この間の探索でルノーB1bisとポルシェティーガーという重装甲で高火力な戦車を見つけた大洗。とはいえ、自動車部によるレストアが不可欠なため実戦投入するのは準決勝もしくは決勝のあたりになってくるだろう。
ただ、シャア曰くポルシェティーガーに関しては自動車部が発見場所から持ち出す際にミスで落としてしまったようだ。
まぁ、自動車部の技量は純粋に眼を見張るものがあるから大丈夫だと思うが。
そんなことを考えてながら歩いていると前方に西住と沙織と華の三人の話している姿が目に入った。
別段話しかける用もないためそのまま後ろを歩いていると彼女らに近づく人がいた。
金髪のロングな髪型に特徴的な丸メガネは何故か渦を巻いているようでその先が見えず、さらに何故か猫耳をつけているという中々奇抜な格好をした人だった。
その人はどうやら西住に話しかけようとしているのか手を挙げたが何故かそのまま固まった。
西住達も話に熱中していたのか彼女の動向に気づくこともなくスルーしてしまった。
・・・・・これは俺が話しかけなければ不味いか?
「また声を掛けれなかった……。もう駄目だ……チキンハートのボク……。次は頑張るんだ、ねこにゃー!」
「次ではなく今頑張ったらどうだ?」
「うわっ!?び、びっくりした……あ、貴方は・・・?」
「冷泉 麻子だ。さっき君が話しかけようとしてた西住の友人だ。」
「ね、ねこにゃーです・・・。」
またあだ名か何かか?この学園、自己紹介であだ名を名乗る奴が多すぎないか?
まぁ、それは今は置いておくか。
「さっき何を西住に話そうとしたんだ?私でよければ話し相手になるが・・・。」
そう聞くと彼女、ねこにゃーはたどたどしい口調だったが話し始めた。
要約するとゲーム仲間三人で戦車道を履修したいらしい。
「こちらとしては万年人手不足なのは否めないからいつでも歓迎だが、いかんせん、二回戦が近いんだ。流石に今入ってもらっても少しばかり厳しいものがある。」
「そ、そうなんだ・・・。なら、また今度お願いするよ・・・。」
「すまない。だが、入りたいのであれば今からでもやれることはあるぞ。」
「え、あるの・・・?」
「ああ、あるさ。少し待て。」
俺はたまたま持っていたノートのページを破くとそこに二回戦の場所を書き記す。それをねこにゃーに手渡すと渋々と言った様子で彼女は受け取った。
「ほら。これは二回戦の場所が書かれてある。見て学ぶのもいいと思うぞ。まったくの素人から始めるよりはいいと思うんだが・・・。」
「うう・・・外かぁ……。ボク、インドア派だからなぁ・・・。」
「慣れないのは仕方ないかもしれないが、一歩出てしまえば案外楽だぞ。私も引きこもりの経験があるからな。」
「え、そうなの・・・?」
「ああ、とはいえ昔のことだがな。それじゃあ私はそろそろ戦車道の練習が始まるのでな。」
俺は自虐的な笑みを浮かべながらねこにゃーに別れを告げて、戦車道の練習へ向かった。
「元引きこもりでも、あんなに話せるようになるんだ・・・。」
学園艦の大捜索から数日挟んで二回戦当日へと差し迫った。
相手はイタリア風の高校、『アンツィオ高校』。
生徒会による事前調査によるとノリと勢いに乗られると厄介とのことだ。
中々面倒な相手だ。実力が測りづらいんだ。そういう気分屋な連中は。
それと秋山がアンツィオ高校に偵察しに行った結果、『P40』と呼ばれる重戦車を導入していることが明らかになった。今回はちゃんと事前の連絡はあった。
「さて、今回はどう思うんだ?シャア。」
「はっきり言ってセモヴェンテとP40さえ気を付けておけば負けはしないはずだ。だが、それは向こうも分かりきっていることだろう。カルロ・ヴェローチェによる妨害をどうやって切り抜けるか。それが今回の要所だろう。」
二回戦の試合会場である木々が生い茂る山のようなステージでシャアとそんなことを話していると向こうから車の音が聞こえてくる。
何事かと思っていると薄い緑色を縦巻きパーマにした人物がジープのフロントガラスに足をかけながらやってきた。
「はぁ・・・やはりお前か。千代美。」
シャアが微妙に項垂れた様子でやってきた人物の名前を言った。
知り合いなのか?
「アンチョビだ!!だが、久しぶりだな!杏!あれからちゃんと少しは女の子らしいことしてるんだろうな?」
「多少はな。」
車から飛び降りて開口一番にそんなことを聞いてきた。やはり、知り合いのようだな。俺は初対面だから、中学かそこら辺の知り合いなのだろう。
「ならいいんだ!もし変わってなかったら小山と一緒にまた引きずり回すつもりだったからな!」
「あれは二度とされたくないのだがな・・・。」
「お前がおしゃれに気を使わなすぎるのがいけないんだ!お前は大抵男っぽいものしか着てこなかったじゃないか!ブラもしてないとか前代未聞すぎるだろ!!」
「はぁ・・・それで、何用かね?」
「試合前の挨拶に決まっているだろ!」
そう言うと千代美とーーいやアンチョビだったか。彼女は手にしていたムチをこちらに向けて意気揚々と自己紹介を始めた。
「私はドゥーチェ、アンチョビ!!そっちの隊長は誰だっ!?」
「西住。呼ばれているぞ。」
「あ、はい。」
指名を受けた西住がアンチョビと対面する。
二人が話している間に戻ってきたシャアに俺は質問をした。
「彼女とは知り合いなのか?」
「中学のころにな。戦車道でどこかにスカウトされたことは聞いていたが、まさかアンツィオだとは思わなかった。」
「ちなみに引きずり回しというのは・・・。」
「あれは、あまり覚えていないのだ。気づいたら、部屋には女物の服が袋詰めであった。」
「安心しろ。俺もつい最近同じ目を西住達に遭わされている。」
「・・・・そうか、お前もか。」
二人揃って疲れた目をしているといつのまにかカエサルと、アンチョビが乗ってきたジープの運転手が仲睦まじげに話しているのが視界に入った。
あそこも知り合いだったのか。ただ、カエサルは知り合いとの会話が終わった後思い切りエルヴィン達からいじられていたが。
「全車、前進してください。Panzer vor!!」
試合開始の合図とともに西住が前進の指示を出す。大洗の車輌は山間にある山道を進んでいく。
「は、始まった・・・・!!」
「や、やっぱりゲームとリアルは違うなもし・・・。」
「相手のCV33は豆戦車って呼ばれててほとんどゲームだと勝てない戦車だぴよ・・・。」
「で、でもそれでも数だと向こうのほうが上だし・・・。」
「ど、どうなっちゃうんだろ・・・。」
「アヒルさんチームとウサギさんチームは偵察をお願いします。」
『了解です!』
西住が2輌に偵察の指示を出すと隊から離れてそれぞれ右翼と左翼に向かっていく。
「さて、相手はどう出てくるのだか・・・・。」
「麻子さん、まだ偵察も帰ってきてませんのに相手の出方を気にするのは流石に早くないですか?」
「まぁ・・・そうかもしれないがスペックだけを見ても相手がどう出てくるかは案外分かるものだぞ。特にあのCV33はな。」
「確かにCV33は名前に『快速』がつくほどですし、使ってくるとしたらスピードを活かして試合を引っ掻き回すことぐらいですか?」
「それも戦法の一つだ。だが、あるとすれば・・・・。」
俺は頭の中で方法を組み立てながら説明を行う。
「例えば、複数車で履帯を全力で狙ってさっさと逃げるヒット&アウェイ。あとはCV33特有の車体の軽さを利用したゾンビ戦法か?」
「ぞ、ゾンビ戦法!?な、何よそれっ!?」
ゾンビという言葉に反応した沙織が驚いた表情を挙げている。まぁ、理屈は至って簡単なのだがな。
「ゾンビというのは言葉の綾だ。車体が軽いということはある程度以上の衝撃を受ければすぐ吹っ飛ぶ。だがそれは逆に言うと余計な衝撃は吹っ飛ぶことで受け流すことができる。仮に砲撃を受けて車体が転がっても高校生が二人もいればすぐに車体は元に戻せて試合に復帰できる。衝撃を受け流しているから大したダメージもないからな。
落ち着いて鑑みれば分かることだが、何も知らない者が見ればはたまたそれはゾンビのように見える。」
「な、なるほど・・・・。え、それじゃあCV33を倒すにはどうしたらいいの?」
「ウィークポイントを的確に狙って走行不能にしてやればいい。某ゾンビゲームでも頭を撃ち抜けば大抵の敵は倒せる。だが、流石にそこは分からないから西住頼りになるがな。」
『こちらウサギさんチーム、山道の合流地点の左にセモヴェンテ2輌とCV33を4輌確認!』
山道の合流地点の左に6輌か。となると右にもいるか。数のバランスが悪い気もするがP40が右側にいるのであれば火力的な面はカバーしきれる。となるとちょうど道の合流地点で袋叩きにする作戦か。
『こちらアヒルさんチーム!山道の合流地点の右にセモヴェンテ2輌とCV33が3輌見えました!』
・・・おかしい。その報告の通りだと敵のフラッグ車であるP40を入れれば向こうは11輌だぞ。いや、使っていないという路線もあるが・・・。
「秋山、二回戦も戦車の数は10輌までだったよな。数が合わないんだが・・・。」
「は、はい。そうですけど・・・。もしかして向こうは何かしらの不正を・・・?」
「・・・・西住、会長に聞いてみてほしい。アンチョビはああいうことをするような人物かと。」
「そうですね・・・。聞いてみます。」
西住は通信機を手にとってシャアの乗る38tに連絡をとる。
「会長、少し聴きたいことがあるんですが・・・。」
『どうかしたか?藪から棒に。』
「えっと、アンチョビさんはズルとかそういうことをする人ですか?」
『いや、そういうことは好まないはずだ。中学の頃によくあいつの作戦に口を出していたが、ルールに反するような手を使おうとしたことは一度もなかった。』
「そうですか・・・・。それなら会長はこれをどう思いますか?」
『・・・そもそもの話、数が規定数を上回っているのであれば審判団が即刻中止のサインを出すはずだ。だが、それがない。ということはあれは偽物だ。』
「っ!!分かりました。ありがとうございます!」
「ウサギさんとアヒルさんは攻撃を開始してください。その戦車は偽物です。」
『に、偽物なんですかっ!?』
「その可能性が高いです。」
『わ、分かりました!あや、あゆみ、撃って!!』
偽物か。確かに仮に数が規定数からオーバーしているのならすぐに審判団から中止の指示が下るだろう。
『こ、こちらウサギさんチーム!!やっぱり偽物でしたぁっ!!』
『こっちも同じですー!!見えていたものはパネルでしたー!!』
パネルか・・・。となると前方にいるはずの本隊はどこに・・・。
「・・・まさか、後ろか?」
俺がそんなことを呟きながら後ろを振り向くと西住は何か閃いたのか通信機に指示を飛ばす。
「アヒルさんとウサギさんはそのまま道なりに進んでください!」
「相手の出方が分かったのか?」
「いえ。ですが、次の報告次第で相手がどういう行動を取ろうとしているのかはっきりさせることができます。」
ふむ、西住がそういうのであれば気長に両チームからの報告を待つとするか。
すると程なくして両チームからの報告が通信機に入った。
『こちら、アヒルさんチーム!CV33を5輌見つけました!!』
『ウサギさんチーム!セモヴェンテを2輌見つけましたけど、間違えて砲撃してしまいました。ごめんなさい!』
それを聞いた西住は地図にそれぞれ右と左に大きく迂回した矢印をつけた。
その矢印は最終的に俺たちの背後を取る形になっている。
「相手の出方が分かりました。おそらくあのパネルで足止めを受けている間に背後から強襲、逃走したところを待ち構えているP40やセモヴェンテで全周包囲をするつもりです。おそらく、それぞれ西と東に方向転換をした時がそれの合図だと思われます。」
「ふむ、両チームはそのまま追跡させるとして、私達はどうするんだ?」
「あんこう、カメさん、カバさんはこのまま直進します。」
そうだな。それが一番いいか。左舷にCV33が5輌、右舷に2輌だとすれば、フラッグ車の周りにいるのは2輌か。ある意味好機か。
「了解した。このまま直進でいいんだな?」
「はい、お願いします!」
「それと西住、アヒルさんチームにCV33のウィークポイントを教えておいてくれ。」
「あ、そうですね。分かりました。」
西住の指示通りにそのまま直進する。少し道なりに進んでいくと進行方向から複数人の気配を感じた。
・・・当たりか。
「華。砲塔を右に回しておいてくれ。」
「え・・・・?はい。分かりました。」
華は俺の指示に従ってくれて砲塔を右に旋回させる。
その様子に西住が疑問の表情を浮かべる。
「華さん?どうかしたんですか?」
「えっと、冷泉さんが砲塔を回しておけと・・・。」
「西住は発射のタイミングを頼む。そろそろ敵と接触すると思う。」
「そうなんですか?」
西住はそういうとキューポラから顔を覗かせる。
少しすると、焦った様子で戻ってきた。
「ほ、本当です!!華さん、すれ違いざまに砲撃をお願いします!」
「わ、分かりました!!」
「ほ、本当に向こうから来たんですかっ!?」
「なんで分かっちゃうの、麻子!!」
「・・・普通に覗き穴から見えたからな。」
本当はニュータイプとしての能力を使ったがな。
そして、程なくしてアンツィオのフラッグ車であるP40が俺たちの車輌群とすれ違った。P40の周りにはセモヴェンテとCV33が1輌ずつ走っていた。
「華さん、撃ってください!!」
「撃ちます!!」
すれ違いざまに撃った華の砲弾はーーP40には当たらなかった。やはり行進しながらの砲撃では命中率は激減するか。
「申し訳ありません。外してしまいました・・・。」
「行進間射撃でしたので仕方ありません。冷泉さん、斜面を下ってください。」
外してしまったのであれば仕方ない。とりあえず西住の指示に従い、すぐそばの斜面を下る。シャアの乗る38tや向こうのP40もついてくるがこちらの最大火力であるⅢ突はセモヴェンテに足止めされてしまった。
『西住君、Ⅲ突がセモヴェンテに足止めされてしまった。2輌で片をつけるしかないぞ。』
「大丈夫です!!ひとまずこのまま斜面を下ってください!!冷泉さん、カメさんチームの左につけてください。私達が盾になります!」
「了解した!」
アイツの盾になるのは少しばかり癪だが・・・。
まぁ、いいか。シャアの38tは今回もフラッグ車だからな。
最終章、見たいですか?(モモチャンズリポートのあとがき要参照)
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