冷泉麻子、行きまーす!!   作:わんたんめん

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おばあちゃんの性格がだいぶ軟化しています。


第22話

まほの計らいによりヘリコプターで病院の最寄りのヘリポートまで送ってもらったあと、途中の道にあった花屋で適当な花束を買って、病院に駆け込んだ。

病院に着いた時点で時刻はおよそ6時過ぎ、日は沈みかけていた。

 

受付で祖母の病室の場所を聞くとなるべく急ぎ足で向かう。

 

「おばぁ、大丈夫か?」

 

病室の扉の開け、開口一番に祖母の安否を確認する。返事は無かったが、医師曰く、容態自体は安定しているとのことだったので、おそらく寝ているんだろう。

俺は買ってきた花を窓の近くに置いてあった花瓶に入れると備え付けの椅子に腰かけた。

 

「学園艦が大洗に寄港するのは確か明日のはずだから、今日は病院にいさせてもらうか。」

 

俺は何があるかまだ分からないので祖母の病室の階のナースセンターから毛布を借り、特にやることもなかったため、そのまま椅子で寝た。

まぁ、パイロットのころは無重力状態の中で寝るのもザラだったため、特に問題なく寝れた。

 

次の日の朝、半日近くも寝たからかいつものようにうなだれるような低血圧もなく意外とスッキリ起きれた。

下を向いていた顔をあげるとそこには上半身を起こした祖母がいた。

 

「おはよう、おばぁ。体調はどうだ?」

「・・・心配かけちまったみたいだねぇ・・。お前さん、昨日は戦車道の試合とか言ってなかったかい?」

「まぁ、そうだが。何より家族の心配をするのは当然のことだろう。」

「タクシーで来たのかい?」

「いや、そこは他校のヘリコプターを使わせてもらった。ご厚意だったから運賃もゼロだ。」

「アンタ、何だかんだ言って知り合いの輪が広いじゃないか。小中のころは沙織ちゃんくらいしかいなかっただろうに。」

「まぁ・・・そうだったな。」

 

その知り合いの輪が広がったのも高校生になってから、それも戦車道を始めてからだけどな。

たまたまテレビをつけるとちょうどニュースをやっている時間帯だったのか、画面の中でニュースキャスターが報道を行なっていた。内容はこの前の全国大会の一回戦についてだ。勝ち負けの結果しか表示されていないが、黒森峰や聖グロといった常連校は順当に一回戦を突破している。そして、トーナメント表をみる限り、俺たち大洗の次の相手は『アンツィオ高校』か。

 

「へえ。一回戦突破かい?初出場にしてはいいんじゃないのかい。」

「だが、せっかく出場するんだ。目指すなら優勝だがな。」

「中々大きい目標だねぇ。」

「目標はなるべく大きい方がいいとか誰かが言っていた気がしたからな。」

 

一回戦だからか大した特集もなくニュースはそのまま全国のものへと移った。もう少し情報とかあるとありがたかったがな・・・。

そう思っていると携帯のバイブ音が響いた。携帯を開いて確認すると画面には沙織からのメールが届いていた。

内容は祖母のお見舞いに行きたいから部屋番号を教えてほしいとのことだ。

 

「おばぁ、沙織がお見舞いに行きたいと言っているんだが、部屋番号を教えても構わないか?」

「別に構わないよ。久しぶりに沙織ちゃんの顔も見たいしね。」

「わかった。」

 

俺はメールの返信に祖母の部屋番号をつけて送った。

そして、そのメールを送ってしばらく時間が経つとーー

 

「おばあちゃーん!久しぶりー!!」

 

病室の扉が開いて、私服姿の沙織が現れた。さらにその後ろからーー

 

「麻子殿ー!!お見舞いに来ましたよー!!」

「優花里さん、それでは冷泉さんへのお見舞いになってしまいますよ?」

「み、みんなで来たのかっ!?」

「えへへ、駄目・・だったかな?」

「いや・・・駄目とは言っていないが・・・。」

「誰だい?この子達。」

 

沙織の後ろから西住達が私服姿で現れた。すると祖母が疑問符をあげながら俺に尋ねてくる。まぁ、そうなるな。俺は微妙に困った表情をしながら説明を始める。

 

「戦車道で同じ戦車に乗っている仲間達だ。」

「西住みほです。」

「五十鈴華と申します。」

「秋山優花里です!!」

「ふぅん。麻子が世話になっているね。迷惑とかかけていないかい?」

 

祖母が軽くお辞儀をしながら、近況を尋ねるとーー。

 

「そ、そんな訳ありません!むしろ凄く頼りにしてもらっています!!」

「そうですね。冷泉さんの操縦技術にはいつも頼らせてもらっています。」

「いつも色々お世話になっています!!」

「そういう訳だから迷惑とか一切ないから安心してね、おばあちゃん。むしろ頼りになりすぎて見てるこっちが申し訳なくなってくるレベル。」

「そうかい。そうであれば構わないんだけどね。」

 

西住達からそう言われると祖母は表情を和やかなものに変える。

 

「とはいえ、アンタは大体おんなじような立場に収まっているねぇ。毎回、アンタがどうしているか聞くと大抵、返ってくる答えが『頼りになっている』なんだよねぇ。」

「そ、そうなんですか?」

 

西住がそう聞くと祖母は嬉々とした表情で頷く。

 

「そうだよ。この子ったら自分からはあまり関わりはしないくせに、要所要所に対する気遣いができているんだよ。」

「そ、そういえば麻子ってよくほかのクラスメートを慰めていた気がする・・・。」

「そういえばそうですね・・・。」

 

祖母の言葉に昔のことを知っている沙織と華が同意の言葉を零した。

 

「頼む・・・。それ以上は何も言わないでくれ・・・!!流石に恥ずかしいものがあるから・・・!!」

 

気恥ずかしさから思わず止めのサインを出してしまう。

こういうのは止してほしいんだ・・・・っ!!

 

 

 

西住達がお見舞いに来てから数十分するとーー

 

「そういえば、麻子。沙織ちゃん達が来てくれたんだから市街でも回って見たらどうだい?せっかくの休日、こんな病人の世話になんざ使っちゃいかんよ。」

「・・・おばぁがそれでいいのであればいいんだが。」

「そもそもここに来た理由がちょっと体調崩しただけさ。あたしゃ大丈夫だから行ってきな。」

「ふむ・・。ならその言葉に甘えるか。」

 

祖母のお見舞いを済ませて、制服から自分の私服に着替えるために一度学園艦の自宅に戻る。

 

「そういえば、麻子殿の私服を見るのは初めてですね。」

「そうだね。一体どんな服持ってるんだろう?意外に可愛いものを着てきたり・・・?」

 

秋山と西住がそんなことを言っていると沙織が少しばかり困った顔をする。

 

「あー。みぽりん。麻子にそれは期待しない方がいいと思うよ。」

「そうなんですか?沙織さん。」

「まぁ、見たほうが早いと思う。」

 

華の質問に乾いた笑顔で答える沙織。その瞬間、扉が開かれる。

 

「すまない。待たせたな。」

 

俺が着てきた服はジーパンに大した柄のない地味な半袖にスニーカー。それに必要最低限の持ち物が入る肩掛けバックを下げている。

ちなみにほとんどユ○クロで買った。

 

「相変わらずのファッションセンスのなさよねー。」

「・・・服なんて適当なものを着てればそれでいいんじゃないのか?」

「本人がこれだからねー。」

 

沙織にため息混じりで呆れられる。服なんざそんなものでいいだろう。

 

「というより冷泉さん、そんな薄着では中のブラが―――ってあら?冷泉さん、まさかとは思いますけど・・・。」

「ブラのことか?付けてないが?つけるほどの大きさもないからな。」

 

そう言った瞬間、沙織達の空気が変わった。なにやら怒っているように感じるが、表情は何故か笑顔だ。

 

「・・・こぉれは徹底的な教育が必要みたいだねー。」

「ですね。流石にここまで来ると些か矯正が必要だと思います。」

「みぽりんとゆかりんもやるよね?」

「はい!!手伝いますね!!」

「不肖、この秋山優花里、手伝わせていただきます!!」

「待て待て待て待て。一体何をするつもりだっ!?」

 

何やら瞬く間に何かしらのプランが組み上げられている気がするのだがっ!?

それとこのまとわりつく嫌な予感はなんだっ!?

 

「麻子ー。今日はちょっと覚悟してもらうからねー。」

「覚悟だとっ!?それと皆揃いもそろって手をワキワキさせているのをやめないかっ!!何故か寒気がする!!」

 

静止の声を挙げるが、西住達はジリジリと近寄ってくる。な、なにやら本能的な恐怖を感じる・・・!!思わず後退りしてしまうが、程なくして家の壁に追い込まれてしまう。

 

「し、しまっ―――」

 

俺が最後に覚えているのは西住達の手が目の前まで迫っていることだった。

そこから先は・・・あまり覚えていない。とりあえず市街をたらい回しにされて着せ替え人形にされたという大まかな部分だけは覚えている・・・・。

夢だと思いたいが、家に見覚えのない女物の服が袋詰めで置かれているのを見て、さっきのが現実だと認識させられる。

今日だけでかなり精神が持っていかれたぞ・・・!!

 

 

次の日、いつものごとく低血圧に魘されながら学校に来た。沙織や西住に肩を借りるなどということはなかったが、案の定遅刻ギリギリとなりそど子に苦言を呈された。

 

「ねぇ麻子ー。みぽりん知らない?」

「ん?教室にいるんじゃないのか?」

「それが、教室で姿が見当たらないんです。」

 

昼時になると沙織と華が西住の行方を俺に尋ねてきた。

と言われてもな・・・。俺も西住の行方は知らない。

そう答えようとした時、視界の端に気になるものが見えた。

そちらに目を向けると秋山が戦車倉庫に向かっている様子が見えた。

ふむ、俺の直感にかけてみるか。

 

「戦車倉庫にいるかもしれない。ちょうど秋山がそこに向かっている様子が見えるからな。」

 

俺が指差した方向を沙織と華が見る。すると合点のいった表情を挙げてくれた。

やはり沙織達も秋山がいる場所=西住がいる場所みたいな感じになっているのか・・・。

 

「そうかもしれないね。あ、いいこと思いついた。戦車の上でご飯食べるのはどう?」

「またヘンテコな発想をするな・・・。だが、状況的には悪くないかもな。せっかく全員集まるかもしれないんだ。」

「ええ、そうですね。ところで冷泉さん、お昼はありますか?」

 

・・・しくじった。そういえばまだ買ってなかったな。早く買いに行かなければ西住達がそこを離れる可能性もある。

 

「・・・急いで買ってくる。」

「そ、それじゃあこれあげるから!!」

 

駆け出しそうになったところを沙織が俺にメロンパンを差し出てきた。

 

「いいのか?」

「せっかくの機会だもん!!」

「わざわざ今買いに行くよりはいいと思いますけど・・。」

 

それもそうだな。わざわざ買いに行かなくても今メロンパンをもらって足りなければ後で買えばいいか。

 

「ありがとう。助かる。」

 

メロンパンを受け取ったら俺たちは戦車倉庫へと向かった。

戦車倉庫にたどり着いて扉を開けてみると予想通り、秋山の他に西住がいた。

 

「やはりいたか。秋山のいる場所に西住あり、いや逆か?」

「れ、冷泉さんっ!?」

「やっほー、みぽりん。」

「沙織殿に華殿まで?もしかして、お三方もここで昼食をですか?」

「そうですね。せっかくの機会だと思いましたので。それに『も』ということは秋山さんも?」

「はい!私、時々戦車の上で昼食を取っているんです!一緒に食べますか?」

「元よりそのつもりで来たんだ。西住、君も一緒にどうだ?」

 

俺の誘いに西住は首を縦に振ったことで戦車の上で昼飯パーティが始まった。

西住達は自前だったりコンビニで買った食べ物を戦車の車体の上に広げている。

俺は少々スペースが足らなかったため砲塔に腰掛けて沙織からもらったメロンパンを頬張っている。そこで俺はふと気になったことを尋ねた。

 

「そういえば西住、今日はなぜここに?いつもは沙織達と一緒に食堂で昼飯を食べていなかったか?」

「あ、それは思った。みぽりんどうして?」

 

そう聞くと西住は少しばかり恥ずかしげな表情で話し始めた。

 

「えっと、その。ちょっと今までのことを思い出してて。」

「今までのこと?この大洗に来てからか?」

「うん。そんな感じかな・・・。黒森峰にいた頃は試合には絶対に勝たなきゃいけないっていう雰囲気だったけど、ここに来てからは試合に無理に勝とうとする必要はない、むしろ負けた後にどうするかが大事ってことに気づけた。それからは最近、戦車道が面白いって思うようになってきたんです。」

「私もそうだよ!最近は戦車道がとっても楽しく感じるもん!」

「私もですよ。中々感じることのない感覚に新鮮な思いを抱いています。」

「今までやってみたいと思っていたことができているのですっごく楽しいって感じてますよ!!」

 

西住の最近は戦車道が楽しいという言葉に他の三人が同調の意思を示す。

言わずもがな、俺もそうだがどちらかというと華の新鮮な気持ちというのが俺の戦車道に対する思いだ。戦争の兵器をスポーツに使うなど思ってもいなかったからな。

 

「それにこっちに来てからお姉ちゃんと話すことができたし。」

「お姉ちゃんって、戦車カフェで会った黒森峰の隊長さん?」

「西住 まほさんですね。個人的な見解をすると、割と厳格な性格の持ち主だと感じましたけど・・・。」

「そういえば、冷泉さんを送ったのは黒森峰のお姉さんだと言っていた気がしますけど・・・。どうしてそのようなことに?」

「あれは・・・本当にびっくりしたんだよね・・・。いきなり冷泉さんがお姉ちゃんの手を掴んで私の所に連れてきちゃうんだもん。」

 

西住の言葉に他の三人の驚いたような視線が俺に向けられる。

俺は大したことはしていないのだがな・・・。

 

「ま、麻子って大胆なことするよね・・・。」

 

沙織がこぼした言葉に秋山と華が無言で頷く。

・・・・そんなにか?

 

「あれはあまりに彼女の様子がもどかしく感じたからやっただけだ。」

「そ、それは具体的に言うと・・・?」

「どうやら彼女はあの場で西住に会うつもりではなかったらしい。」

「と言うことは何か別の理由で?」

「ああ、それこそ彼女に対してもどかしいと感じる一因にもなったのだが、どうやら私に西住との話題の広げ方を聞きに来たらしい。」

「え、お姉ちゃん、そんな理由で冷泉さんの所に来てたのっ!?」

「そんな理由だ。自分が当事者だとしたらだいぶもどかしく感じるだろう?」

「何というか、姉妹ですねー。」

「秋山もそう思うか。私もその場にいた時はそう思ったよ。」

「冷泉さん・・・。ものすごく私とお姉ちゃんのこと姉妹だって言ってたもんね・・・。」

 

西住が苦笑いを挙げている。まぁ、他人からそんな姉妹だと言われれば例え実の姉妹でも恥ずかしいものがあるかもしれないな。

そこら辺で昼飯も食べ終わり、時間もちょうどいい感じだったため沙織達とはそこで別れて自分の教室へと向かった。

 

 

そして、時間は進み、戦車道の時間になった。

一回戦を勝ち抜いたからか皆気合いの入った様子で練習に打ち込んでいる。

それは練習の終わったあとでも例外でなく・・・・。

 

「隊長ー。躍進砲撃のことについて―――」

「彼氏に逃げられちゃって―――」

「装填のコツについてなんですけど―――」

「あ、えっとその・・・。」

 

気合いが入っているのはいいんだが・・・。いかんせん皆揃って西住に聞きに行ってしまっているな・・・。あのままだとパンクするぞ。

 

「沙織、秋山と華の三人でカバーしてやってくれないか?それぞれ担当分野は合っているだろ?」

「麻子は―――って無理か。」

「ああ、私には私でやることがあるからな。」

「冷泉センパーイ!!そろそろ教えてくださーい!!」

「分かったから少し待ってくれ。」

 

桂利奈の声に急かされ、八九式の下に向かうと私の周りにはすでに各戦車の操縦士達が集結してしまっている。桂利奈を筆頭に操縦のコツを教えてほしいとせがまれてしまったのだ。

 

「さて、始めるか。教えるのはそれほど得意ではないが・・・。」

 

俺はそうこぼしながらも八九式の操縦席に座り、マニュアルを速読する。

操縦の仕方だけ見て、八九式の操縦桿を握りしめる。

操縦桿を操作すると八九式をバックさせたり倉庫の中を走らせる。

さすがに狭い倉庫の中で走り回すのは危ないため、すぐに停止させる。

 

「どうしたらそんなに動かせるんですかっ!?」

 

手本を見せ終えて、操縦席から出るとバレー部の磯部 典子を中心に操縦手達が駆け寄ってくる。ん?磯部、君は車長じゃなかったか?まぁ、いいか。

 

「基本的な動かし方はマニュアル通りにやれば出来るさ。ただ、戦車は走りに関しては中々デリケートな部分が多い。周りの環境に左右される時があるからな。」

「え?戦車って元々は悪路とか走るために造られたんじゃあないんですか?」

 

俺の言葉に八九式の操縦手である河西 忍が疑問をぶつけてくる。

まぁ、確かに戦車はオフロードとかの悪路を走破するために造られた節もあるが、それはそれだ。

 

「確かに戦車は悪路を走ることはできるさ。しかし、試合では泥や雪の上でもスピードを出さねばならない場面があるはずだ。キャタピラ装備されているとはいえスピードを出して走ってみろ。あっという間にスリップを起こして隊列から落伍するぞ。」

「た、確かに。冷泉殿の言う通りぜよ。じゃが、それだとどうしてもスピードを出さねばならん時はどうすれば良いぜよ?」

「泥や雪はもちろん、アップダウンの激しい丘のある草原など、試合会場によっては悪環境が出てくる。そう言った環境下でスピードを出さなければならない状況に陥った際は自身の周りの環境を把握しておく必要がある。」

「周りの環境を、はあく・・・・?」

「記憶ないしは理解しておく、ということだ、桂利奈。これを踏まえておけば泥の時はこう操縦する、雪だったらこのくらいで操縦するという加減が出来るはずだ。」

「周りの環境を把握する・・・。」

「バレーと似ていますね。コート全体を把握しておかないと点数なんて取れませんもんね。」

 

河西が呟いた言葉に八九式の砲手の佐々木 あけびがバレーと似ているという言葉をかける。

バレーボールには詳しくないから特に言及はしないがな。ただ、これだけは伝えておかねばな。

 

「八九式には攻撃力に難がある。だから西住は君たちに偵察などを任せる時が多くなるかもしれない。最悪、逃走を命じられる時もあるだろう。そんな時、この事を覚えておけば、どんな環境にも満足にとは言わないが、走り方がマシにはなるはずだ。

重圧をかけるつもりはないが、君は一層の努力をした方がいいかもしれないな。」

「は、はいっ!!分かりました!!」

 

河西の様子に表情を緩ませると今度はⅢ突の操縦手、おりょうに目を向ける。

 

「Ⅲ突は砲塔がなく、操縦手は砲撃時にも車体を回転させるという形で参加せざるを得ない状況がある。そこで重要になってくるのが、Ⅲ突内でのコミュニケーションだが、君たちの様子だとそれほど心配はいらないはずだ。縁の下の力持ちだが、仲間の声を聞いて、彼女たちの望む場所へとⅢ突を導いてやってくれ。坂本龍馬を敬愛している君ならできるだろう?」

「言ってくれるぜよっ!!任せるぜよ!!」

 

気合いの入った様子のおりょうを見て、思わず頷いてしまう。

 

「ねぇねぇ!!冷泉センパイ!!私はっ!?」

「あ、ああ。そうだな、M3は砲門が二つあるという他の戦車にはあまり見られない特徴がある。使い方によってはスペック以上の性能を見せることも可能なはずだ。」

「そ、それってあゆみやあやに言うべき言葉じゃ・・・!!」

「分かってるから少し待て・・・。そうだな・・・。サンダースでフラッグ車以外の9輌から追い回された時、よく私たちが援護に行くまで逃げ切ったな。前言ってたように慌てずに対応することはできたか?」

「あ・・・どうだろ・・・。割と騒ぎながら逃げ回ってたかも・・・。」

「それなら次はうまく落ち着いてやれるようにな。」

「ゔー・・・・。なんか悔しい・・・。」

 

まぁ、言うべきことは言ったか。そう思い、周りを見渡すと先ほどまで他のみんなにもみくちゃにされていた西住の姿が見当たらない。

 

「西住はどこに行ったんだ?」

「それなら華先輩と一緒に生徒会室に向かったそうですよ。何やら書類の整理を手伝うとか・・。」

 

西住の所在を聞くとバレー部の近藤 妙子が答えてくれる。

ふむ、生徒会室か。ならいいか。

しかし、書類か・・・。何をするつもりなんだ?

最終章、見たいですか?(モモチャンズリポートのあとがき要参照)

  • 見たいです
  • 見たくないです

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