冷泉麻子、行きまーす!!   作:わんたんめん

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なんだこの鈍感なアムロ大尉・・・・
┌(┌^o^)┐ユリィィ



第23話

「ふむ、やはり書類を見る限りまだいくつかの戦車が大洗に眠っている可能性は大きいな。柚子、そちらはどうだ?」

「はい。購入記録を見る限りルノーB1bisとポルシェティーガーがあったようです。」

「ほお・・・ポルシェティーガーか。確か、ティーガーⅠと製造競争を繰り広げて敗北した戦車だったか?西住君。」

「えっと、大まかなところはそんな感じで大丈夫です。でも、あるんですか?」

「売却の書類がないからどこかで眠っていると思うんだけど・・・。」

「会長、明日の戦車道の時間は学園艦中を探してみるのはどうでしょう?」

「ふむ、それもそうだな。我々の慢性的な火力不足は今後の最優先の課題だ。ルノーB1bisもポルシェティーガーもその問題を切り開いてくれるはずだ。

桃、明日は学園艦中の捜索だ。各員にもそう伝えておいてくれ。」

「はっ!!了解しました。」

「よし、なら今日はここまでにしよう。西住君、五十鈴君、手伝わせてしまってすまなかった。おかげで効率的に書類を捌くことができた。」

「いえいえ、お役に立てたみたいで良かったです。」

 

手伝ってくれたことに関してお礼を言うと、二人は笑顔を浮かべながら生徒会室を後にした。

 

「桃、それに柚子も今日はもう帰ってもらって構わない。明日は明日で忙しくなるからな。」

「分かりました。それじゃあ、お先に失礼しますね。」

「失礼します!」

「ああ、おつかれ様。」

 

柚子と桃も生徒会室から退室し、今この場にいるのは私だけになった。

私にはまだ時間があるためもう少しだけ書類漁りをすることにした。

少し書類を読み進めていくとある項目が目に留まった。

 

「む?これは・・・・。」

 

私は先ほどまで柚子が見ていた戦車の売却記録を記した書類を目に通す。その書類にもその戦車の名前はーーない。

 

「これは、あったとしたらかなりの戦力の上昇が望めるな・・・。」

 

だが、見つかるだろうか。おそらく大洗の持ちうる戦車の中で一番新しい代物だが・・・。

 

「・・・あまり淡い期待は持たせん方がいいかもしれないな。それに仮にあったとしてもこれは最後の切り札だ。」

 

私はその書類を会長の机の引き出しに押し込んだ。

全国大会にこの車輌はいらないと直感で感じる。ならばどこで使うか・・・。

いや、それもそうだが・・・

 

「人員を確保せねば不味いな・・・・。」

 

 

 

 

 

「そう言うわけで今日は会長の提案で戦車を探すことになった。」

 

次の日、戦車倉庫に来ると河島からそんな言葉が告げられた。

 

「戦車を探すと言ってもどのような戦車を探すんだ?」

「えっと、主に探すのはルノーB1bisとポルシェティーガーです。」

 

俺がそう尋ねると西住が代わりに答える。俺は戦車に関しての知識は乏しい。

そのため、いつものように秋山に聞こうとしたら、既に目がギラッギラに輝いていた。

 

「ルノーB1bisとポルシェティーガーですかぁっ!?どちらも有名な戦車じゃないですかぁ!!」

 

・・・・後で聞くか。今聞くと長くなりそうだ。

戦車を探すに伴いメンバー分けをした。それぞれ、沙織はウサギさんチームと、秋山はカバさんチームと、そして、俺と西住はアヒルさんチームと行動を共にすることになった。

 

そして現在俺たちは古い部活棟が建っているエリアを練り歩いていた。西住曰く、ここは昔に移動した区域らしい。

こんなところにあるのか?窓は割れているし壁には隙間が出来ていたりとボロボロだな。

 

「とりあえず、何か手がかりはないのか?そこから探そう。」

「冷泉センパイ、なんか刑事みたいですね。」

 

冗談などを交えながらボロボロな部活棟の間を進んでいくが、戦車と思しき形は一向に見当たらない。

 

「この様子だと戦車は諦めた方がいいかもしれないな。」

「ええっ!!諦めるんですかっ!?まだ中とか探してないのにっ!?」

「河西、私は何も捜索自体を諦めたわけではないからな?中を探して、戦車のパーツを探してみるのもいいだろう。」

「流石に手ぶらで帰るわけには行きませんからね。」

「そう言うことだ、それじゃあ部活棟内部の探索を始めるか。」

 

俺たちが部活棟の建てつけの悪くなった扉を開けて中の探索を始めた。

が、やはりある程度撤収済みだったのか中は片付けられていてそれらしいものを見つけることはできなかった。

 

「参ったな・・・。まさかここまで見つからないとは・・・。」

「うーん・・・やっぱりないのかな・・・。」

 

西住と少し疲れた様子でいると未だに体力が有り余っているのか縦横無尽に部活棟内を散策しまくっているバレー部の姿が目に入る。

・・・すごい体力だな、彼女達。

とはいえ、駆け回っているせいかあたりの埃が舞い上がり、少し息苦しい思いをする。

 

「西住、そこの窓を開けに行くか。さすがに埃臭い。」

「う、うん。」

 

西住と一緒に窓際に駆け寄り、思い切り窓を開け放つ。

中の埃臭い空気が抜けていき、代わりに入ってくる新鮮な空気を味わう。

空気がうまいとはこのことか・・・。

 

「あ、あれ!!冷泉さん、あれ見てください!!」

 

西住に肩を叩かれ、外をみる。そこには洗濯物が掛けられている光景であった。

 

「・・・誰だ?こんなところで洗濯物を干しているのは。」

「そ、それもそうですけど、洗濯物が掛けられてある棒です!!あれは戦車の砲身です!!」

 

そう言われ、目を見開いて洗濯物が干されてある棒に注目する。

確かに先端部分は戦車特有の形をしている。

どうやら手持ち無沙汰で終わることはないようだ。

 

 

今回の大捜索の結果は俺たちが見つけたⅣ号戦車の砲塔と秋山たちが見つけたルノーB1bisであった。ふむ、ポルシェティーガーは見つからなかったようだな。

だがまだ見つける機会がなくなったわけではない。そちらは首を長くして探すとしよう。

だが、問題は沙織とウサギさんチームがいつまで待っても帰ってこないことだ。

 

「遅いな・・・。何かあったのか?」

 

西住と秋山も不安気な表情を挙げている。俺も表情には出さないが内心では不安がっている。できれば連絡の一つぐらいほしいものだが・・・。

そう思っているところに俺の携帯がバイブ音を響かせた。

まさかと思って確認してみると、沙織からのメールが1通届いていた。

俺はひとまず安心するがメールの内容を見て、困った顔をする。

 

「な、何かあったんですか?」

「・・・船の底で遭難して動けなくなったそうだ。」

「ケガをした、とかは無いんですね・・・?場所は―――」

「さっきのメールにはどこにいるかわからないとあったがどこかに表示があるはずだからそれについてのメールを送った。それと誰かが怪我をしたとかは書かれていなかった。つまりはとりあえず無事なんだろう。」

「よ、よかった・・・。」

「何かあったのか?」

 

秋山と西住が安堵の表情を挙げているところにシャアが話しかけてきた。俺はシャアに事情を説明する。

 

「ふむ、なるほど。事情は理解した。なら私とお前で行くとしよう。ちょうどここに学園艦の大まかな全体図がある。後は場所さえある程度絞り込めればいいのだが・・・。」

 

シャアがそこまで言ったところで再度俺の携帯がバイブ音を響かせる。

確認するとそこには沙織からのメール、内容はーー

 

「第17予備倉庫だそうだ。」

「わかった。ならすぐに向かおう。君たちはここで待っててくれ。」

 

場所を特定できたため、俺とシャアで速やかに沙織達の下へと向かった。

 

 

 

「け、決断が早いです・・・。あっという間に行っちゃいました・・・。」

「う、うん。早かったね・・・。」

「あの〜、一つ気になったんですけど・・・。」

「華殿?どうかしましたか?」

「船の底って大抵暗いのではないでしょうか・・・?」

「・・・・・に、西住殿・・・。」

「は、走ろう!!早く追いつかないと二人まで迷子になっちゃう!!」

「ええ、急ぎましょう!!」

 

 

 

 

「シャア、沙織やウサギチームの気配は?」

 

街中を駆け抜けながら俺はシャアと沙織の位置の確認を行う。

するとシャアは手に持っていた地図を広げ、ある一箇所を指差した。

そこは『第17予備倉庫』だった。

 

「地図と照らし合わせるとその第17予備倉庫とおおよその位置は重なる。彼女の情報に間違いはない。」

「ならいい。俺のニュータイプとしての力もまだまだ捨てたものではないな!」

「そういえば、アムロ。お前は今年でいくつだ?」

「17だが・・・?」

「外見ではなく中身だ。まぁ、有り体に言えば精神年齢か。」

 

ああ、そういうことか。そういえばあまり考えたことがなかったな。

確か、アクシズの時が29だったから・・・。

・・・・あまり直視したくない数字が出てきたな・・・。

 

「・・・・46だな。」

「・・・そうか。やはりそれくらいか。」

「・・・・そういうお前はどうなんだ?」

「・・・・・51。」

「・・・・これ以上はやめておこう。年の話も予想以上に傷つくものだな・・・。」

「・・・・ああ。」

 

長い沈黙。そのまま学園艦の内部へと向かう階段を降りようとした時ーー

 

「れ、冷泉さん!!待ってーーー!!!」

 

突然響いた俺を呼ぶ声に思わず足を止める。そして振り向くとそこには焦った様子の西住達三人がいた。

 

「どうしたんだ?そんなに焦った様子で。」

 

俺がそう尋ねるも西住達は息を切らしていて、事情を話してくれるにも少し時間がかかりそうだ。

 

「えっと・・・その、か、懐中電灯とか、いらないのかと、思いまして・・・。」

 

秋山が息を切らしながら取り出したのはヘッドライト付きのヘルメットであった。

・・・どこから取り出したのか問い質したいところもあるが、懐中電灯に関してはあまりいらないと考えていた。

まぁ、あるのであればそれに越したことはないのだが。

 

「持ってきてくれたのか。わざわざすまないな。」

 

秋山からヘルメットを受け取り、頭にかぶる。若干サイズが合わなくて緩いが、そこは我慢だな。

そのまま西住達を置いて中に入ろうとした時ーー

 

「あ、あの、私達もついていっていいですか!?」

「ついてくるに関しては別に構わないが・・・。どうかしたのか会長。」

 

別に構わないと思っていたが、シャアが微妙な表情をしていたのに気づいて、その理由を尋ねる。

 

「いや、下層の方には素行のよくない生徒がいると聞いていてな。大人数で行くと目をつけられてしまう可能性もある。それでも来るか?」

「そ、それって早く行かないと沙織殿達が危なくないですか!?」

「行きます!なおさら早く行かないと・・・!!」

「ご同行させてください!!」

「どうするんだ?判断は任せるが・・・・。」

「・・・・わかった。ついてきて構わない。」

 

シャアの言葉に西住達の表情に笑顔が映る。

西住達を伴って学園艦の内部を進んでいく。

階段をいくつか降りていくといつのまにか電気もつかない空間へとたどり着いた。

 

「ふむ、地図と表示を見る限り件の第17予備倉庫はここら辺のようだな。」

「そのようですね。沙織さん達、無事だといいんですけど・・・。」

 

シャアと華が先導して歩いている。華はこういった暗い空間に耐性はあるんだろう。俺ももちろん暗い程度で怖じけづいたりはしないが・・・

 

ガランッ!!

 

どこかで鉄パイプみたいなのが落ちる音がした。まぁ、別段驚きとかもしないのだが・・・・。

 

『キャアアアっ!?』

 

さて、ここで各人の立ち位置とかを説明しようか。

シャアと華は俺のヘッドライトからの光を頼りに列の先頭に立っている。

で、西住と秋山は俺を挟むように廊下を進んでいる。

それで視界の端にはなんとなく西住と秋山の頭がそれぞれ左右に見えた。

 

つまり何が言いたいのかというとーー

 

「ゴフッ!?」

 

びっくりして飛びついてきた秋山と西住に板挟みの形で突撃された。結果として思わずその場にうずくまる。

 

「・・・・無事か?」

「無事じゃないぞ・・・・。」

「わ〜!!?ご、ごめんなさいー!!」

「大丈夫ですか麻子殿ー!!?」

 

しばらく身体の両脇の鈍痛が続いていたが程なくしてそれは治った。

 

「まったく・・・。怖いなら最初からそう言っておけばいいものを・・・。」

「ご、ごめんなさい。」

「申し訳ないです・・・。」

 

西住と秋山が申し訳なさ気な表情で俯く。そんなところにシャアの顔が目に入った。

それは何か閃いたような表情をしていた。また変なことを考えているな、シャアの奴。

 

「そういえば、恐怖は誰かと手を繋げば緩和すると聞いたことがあるな。」

 

シャアのその言葉を聞いた瞬間、西住と秋山の顔が凄まじいスピードであがった。

な、なんだ?いきなり表情に生気が戻ったぞっ!?それに俺の顔を見て、一体なんなんだ?

 

「えっと、手、繋いでくれませんか?」

「わ、私もいいですか?」

 

二人とも微妙に頰を染めながらそんなことを聞いてくる。

それで恐怖がなくなるという確証はないんだがな・・・・。

 

「まぁ、別に構わないが・・・。それで本当に恐怖がなくなるのか?」

 

そう言いながらも渋々両手を差し出すと西住は右手、秋山は左手を握ってくる。

俺の手を握った後は妙に恥ずかしげな表情を浮かべていたが、まぁ、怖がっていないのであればいいか。

 

「さて、捜索を進めるとしようか。」

「ええ、ですがゆっくりでもいいのではないでしょうか?」

「そうかもしれないな。」

 

シャアの奴、なぜそんなに妙な笑顔を浮かべているんだ。それに華も口元に手をあてて、シャアと似たような笑顔を浮かべている。なんなんだ、二人揃って。

 

 

少し歩いていくと沙織達のいるはずの第17予備倉庫へとついた。

ヘッドライトで照らしてみると物が散乱していて歩きづらい印象を受ける。

 

「沙織ー!!いるかー!?」

 

試しに声を張り上げて沙織達の安否を確かめる。

さて、何かしらの反応を示してくれるといいんだが・・・・。

 

「麻子っ!?こっち!!こっちにいるよー!!」

 

沙織からの返答が返ってくる。それとおそらくだが一緒にいるウサギさんチームの声も聞こえた。

 

「ふむ、声のした方向から逆算すると・・・こっちか。」

 

シャアの先導に従って散らかった荷物の間を進んでいくと、沙織とウサギさんチームが座り込んでいる様子がライトで照らし出される。その瞬間無事を確信したのかウサギさんチームが泣きながら沙織に飛びついた。余程怖かったみたいだな。

 

「む?会長、沙織達の奥にあるのは戦車じゃないか?」

「・・・・どうやらここへ来たのは無駄ではなかったようだな。」

「あれ、ポルシェティーガーです!!」

 

秋山が言うのであれば確かなのだろうな。沙織達の奥に鎮座にしていたのは紛れもなく俺たちが探していたポルシェティーガーのようだ。こんなところに置いてあったとは・・・。とりあえず、自動車部に連絡して取り出してもらわなければな。

 

「ねぇ、そういえば麻子、なんで二人と手を繋いでいるの?」

「ん?これか?これは二人が手を―――」

「な、なんでもありませんから!!ね、そうですよね西住殿!!」

「う、うん!!何もないから、そこは安心して、沙織さん!!」

 

理由を話そうとしたら西住達に止められてしまった。

なんなんだ?そんなに切羽詰まったような顔をして・・・。

別段、隠すようなことでは無いと思うのだが・・・。

 

「・・・・・鈍感。」

「さ、紗希が喋ったぁっ!?」

 

今のまさか俺に対して言ったのか?

 




こんなのガルパンじゃないわ!!ただのラブコメよ!!

だったら戦車を出せばいいだろ!!(暴論)

最終章、見たいですか?(モモチャンズリポートのあとがき要参照)

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