冷泉麻子、行きまーす!!   作:わんたんめん

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今回、割とふんだんにガンダムネタをぶち込みました!!
探してみてください!!(白目)


第36話

「黒森峰と接敵しました!麻子さん、お願いします!」

「任された!沙織、ナビゲートを頼む!!」

「任せて!!」

 

しっかりと言質は取ったからな。加減なしでやらせてもらう!!

先ほど黒森峰の本隊と接敵して、いつぞやの聖グロとの練習試合のときのような市街地でのカーチェイスが始まった。

接敵した時点でウサギさんチームとは離れ、側にいるのはあんこう含めた5チームだ。

現在は車列の後部にいるアリクイさんとアヒルさんが蛇行運転をしながら牽制射撃を行なっているところだ。

市街地の路地に入り込むと俺は曲がり角をノーブレーキで曲がったりするなどをして、黒森峰を翻弄する。

 

「こ、この路地の中をノーブレーキで爆走するなんて・・・。流石麻子殿です!!」

 

秋山、下手すると舌を噛むから喋るのはやめておいた方がいい。

 

 

 

「はえー、冷泉さんのハンドリング捌き、えげつないねー。」

「こりゃあこっちも自動車部としては負けてられないね!!ツチヤー、Ⅳ号に全力で食らいついていくよー。」

「ここが腕の見せ所、ってね!!」

「そのうち冷泉さんとレースでもしてみたいな!!大洗一早い女としての血が騒ぐ!!」

 

 

しばらく曲がりくねった路地を進んでいくと、他の4輌と離れ、俺たちは単独行動をとる。

 

「レオポンさん、カメさん373を左折。ウサギさんとアリクイさん、373を右折してください。」

 

沙織の通信がⅣ号で響く。その間にも黒森峰の車輌、先頭を走っているのは西住 まほが乗っているティーガーⅠが追ってくるが、無論的を絞らせるつもりは微塵もないため、ちょこまかと路地の中で蛇行運転をしながら切り抜ける。

さて、あとは廃校舎へと向かうだけだが・・・・。他はどうなっているのだろうか?

 

 

 

「M3でヤークトティーガーを押すんだよ!!」

「桂利奈ちゃん無茶言わないで!?」

「大洗がダメになるかどうかなんだよ、やってみる価値はあるよ!!」

「あゆみまで何言ってるのーっ!?桂利奈ちゃんもエンジンがオーバーフローしちゃうからやめてよー!?」

 

 

桂利奈とあゆみがなんか暴走気味で優季が悲鳴みたいなのをあげているけど、とりあえずエレファントを紗希の機転で薬莢を吐き出すところを撃つことで撃破した。

今は多分さっきのマウスを除けば、黒森峰の車輌の中で一番面倒なヤークトティーガーを相手にしている。

とはいえ、ヤークトティーガーから押されまくっていて、はっきり言ってギリギリのところ踏ん張っているような感覚がする。

でも、ここで倒さないと、絶対に西住隊長達の向かって猛威を奮うと思う。

だからーー

 

「ここでヤークトティーガーを倒そう。絶対に西住隊長のところへ向かわせたらだめ!!」

「いいね!やろう!!でもどうするの?」

 

あやが乗り気になりながらも手法を尋ねてくると、私は優季から地図を借りる。

 

「この路地の先にある川の堀にヤークトティーガーを落とす。それしか火力が足りないM3で倒せる方法はない。」

「で、できるの?」

「やってみなきゃわからないでしょ!!お願い、桂利奈。合図をあげたらすぐ避けて!!」

「あいー!!」

 

こういう時に桂利奈ちゃんのいつも通りな感じは頼りになるなー・・・。

まぁ、何も考えていないってのもあるかもしれないけど・・・。

そう思いながら、桂利奈ちゃんに合図を伝えるために覗き穴から後ろの様子を探る。

あと数メートル・・・・!!

 

「今!!桂利奈ちゃん、避けてっ!!」

 

桂利奈ちゃんの操縦で路地から出た瞬間、左に避けようとするが、ヤークトティーガーの砲撃が当たってしまい、横転する。

しかし、転がった車内でもはっきりとヤークトティーガーが勢いあまって川の堀に落ちていくのが見えた。

やった・・・・。でも、これ以上は私たちは無理みたい。そう言った意味では、悔しいなぁ・・・・。

 

「西住隊長、ごめんなさい。M3撃破されました。あとは頼みます・・・!!」

 

もう、私達にできることは西住隊長、そして冷泉センパイにエールを送ることだけだった。

 

 

 

 

 

「よーし、やるよ!!!みんな!!アリクイさん達も手伝ってくださいね!!」

『任せてよ。全力で、ボク達も手伝うから。』

 

引きつけた敵は三輌。これくらいならなんとかいける!!

 

「まずは懐に潜り込む!」

 

八九式と三式で敵の車輌の間に潜り込む。黒森峰の車輌はその巨体で押し潰そうとしてくるが、これを直前で避ける。標的を失ったため、黒森峰の車輌はお互いお互いをぶつけ合う。

 

『今だよっ!!』

「ピヨたん氏、撃って!!」

「撃つだっちゃ!!」

 

三式がちょうど黒森峰の車輌の履帯が接しあっている部分を砲撃すると、いい具合に二輌とも履帯が破損して動けなくなる。

 

「ワンショットダブルキルだっちゃ!!」

「おお!!ピヨたん殿、やりますなぁー!!」

「ここまで来たら、もう勝つしかない・・・!!やるんだ、ねこにゃー!!」

 

みんな頑張っている中でボク達もいつまでもお遊び気分でいるわけには行かない・・・!!

ボクはいつもかけている眼鏡を外して、前だけを見据える。

 

「おおっ!?ねこにゃー殿がメガネを外したなりっ!?」

「本気、ってことだっちゃ?」

「・・・・覚悟はある。ボクは、戦うっ!!」

「なるほど・・・なら私達もやるしかないなり!!せっかく会えた戦友達と別れたくはないなり!!例え、廃校と言われても、それでもと言い続けるっ!!」

「ピヨたん達はゲームの中で不可能を可能にするチームって言われてきただっちゃ!!現実でも、ゲームでもそれは変わらない!!」

「行こう!!みんな!!ボク達の終わらない明日へっ!!」

 

 

「向こうも気合十分って感じだね。こっちも負けてられないよ!!河西、そこの歩道に乗り上げて!!」

「了解です!!」

 

車道のすぐそばの歩道を進んでいくと残った黒森峰の車輌の砲塔がこちらへ向けられる。

 

「河西!!スピード落として!!」

 

河西にそう呼びかけるとすぐさま八九式の速度が落ちる。その瞬間、目の前に砲弾が撃ち込まれる。

歩道から車道に降りると、後ろの黒森峰の車輌が妙な動きを見せ始めた。

何やらフラフラとして、車道をくねくねと動き回っていた。

 

「キャプテン、もしかして向こうはアリクイさんチームとの挟撃を気にしているんじゃ・・・?」

 

近藤からの言葉に改めて黒森峰の車輌を確認する、確かにそうかもしれない。ちょうど今の状況はアリクイさんチームと自分たちで黒森峰を挟んでいる。

 

「・・・なるほど、そういうことか・・・。なら・・・。」

 

私の中で、一つの手段が思いついた。でも、はっきり言って危険だ。

だけどーー

 

「なりふり構ってはいられないね!!多少の無理はこじ開けるまでっ!!」

 

八九式の中にある発煙筒を取り出して、空中に放り投げる。

そこから、いつも練習してきたサーブの要領で黒森峰の車輌に向けて打つ。

発煙筒がうまいこと引っかかるとたちまち、黒森峰の車輌は煙に包まれた。

 

「河西!!八九式を横にして急停車!!大丈夫、前に会長がやってた戦法だからっ!!」

「わかりましたっ!!」

 

河西は信じてくれたことで八九式は煙のすぐそばで急停車する。

程なくして、煙を警戒したのか、それほどスピードを出していない黒森峰の車輌が現れた。

 

「みんな、衝撃に備えてっ!!」

 

そう言った瞬間、黒森峰の車輌と八九式が衝突する。車体の中で振り回されるが、なんとか黒森峰の車輌を無理やり止めることができた。

 

「撃てーー!!!アリクイさんチームっ!!!」

 

私はアリクイさんチームに届くように八九式の中で思い切り叫んだ。

 

「ピヨたん氏、主砲、てぇーーっ!!!」

「行っけーっ!!!」

 

ピヨたん氏が三式のトリガーを引く。その瞬間、三式に衝撃が走った。多分、履帯を壊した車輌が反撃してきたんだと思う。

だけど、放たれた砲弾は一直線にアヒルさんチームが気合で押しとどめた車輌の履帯に向かっていく。

そして、着弾。その車輌は履帯が壊されて、動けなくなった。

 

「やったーっ!!とりあえず足止めは完了なりっ!!」

「でも、ボク達はここまでかぁー・・・。アヒルさんもそれは同じみたいだね。」

 

ふと視線を移すと八九式では厳しいものがあったのか装甲がひしゃげて白旗を上げている様子が見えた。

 

西住さん、冷泉さん、あとは頼んだよ・・・。

 

 

 

 

「ウサギさん、アリクイさん、アヒルさんが撃破されたって!!」

「皆さんに怪我はっ!?」

「ひとまず、大丈夫みたい。」

 

沙織からその報告を聞いて西住がひとまず安堵の表情を浮かべた。

そろそろ、例の廃校舎に差し掛かる。ここの入り口の封鎖はポルシェティーガーとシャアの乗るヘッツァーが請け負っている。

 

「件の廃校舎だ!!みんな気を引きしめろよ!!」

 

校舎の敷地内に入ると黒森峰から砲撃が飛ぶがそんなものに当たる俺ではない。余裕で切り抜けると、ちょうど戦車がギリギリ入れるくらいの入り口に決戦場としている校舎の中庭が見えた。

そこにⅣ号が潜るとそれに西住 まほの駆るティーガーⅠが続く。

時間稼ぎ、請け負ってくれるな?シャア。

 

 

 

「そこから先は通さない、と言っておこうか。」

 

相手のフラッグ車であるティーガーⅠがこの廃校舎へと潜り込んだ瞬間にポルシェティーガーが壁として入り口に立ちはだかった。

動揺する黒森峰の車輌の背後から挟み撃ちの形で悠々と姿を現しておく。

すると、そのうちの1輌のキューポラから副隊長である逸見エリカが顔を出した。

 

「ちょっと、邪魔よっ!!」

「なら、押し通ってみせるがいい。もっとも君にそれができればの話だがな。」

 

私がそういうと彼女は嘲笑うかのような表情を浮かべた。

 

「はんっ!!そんな弱小戦車と失敗兵器で王者を止められるなんて思わないことねっ!!」

「なら、君に一つ教えてあげよう。戦車の性能の違いが、戦力の決定的差ではないことをな!!」

 

そう言いながらヘッツァーに戻るとすぐさまトリガーを引く。ポルシェティーガーも同じように砲塔から火を吹いた。

ポルシェティーガーの砲弾は近くにいた車輌を一撃で沈め、ヘッツァーの砲弾は別の車輌の履帯を撃ち抜く。

 

「っ・・・・。やってくれるじゃない・・・!!各車は前方のポルシェティーガーに砲撃を集中させなさい!!」

「やらせはしないと、言ったはずだっ!!」

 

黒森峰の車輌がこちらを無視してポルシェティーガーに砲塔を向けようとさせるが、ヘッツァーで砲撃をしたり、ぶつけることで徹底的に邪魔をする。

ここで出来る限り時間は稼ぐ。行け、アムロ。お前達の手で勝利を掴みとってこい。

 

 

 

 

校舎と校舎の間を進んでいくと広場のような場所にたどり着く。

俺はⅣ号を操作してついてきたティーガーⅠを迎え討つように停車させる。

 

「・・・・あなたには多大な恩がある。だが、これとそれとは別だ。許してほしいとは言わない。私は全力でみほとあなた達を迎え撃つ。」

「・・・冷泉さん。おそらく冷泉さんのことを言っています。」

 

俺に多大な恩、か。そんなに大したことはしていないのだがな・・・。

まぁ、何かしら返しておいた方がいいだろうな。

俺は西住の言葉に頷きながら操縦席のハッチを開けて西住 まほと相対する。

 

「むしろ、当たり前だな。こちらに恩があると言って手でも抜かれたら、それは私たちにとっては恩を仇で返すようなものだな。仮にそれをされたら虫唾がはしる思いだ。」

「・・・・そう言ってくれると助かる。」

 

俺は彼女の朗らかな表情を見届けるとすぐさま操縦席を戻った。

 

「西住流に逃げるという道はない。こうなったらここで決着をつけるしかない。」

「・・・・受けて立ちます。」

 

 

しばらく睨み合いの時間が続いた。風が吹く音などもなく、まさに無音の時間だった。

その静寂を先に破ったのはーーティーガーⅠ、西住 まほだ。

 

「動いたかっ!!」

「冷泉さん!まずは相手の出方を伺います!ここを数周した後、通路へ出てください!」

 

西住の言う通りに何回か円を作るようにティーガーから逃げると建物の間の道に入り込む。

 

「西住、ティーガーが撃ちそうだったらすぐに言ってくれ!必ず避けてみせる!!」

「わかりましたっ!!」

 

しばらく廃校舎の敷地内を駆け抜けていると後ろから一発の砲撃音が響いた。

なんだ?ただ闇雲に撃った訳ではあるまいし・・・。

 

「榴弾・・・?冷泉さん、止まってください!!」

 

最初こそ理由が分からなかったが、すぐそこにあった曲がり角を曲がった瞬間、先ほどの砲撃の意図を察した。

建物が崩れて、瓦礫となって通路を塞いでしまっていたのだ。

 

「ちっ!!中々やるな!!」

 

西住からの指示がなくてもわかる。すぐここから出ないと、既に砲塔をこちらに回しているティーガーにやられる!!

そして、そこから考えるに西住がやりそうなのはーー

 

「全速後退!!」

「その指示を待っていたっ!!」

 

俺の思っていた通りの指示をしてくれた西住に感謝を述べながら、一気にエンジンをふかし、加速しながら後退する。

その瞬間、後ろから衝突した時のような衝撃と砲撃音が響いた。おそらく曲がり角から出てきたティーガーとぶつかったのだろう。

砲撃音がしたということは、やはりここで仕留める気だったようだな。

そこまで考えたら、すぐさま方向転換を行い、再びティーガーから離れる。

 

「冷泉さん!!砲撃、来ます!!」

 

西住からの報告を受けた瞬間、回避行動をとる。ティーガーから放たれた砲撃は車体側面のシュルツェンを掠める。

くっ・・・情け無い。十分な隙間がないとはいえ当てられるとは・・・!!

 

「あ、当てられたっ!?」

「たかがシュルツェンをやられただけだっ!!実質問題はない!」

 

悲鳴のような秋山の声に大丈夫だと返しながらも苦虫を噛み潰したような表情をする。

 

「冷泉さん、もう一度来ますっ!!」

「二度も当てられてたまるものかっ!!」

 

ティーガーから再度砲撃が飛ぶ。今度は気配をしっかりと読み、それに基づいて回避行動をとる。

放たれた砲弾は砲塔側面のシュルツェンを破壊されない程度に掠めるだけで、通り抜けていった。

そこからは建物を挟んだ状態での砲撃の応酬が始まった。

しかし、お互いこれといった直撃弾はなく、先ほどの広場へと戻ってくる。

 

「やはり硬いな・・・。比較的装甲の薄い後部、ないしは側面・・いや、側面はさっき弾かれていたか。」

「やっぱり、一撃を交わして回り込むしかありません。」

 

やはり、その結論に至ってしまうか・・・・。

とはいえ、一筋縄では行かない相手だ。かなりギリギリを求められるぞ・・・。

だが、西住の表情に暗いものはなかった。おそらく信じているのだろう。俺たちのことを。あんこうチームの仲間たちを。

そのような表情をされれば、こちらも俄然やる気が出るというものだ。

西住は秋山に今までよりも早い装填を求め、華は行進間射撃でも構わないが少しでもいいから停止射撃の時間を求めてきた。

そちらはなんとかできるから問題ない。

 

「冷泉さん、正面から全速力で一気に後部に回り込むことはできますか?」

 

ふむ、つまりドリフトしろということか。

俺は心の中で軽く笑みを浮かべていた。なぜならーー

 

「それは、君の目の前で何度もやってきた。今更聞くのは野暮というものではないか?」

 

俺がそういうと西住は呆気に取られた表情をするが、すぐさま笑顔へと変わる。

 

「・・・そうでしたね。思えば、聖グロとの練習試合の時点でやっていましたね。まだそんなに時間が経っていないはずなのにずっと昔の記憶みたいです。」

「それは、今までの日々がそれだけ思い出深かったことの裏返しかもしれないな。」

「・・・そうかもしれないですね。」

 

そう微笑みながら、西住はキューポラから身体を出した。

表情は伺えないが、おそらく意を決した表情をしているだろう。

 

「さて、正真正銘これが最後の一撃だ。気張っていくぞ。」

 

俺が沙織たちに振り向きながらそういうとみんな揃って無言で頷いていた。

そしてーー

 

「前進っ!!」

 

西住の今まで指示を飛ばしてきた中で一番大きな声の指示が飛ぶ。

俺はその気持ちの入った指示に答えるべく、Ⅳ号を前進させる。

 

「グロリアーナの時は失敗したけど、今度は必ずーー」

「西住!!君が余計なことを考える必要はない!!振り返るな、前だけを見ろっ!!後はーー」

 

西住が不安げな雰囲気を醸し出していたため、思わず声を張り上げてしまう。

Ⅳ号の操縦桿を操作しながら俺は最後に叫んだ。

 

「私が連れて行くっ!!君にそうに誓ったっ!!だから、私に任せろっ!!」

 

ティーガーに回り込もうとすると、超信地旋回をすることで対応してきた。

それはいい、問題はこの後だ。

俺は一瞬ドリフトさせて、Ⅳ号をティーガーと向き直らせ、一直線に突撃させる。

 

「撃てっ!!」

 

西住の指示が飛ぶ。華が放った砲弾はティーガーの装甲に弾かれる。

そして、反撃と言わんばかりのティーガーの砲撃はーー

 

「あんこうチームは……大洗女子学園は伊達じゃないっ!!!」

 

まさに当たる直前、寸前のところをもう一度ドリフトをすることで避ける。

そして、そのまま背後を取りに行く。

こちらが前回ダージリンに対してドリフトで後ろを取ろうとした時は砲塔だけを回すという合理的な判断をされたが、今回はどうだ?砲塔も長いものに変えてしまったから密接して砲塔で回すのを止めるという荒業はできない。

つまり、ここの西住 まほの判断が明暗を分ける。

俺は操縦席からの覗き穴からティーガーの動向を伺う。

さて、どうするーー

 

彼女が取った選択はーー超信地旋回だった。

それを見た俺は思わずーー

 

「行けぇぇぇぇぇーー!!!」

 

年甲斐にもなく叫んでしまっていた。そして、履帯が壊れて行く音を響かせながらⅣ号は対応が遅れたティーガーの背後を取った。

このまま行けば勝てる、それは変わりない。だが、操縦席の覗き穴、というか俺の目にはあるものが飛び込んできた。

それはーーティーガーⅠの砲身。

 

「っ!?」

 

俺は顔と頭を守るために咄嗟に操縦桿から手を離してガードした。

だが、それがいけなかったのかもしれないーー

 

響く二つの砲撃音、耳をつんざくほどの音が響く。

そんな中、俺は自分の身体に起こった突然の異変を感じていた。

 

 

 

 

思わず耳を塞いでしまうほどの爆音が鳴りやむとまず確認したのは結果だった。

通信機を外してティーガーⅠの様子を見る。目に飛び込んできたのは、かなり損傷を受けてはいたけどとりあえず白旗は挙がっていないⅣ号。それに対して、白旗を挙げているティーガーⅠ。

これが意味しているのはーー

 

『黒森峰フラッグ車、行動不能。よって、大洗女子学園の勝利!』

 

審判団によるこちらの勝利を告げるアナウンスが流れて、ようやく張り詰めていた緊張が途切れていたのか通信手の席に倒れるように座り込んだ。

勝ったことを伝えるためにまずは目の前の麻子(幼馴染)に声をかけようとしたが、思わずその声を詰まらせてしまった。

なぜならそこには想像もできない光景が広がっていたからーーなぜならーーその友人の腹に鉄板が突き刺さっていたのだから。

 

「・・・え・・・・?」

 

目の前のとんでもない光景に声が出てこない。とりあえず、後ろで優勝したことを喜びあっている仲間達にこの事実を伝えようとすると、携帯のバイブ音が鳴った。

思わず確認すると、それは目の前で腹から血を流している麻子からであった。

 

『なにもいわないでくれ。とくににしずみにはな。かのじょはこれからかこのわだかまりとむきあおうとしている。そこにわたしなんかのことでぼうにふらせるわけにはいかない』

 

文字変換する余力もないほどに衰弱しているのだろうか、そのひらがなのメールからはいつもの麻子からは感じられないほどの弱々しさが滲み出ていた。

 

「え・・・・まこ・・・?」

 

恐る恐る、視線を挙げると、辛そうな顔をしながらもやせ我慢で笑顔を浮かべ、頷いている麻子の姿があった。

 

「沙織さん?どうかしましたか?」

 

現状一番話しかけられたくない相手に話しかけられて、思わず挙動不審になりかける。

どうしよう・・・、伝えるか、そうしないかーー

 

わたし、どうすればいいの・・・・!?

 

困惑する頭の中で私が出した結論はーー

 

「う、ううん。大丈夫、大丈夫、だから・・・。」

 

その言葉はまるで、自分に言い聞かせているようだった。

 




さて・・・・色々とかなりヤバイ(白目)

最終章、見たいですか?(モモチャンズリポートのあとがき要参照)

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