冷泉麻子、行きまーす!!   作:わんたんめん

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最近めっちゃ筆の進み方がえぐいなぁ・・・・(白目)


第35話

「冷泉さん、前進してください!」

「わかった!」

 

エンストを起こしたM3とほかの車輌をワイヤーで繋げるとV字の陣形を組みながら、川を横断していく。シャアからの通信の通り、俺たちが通ってきた背後の小高い丘の上で土煙が上がっている。

このままでは狙い撃ちにされるな・・・。

 

『エンジンかかったぁ!!』

 

通信機から桂利奈の声が響いた。なんとか浅瀬まで来れたからエンジンが再始動してくれたか!

 

「各車、ウサギさんと歩調を合わせてください!」

 

西住の指示に従ってM3の進行速度に合わせて川の中を進行する。

そして、全車輌が川を横断しきった瞬間、背後で大爆発が起こった。

射程圏内に捉えた黒森峰が砲撃を開始してきたのだ。

 

「間一髪、と言った具合か。」

「よ、よかったぁ〜。」

 

背後の爆発を気にしながらそういうと沙織が脱力した声で安堵の表情を浮かべる。

 

「冷泉さん、このままカメさんチームと合流して市街地へ向かいます。」

「了解した。市街地だな。」

 

黒森峰の砲火にさらされながらもなんとか森の中へ身を隠しながらシャアたちカメさんチームとの合流地点である橋まで進んでいく。

 

「どうやらそちらも無事のようで何よりだ。」

「会長。陽動役、ありがとうございました。」

「構わんよ。むしろ、これから本番だ。そうだろう?」

 

シャアの言葉に西住が険しい表情をしながら頷く。敵の攻撃は整った状況では比類ないレベルまで達する。整った状況で真価を発揮するのであれば満足にそれが出せない状況下で戦うしかない。市街地戦はそれに持ってこいだ。広い空間はそれほど存在しない以上、黒森峰は遊兵を出しながらこちらと戦わざるを得ない。

つまり、数の優位性が失われるという訳だ。まぁ、完全になくなるという訳ではないがな。

 

「しかし、これからどうするんだ?私たちにはフラッグ車をピンポイントで狙うしか勝ち目がないが・・・。」

 

疑問を浮かべながら西住にそう尋ねるとマップのある一点を指差して説明を始めた。

西住が指差した場所は廃校舎の中庭のような場所だ。その建物をよく見ると出入り口が一箇所しかない。つまりここをどうにか封鎖してしまえば、この建物の内部に入ることはできなくなる。

 

「ここにフラッグ車を誘い込んで一対一の状況を作ります。」

「タイマンを張るのか。まぁ・・・そこにたどり着くまでに何輌やられているかわからない以上、頭数の少ないことの影響力を鑑みればそうなるか。」

「冷泉さんには苦労をかけるかもしれませんが・・・。」

「西住、私は君の指示についていくといったはずだ。今更苦労など、気にすることはない。君は君のやりたいようにやってくれ。私が必ずそこまで連れて行く。」

 

西住の言葉を途中で遮りながらそう伝える。すると西住は軽く笑みを浮かべた。

 

 

「・・・・そうでしたね。ごめんなさい。各車は市街地に向かってください。」

 

西住が通信機に声をあてているのをみながら、操縦桿を握る。

順番に1輌ずつ橋を渡っていく。そして、最後にポルシェティーガーが渡ったのだが、急加速したかと思ったら橋を落としながら俺たちを抜き去っていった。

 

(・・・・どういう改造を施したんだ・・・?個人的に気になるな・・・。)

 

そう考えながらも程なくすると林道を抜け、舗装された道路を進んでいく。

市街地が見えてくると建物の影から黒森峰の車輌が1輌、顔をのぞかせているのが見えた。

 

「なんかいるが・・・。どうするんだ?」

「・・・・1輌だけなら、撃破に向かいましょう。」

 

市街地へと潜り込んだ車輌、『Ⅲ号戦車』を全車輌で追い始めた。

各車輌が逃げているⅢ号戦車に向けて砲撃を放つが直撃弾は生まれない。

シャア辺りが堕とせると思ったが、どうやらタイミングがいいのか悪いのか微妙なところだったが、ちょうど砲塔を向けたタイミングでⅢ号戦車に角を曲がられてしまい撃とうにも撃てないという状況だった。

そんなこんなで追っているとある路地に入り込んだところで、突然停車した。

・・・・誘い込まれたか?そう思った瞬間、一発の砲撃音と共に『壁』が地響きを轟かせながらⅢ号戦車を隠すように現れた。それは路地を封鎖するとこちらの戦車並みのでかさのある砲塔をこちらに向け始めた。

 

「・・・・・でかいな。装甲も重戦車より分厚いと見える。」

「あ、あれは、『マウス』です!!う、動いているところなんて初めて見ましたよ!!」

 

秋山がその『マウス』が動いている様子を見て興奮気味になっていた。

あんな図体を誇っているのに『ネズミ』なのか・・・。設計した奴は一回ネズミの意味を辞書で引き直してきたらどうだ?

とりあえず、この場を離れることを優先させよう。あまりの予想外の代物の登場に西住含めて硬直してしまっている。

 

「西住!!後退を最優先だ!!このままでは何輌かやられるぞ!!」

「はっはい!!各車、全力で後退してください!!」

 

俺の声に正気を取り戻した西住の指示で全力で後退させ、路地からの脱出を図る。

が、一番先頭にいたカモさんチームが動かずにいた。

何をするつもりだっ!?

 

「そど子!!急いで後退しろ!!」

 

通信機を持っている訳ではないから声は届かないがマウスの前で止まっているルノーB1bisに向けて叫んだ。

 

「カモさんチーム、急いで後退してください!!」

『私たちはここで壁になるわ!!一発くらい凌いでみせるから!!デカいからっていい気にならないでよねっ!!』

『風紀委員ってのは校内の風紀を守るだけじゃなくて、治安も守るのよ!!

だから、私たちはマウスとかいう悪者からみんなを守るために、ここで壁になるわ!!』

 

そんなやりとりが聞こえるとルノーB1bisはマウスに砲撃を仕掛けた。

しかし、砲弾は予想していた通り、硬い装甲に弾かれる。

そして、マウスはまるで鬱陶しい虫を払うかのようにルノーB1bisに砲弾を撃ち込んだ。

砲撃を受けたルノーB1bisは重戦車であるにもかかわらず、衝撃で吹っ飛んでしまう。

なんて威力だ・・・。図体のでかさからある程度は予測していたがそれ以上だな・・・!!

 

『みんな!!あとは頼んだわよ!!』

 

大破したルノーB1bisからそど子のそんな声が響いた。マウスの砲撃はとてつもないものだった。だが、再装填まで時間がかかるのか、すぐさま第二射は飛んでこなかった。その間になんとか路地から脱出する。

俺は大破したルノーB1bisを見ながら操縦桿を握りしめた。

 

そど子、お前の頑張り、無駄にはしない。

 

 

「まさか、黒森峰があんなデカブツを引っ張りだしてくるとはな・・・。完全に予想外だった。」

「みぽりん、どうするの?あんなの普通に戦っても倒せないよ・・・。装甲もプラウダのIS-2の二倍近いし・・・。まるで戦車が乗っかりそうな戦車だよ。」

 

戦車が乗っかるような戦車か・・・・。沙織の言う通りまともに戦っても硬い装甲に阻まれるだけだろうな・・・。

現状、砲弾を雨あられのように浴びさせたがマウスは健在。ポルシェティーガーの砲弾でも弾かれている始末だ。

まるでソロモンで戦った『ビグ・ザム』のようだな・・・・。アレを倒した時のようにこちらも捨て身で戦わないと厳しいか・・・?

 

「・・・・手はあります。」

 

西住のその言葉に俺も含めてあんこうチーム全員の驚きの視線が西住に向けられる。

 

「驚いた・・・。アレを倒せる算段がついたのか?」

「はい。ですが、こちらはほぼ捨て身で行くしかありません。最悪、1輌犠牲にしてしまうかもしれません・・・。」

「・・・言い方は悪いが1輌を犠牲にしてあのデカブツを倒せるのであればおつりは余裕で戻ってくる。あれが健在のうちは仮に廃校舎でタイマンの状況を作れても無理やり突入してくる恐れもある。」

「つまり・・・ここでマウスを倒すしかない、と?」

 

秋山の言葉に俺は無言で頷いた。それでも西住の表情は未だに晴れなかった。

何か理由があるのだろうか?

 

「西住、まだ懸念材料があるのか?」

「・・・そばにⅢ号戦車がいましたよね?あれがいる限り、厳しいんです・・・。」

 

ん?ああ、そんなことか。というか、気づいていなかったのか。

あのⅢ号戦車なら既にどうにかなっている。

 

「あれなら既に会長が倒してたぞ。」

 

実はマウスが出てくる直前、Ⅲ号戦車が少しばかり停車しただろう。

あんな隙だらけな姿をシャアが見逃すはずがない。

普通に止まった瞬間を狙って、普通に撃破していた。

俺の言葉が信じられないのか西住は呆けた顔をしていた。

 

「え・・・?本当ですか?」

「会長に聞いてみるといい。私も撃破したところを見ていたからな。」

 

俺がそういうと西住は通信でシャアに確認を取り始めた。

 

「えっと、会長?マウスの後ろにいたⅢ号戦車は倒したって本当ですか?」

『気づいてなかったのか?まぁ、マウスのインパクトがあれば記憶が飛んでしまうのも致し方なしか。質問に答えるが、その通りだ。既にⅢ号戦車は撃破済み。今はあのマウス1輌だ。』

 

シャアからの報告を聞いた西住は意を決した顔で再度通信機に声を当てる。

 

「カバさんチームとアヒルさんチーム。少々無茶ですが、今から私の指示通りに動いてください。」

『了解した!!』

『任せてください!!』

 

 

 

マウスからの砲撃を避けながら少し開けた道路に出る。

堤防のあるそこをマウスと戦う場所と定めて、一列に整列し、マウスを待ち構える。

そして、マウスが現れ、こちらに車体を向けた瞬間ーー

 

「全車輌、突撃してください!!」

 

大洗の全車輌がマウスに向かって突撃を始めた。

マウスからの砲撃をよけ、先陣を切ったのは先ほど西住からの指名を受けたカバさんチームのⅢ突だ。

 

「未来への水先案内人は、このカバさんチームが引き受けた!!」

「武士道とは死ぬことと見つけたり・・・・!!!」

「キャラではないが、敢えて言わせてもらうぜよ!!今の我々は阿修羅すら凌駕する存在ぜよっ!!」

「これは脱落ではない!!大洗の未来のーー」

 

『私達の明日を守るためっ!!』

 

一直線にマウスに向かうⅢ突は車体の下に無理やり潜り込み、押し上げた。

Ⅲ突がマウスの車体に押しつぶされそうになって、悲鳴をあげるような音がⅢ突の車体から響くがお構いなしだ。

 

「ウサギさん、レオポンさん、カメさんチームは陽動を!!」

 

西住の指示の元、マウスの意識を逸らすためにマウスの右舷から砲塔に機銃を浴びせる。するとマウスは砲塔をウサギさんチームの方に回して砲撃を行う。

しかし、その砲弾は砲塔が回り始めた時点で3チームともに退避していたため、

直撃を受けることはなかった。

 

「アヒルさんチーム、行ってください!!」

 

今度はⅢ突の後ろから八九式が突撃をかける。八九式はⅢ突に乗り上げ、さらにマウスの車体を使って砲塔の目の前に陣取った。

マウスは砲塔を回そうとするが、八九式が壁となって動かせないでいた。

今なら、なんとかマウスの比較的装甲の薄い車体後部のスリットを狙える!!

 

「よし!!アヒルさんチームがマウスに乗っかったぞ!!」

「冷泉さん、マウスの近くの堤防につけてください!!」

「了解だ!!」

 

俺はⅣ号をマウスのすぐ近くの堤防の斜面につける。

あとは華に頼むだけだ。

 

「華さん、撃ってください!!」

 

西住の指示で華がトリガーを引く。放たれた砲弾はマウスの後部スリットを正確に撃ち抜いた。

黒い煙を立ち上げたマウスはそのまま動くことはなく、代わりに白旗をあげた。

 

「マウスの撃破確認した!!やったな、西住!!」

「よ、良かった・・・。」

『に、西住さん、マウスを倒せたみたいだね・・・。』

 

皆で大物を倒した達成感を味わっていると偵察に出ていたねこにゃー達アリクイさんチームから通信がかかる。

 

『黒森峰の戦車があと3分くらいでこっちにくるよ・・・。』

「わかりました。各車は次の行動に移ってください。」

 

撃破したマウスをあとにして、移動しようとすると、突然Ⅲ突が煙を上げながら

停車して、白旗をあげてしまった。流石にマウスを持ち上げるのは車体に負荷がかかりすぎたか・・・!!

 

『我々を気に留めることはない!!そのまま行ってくれ!!』

『むしろよくやった方ぜよ。なんとなくじゃが、カバさんチームはマウスとの初会合の時点でやられていたような気がするぜよ。』

『西住隊長、あとは頼んだ!!』

『吉報を待っている!!』

 

黒煙を上げているⅢ突でこちらに向けて手を振っているカバさんチームをあとにしながら俺たちは黒森峰を待ち構える準備を整える。

まず、確認できる限り一番面倒なのは重戦車である『ヤークトティーガー』と『エレファント』だが、これはウサギさんチームが単騎で受け持つことになった。

 

「大丈夫なのか?そちらに援護に向かっても差し支えはないと思うが・・・。」

「大丈夫です!!私達、昨日考えたやってみたい作戦があるんです。重戦車は私たちに任せてください。」

「・・・・わかった。そこまで言うのであれば君たちに任せる。だが、無茶はしないでほしい。」

 

シャアの提案を梓は拒否した。その表情にシャアは笑顔を浮かべながら西住の作戦の通りにポルシェティーガーと行動を共にすることにした。

 

「アリクイさんチームはアヒルさんと一緒に行動してください。」

「わかったよ。西住さん。」

「任せてください!!」

 

西住の指示にねこにゃーと磯辺は気合の入った返答をする。

いつもはたどたどしい口調のねこにゃーだが、今回は違うようだな。

言葉に迷いがない。

 

「冷泉さん・・・・。」

「なんだ?」

 

運転に集中しているため、西住の方に顔は向けないでおく。

なぜか知らないが、秋山や華、それに沙織といったあんこうチーム全員の視線が向けられているような感じがする。

 

「私達を、大洗のみんなを優勝まで連れて行ってください。私たちは冷泉さんの操縦に全力で食らいつきます。」

 

気持ちのこもった西住の言葉が俺の耳に入った。

・・・・そうか、いいんだな。俺はここで全力を出してもーー

俺は一瞬、目を閉じ、開ける。そして、大きく息を吸い込んでーー

 

「了解したっ!!私は君達を必ず優勝まで連れて行くっ!!その途中、どんな障害があろうと突き進んでやるさ!!」

 

操縦桿を握りしめながらⅣ号の中でそう声を張り上げた。

だが、一つ、最終確認だ。あまり必要はないと思うがーー

 

「ついてこれる奴だけついてこいっ!!途中で吐いたりしてもことごとく無視させてもらうっ!!」

「あったりまえでしょっ!!」

「やってやりますよ!!ここまできたらっ!!」

「必ず、あなたの操縦に食らいついていきます!!」

「各車、最後の作戦、『フラフラ作戦』を始めてくださいっ!!」

 

俺の出せる全力。文字通り、命に代えても黒森峰にぶつける・・・。

それが、大人としての、大洗のチームメイトとしての俺の責務だ!

 




そろそろ原作アニメの最終決戦かぁ・・・・。

最終章、見たいですか?(モモチャンズリポートのあとがき要参照)

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