冷泉麻子、行きまーす!!   作:わんたんめん

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うーん、皆さんの期待に応えられているか微妙っすね・・・。

あ、ちなみに処刑BGMはIGLOOの『進出ス!』辺りがいいかもしれないです。
それと、そろそろ戦車がおかしい機動をしはじめますが、アムロとシャアだから、ないしはガルパンだからと思ってください(白目)


第30話

「さてと、ここら辺が正念場か。今更手を抜くつもりはないだろうな?シャア。」

 

河嶋は俺とシャアの幼馴染設定を聞いているからな。ある程度は気を使わずにシャアに話しかける。

 

「無論だとも。未来ある若者達の萌芽を摘ませんためにも全力を尽くすさ。」

「会長・・・。年寄り臭い発言ですけど・・・。それはそれとして、私はこちらで良かったのでしょうか?」

「桃は装填にだけ集中してくれ。それ以外のことは考えなくていい。麻子の運転が荒くならざるを得ないからな。」

「わ、分かりました。」

 

シャアの言葉に河嶋の顔に気合いの入った表情が映る。

俺はそれを見届けると通信機に口を当てる。

 

「西住、こちらの準備が完了した。前進のタイミングは任せる。」

『分かりました。・・・・・あの。』

「どうした?」

『ケガ・・・しないでくださいね。冷泉さんがケガしちゃうと、私・・・。』

「心配なのか?戦車道で扱う戦車は特殊なカーボンで覆われていて、安全は保証されていると聞いているのだが・・・。」

『そ、それでもです!!』

「そこら辺は安心してくれ。適当に時間を稼いだら、そちらに合流する。できないことはしないさ。」

『・・・お願いします。』

 

西住との通信を終えると一つため息を吐いた。

やれやれ、疑われるようになってしまったな・・・・。

困った顔をしながら髪を掻き分けているとーー

 

「彼女はお前のことが心配なのだよ。そう変な表情は止した方がいい。」

「・・・・勝手に表情を読まないでくれないか?」

『では、作戦開始します!パンツァーフォー!!』

 

シャアにジト目を向けていると西住から作戦の開始を合図する指示が飛ぶ。

俺はⅣ号で大洗の先陣を切る。建物から顔を出し始めた瞬間に待ち構えていたプラウダの戦車から砲撃が飛んでくる。砲撃は苛烈を極めたが、大洗の車輌には当たることはなく、一度、包囲の一番薄いところへ向かうーー

 

「ふふっ。やっぱり包囲の一番薄いところへ向かったわね。」

 

と思わせて、操縦桿を右へきって一番包囲の厚い真正面へと向かう。

 

「ちょっ!?馬鹿なの!?一番厚いこっちを狙ってくるなんて!!」

 

フェイントには、引っかかってくれたようだな。カチューシャの驚いた表情がわずかに見えた。

 

「シャア、まずは包囲に穴を開けるぞ。」

「了解だ。」

 

そう言ってシャアはⅣ号のトリガーを引く。放たれた砲弾はカチューシャの近くにいたT-34/76に直撃し、白旗を上げさせる。

 

『包囲に穴が開きました!各戦車はⅣ号に続いてください!!』

 

西住の指示のもと、包囲の第一陣を通り抜ける。

あとは奥に控えている第二陣だが、これを俺たちは抑えるなり、撃破しなければならない。どう切り崩そうか・・・。

 

「やったわね!!クラーラ!!なんとしてでも止めなさい!!!!」

『了解です。カチューシャ。』

 

プラウダの包囲網を突き進んでいると前方から戦車のマズルフラッシュが四つほど確認できた。プラウダの第二陣が攻撃を仕掛けてきたか。

 

「西住、敵の第二陣が見えてきた。私たちは隊列から外れて迎撃を行う。敵のフラッグ車は、任せた。」

『はい。冷泉さんたちも気をつけて。』

 

その言葉を皮切りに俺たちを除いた大洗の車輌が右方向に進んでいく。

しばらく通信機はいらないな。そう思って通信機を取り外そうとするとーー

 

『こちらカバさんチームだ。武運長久を祈る。』

『冷泉センパイ!!お気をつけて!!』

『冷泉さん、最後まで根性です!!』

『アンタ達がやられたら私達、結構まずいんだからね!!』

『が、頑張って・・・・!!』

 

各戦車から応援の言葉が聞こえてくる。まったく、こちらのことは気にしなくていいというのに・・・・。

 

「ふっ。みんなからだいぶ好かれているではないか。」

「嫌われているよりはよっぽどマシだがな。さて、こちらも始めるぞ。準備はいいな?」

 

通信機を外しながら後ろを振り向くと意を決したシャアと河嶋の顔があった。

それを見届けた俺は前を見据える。目標は4輌全ての撃破だ。やってみせるさ。

 

「突撃する!!シャア、砲撃タイミングはそっちに任せるっ!!」

「任せておけ!桃、一瞬たりとも気を抜くな!!」

「はいっ!!」

 

俺はⅣ号のアクセルを全開にして、敵の第二陣に突撃する。

 

 

 

 

「敵車輌は、Ⅳ号だけ・・・?囮、いや足止め・・・?」

 

カチューシャ隊長から敵を押しとどめるように命令された。

でも、敵車輌はⅣ号を残して、揃って右へ旋回していった。となるとあれは、足止め、それであっている、はずなのに・・・。

 

「何・・・!?あのⅣ号から出ている気迫は・・・っ!?」

 

あれは、確実にこちらを仕留めるつもりなの・・・っ!?

あのⅣ号に乗っているのは・・・一体、何者・・・!?

 

 

 

敵車輌はT-34/84と76がそれぞれ2輌ずつ。砲身が長い代物に換装されたⅣ号の火力ならあの装甲を抜くことはできるはずだ!!

 

「まずは1輌、頂く!!」

 

シャアがⅣ号のトリガーを引く。放たれた砲弾は正確にT-34/76を捉え、白旗を上げさせる。

まずは一つ!!

 

「っ!?各車、散開して!!あの戦車をここで仕留めるわ!!絶対にアレをカチューシャ隊長のところに向かわせてはダメ!!」

 

残った3輌はこちらに向かって前に1輌その後ろから2輌が追従する形の陣形を取ってくる。包囲するつもりか?

そう思いながら、T-34/85と76から飛んでくる砲弾を避け続ける。

 

「は、速いっ!?こちらが砲撃した瞬間にはもう照準から外れているっ!?」

 

砲弾の雨を縫うように避けているとシャアが第二射を放つ。

 

「っ!?よ、避けなさいっ!!」

 

しかし、シャアの放った砲弾は今度は直前で避けられてしまう。

 

「むっ・・・。外したか。あのT-34に乗っているのは・・・あの白銀色の髪の女性か。中々やる。」

「そんなことを言ってないで、早く次を撃ったらどうだ?」

「分かっているさ。そろそろ左右から砲撃が飛んでくるぞ。避けれるな?」

「言われずともっ!!」

 

目線は前を向きながらも俺の死角から砲撃をしてこようとする車輌の気配を読んで撃たれる直前に射線から退避する。

 

「そ、そんな、今の完全に死角から撃ったのに・・・っ!?」

 

白金色の髪を持つ女性が驚愕と言った表情をする。相手が悪かったな。死角からの攻撃など日常茶飯事な戦場を戦い抜いてきたのでな。この程度、造作もない。

そのまま砲弾を避け続けながらその女性が駆るT-34/85の目の前まで接近する。

表情には何か企んでいるように見える。何か仕掛けてくるかっ!!

 

「この距離なら・・・!!」

「甘いっ!!」

 

直前まで接近したところに最後の足掻きなのかT-34/85が砲撃をする。だが、その砲弾を読めていた俺は操縦桿を切り、一瞬だけドリフトし砲弾を回避、T-34/85の真横につける。

 

「流石だなっ!!」

 

シャアがそういいながらトリガーを引いて、T-34/85を仕留める。

その仕留めたT-34/85が分隊長だったのか、残りの2輌は狼狽えるような反応を見せる。悪いが後の懸念となりそうなものは撃破させてもらう。

俺達は速攻でその残った2輌を片付けた。

 

 

 

 

「そ、そんな・・・クラーラがやられちゃったのっ!?」

「はい、敵のⅣ号に一発も当てることが出来なかったそうです。」

 

クラーラはロシアから留学してきた外国人よ・・・!!実力は分かっている。そのクラーラが手も足もでなかったなんて・・・!!あんな弱小校にあんな強いやつがいたなんて・・・!!

 

「カチューシャ、おそらくそのⅣ号を動かしているのは、冷泉 麻子でしょう。」

「・・・アイツね。あの妙に大人ぶったような目をしていたやつ!」

「はい。彼女は我々にとって一番の脅威となりうる存在・・・。私がここで仕留めます。」

「・・・・ダメよ。ノンナはここで向こうのフラッグ車を狙って。ここであのフラッグ車を仕留めるわ。」

「・・・よろしいのですか?」

「はっきりいって博打だわ。クラーラを含めた4輌を瞬殺しちゃう相手なんて、ノンナ一人だと難しいと思う。まぁ、勝てるとは思うけど、わざわざそいつを倒さなくても先にこっちが仕留めれば勝ちなんだから。」

「・・・あなたがそういうのであれば、私は従うだけです。」

「お願いね。」

 

 

 

 

 

「こちら、Ⅳ号だ。西住。そっちは今どうなっている。」

『よかった!なんとか倒したんですね!』

 

一段落ついたため西住に判断を仰ごうと通信を入れると嬉しそうな西住の声が耳に入る。まったく、こちらまで表情が緩くなってしまいそうだ。

とりあえず西住から状況を訪ねるとフラッグ車を捜索するために38tとⅢ突はこちらのフラッグ車であるアヒルさんチームから離れたとのことだ。

 

「それで私達はアヒルさんチームの援護に向かえばいいんだな?」

『はい、お願いします!もう少し・・・もう少しだけ時間を稼いでもらえたら・・・!!』

 

西住の切羽詰まった声からももう少しでフラッグ車を発見、ないしは撃破が出来ることを察する。ならば、俺たちは西住の指示通りにアヒルさんチームの援護に向かうべきだと考え、Ⅳ号をアヒルさんチームのいる方向へと向けて走り始める。

 

「よし、ならば急ぐぞ。こちらのフラッグ車は既に射程に捉えられている可能性が高い。」

 

シャアの言葉に思わず操縦桿を握る手に力が入ってしまう。

急がないとまずいかもな・・・!!

 

「時間との戦いか・・・。」

「ま、間に合うんですか?」

「間に合わせる!!行くぞ!!」

 

俺は1秒でも速く援護に向かうため、Ⅳ号のスピードを上昇させる。

保ってくれよ・・・っ!!

 

 

 

 

「っ・・・・!!キャプテン!あと私たちしかいません!!ほかの車輌はみんなやられちゃいました!!」

 

私たちの周りを守ってくれていたカモさんチームやアリクイさんチーム、それにウサギさんチームはみんな自分達を庇ってやられてしまった。もうあとはない。

相手の砲撃は正確無比、必殺必中そのもので、はっきり言って、避け切れる自信はない。河西の声にも不安な声色になっている。でもーー

 

「まだ諦めちゃダメ!!ここで私達がやられたら、バレー部どころか学校がなくなっちゃうんだから!!ここが私達にとっての東京第1体育館、もしくは代々木体育館!!気持ち上げていくよー!!」

『はいっ!!』

 

 

まだ終わるわけには行かないっ!!私はまだみんなと一緒に居たいんだから!!

 

「河西、ガンガン行くよー!!相手の砲撃がなんだっ!!そんなの殺人スパイクと比べたら、屁でもないでしょっ!!」

「分かっていますっ!!」

 

河西の操縦はプラウダからの砲撃を掻い潜っていく。衝撃とかが体を揺らすけど、その程度でビビってたら、どうしようもない。

でも、それも少しの間だった。

ふと視線をプラウダの方に向けるとちょうど1輌の戦車、確か、『IS-2』がこちらに砲塔を向けているのが見えた。

 

(やば―――。これ、避けられない?)

 

直感的にそう察してしまった。それほどに相手の技量はとんでもないものだった。そして、IS-2の砲塔が火を吹いた。その瞬間の光景はなぜかスローモーションに見えて、飛んでくる砲弾も見えてしまった。この砲撃は確実に当たる。ここまでかーー。

 

 

『アヒルさんチーム、よく頑張った。後は私たちが引き受ける。』

 

待ち望んでいた声が通信機から聞こえた瞬間に、八九式の目の前で爆発が起きた。

一瞬何が起こったのか分からなかったが、視界に入っていた別方向からの砲弾を思い出した時、察したと同時に戦慄してしまった。あの人達は味方であるはずなのにだ。

 

「まさか、砲弾に砲弾を直撃させた・・・?」

 

でも、今はそんなことはどうでもいい。何より来てくれたことが嬉しかったから。

 

「会長!!それに冷泉さんも!!間に合ったんですね!!」

『無事のようで何よりだ。ここは任せてくれ。アヒルさんチームは後退を。」

「はいっ!!でも、大丈夫なんですか?あの数を相手に・・・。」

『できないことはやらないさ。早く行ってくれ。すぐに攻撃が再開されるぞ。』

 

冷泉さんからそう言われ、河西にこの場からの離脱を指示する。

離脱している最中にもプラウダからの砲撃は相次いでいたけどーー

 

 

 

 

「それ以上はやらせんよ。」

 

シャアが八九式に砲撃をしていたT-34/76を一撃で行動不能にさせる。

その間にも八九式にも砲撃は向かっていたが、なんとか有効射程圏内から脱することはできた。

次第に砲撃はこちらへと向いていった。

 

「アムロ、あのIS-2はかなり厄介だ。できれば最優先で狙って欲しい。」

「了解だ。正面から履帯を破壊することはできないのか?」

「あのIS-2は装甲、火力共々、T-34を上回る。この改装されたⅣ号でも正面きっての戦闘は難しい。側面からであれば、後は私がなんとかする。」

 

シャアの言葉に理解を示して、俺は操縦桿を操作して砲撃を回避する。

 

「っ・・・!!なんていう馬鹿みたいな機動力なのよ!!こっちの砲弾が一発も当たんないじゃないっ!!」

「いえ、それは違います。あれはどちらかというとこちらの射線を見て回避行動を取っています。」

「はぁっ!?そんなとんでもないやり方で避けているのっ!?」

「はい。彼女らは一筋縄では行かないことはお分かりでしょうが。」

「それは・・・分かっているわよ。どう見たってあのⅣ号、真面目にここでカチューシャ達を押しとどめるみたいだし。」

 

視線を向けるとⅣ号が放った砲撃がT-34/85を撃破していた。

これで、あとはカチューシャとノンナだけってわけね。

 

「さっさとコイツを潰して、フラッグ車を叩きに行くわよっ!!」

「了解です。」

 

 

(・・・・あのⅣ号、砲弾に砲弾をぶつけてきた・・・。そんな神がかり的な技量、今の私にはありません。私はあのⅣ号に勝てるのでしょうか?)

 

 

 

「どうやら向こうはここで私達の相手をするようだ。まだ狙いに行ってくれた方がやりやすいのだがな・・・。」

「それはそれだ。どのみちやることは変わらんよ。桃。まだ行けるな?」

「は・・・はひっ・・・・。」

 

・・・大丈夫か?彼女。かなり顔面蒼白だが・・・。まぁ、いいか。

俺は視線をプラウダの2輌に向ける。残っているのは隊長のカチューシャが乗っているT-34-85とIS-2。まずは比較的手頃なT-34から倒しておきたいところだが・・・。IS-2が守るように配置についてしまっているため、砲撃が通らない。

だが、懐に入り込めば、まだなんとかなるか。

 

「懐に飛び込む。砲撃の準備を頼む。」

 

俺がそういうとシャアはアイコンタクトで河嶋に装填をさせる。

とりあえず、T-34から狙うか。

そう思い、前進させる。IS-2から砲撃が飛んでくるが、そこで一点、気になることがあった。

 

(T-34からの砲撃がないな。IS-2と一緒になって撃ってくると踏んでいたが―――)

 

視線をIS-2の先にいるT-34に向けていると、IS-2の陰からT-34が飛び出してきた。砲塔を見ている限り、狙っているのはⅣ号の比較的右側。

これを左に避ければいいがーー

 

(本命は、装填が済んだIS-2の砲撃か。中々いいコンビネーションだ。)

 

IS-2の砲塔が俺が避けようとした先の左方面に向けられている。おそらく避けたところを狙っているのだろう。そして、狙いは右側の履帯。Ⅳ号の機動力をなくすつもりか。

ならばーー

 

「シャア、砲塔を右に回しておいてくれ。それと砲身は地面に向けてくれ。」

「なるほど、相手を釘付けにさせるにはいい手かもしれんな。いいだろう。」

 

シャアが砲塔を右に旋回させる。その瞬間、T-34から砲弾が飛んでくる。

それを俺は左に避けることで砲弾をやり過ごし、再度IS-2と正面で相対する。

そして、IS-2からの砲撃はーー

 

「シャア、頼んだぞ!!」

 

シャアが地面に向けていた砲塔に火を吹かせる。

砲撃の衝撃と風圧が合わさった力はⅣ号の右側のキャタピラを浮かせる。ちょうど、浮かせたタイミングで右の履帯の真下をIS-2の砲弾が通り過ぎていった。

 

「う、嘘でしょっ!?」

「っ・・・!?読まれていた・・・!?」

「狙いは正確だが、もう少しフェイントを織り交ぜた方がいいな。」

 

キャラピラが片方浮いた状態でそのまま片輪走行をする。とはいえ、片輪では方向転換がままならないし、装填もまだ済んでいないため、プラウダの2輌のそばを通りすぎ、回り込む程度にとどめておく。

浮いていたキャタピラを地面につけると、装填が完了したⅣ号の砲塔が再度火を吹いた。砲弾は対応が遅れたT-34/85の後部装甲に直撃し、白旗を上げさせる。

 

「や、やられちゃったのっ!?」

「残りはIS-2だけだ!!このまま仕留めるぞ!!」

「アムロ、はっきり言って、残弾は残り1だ。」

 

シャアの突然の発言に思わず驚く。何があったのかと問い詰めようとするとー!

 

「桃がダウン寸前だ。やはり彼女には少々荷が重かったようだ。」

 

顔面を真っ白にして、口に手を当てている河嶋の姿があった。

しまった。河嶋のことを一切考えていなかった。俺の運転についてこれなくなって酔ってしまったようだ。

 

「どうする?側面から叩くか?」

「いや、このまま直進でいい。ゼロ距離射撃を試みる。」

 

ゼロ距離射撃か。それであればいくらIS-2でも前部装甲は確か120mm。聖グロのチャーチルよりは30mmほど薄い。まだなんとかなるかもしれないな。

向こうもやる気なのか、俺たちと少し距離を取ったあと、反転して突っ込んできた。近距離戦闘に持ち込ませるつもりか。

 

「わかった!操縦は任せてくれ!!一発あれば十分だな!?」

「ああ。頼んだぞ。」

 

突っ込んでくるIS-2に向かって、Ⅳ号も突撃させる。その間、両方ともに砲撃は一度もなかった。どうやら向こうも一撃で俺たちを仕留めるようだ。

状況としてはこちらの方が不利だ。河嶋がダウンしてしまっている以上、これ以降の砲撃は見込めないし、向こうの方が全体的に性能は上。ここで仕留め損ねたら、こちらの脱落は否めないだろう。だいぶ時間は稼げたと思うが、出来ればここで仕留めて、勝利を確実のものにしておきたい。

 

「ん?シャア、何をしているんだ?」

「砲塔を旋回させている。」

 

そこまで考えたところでシャアがⅣ号の砲塔を右に回しているのが見えた。

何をやろうとしているのかは、まぁ、察せた。俺は呆れた視線を向けながらIS-2に向き直る。

 

「正面衝突するが、それで意識が飛んだなんて言うなよ。」

「愚問だな。遠慮なくやってくれ。」

 

そして、一種のチキンレースと化したこの一騎打ち。Ⅳ号とIS-2が衝突しかけたその瞬間ーー

 

「ここだな!!」

 

シャアが一気に砲塔を回転させる。遠心力がついたⅣ号の砲塔はIS-2の砲身を正確に捉え、野球のバットのように吹っ飛ばした。

そして、直後に砲撃音と衝撃音が鳴り響いた。衝撃でⅣ号の中で振り回されるが、なんとか無傷でやり過ごした。

そして、肝心のIS-2はーー白旗を上げていた。

 

『IS-2、T-34/76、戦闘不能!!よって、大洗女子学園の勝利!!』

 

どうやらちょうどいいタイミングで西住達が敵のフラッグ車を仕留めたようだな。

 

「見事な操縦だった。流石だな。未だ技量は衰えず、と言った具合か。」

 

そういいながらシャアが拳を突き出してくる。俺は軽く笑みを浮かべながらその拳に拳を突き合わせた。

お互いらしくないことをするもんだ・・・。ある意味戦車道をやらねば、奴とここまですることはなかったかもな。

 




とりあえず、プラウダ戦、完結です。
だいぶ駆け足気味だけど、OVAのあたりとか出してみようかな・・・・。

最終章、見たいですか?(モモチャンズリポートのあとがき要参照)

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