あ!やせいのユリィが あらわれた!!
でも過度な演出はないよ!!残念だったな、トリックだよ。(意味不明)
「ま、待て、西住。一緒に寝てほしい、だと?それはつまりここに泊まるということだな?荷物や寝間着はーー」
「全部これに入れてきました!!」
なんとか西住を考え直そうとさせるが、どうやら正攻法で対処されることは織り込み済みなのか、パンパンに膨れたカバンを出してくる。
だが、それでも年頃の女の子と一つ屋根の下で寝るのはな・・・。
良心の呵責というものがある。
「とはいえな・・・。そもそも、なぜ突然私と一緒に寝たいなどと・・・。」
「ダメ・・・ですか・・・・?冷泉さんの前なら、隊長としてじゃなくて、自分としていられるんです・・・。沙織さんや華さん、信頼できる人はたくさんできたけど・・甘えさせてくれるのは、冷泉さんだけなんです・・・。」
俺が訝しげな感情をしながら困った顔をしていると、西住が微妙に熟れた視線で上目遣いをしてくる。
「やっぱり・・・ダメですか?」
「・・・・ったく・・・。わかった。」
俺は、その視線に情けないながらも折れてしまった。
ため息をつきながら承諾すると西住はとても嬉しそうな表情を挙げた。
俺なんかと一緒に寝てなにが楽しいのだか・・・。
「なら、布団をもう一式出さねばならないな・・・。あったか・・・?」
「えっ・・・?布団、出しちゃうんですか?」
「当たり前だろ。まさかとは思うが、一枚の布団に二人入るつもりか?狭いだけじゃないか。」
冗談を言いながら襖の奥にある布団を引っ張り出そうとすると、なぜか西住は頰を膨らませて、無言で抗議してきた。
まさか、先ほどの冗談を本当にするつもりか・・・・?
・・・・もしかしたら・・・。
「西住・・・。この前付き添いで寝た時に味を占めたな?」
俺がそういうと西住はあまり悟られたくないことを知られたのか顔を真っ赤にした。
やはりか、つまり西住は俺に添い寝を求めてきたのだ。
できればお断りしたいのだがな・・・。
そう思いながらも布団を出す手を止めているとーー
「・・・・・。」
西住が顔を真っ赤にしながらも再度、頰を膨らませている様子が目に入った。
あれはもうテコでも動かないな・・・・。はぁ・・・・。こちらが折れるしかないか・・・。
「今日だけだぞ・・・。とりあえず、風呂はまだ暖かったはずだから入ってくるといい。」
そういうと西住は表情を輝かせながら、風呂へと向かった。
さて、俺は寝間着に着替えるか・・・。流石に男物の下着を履いていることが見つかったら、何を言われるかわからないからな・・・。
そう考えながら着ていた制服を脱いで、寝間着に着替えようとするとーー
「あ、冷泉さん、バスタオルはどこーー」
・・・・西住が、戻ってきてしまった・・・・。
よりによって下着が見えているこのタイミングでか・・・・。
「ご、ごめんなさいっ!!?」
顔を真っ赤にしながら勢いよく襖を閉めた。よし、運がいいのか悪いのかはわからないが、とりあえず窮地は脱したようだ。
「って、冷泉さんっ!!今、どうみたって男物の下着履いてましたよね!?」
「戻ってくるなっ!!」
再度、襖を勢いよく開けて部屋に入ってきた西住に思わずそう叫んでしまう。
一応、既に女性ものの寝間着には着替えたため、大丈夫だと思うが・・・。
「あれ?ちゃんと女性もののパジャマ着てる・・・。」
「・・・・とりあえず、バスタオルだったか?洗面台の上の棚にあるのを使ってくれて構わない。」
「あ、はい・・・。わかりました・・・。」
俺がそういうと西住は今度こそ風呂に向かった。一応、しばらく警戒していたが、風呂の扉が閉まる音が聞こえると、ようやくその警戒を解いた。
「ふぅ・・・・。なんというか、疲れた。」
い、色々ありすぎて、疲れがどっと押し寄せてきた・・・。
とはいえ、西住が俺の家に来た理由はなんとなく察しがついてはいた。
明日の決勝が不安なのだろうな。先ほどは逸見と仲直りすると決心はついていたものの、相手は自身の姉である西住 まほ。肉親が相手などやりづらいことこの上ない。
その上、ここで負ければ、俺たちの頑張りはすべて水の泡となり、大洗女子学園は廃校を迎えてしまう。
一種の板挟み状態になっているのだろうな。
まぁ、そんな状況に置かれてしまえば、誰かに甘えたくなるのは仕方ない。
ただ、本当に何故俺なんだ・・・。秋山あたりでもいいだろうに・・・。
彼女であれば嬉々とした顔で入れてくれるだろうに・・・・・。
西住が風呂から上がってくるまで寝るわけにはいかないため、少しばかりキッチンであることの下準備を始める。
大したことではないがな。少しすると西住が寝間着に着替えて、風呂から出てきた。
「ドライヤーを置いてある。好きに使ってくれて構わない。」
「あ、うん。ありがとう。」
キッチンで下準備をしているとしばらく西住が使っているドライヤーの音だけが響く。その途中、ドライヤーとは別の、下準備を終える音が響いた。
俺はそれを聞くと予め用意したコップに濃い茶色をした粉を入れる。
それに先ほどの『下準備』を入れると、そのコップは甘いチョコレートの匂いが沸き立つ暖かな液体に満ち溢れた。
まぁ、有り体に言うとココアを作っただけだ。下準備の音はやかんが水を沸かした音。
その作ったインスタントのココアを西住に手渡す。
「ココアだ。少々時期的に合わないかもしれないが、リラックスにはもってこいだろう。」
「ありがとう。冷泉さん。」
西住は俺が渡したココアを冷ましながらゆっくりと飲んでいった。
「暖かい・・・・。」
「お湯を使ったからな。暖かくて当然じゃないのか?」
「・・・・冷泉さん。そういうことじゃないんですけど・・。」
ん?違うのか?まぁ、いいか。
とりあえずこれで少しでも気が楽になってくれるといいのだが・・・。
「明日、頑張るぞ。」
「・・・・はい。」
それだけ言うと西住から飲み干したコップを預かり、適当に洗って片付ける。
部屋に戻ってくると西住がもう布団に潜っていた。
俺も部屋の電気を消して、西住と一緒に一枚の布団に入り込む。
「おやすみ。」
「おやすみなさい。冷泉さん。」
お互い、布団に入り込むとそのまま睡魔に襲われて意識が暗転ーーすることはなかった。
何故か妙に西住が忙しない様子で布団の中で蠢いているから寝るに寝られない。
「・・・・寝られないのか?」
「ふぇっ!?お、起きてたんですか・・・?」
「・・・・一緒の布団に入っている中でモゾモゾと動かれればいやでも耳に入るからな。」
「ご・・・ごめんなさい。」
そう言って、西住は微妙に申し訳無さげな表情をしてしまう。
・・・・まぁ、今日一日だけだぞ。
心の中でそう思いながら、俺は西住の手を握った。
「れ、れれれ、冷泉さんっ!?」
「今日だけだからな。」
そういいながら西住に微笑みかけると、西住は顔を真っ赤にしながら小さな声でありがとう、といった。
「不安は尽きないだろうが、君はいつもどおりのことをやり通せばいい。微調整は私や他のみんなでやるからな。」
「・・・・はい!」
そして、そのままその夜は過ぎて行き、朝日が昇った。
すんなりと起きれた俺と西住は手早く朝食を済ますと、身支度を整えた。
「さて、行くか。」
「はいっ!!」
決勝戦が行われる会場には列車で向かうことになっている。
貨物スペースに戦車を乗せて、俺たちは乗客用の車両に乗った。
電車の中では皆、変に緊張した様子はなく、風景を楽しんだりと思い思いの過ごし方をしていた。
そして、決戦の場である草原へとやってきた。付近では決勝戦ということもあるのか、屋台や戦車の展示会などで観客が賑わっていた。ちなみにここは富士山が見える場所だが、この前教官の厚意で訪れた『東富士演習場』とは違う場所のようだ。
あんこうチームの皆で少し風景を見ていた。秋山がここは戦車道の聖地と言っていたが、結局どこなんだ?ここは。
まぁ、それはそれとして、俺たちは戦車の最終チェックに入っていた。
履帯、転輪といった駆動系などを入念にチェックしておく。途中で故障などしたら目も当てられないからな。今回Ⅳ号がフラッグ車を務めるためなおさらチェックに力が入る。
「ん?ここ、少し破断しかけているようだな・・・・。」
「あー・・・。やっぱり気づかれちゃうか・・・・。」
ふと操縦席のハッチに視線が向かった。ハッチの接合部に少し亀裂が入っていた。
特に駆動系には関係ないからそのまま見逃そうとしたが、ナカジマが申し訳無さげな顔で近づいてきた。
「実はそこ、昨日見つけたんだけど、時間がなくて手が回らなかったんだ。ごめんね。」
「・・・いや、気に病む必要はない。ポルシェティーガーに掛り切りだったのだろう?」
「まぁ・・・・。そうだね。言い訳みたいで不甲斐ないけどね。」
「とんでもない。むしろ自動車部には感謝してもしきれない。これまでの礼として今度、またケーキを買ってくるよ。何かリクエストはあるか?」
「そうだねぇ・・・。とりあえず、試合に勝ってからにするよ。」
「それもそうか。わかった。」
そこまで話したところで、俺はナカジマから視線を外に向けた。
ちょうどそこにはダージリンにケイ、それにカチューシャと、これまで試合をしてきた相手の隊長が激励に来てくれていた。わざわざ俺にも激励をしてくれるというおまけつきでだ。
・・・・そういえば、アンチョビだけ見当たらないな。思い返してみるとアンツィオの生徒も屋台で一人も見かけなかった。万年金欠なアンツィオがこんな機会を逃すとは思えない上、アンチョビ自身があれだけ応援すると言っていたが・・・・。
試しに電話をかけてみるか。
俺は携帯を取り出して、アドレス帳からアンチョビに電話をかける。
長いコールの後、出ないと思ってそろそろ切ろうかと思った瞬間ーー
『んー・・・?おおー、冷泉かー。どしたー?』
コール音が途絶え、代わりに聞こえてきたのは寝ぼけ気味なアンチョビの声だった。寝起きのところだったか?
「いや、すまない。寝ていたところを起こしてしまったみたいだな。」
『まぁ、寝てたけどーーー』
その言葉を皮切りに電話からアンチョビの声が聞こえなくなった。
何かあったのだろうか?そう思っているとーー
『な、なぁ・・・。冷泉。今何時だ?』
「時刻か・・・?確か、9時を回ったころだと思うぞ?」
時計を軽く確認しながらそういうと、アンチョビは携帯越しでも感じるほど焦った様子で話し始めた。
どうやらアンツィオは既に昨日から現地入りしていたのだが、調子に乗って宴会を始めてしまい、皆潰れてしまったらしい。
アンツィオらしいというか、なんというか・・・・。
『いやー、危なかったー!!資金を稼ぐにまたとない機会を逃すところだった!!ともかく!起こしてくれてありがとな!!それと西住に伝言!!決勝、頑張れよ!!』
それだけこちらに伝えてくると、アンチョビは携帯の通話を切った。
「麻子ー?誰と電話してたの?」
「いや、これまでの対戦校の隊長が来たが、アンツィオだけ来なかったからでない覚悟でアンチョビに電話したら、彼女ら、この辺りで前日から夜通し宴会して、先ほどまで寝ていたようだ。」
「アハハ・・・。アンツィオらしいというかなんというか・・・。」
沙織に通話相手を聞かれたためそう答えると沙織も苦笑いを浮かべてしまう。
さて、アンチョビの伝言を伝えに行くか。
「西住、アンチョビから伝言だ。」
「アンチョビさんからですか?」
「決勝、頑張れよ。とのことだ。」
「・・・・はいっ!!」
西住にアンチョビに伝言を伝えるとそばにダージリンといつも一緒にいるチャーチルの装填手がいた。
一応、顔を合わせたし、挨拶しておくか。
「ダージリン・・・・・さんか。」
一応、年上だから敬称をつけてダージリンを呼ぶと彼女が口に手を当ててクスクスと笑い始めた。
基本、呼び捨てだから非常に言いにくいな・・・。
「ふふ、無理して敬称をつけなくてもよろしいですわ。むしろ、つけない方があなたらしいですわ。」
「・・・本人がそういうのであればそう呼ばせてもらおう。それでダージリンと・・・・すまない。顔は知っているのだが、名前を聞いていなかったな。」
「オレンジペコです。冷泉さんの操縦技術にはいつも驚かされてばかりです。黒森峰戦も頑張ってください。」
「あまり期待には応えられないだろうが、頑張るよ。」
なるほど、オレンジペコというのか、彼女。
「わたくしもペコと同じですわ。あなたがどんな奇想天外な操縦を見せてくれるのか楽しみにしてますわ。それでは、吉報をお待ちしてますわ。」
そう言って、ダージリンとオレンジペコは帰っていった。
ちょうどそのタイミングで選手の集合を告げるアナウンスが流れた。
俺たちは集合場所である平原へと向かった。
集合場所に到着すると、黒森峰の生徒が整然と並んでいる様子が目に入る。
かなり規律が厳しいところのようだ。微動だにしないな。
『両チーム、隊長、副隊長、前へ!』
放送がかかると隊長である西住と副隊長のポジションにいるシャアが前へ出る。
黒森峰も隊長、副隊長である西住 まほと逸見エリカが前へ出る。
お互い相対している様子を俺は腕を組みながら傍観していた。
「本日の審判を務めさせてもらいます。蝶野 亜美です。よろしく。」
どこか見覚えのある人物だと思っていたら蝶野教官だったのか。教官が挨拶をすると両隊長格の人物が軽くお辞儀をした。
「両校、挨拶!!」
『よろしくお願いします!!』
さて、挨拶は済ませたことだし、Ⅳ号に戻るか。
Ⅳ号に向けて、歩を進ませようとした時、西住に黒森峰の生徒が一人、話しかけている様子が見えた。
少し西住と話し込んでいるとその人物は嬉しそうな表情をし始めた。俺は西住と話している人物について少しばかり考察を始めた。
黒森峰で西住と仲が良かったのは、姉と逸見エリカだ。その二人以外、特に交友関係は薄かったはずだ。
となると、彼女には何かしらの接点があるはずだ。あるとすれば・・・・前回の戦車道全国大会の決勝か?
そう仮定すると、なんとなくだが、読めてきたな。おそらく彼女は滑落した戦車のメンバーだったのだろう。
まぁ、そこまであたりをつけたところで考察はよしたがな。
「西住、そろそろみんな待っている。話し込むのもいいが、ほどほどにな。」
「あ、はい!!」
俺がそう西住に言うと彼女は先ほどまで話していた黒森峰の生徒に別れを告げて、こちらへ駆け寄ってきた。
「さっきの彼女、滑落した戦車のメンバーか?」
「よ、よくわかりましたね・・・。」
「まぁ・・・色々と仮説を立てた上での予想だったがな。それはそれとして彼女、笑顔だったな。君のやったことは間違いではなかったんじゃないか?」
「・・・・本当に正しかったかどうかは今でもはわかりません。だけど、私はただ、チームメートを助けたかっただけだと思うんです。」
「・・・なら、それでいいんだ。ことの善悪など状況や環境によって一変するからな。だが、自分で自分がやったことを後悔だけはするな。」
「・・・・はいっ!!」
おれが言えたことではないけどな・・・。後悔どころか、未練をひきずりまくっていたからな・・・・。
西住の笑顔の傍、俺は内心苦笑いを浮かべていた。
そして、俺はⅣ号に搭乗して、操縦桿を握りしめる。
ここまで来て、負けるわけにはいかない。俺の出せる限りの全力を出させてもらう。
試合開始を告げる打ち上げ花火が上がる。
「全車、パンツァーフォー!!」
「Ⅳ号戦車、
決勝戦の火蓋が切って落とされた。
さて、黒森峰戦、突入です!!
本編もそろそろおわりですなぁー・・・・。
あと劇場版か・・・・見なきゃ(使命感)
最終章、見たいですか?(モモチャンズリポートのあとがき要参照)
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見たいです
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見たくないです