なんなんだこの状況は・・・。
シャアと共に喧騒から離れて飲んでいたら西住とサンダースの隊長、ケイとシャアが言っていたか?まぁ、とりあえず二人からシャアについての質問をしているとそこに聖グロのダージリン、挙げ句の果てに黒森峰のまほまで現われ、包囲網を形成されてしまった。
「お姉ちゃん・・・どうしてここに・・・。」
「え、あ、その・・・だな・・・。」
ん?妙にたどたどしい口調だな。それに視線を右往左往させている。ほかの三人と同じように俺とシャアに直接聞きに来た訳ではないのか?
それに少し様子を見ているとなんとなく俺に頻繁に視線を向けているような気がする。
(まさかとは思うが・・・。)
俺は半信半疑の状態のまま彼女に駆け寄った。
い、言える訳がない・・・!!みほと話したいのだが、話題の広げ方をどうすればいいかわからなくて、彼女に聞きに来たなど、言える訳がない・・・!!
一応、人気のいない時を狙ったつもりではあったが、まさかサンダースはおろか聖グロまでいるとは・・・!!ど、どうする・・・。
軽いパニック状態になっていると誰かが私の手首を掴んだ。
思わずびっくりしてーー
「ひゃうっ!?」
駆け寄って、彼女の手首を掴んだのはいいが驚かせてしまい、そんな声が辺りに響いた。全員が呆気に取られた表情をしている。彼女自身も目を白黒させている。
・・・こういう時は触れないし触れさせないように俺が切り開くのが最適か?
「まさかとは思うが、私に西住との話題の広げ方を聞きに来たんじゃないだろうな?」
「うっ・・・その、す、すまない。」
「ハァ・・・・やはりか。」
・・・図星か。全く、こういう中々一歩を踏み出せないのは姉妹だな・・・。
俺はため息をついた。この姉妹は多少強引に行かないと駄目なのか・・・。
「前に話せる時に話して置かねば後々後悔すると言ったはずなんだがなぁ・・・。ほらこっちだ。」
「えっ!?あ、ちょ、ちょっと待て!!こ、心の準備が・・!!」
「四の五の言っていられるか!!せっかくの機会を君は逃すのか?黒森峰の隊長にしてはらしくない。」
「う・・・うぐっ・・・。」
よし。これで彼女が逃げるルートは封鎖できたはずだ。あとは・・・。
「会長!!そこの二人を下がらせてくれ!!」
「ん?ああ、そういうことか。ケイ、ダージリン、我々はどうやらお邪魔虫のようだ。ここは引き下がってはくれないか?」
「オッケーよ。まぁ、家族の方が優先だものね。」
「承りましたわ。」
「それとダージリン、いくら面白いものが見れたからとはいえ、あまり黒森峰の隊長をからかわないようにな。後々痛い目を見ても知らんからな。」
「・・・・・。」
ケイやダージリンといった各校の隊長を杏が下がらせることで今この場にいるのは俺と西住姉妹の三人だけとなった。世話が焼ける姉妹だ・・・。
二人は突然の状況にどうすればいいのかよくわかっていないのか困惑の表情をあげたまましばらく無言だった。
「・・・なぁ、みほ。」
「な、何?お姉ちゃん。」
「その・・・今の日々、大洗での毎日は、楽しいか?」
「・・・うん。よくしてくれる友達もいっぱいできたし、それに、頼れる人もできたし。」
「頼れる人、か。つまり甘えられる人、ということか。」
「やっぱり、西住流的には駄目・・かな?」
「いや、そうは思わない。お母様だってお父様によく甘えていたからな。ただ……」
一瞬表情を緩めたかと思ったらすぐさま沈んだ表情に変わった。まほから感じるのはーー無力感だ。
「あの時、みほに必要だったのは側にいてくれる人だった。だが、私含め、誰も側にいてやることができなかったのはすまなかったと思っている・・・。」
「で、でも、あの時の私の行動は勝手にやったことだし・・・。」
「そんなわけない!!抽選会の日、戦車カフェで鉢合わせた後、彼女に言われたことを戻ってからもずっと考えていた。」
「戦車道はスポーツだと言ったことか?」
俺がそう確認するとまほは頷いた。ただその表情はとても憔悴していた。
「戦車道は確かに戦車という兵器を使っている。だが、スポーツと銘打っている以上彼女の言う通り、スポーツマンシップが尊ばれなければならない。」
「だから、西住は悪くないと言いたいのか?」
「ああ。悪いのはみほをそこまで追い込んだ、私や黒森峰だ。」
まほがそこまで言い切ったのを見て、俺は再度頭を抱えた。
理由か?それはもうーー
「はぁ・・・君たちは本当に姉妹だな。自分一人のせいにするところまで同じか。」
「え・・・?」
「これは私個人の所感だ。どう思うかは君達次第だ。」
はっきり言ってこの二人はお互いにお互いを思うあまりすれ違いを起こしてしまっているんだろう。
「まぁ、あの時は言わなかったが、西住。君は確か川に滑落した仲間の戦車を助けに行ったんだったな、雨の中。」
「え・・・、うん。そうだけど・・・」
「雨の中、ということは、十中八九川の水は増水していただろうな。そこに飛び込むのは正直に言って自殺にも等しい行動だぞ。君が仲間思いなのは知っているがそれで死んだら元も子もないだろう。仲間を助けるなとは言わないが、自身の安全を損なった面では君にも責はある。」
「あう・・・ごめんなさい・・・。」
「そして、まほ…失礼、貴方の方だが、西住に対するリカバリーの少なさが如実に現れている。貴方が一声あげればマスコミや外部の人間はともかく内部の隊員くらいは御せるのではないか?」
「あの試合の直後は・・言い訳にしかならないがOGからの対応に追われていて私も自分自身のことで精一杯だった・・・。」
彼女の言葉を聞いて、思わず舌打ちをしてしまう。どこの時代も老人はどうしようもないことしかしないな。未来を作るのはその時代を生きる若者だろうに。
「・・・そうか。それは辛い言葉もあっただろうな。名門のOGというのはどこも何故か自分達と同じ結果を出さねば不満をあげるからな。そんなにことはうまく行かないと言うのに・・・。」
ちなみにこれはテレビとか見てるとたまに映る光景だったりする。
何故自分達と同じ結果を求めるのか理解に苦しむ時が結構ある。
「お姉ちゃんはお姉ちゃんで大変だったんだね・・・。私、てっきり見捨てられたかと思ってた。」
「・・・すまない。気を配らなかった私の責任だ。」
「ううん。私も私で本当に余裕がなかったから。多分その時はかなり卑屈になっていたと思う。本当に何もかも悪いようにしか捉えてなかった。」
「・・・私は何で悩んでいたんだろうな。こうして一歩踏み出せばこうして笑いあえるのにな。」
「うん。なんでだろうね。」
最初はお互い困惑な表情を挙げていたが、今は二人とも笑顔を挙げている。
絡みに絡まった糸のように複雑にこじれてしまった姉妹の絆。糸は自力で解くことは出来ないが、そこに手が加われば時間がかかるかも知れないが解けないものはない。
人と人の関係は難しそうに見えて、案外簡単なものなんだ。俺もアイツと何だかんだ言ってつるんでいるからな。
そう感慨深く思っていると、突然ポケットに入れていた電話が鳴り始めた。
・・・中々不粋なタイミングだな・・・。
「悪い。少し席を外す。」
俺がそう言うと二人は頷いて、再び談笑を始めた。
無理やり会話を取り付けたがうまく行ったようで何よりだ。
さて、携帯はだれからーーん?知らない番号だな・・・。
「もしもし?」
通話ボタンを押して電話の相手と会話を始める。電話の主は大洗の病院の看護師だと名乗った。病院?何故急に・・・。
『貴方の祖母の冷泉 久子さんが倒れました。』
何っ!?祖母が倒れただとっ!?思ってもいなかった内容に動揺の色を隠せなかったが、声には出さなかったのは不幸中の幸いだった。
「それで、容態はっ!?」
『はい。意識は失っていますが、容態は安定しています。』
そ、そうか。容態は安定しているのか。なら良かった。ふぅ・・・中々焦った。
そのあとはしばらく看護師と会話を行ったあと電話を切った。
「冷泉さん、どうかしましたか・・・?」
電話をポケットに戻して西住達の方を振り向くと二人が疑問気な表情を挙げていた。
・・そういえば、容態を聞く時に声を荒げていたな。
「・・・祖母が倒れた。」
「えっ!?それって今すぐ戻らないといけないんじゃ・・・!!」
「いや看護師に聞いたら容態は安定しているとのことだ。ただ、なるべくなら早めに戻りたいのが正直なところだ。」
「そ、それじゃあすぐ戻らないと!!お姉ちゃん、また今度!!」
そういいながら西住と共に学園艦に戻ろうとした時ーー
「待って!!」
まほに呼び止められた。俺と西住は突然の大声に思わず振り向く。
「お、お姉ちゃんっ!?どうかしたの!?」
「うちのヘリコプターを使ってほしい。そちらの方が早いだろう。」
「いいのか?」
「みほとの仲を取り持ってくれたお礼だ。これくらいはさせてくれ。」
「・・・わかった。恩にきる。西住、君は学園艦に戻って事情を伝えておいてくれないか?」
「うん!!分かりました!!」
俺の頼みに西住が強く頷くと駆け足で戻っていった。
「よし、こっちだ。ヘリでエリカが待ちわびているからな。」
「個人的には彼女と顔を合わせるのはごめん被りたいが・・割り切るしかないか。」
「そこの心配は必要ない。エリカが何かしそうだったら私が抑えておくから。なら、急ぎで行こう。」
「ああ。了解した。」
俺とまほも急ぎ足でヘリポートまで向かった。
少しするとヘリポートで一機のヘリコプターが停まっていた。
操縦席には彼女の言う通り逸見エリカが座っていた。というか、高校生がヘリコプターまで操縦しているのか・・・。
「隊長、遅かったですね。それほど急用は時間がかかること―――え。」
俺の顔を見た瞬間、驚愕といった表情をする。まぁ、こうなるよな。
彼女がワナワナと顔を震わせると人差し指で俺のことを指差した。
「な、なんでアンタがいるのよー!!?」
「君の隊長がご厚意でヘリコプターを貸してくれるそうなのでな。」
「はぁっ!?隊長!!どういうことですかっ!!」
「彼女の家族が倒れたんだ。早くヘリを飛ばしてくれ。行き先は大洗の病院だ。」
「え・・ええっ・・・。わ、分かりましたよっ!!」
追求を諦めたのか観念した様子で逸見はヘリを起動する。ローターが高速回転を始めるとヘリは空へと飛んだ。
始めは高校生が運転しているというのもあって内心不安だったが、安定した操縦をする逸見の様子を見て、不安は安堵感へと変わった。
「いい腕をしているな。彼女。」
「戦車の腕も言わずもがなだ。何せ、次の隊長を任せようと思っているからな。」
次の隊長・・・か。確か西住が黒森峰にいた時、副隊長を務めていたといっていたな。となるとーー
「仮に、西住が黒森峰に戻っていたら次期隊長は彼女だったわけか。」
「まぁ、そういうことになる。とはいえ、それはもしもの話だ。」
彼女の表情にさっきまであった憔悴したようなものは見えなかった。
「どうやら吹っ切れたようだな。」
「ああ。君のおかげだ。憑き物が落ちた気分だ。」
「そうか。お役に立てたようで何よりだ。」
数十分すると大洗の市街が見えてくる。病院から一番近いヘリポートに降ろしてもらうと飛び出るようにヘリコプターから出る。
「すまない!!助かった!!」
ローター音にかき消されないように大声でお礼をいう。だが、まほは首を横に振る。
「いや、お礼を言うのはこちらの方だ。君には感謝してもしきれない。」
「大したことはしていないさ。ただ貴方の様子にもどかしさを感じただけだ。」
「・・・それはあまり言わないでほしいな・・・。それと今更だが、一回戦突破おめでとう。」
「それは西住に言ってやってくれ!!そっちの方が彼女が喜ぶ!!それじゃあ私はここら辺で!」
最後にまほに対して手を振ると一目散に病院に向かった。
「あの・・隊長。急用とは結局何だったんですか?」
彼女を病院に送り届けたあとのヘリコプターの中でエリカが質問をしてきた。
・・・どう返答すべきか悩むな・・・。みほと話してきたと言ってもいいが、それだとエリカが不満気な表情をするのは目に見えている。彼女も私と同じようにみほに対して負い目を感じているからな。
ここは恩人を盾にするようで申し訳ないがーー
「大洗の冷泉麻子と角谷杏に会ってきた。二人の技量には目を見張るものがあるからな。エリカもかなり驚いていただろう?」
「・・・まぁ、先に1輌撃破するどころか、無傷でサンダースを下すとは思いませんでした。」
「そうだろうな。それにエリカは冷泉麻子と戦車カフェで一悶着起こしただろう。流石に会わすのは険悪な雰囲気になると感じたから急用ということではぐらかせてもらった。」
嘘は言っていない。事実、その二人には会ったし、エリカが彼女と会うのは少々不安要素があったからな。
「・・・あまり気を使わなくてもいいんですけどね。」
エリカが呟いた言葉は聞こえていたがどちらのことを言っているのかは分からなかったためそれ以上は何も言わなかった。
その後はお互いに話すことはなく黒森峰の学園艦へと帰還の道へとつく。
・・・冷泉麻子と角谷杏・・か。
一体、二人のあそこまでの強さはどこから来ているのだろうな。
サンダースのフラッグ車が急停止したのは私でも直前まで気づかなかった。
だが、彼女の乗るⅣ号は気づくどころか冷静に対処し、大洗を勝利に導いた。
まぁ、私はその場にはいなかったのだから彼女の咄嗟の判断だったのかみほの指示だったのかどうかは知るよしもないがな。
そして、今回目を見張ったのは角谷杏の逃走劇だ。7輌のシャーマンに追撃されながらもその射撃を悉く見抜き、機転を利かせて大洗がフラッグ車を撃破するまでの時間を稼ぎ切った。あそこまでの実力や判断力、並大抵のものでは身につかないぞ・・・。
「一体、貴方達は何者なんだ・・・。」
んー、どんどんアムロとシャアに対する疑念が各校の隊長を中心に広がって行く〜^_^
最終章、見たいですか?(モモチャンズリポートのあとがき要参照)
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