となると外から聞こえる声はサンダースの生徒か?
気になった俺は操縦席の出入り口から顔を出すとちょうどビデオに映っていたサンダースの隊長格の3人組が秋山と一緒にいるのが見えた。
一瞬、いちゃもんでもつけにきたかと思ったが、隊長と思われる人物のフレンドリーな笑顔と秋山の様子をみて、少なくともそういうのを付けに来たわけではないと一安心する。
秋山とサンダースの会話を眺めているとサンダースの3人のうち、ツインテールのやつと目が合うと隊長の肩をつつきながら俺の方を指差す。
そのツインテールのやつの告げ口で俺の方を見るとそのフレンドリーな笑顔をこちらにも向けてきた。豪快に手を振るというセット付きでだ。
とりあえず、それに関しては手を振り返しておく。
だが、サンダースの隊長は俺の対応に不満だったのか、なぜか顔を膨らませている。
疑問に思っているとツインテールとは別の側にいたベリーショートの奴が軽く手でこちらに来るようにジェスチャーをする。なるほど、さっきのはそういうことか。
俺はⅣ号から降り、秋山とサンダースの隊長たちの場所へと向かう。
「私に何か用か?」
「アナタが冷泉 麻子よね?」
「ああ、そうだが・・・。なぜ私の名前を知っている?」
「しらばっくれたって無駄だよ。アンタ、聖グロからティーセットもらったんでしょ?しかもチーム名義ではなく個人名義で。」
ツインテールの奴の言葉に俺は驚きの表情をする。まさか、あの親善試合の情報が流れていたとは・・・しかも俺が聖グロリアーナからティーセットをもらったことまで知っているとは。かなりの情報収集力を持っているようだな。
「ああ、そうだよ。まさかそんな大層なものを私なんかにくれるとはおもわなかったがな。」
隠してもしょうがないのは事実だから素直に認める。その言葉にほかの二人は目を見開いた。
「ワォ!!アリサの言ってたことは本当だったのねっ!?」
「そいつは凄いな・・・。今回ばっかりはガセだと思っていたが・・・。」
「ふっふん!!ワタシの情報はいつも正確よ!!」
金髪とベリーショートの二人の驚いた表情にツインテールのやつが勝ち誇ったような笑みを浮かべる。まぁ、別にバレていてもいいが。しがない一操縦手のことなどあまり気にしないだろう。
それに情報が少なすぎるからな。例え、知ったとしても先ほどの二人のようにガセだと思うのが普通だろう。
そんなことを考えていると選手集合のアナウンスが流れた。
「時間ね。それじゃあ、お互いいい試合をしましょうね。」
そう言い残すとサンダースの3人組は帰っていった。
そろそろか。どこまでやれるかはわからんが、やるだけやるさ。
『両校、代表者、前へ!!』
杏だ。大洗の代表者は名目上は私ということになっているためサンダースの隊長、ケイだったか。彼女と対面し、握手を交わす。
「代表の角谷杏だ。よろしく頼む。」
「ケイよ。今日はよろしくね。アンジー。」
「アンジー?それは私のことか?」
「ええ、そうよ。どうかしら?今考えたんだけど。」
「・・・悪くない。あまり、そういったことに縁がなかったのでな。」
「なら良かった。お互いいい試合をしましょうね。」
代表通しの挨拶から杏が戻ってくると、程なくして試合開始の合図が上がった。
「全車、パンツァー・フォー!!」
西住の号令で大洗の五輌が草原を駆け始める。作戦の根っこの部分は敵車輌を一番火力のあるⅢ突の前におびき寄せることだ。
そのため敵の配置を探る必要があるため、試合が始まって少し経つと西住はウサギさんチームとアヒルさんチームをそれぞれ右翼と左翼に偵察へと向かわせる。
機動力に長けているM3なら偵察の役目をこなせるだろう。八九式も言わずもがな。
そう思いながら2輌からの連絡を待ちながら、今回のフラッグ車であるカメさんチーム、早い話、シャアの乗っている38tを護衛しながら進んでいるとーー
『こ、こちらウサギさんチーム!!敵の戦車9輌に囲まれてますっ!!』
て、敵の戦車9輌だとっ!?ほぼ全車輌と鉢合わせたのかっ!?
いや、待て。梓は囲まれたと言っていた。となると、偶然ではなく意図的にそこに9輌を投入したのか?・・・妙なものを感じるな・・・。さながら俺たちの行動がわかっていたかのような戦力のつぎ込み方だぞ・・・。ん?まさか・・・。
「冷泉さん!!アヒルさんと一緒にウサギさんの援護に向かいます!!」
「・・・・了解した。」
「えーと。9輌ですか・・・。凄いです。ほとんど車輌がそこにいますよ。」
「そんな呑気なことを言っている場合かっ!?」
西住の指示にひとまず、思考を打ち切る。だが、俺の中では一抹の不安が渦巻いていた。少し、不味いかもしれない。が、確証がない。その上、その可能性を全車に伝える手段も封じられている。
(どうする・・・・?Ⅳ号の中だけで共有しても無駄だぞ・・・。)
そう思っていると太もも辺りから突然振動が伝わる。これは・・・携帯のバイブ音か?
「誰だ?こんな時に・・・。」
運転中に携帯をいじるのはあまり良くないが、せめて誰から来たのかだけでも確認する。そこにはーー
「・・・シャアからのメール?どういうことだ?」
携帯の画面には杏の名前が映し出されていた。気になった俺は運転しながらメールの内容を確認する。
題名は、『西住君に伝えて欲しい』
運転中だろうから単刀直入に言う。通信傍受の可能性ありだ。
・・・やはりお前もそう思うか・・・。しかしなぜメールで・・・?
いや、なるほど、そう言うことか。メールであれば傍受されることはない。
考えたな、シャア。とは言え、これはレギュレーション違反ギリギリだと思うんだが・・・。まぁ、仮に相手が通信傍受しているならおあいこだがな。
「秋山。西住にこれを渡してくれ。」
「えっ?け、携帯ですか?どうして―――。」
「とりあえず、渡してくれ。」
「は、はぁ・・・。西住殿ー。」
「あと一つ伝言を頼む。内容は口に出さないでほしい。」
「え、ええー・・・。」
怪訝な顔をしながらも秋山は西住に俺の携帯を渡し、伝言も伝える。
西住は疑問気な表情で俺の携帯を見るとすぐに厳しい顔に変わる。
「冷泉さん、これは・・・。」
「・・・私は会長の言葉を信じるぞ。というか、私自身もその線を疑っている。」
「・・・分かりました。沙織さん、通信機を外して。」
「うぇっ!?いきなりどうしたの!?」
沙織の驚く表情に西住は小さく耳打ちをする。
それを聞いた沙織は納得した表情をあげる。
「・・・うん。分かった。一応、みんなとのメルアドは持っているから、やれるよ。」
「お願いします。」
「西住、現状は通信機を使って構わない。まだ確証がある訳ではないからな。」
「分かりました。ひとまずこのままウサギさんチームと合流します。」
しばらく木々の中を突き進むとサンダースの9輌に追っかけ回されているM3が目に入った。本当に9輌を投入しているな・・・。
「合流したら南西方面へ向かってください!!」
西住の指示通りにM3と八九式は合流すると俺たちと一緒に南西方面へ向かう。
だが、俺とシャアの予想が正しければーー
『ま、待ち構えられてるっ!?』
梓からそんな悲鳴のような声が響く。・・・決まりだな。敵は確実にこちらの通信を傍受している。だが、待ち構えているのは2輌だ。大した問題ではない。
逃走を優先すれば余裕を持って突破できる。
「このまま突破します!!」
俺たち大洗の三輌は敵のシャーマンとすれ違うように包囲を突破する。
混戦状態に持ち込まれたからか自然と後ろからの砲撃は止んでいた。
ひとまず危機は乗り越えたようだ。
「ふぅ、追っては来ないな。とりあえず状況を整理した方がいいかもしれないな。」
「はい。敵はやっぱり通信傍受をしています。」
「みぽりん、それってやっていいの?」
「暗黙の了解、というところですね。ルールというよりマナー面の問題と言ったところです。」
「抗議した方がいいのでは・・・?」
「いや、華、逆だ。むしろアドバンテージを得ている。敵は私たちが通信傍受を察していることを知らない。ガセネタを流せばそのまま動いてくれる可能性もある。」
「な、なるほど・・・。でも、ガセネタはどうやって流すのですか?通信傍受されている以上、意思疎通の手段が・・・」
「そこは文明の利器を使わせてもらう。目に目を、歯に歯を、というやつだ。」
そう言って西住から携帯電話を返してもらう。それをみた秋山は目を見開く。
「ま、まさか、さっきの携帯はそのための・・・。」
「そういうことだ。ま、もっとも会長のやつはもうやっているがな。」
そういいながらシャアからのメールを見せる。
「沙織さん、今回の作戦は沙織さんが重要なポジションになっています。お願いします。」
「オッケー!!私のメールの早打ち技術、見せてあげるんだから!!」
さて、反撃開始と行くか。
外見はほぼ原作通りと言ったな?あれば嘘だ。(意訳 ごめんなさい)
最終章、見たいですか?(モモチャンズリポートのあとがき要参照)
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