冷泉麻子、行きまーす!!   作:わんたんめん

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この前ですが、少し確認してみたら10万UA超えていました!!
まさか自分のにこれほどまでの評価を頂けるとは思いもしませんでした!!
ありがとうございます!!
これからもこの小説をよろしくお願いします!!


第19話

「ねぇねぇみぽりん、相手が通信傍受しているのは分かったんだけど、具体的にどの車輌がやってるとか分かるの?」

「そういえばそうですね。いくらやっているのが分かったとはいえ、どの車輌が行なっているかを明らかにしないと・・・。」

「沙織、M3にメールをしてくれ。包囲してきた部隊にフラッグ車はいたか、と。」

「ええ?いいけど・・・。」

 

沙織は怪訝な表情をしながらM3にメールを送る。程なくしてM3からメールが返ってくる。

 

「えっと、いなかったみたいだよ。」

「なら、都合がいいな。通信傍受をしているのは敵フラッグ車だ。」

「ど、どうして分かるんですか!?」

「えっと、通信傍受をしている時は大抵は動かないことが多いんだよね。そういうことを留意して考えるとその場に居なかった車輌、つまり今回だとフラッグ車が通信傍受をしているって消去法で分かるんです。」

「そうだな。イメージするとしたら偵察兵はその場からあまり動かないことを例に挙げるといいか。」

「な、なるほど!!」

「ほへ〜。そんなに分かっちゃうんだ・・・。」

「となると、後はフラッグ車がどこにいるか、ですね?」

 

西住と俺の説明に秋山と沙織が驚きの声をあげる。華は既に次の問題点を挙げてくる。流石だな、既に標的を見据えているか。

 

「そうだな。ここは隊長、君の出番だ。」

 

俺がそういうと西住は頷きながら試合会場の地図を広げる。

西住は地図に描かれている小さい森を指差しながら説明を始める。

 

「草原で行えば確実にバレるので、おそらく敵のフラッグ車は森の中にいると思われます。森自体の数は少ないので、しらみつぶしに回れば見つけることは可能です。」

「・・・だが、問題は向こうがこちらが通信傍受を看破していることをいつ悟られるかだ。ガセネタを流すにも三回、いや二回もやれば流石に気づくぞ。」

「ひとまず、最初の一回は本来の作戦のⅢ突の前に誘き出すことにしましょう。」

 

西住は通信機に地図に表示されている道の集合地点、すなわちジャンクションにて一度集まる旨の通信をする。もちろんそれは嘘の情報だ。本命はⅢ突を中心とした半包囲を行い、擬似餌にかかった敵を喰らう内容だ。

 

「さしずめ、『あんこう作戦』と言ったところか。」

「あ、いいですね、それ。確かにやっていることはあんこうそのものですね。」

「それじゃあ、吊るし切りと行きましょう。」

「華ー。それじゃあわたし達が食べられちゃうんだけどー。」

「た、確かに、私達、あんこうチームですからね・・・。」

 

指定したジャンクションを見下ろせる高台に来るとサンダースの戦車が続々とポイントに集結してくるのが一望できた。

やはり敵は通信傍受をしていることは間違いないようだ。

 

「囲まれた!全車後退!」

 

西住が合図となる後退の声をあげると集合場所にいた八九式が異常な土煙を巻き上げながら発進する。無論、西住は全車と言っているが全くのハッタリだ。

異常な土煙の正体はそこら辺にあった草木を束にしたただのこけおどしだ。

 

「さて、かかった獲物の一本釣りと行こうか。」

「見つかった。みんなバラバラになって逃げて!38tはーー」

 

敢えてこちらのフラッグ車の居場所を出すことで相手をこちらのキルゾーンに誘い込む。とはいえ、こちらは数が少ないため、あまり一気に来られても困るのだがな・・・。

 

「みぽりん、餌に引っかかったのは二輌だって!!」

 

二輌か。こちらがただの弱小校だと思っているなら痛い目を見てもらうぞ。

 

「Ⅲ突からメールだよ!1輌逃しちゃったみたい!!」

「深追いはしないように、と!!」

「作戦成功ですね!!」

 

ひとまず先手はこちらが取れたようだ。ただ問題はやはり敵のフラッグ車だろう。この試合がフラッグ戦である以上、フラッグ車を叩かなければこちらの勝ちにはならない。

 

「西住、次はどうする?打てるのであれば早目に手を打った方がいい。」

「そうですね・・・。次はフラッグ車を探します。そのために敵の戦車には少し遠くへ追いやります。」

「・・・まるで、敵のフラッグ車の目星が付いているようだな。」

 

俺がそういうと西住は二箇所のポイントを指差す。

西住曰く、この二箇所のどちらかに敵フラッグ車が潜んでいるはずだという。

 

「時間との勝負だな・・・。こちらがフラッグ車の捜索か撃破を手間取れば、最悪挟み撃ちだな。」

「ですが、これしか方法はないんです。沙織さん、お願いします。急かすつもりはありませんが、なるべく手早く見つけられるようにお願いする旨も伝えてください。」

「オッケー!!」

 

お得意のメールの早打ちで瞬く間に各車輌への通達を済ませる沙織。

西住は通信機で嘘の情報を流す。

 

「・・・各戦車了解っと・・・ってあれ、会長からメールきてる・・・?」

「沙織さん、どうかしましたか?」

 

沙織が疑問気な表情を挙げているのに西住が気づき質問をする。

何かあったのか?

 

「えっと、会長からメールが来てて・・・。ってうぇえっ!?」

「さ、沙織さん!?どうかしましたか!?」

 

シャアの奴、メールで何を送ったんだ?

沙織に母性を感じたとか言い張るんじゃないんだろうな・・・。

 

「か、会長が、時間を稼ぐって・・・。」

「じ、時間を稼ぐって・・・。まさか。」

「・・・囮をやるつもりか?」

 

シャアの奴、大胆な行動に出たな。38tは今回の試合ではフラッグ車を務めている。つまりシャアがやられればこちらの敗北。はっきり言って悪手以外の何者でもないがーー

 

「・・・時間を稼ぐだけならいいかもしれないな。」

「ええっ!?麻子殿、なにいってるんですかぁ!?」

「そ、そうだよ!!会長の38tはフラッグ車なんだよっ!?やられたら私達の負けなんだよ!!」

「流石にそれは素人の私でも分かります。無謀以外の何物でもありません。みほさんも同意見ですよね?」

「うん。流石にフラッグ車にそんな無茶はやらせられないよ・・・。」

 

まぁ・・・。そういう反応をされるだろうな、普通。だが、どれほどの時間がかかるかわからない以上、できる限り時間に余裕を持たせておきたい。

 

「なら、この条件を付け足す。会長が私と同等の技量を持っているとしたら、どうする?」

「か、会長が麻子とおんなじ技量を持っている・・・!?」

「つ、つまり、それは、聖グロに一目置かれるのと同等・・・。ということですよね!?」

「アイツとは色々やらかした仲だ。会長の、杏の実力は私が一番知っている。言葉だけでは納得してもらえないかもしれないが、杏を信じてやってはくれないか?」

「みほさん、どうしましょう・・・。」

 

西住は険しい表情をしている。だろうな。本来守らなければならないフラッグ車を囮に使うなど前代未聞の作戦だろう。捨て身の作戦と言っても過言ではない。

 

 

 

(・・・会長を呼び捨てにするって、かなり親密さがないとできないよね・・・)

 

はっきり言って冷泉さんの言っていることは華さんの言う通り、無謀にも等しい。

フラッグ車を囮に使うなんて、黒森峰では絶対にできないことだ。

でも、仮に冷泉さんの言う通り、会長が冷泉さんと同等の技量を持っているとしたら……もしかしたらーー

 

 

 

「・・・私、信じます!!」

「ま、真面目に言ってるっ!?だ、大丈夫なのっ!?フラッグ車を囮に使って!!」

「フラッグ車を囮に使えば、相手は確実に狙ってきます。冷泉さんの言う通り、時間がかなり稼げるのは事実です。」

「で、ですが、もし会長がやられてしまえば・・・。」

 

秋山の言葉に西住は強い表情で頷いた。まさか、西住の許可が下りるとはな・・・。

 

「沙織さん、会長にメールを!!」

「い、いいんだよね?本当にいいんだよね!?」

「お願いします!!」

「いいのか・・・?」

「ええっ!?今更なに言ってるんですかぁっ!?」

 

俺が零すように言った言葉に秋山がびっくりした表情で見つめる。

いや、まさか受けてくれるとは思わなかったからな。

 

「・・・私は会長さんを信じた訳ではないんです。」

 

西住のその言葉にⅣ号の中が静寂に包まれる。沙織の携帯が鳴らすメール送信したことを示す音が虚しく響く。

 

「・・・中々の爆弾発言だな・・・。それではなにを信じて許可を出したんだ?」

「私が信じたのは、会長さんを信じている、冷泉さんを信じたんです。」

 

西住の真っ直ぐな視線を見て、俺は思わず困った顔をしてしまう。

・・・まさか、ここまで信頼してもらえるとはな・・・。

 

「ふぅ・・・、ならその信頼に応えるとしよう・・・。」

 

俺は操縦桿を握りしめる。やれやれ、責任が俺まで飛び火するとはな・・・。

シャア、頼んだぞ・・・。こっちは任せてくれ。

 

 

 

「西住君から許可が降りた。柚子、桃、覚悟はいいな?」

 

私は携帯を閉じて38tの乗組員の二人を見る。柚子は決意の固まった顔をしているが、桃はすでに半泣きだ。

 

「か、会長〜。ほ、本当にやるんですかぁ〜!?」

「桃ちゃん、泣かないの。会長だって何も無策で挑む訳じゃないんだから・・。」

「すまないな。このようなことに巻き込んで。だが、こうでもしなければ西住君たちが敵のフラッグ車を見つける時間を確保できないと思うのでな。そもそも、勝たなければ我々に未来はない。この程度で泣きを見せては後々困るぞ。」

 

私がそういうと、桃は零しそうな涙をなんとか堪えた。だが、今度は鼻水が出てきてしまったがな。

 

「では、道化師を演ずるとしよう。柚子、サンダースをおびき寄せたポイントまで移動してくれ。」

 

少し移動すると小高い丘の上にサンダースの車輌が集結している光景が目に映る。中々滑稽な光景だな。

 

「ではここから先はかけっこだ。準備はいいな?」

 

覗いている砲塔から視線を外すと決心した様子で頷く二人の顔が見える。

1輌のシャーマンからケイが顔を覗かせているのが見えるが、別の車輌が盾になって撃破は無理か。

 

「ならば、別の車輌を狙うだけだ。」

 

私は履帯が丸見えになっているシャーマン・ファイアフライに照準を合わせる。

 

「外しはしない。直撃させる。」

 

トリガーを引き、砲弾が放たれる。悪いが、一番火力があるのは君の駆るファイアフライのようなのでな。鬼ごっこからは退場してもらおう。

 

 

 

アリサの指示…というか、あの子多分だけど通信傍受してるんだろうけど、それに従って指定ポイントまでやってきたけど、突然ファイアフライが砲撃を受けた。

 

「ナオミっ!?大丈夫っ!?」

「っ・・・・履帯がやられました。」

 

発射源をすぐさま探すと森の中から顔を覗かせている38tが目に入る。

しかもアリサの情報が正しければ、38tはフラッグ車。フラッグ車の証である旗は風に揺られてたなびいている。つまり、これを倒せば私達の勝ち。

でもーー

 

(護衛が1輌もいない・・・?)

 

本来フラッグ車は何がなんでも絶対に守らなければならない車輌だから護衛は少なくとも1輌や2輌は必要だ。でも大洗の戦車の総数は5輌。割かれるほどの戦力がないのはわかっている。

 

(たまたまエンカウントした?でもここは大洗の通信を傍受して集合するポイントだと・・・。)

 

何か裏があると感じて考え込んでいる間に38tは森の中へと入り込んでいく。

ほかのメンバーからも追撃するかNOかの指示を待っている。

ここはーー

 

「やっぱり逃すわけにはいかないわっ!!各戦車、GO AHEAD!!」

 

あまり1輌をよってたかって甚振るのは主義に反するけど、ワタシだって勝ちたいのよ!!

 

 

 

「よし、来たか。ファイアフライは・・・うまく落とせたか。」

 

森の中を駆け抜けながらキューポラから顔を出し、サンダースの車輌を確認する。砲撃がサンダースから飛んでくるが、行進間射撃をしているからか命中率はおざなりだな。

 

「会長。振り落とされないでくださいね?」

 

柚子が心配するような声で話しかけてくる。桃に至っては既に嗚咽をこぼしていて何も喋れないでいた。しかし、彼女の様子から心配してくれていることは見え見えだがな。

 

「ああ。そこは気をつけるさ。では、頼むぞ。」

 

私はそういうとキューポラから身を乗り出して、38tの車体に腰掛ける。

振動とかが直に伝わるが、そこは気にしないでおく。

こうした方が見やすいからな。ふっ、ケイの驚いている表情も丸わかりだな。

 

 

 

「ちょ・・・アンジー?何やっているの・・・?」

 

突然38tのキューポラが開いたと思ったらアンジーが出てきた。

何をするのかと思えば車体上部に腰掛けて、こちらをじっと見ている。

驚いた表情でそれを見ているとアンジーが不適な笑みを浮かべた。

その瞬間ーー

 

「っ・・・・・!?」

 

全身に鳥肌が走るような寒気が肌をなぞった。

な・・・なに、今の感覚・・・。今まで感じたことのないような・・・黒森峰のマホや聖グロのダージリンでもない二人とは一線を画している、さながら、到底手が届かないような場所にいるナニカ。

 

「アンジー・・・アナタ、何者・・・?」

 

ポロっと零すように出した声も戦車の駆動音にかき消されてしまい、彼女に届くことはないでしょうね。

でも、それでも構わないわ。なぜならーー

 

「まさか、一回戦からアナタのようなストロングな学園と当たるなんてね。」

 

今は強者に出会えた嬉しさでいっぱいなんだから!!

 

 

「来るか。相手にはならんだろうが、競争には付き合ってもらおうか。」




うん、どんどん原作から離れてきている気がしてきた・・・。

最終章、見たいですか?(モモチャンズリポートのあとがき要参照)

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