冷泉麻子、行きまーす!!   作:わんたんめん

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第37話

血が腹部から流れている感覚がする。刺さっている鉄板、おそらく破断しかけていた操縦席のハッチだろう。それを刺さったまま放置しているから過度な流血はなんとか避けている。

なぜこうなったのかは、正確なことは分からない。だが、推測としては、ティーガーⅠが最後に放った砲弾が運悪く操縦席のハッチに直撃したのだろう。

元々破損しかけていた操縦席のハッチは見事に破断、勢い余って俺の腹部に突き刺さったというのが、一番現実的だろう。

つまるところ、これは事故だ。色々な不運が重なって、おきてしまった事故。

普通であれば、すぐさま周りに伝えるべきなのだろうが、俺にはできなかった。

なぜなら、西住のことが気がかりだったからだ。

彼女はこれから過去の出来事で仲がこじれてしまった逸見エリカと対話をする。

そこに俺なんかのことで引き止める訳にはいかない。

咎は、受けるさ。だが、それで彼女らの仲が取り持てるのであれば、本望だ。

 

「ーーぜいさん。」

 

・・・・だれかの声が聞こえる。血を流しているからか意識が朦朧としてはっきりとしない。

 

「冷泉さん?」

 

どうやら西住が俺に声をかけていたようだ。いかんな、なんとか意識を保たせなければ、悟られてしまう。

気づけば、先ほどから感じていた振動、Ⅳ号を運んでいた回収車の駆動音は無くなっていた。

陣地に戻ってきたのだろうか?

 

「・・・ああ、すまない。ボーッとしていたようだ。ここに来て低血圧が再発してしまったようだ。」

「大丈夫なんですか?」

「みぽりん、とりあえず外に行ってていいよ。私たちも後から行くから。」

 

沙織が西住に対してそう言ってくれる。すまないな、沙織。君に苦労をかける。

沙織の言葉に促されて、ひとまず西住達三人はⅣ号の外へと出て行った。

華辺りに匂いで感づかれると思ったが、血の匂いと戦車特有の鉄と油の匂いが混ざって察知されなかったのか?

まぁ、今は考えることではないかーー

沙織は西住達がⅣ号から出て行くのを見届けると不安げな顔をしながら俺に詰め寄った。

 

「ね、ねぇ・・・麻子・・・大丈夫なんだよね・・・?死んじゃったりしないよね・・!?」

「・・・感覚的には、大腸辺りに刺さってる。まぁ・・・それだけだな。」

「そ、そういう問題なのっ!?血が、制服とかズボンとか、血だらけだよっ!?」

 

自分の服を見てみると沙織の言う通り傷を負った腹部を中心にして、服が真っ赤に染まっていた。

思わずまじまじと眺めてしまっていたのは思考能力が落ちていることの現れだろうか。

 

「・・・全く、妙な胸騒ぎがすると思えば・・・!!生きているんだろうな!?」

「えっ・・・!?か、会長っ!?」

 

沙織が俺の上から響いてきた声を驚きの表情をする。

壊れた操縦席のハッチから顔を覗かせていたのは苦々しい表情をしていたシャアであった。

シャアは壊れた箇所からⅣ号に入ってくると俺の傷を見ると厳しい顔をしてきた。

 

「これは・・・我々の手には負えないな・・・!!」

「そ、そんな、せめてこの刺さった鉄板を抜く事くらいは・・・!!」

 

沙織の言葉に俺とシャアは同時に首を横に振った。

 

「ダメだ。迂闊なことをして、ほかの臓器に損傷を与えてしまえば、最悪大量出血だ。そうなってしまえばそれこそ麻子の死は免れなくなる。それに、仮に臓器に損傷を与えずに抜けたとしてもこの鉄板は言わばダムだ。これを抜いたが最後、今まで堰き止めていた血が一気に放出される。十分な医療設備がない以上現状としては放置が最適解だ。」

「そ・・・そんな・・・!!」

「だが、それ以外ならまだどうにかなる。武部君、各操縦手達にメールを送ってほしい。無論西住君にもだがーー」

 

シャアがその言葉を喋った瞬間、俺は奴の衣服を引っ張った。

予想外のような顔をされるが今回ばかりは止めさせてもらう。

 

「頼む・・!!西住にだけは、伝えないでくれ・・!!」

「・・・なぜそこまで西住君には伝えたくないのだ・・・?」

「西住は、今過去と向き合おうとしている・・・!!そこに私なんかのことで、棒に振らせる訳にはいかないんだ・・・!!」

 

痛みからか息も絶え絶えになりながらもシャアにそう訴える。

俺のその様子を見たシャアはため息をついた。

 

「・・・・わかった。お前がそこまで言うのであればそうしよう。だが、そのあとのことはそれなりに覚悟しておいた方がいい。確実に彼女らには泣かれるぞ。」

「わかっている・・・っ!!」

 

 

 

 

(さて、どうしたものか・・・・。)

 

アムロが負った傷ははっきりいってかなり重傷だ。今は刺さったハッチが流血を防いでくれているがそれでも長くは持つまい。それにここは比較的内陸だ。救急車を呼んだとしても時間がかかりすぎる。他校のヘリを使わせてもらうのも同じ理由で難しい。

何か最短で病院へ運べる手段はないだろうか・・・!!

・・・・一か八かだが、彼女に賭けてみるか。

 

「・・・武部君、各操縦手にメールを送ってくれ。内容はーー」

 

 

「ん?メール、だよね?」

「誰からだろう・・・?」

「武部殿からぜよか?」

「一体なんだろう・・・・。えっ?」

 

それぞれの車輌の操縦手の携帯にバイブ音が響いた。送り主は揃って沙織からのものであった。

全員が疑問に思いながらもそのメールを開いた。そこにはーー

 

『各操縦手に通達します。今、麻子がお腹から血を流して衰弱しています。

応急処置を施すために各チームはこのメールの通りに行動してください。

それとこれは麻子自身からの伝言でもありますが、隊長には見つからないようにお願いします。』

 

それ以降はそれぞれのチームに与えられた指示と、一枚の写真が添付されていた。

そこには腹部から血を流している自身の恩人の姿があった。

 

「そ・・・そんな・・・!!」

「冷泉殿・・!!」

 

それぞれ狼狽するような反応を見せる中、誰よりも早く行動に移したのはーー

 

「梓!!大会の運営ってどこっ!?」

 

桂利奈だった。まさに鬼気迫るといった表情で突然質問をされた梓は困惑気味の表情を浮かべる。

 

「え、突然どうしたの、桂利奈。そんな顔をしてーー」

「は、早く教えてよ!!早くしないと冷泉センパイが……!!」

 

そう言って涙を流し始めた桂利奈を見て、梓はただならぬ状況であることを察する。

 

「わ、わかった!!とりあえず、こっちだよ!!ついてきて!!」

 

泣きじゃくる桂利奈の手を引っ張りながら梓は大会の運営所が置かれている場所へと駆けて行く。

突然の様子にウサギさんチームがなし崩しのような形でついていった。

 

「ねぇ、桂利奈。冷泉センパイに何があったの・・・?」

 

走りながら梓が質問をすると、桂利奈は無言で携帯を手渡してくる。

それを受け取って、沙織からのメールを見た梓は思わず口に手を当てる。

 

「そ、そんな、冷泉センパイが重傷・・・!?」

 

梓が思わず漏らした言葉に一年生の間で動揺が走った。

ちょうど同じタイミングでバレー部のアヒルさんチームと風紀委員のカモさんチームが合流する。

 

「ねぇ、桂利奈ちゃん!!君もあのメールをっ!?」

 

河西の質問に桂利奈は走りながら無言で頷く。

それを見た河西は苦々しい表情をしながら走るスピードを上げる。

 

「ねぇ!!冷泉さんが怪我をしたって本当なのっ!?」

「園センパイがあの写真を見たなら、それは絶対事実です!!あんなタチの悪い冗談、あの人達がやるわけない・・・!!」

 

合流してきた園が悲痛とも取れる質問を河西が答える。その答えに驚きを隠せないが、すぐさま表情を厳しいものに変える。

 

「なら、さっさとその教官ってのを呼ぶわよ!!時間がいつまであるか分からないんだからっ!!」

『了解っ!!』

 

園の全員を仕切る声にウサギ、アヒル、カモさんチーム全員の声が揃った。

全ては世話になった人を助けるためーー

 

しばらく疾走していると、目的の人物が目に止まった。

 

「あっ!!いたーっ!!」

「蝶野教官ー!!!」

 

その人物、蝶野亜美は桂利奈達の姿をみると嬉しそうな表情をしながら手を振ってきた。

 

「あら!貴方達、優勝おめでとう!!すごかったわよ、さっきの試合!!」

「そ、それはいいんです!!今、大変なことになっているんです!!」

 

梓の様子に疑問気な表情をしていた彼女だったが、ほかの生徒達の様子にただならぬものを感じたのか、表情を険しいものに変えた。

 

「どうかしたの?」

「これ!!見てくださいっ!!」

 

桂利奈が蝶野に携帯の画面を見せる。それを見た蝶野は驚きを露わにしながら桂利奈達と目を見合わせる。

 

「会長が、教官ならなんとかしてくれるかもしれないってーー」

 

その言葉を耳にした瞬間、彼女はシャアの目的を察した。ここは内陸部、救急車を呼ぼうにも時間がかかることは明白。

だったら自分のすべきことはーー

 

彼女はすぐさま携帯を取り出すと誰かに電話をかけた。

 

「もしもし?すぐさま応急キット積んだ10式を1輌、大洗女子学園の陣地に回しなさい。」

『ど、どうしたんですか?突然・・・。それに10式だって私的で使うのはーー』

「いいから早く!!人の命かかってんのよ!!人命救助は自衛隊の役目でしょ!!それに、責任は私が持つわ。」

『・・・・わかりました!!すぐさまそちらに向かわせます!!』

 

通話が終わると携帯を閉じながら桂利奈達と再度向き直す。

 

「彼女は私たち自衛隊が責任持って病院に連れて行くわ。」

 

 

 

 

「・・・・まさか、こんなことになるなんて・・・!!」

「仕方ないって言葉で片付けるのは不躾だけど。ナカジマ、今は私達に出来ることをやろう・・。」

 

項垂れるナカジマの背中をスズキが優しくさする。

とはいえ、自分が少しでも早くその損傷箇所を見つけていれば、直せていたかもしれない。

だが、既に後の祭りである以上、後悔の念は絶えない。

 

「うん・・・。そうだよね。えっと、とりあえず、Ⅳ号を車庫に入れればいいんだっけ?」

「一応、メールにはそう書いてある。っても、隊長さんに気付かれずにか・・・。」

「多分、隊長さんは隊長さんで何か大事なことをやろうとしているんだと思う。」

 

そう言ったツチヤの視線の先にはみほと黒森峰の副隊長、逸見エリカが顔を向き合わせていた。

 

「冷泉さんはもしかしたらそれを邪魔したくないんじゃないのかな・・・?」

「でもさ。自分のことよりも他人を優先するってのは、中々出来ねぇことだよな・・・。」

「ひとまず、今は冷泉さんを助けることだけを考えよう・・・!!」

 

項垂れた表情から一転、張り詰めた表情をしていたナカジマの様子に三人は無言で頷いた。

 

「ねこにゃー殿!!救急箱は見つかったぜよかっ!?」

「今こっちでも全力で探してる!!でも、あんなキズ、ボク達には施しようが・・・!!」

「だが、ただ見ているだけというのは夢見が悪すぎる!!それはアリクイさんチームも同じだろう!!」

「それは、そうだけど・・・!!」

「ねこにゃー氏ー!!Ⅳ号がこっちにやってくるなりー!!」

 

カバさんチームとアリクイさんチームは陣地で応急処置に成り得そうな綿や消毒液といったものをかき集めていた。

そこにレオポンさんチームが回収車を操作して、Ⅳ号を車庫まで運んできた。

 

「Ⅳ号、持ってきたよ!!手当の準備はっ!?」

「すまない!!これが精一杯だ!!」

 

車庫に入れるなりナカジマの切羽詰まった声が車庫に響き渡る。

それを聞いたエルヴィンは一通りの医療道具が入った袋をナカジマに手渡す。

それを受け取ったナカジマは颯爽とⅣ号を駆け上り、シャアに手渡す。

 

「会長!!これでどうですかっ!?」

「・・・上出来だ。とりあえずこの鉄板を外すことは出来んが、傷が化膿して病気を併発するという最悪の展開だけは回避出来る。」

「・・・あの・・・これはやっぱり、操縦席のハッチですか・・・?」

 

消え入るようなナカジマの声にシャアはタンポンに消毒液を浸しながら難しい表情をした。

 

「・・・その可能性は高い。どういう経緯でこうなったかはわからないがな。」

 

その言葉にナカジマは表情を重いものに変える。さながら自責の念に囚われて、今にも押し潰されそうだ。何かこちらから言っておくべきか・・・。

 

「ナカジマ・・・・。」

「っ!?冷泉さんっ!?」

「麻子っ!?喋らなくて大丈夫だからねっ!?」

「元はと言えば・・・。私の無茶な操縦が祟ったんだ・・・。度重なるスペックを度外視した機動や、さらにはIS-2との正面衝突・・・。Ⅳ号に掛けた負担は計り知れない・・・。それを、貴方たちは悉く直してくれた・・・。だが、貴方たちも人間だ・・・。見逃しの一つや二つもある・・・。今回は、それが変な方向に作用しただけだ・・・。それほど、気に留める必要はない・・・。」

「そ・・・そんなの・・・!!どうして、どうして君は・・・そんな態度でいられるの・・!!少しくらい、怒ってくれたっていいじゃない・・・!!」

 

そう言って目に涙を溜め始めたナカジマの姿を見て、俺は困った顔をしてしまう。

 

「悪いが、こればかりは性分でな・・・。今まで生きてきて、あまり怒ったことはない・・・。そうだな、真面目に怒ったことがあったとすればーー」

 

そういいながら、俺はシャアに視線を向ける。

 

「会長くらいのものだ・・・。色んな意味でな・・・。」

「まぁ・・・・思い返せば、そうだったかもしれんな・・・・。」

 

俺の傷口に消毒液の染み込んだ綿を当てているシャアが微妙な顔をしているが頰が僅かにあがっているのを見ると奴も笑ってはいるのだろう。

だが、そのタイミングでーー

 

「っ!?ゴフッ!?」

 

突然の嘔吐感が襲ってきて、思わず口に手を当てる。

手を口から離すと逆流してきたのか鮮血が手のひらについていた。

 

「まっ、麻子っ!?大丈夫っ!?」

「不味いっ!!血が行き場を失った結果吐血したか・・・!!そろそろ本格的な処置を施さなければ・・・!!」

「会長!!なんとかならないんですかっ!?」

「ここではこれが精一杯だ!!あとは病院に任せる他はないっ!!」

 

沙織やシャア達三人が狼狽したような雰囲気を見せ始めたその時、通信機から声が響いた。

 

『そこのⅣ号!!聞こえる!?』

「えっ?この声・・・誰・・?」

「この声、蝶野教官っ!?」

「間に合ってくれたか・・・!!」

 

Ⅳ号のそばに10式が急停止した。シャアがⅣ号から顔を出すと蝶野教官が険しい表情をしながら、こちらに駆け寄ってくる様子が見えた。

 

「容態はっ!?」

「ついさっき吐血した!!本格的な処置を施さなければ確実に出血多量で死んでしまう!!」

「教官!!お願いします!!麻子を助けてください!!」

「お願いします!!」

 

沙織とナカジマがともに頭を下げた。

蝶野教官は安心させるために笑顔を見せながら自身の胸を叩いた。

 

「任せなさい。人命救助は自衛隊の使命だもの!!」

 

そう言って俺をⅣ号から連れ出そうとしたその時ーー

 

「あのー。なにかあったんですか?」

 

西住の声が外から聞こえてしまった。それにそばに秋山や華がいるのはもちろん、挙げ句の果てに逸見エリカや、西住まほまでいるように感じる。

 

「えっ!?彼女、何も知らないのっ!?」

「麻子の要望だったのだ。彼女には、知らせるな、と。」

「冷泉さん・・・?冷泉さんに何かあったんですかっ!?」

 

気まずそうな雰囲気が流れているなか蝶野教官とシャアは顔を見合わせる。

 

「・・・私が説明する。教官は、早く病院へ。」

「・・・わかったわ。」

 

教官が俺を運び出す準備をしているなか、シャアはⅣ号から降り、西住達と顔を見合わせる。

 

「そこの二人、私が彼女の脇を持つから、引き上げるのを手伝いなさい!」

『わかりましたっ!!』

 

蝶野教官に脇を羽交い締めのように掴まれ、沙織とナカジマに足を持ち上げられるようにしてⅣ号から引き上げられる。

そして、西住達と目があってしまったーー

できれば、彼女だけには知られたくなかったが・・・致し方ないか・・・。

西住達は俺の姿を見ると驚愕といった表情をし、その痛ましさに口を覆うように手を当てた。

 

「嘘・・・・・っ!?冷泉さん・・・?冷泉さんっ!!」

「麻子殿っ!?そんな・・・どうして!!」

 

西住と秋山が揃って俺に向かって駆け出しすように足を踏み出す。しかし、それを阻む者がいた。

 

「待たんか!!二人とも!!」

 

シャアが腕を広げ体を張りながら西住と秋山の前に立ちふさがる。

 

「会長どいてください!!なんで・・・なんで冷泉さんがあんな重傷を負っているんですかっ!?」

「それは・・・。」

「まぁ・・・誇張表現もなしに言えば、運がなかった、と言うべきなのだろうな・・・。」

 

 

全員の視線が言葉を発した俺に集中する。

 

「麻子っ!!それ以上喋るなと言ったはずだぞっ!!」

「いい・・んだ。お前だってどうして私がこうなったのか見当が付いていないのだろう?」

「っ・・・・!!お前という奴は・・・!!」

 

苦虫を噛み潰したような表情のシャアは置いといて、俺は教官に担がれたまま経緯を話すためにⅣ号から降りる。

 

「・・・出血量から鑑みて、少しが限度よ。それ以上はホントに危険なラインに入るわ。」

「・・・すまない。手早く済ませる。」

「冷泉さん・・・!!なんで・・・!!」

「・・・・単刀直入に言うと最後のティーガーⅠの砲撃で元々破損しかけていた操縦席のハッチが破断して、その破片が刺さった。」

「なっ・・・・!!」

 

俺の言葉に西住 まほと逸見 エリカが驚きの表情をする。

 

「そんな・・・!!ありえないわよそんなこと!!だって戦車道で扱う戦車は特殊なカーボンで覆われている!!そんな装甲が破断して、破片が刺さったなんて・・・!!」

「エリカ、彼女が言っているのは、装甲じゃない。操縦席のハッチだ・・・。

操縦席のハッチは他の装甲と比べて格段に薄い・・・。特殊カーボンが施されていたとはいえ、そこにティーガーⅠの高火力の砲撃、しかも至近距離だ。

破断したとしても、無理は、ない・・・。」

 

流石だな・・・。理解が早くて助かる・・・。しかし、そこまで憔悴した表情をされるとこちらとしても後味が悪い。

 

「それで・・・西住。彼女とは、逸見エリカとは仲直りできたのか・・・?」

「はぁっ!?アンタ、何言って・・・!!まさか・・・!!」

「冷泉さん・・・。まさか、私とエリカさんが仲直りするまで、待っていたんですかっ!?そんな重傷を負ったなか・・!!」

「まぁ・・・そうだな・・・。君の決意に水を差す訳にはいかないからな・・・。」

 

彼女が逸見エリカのことを『エリカ』と下の名前で呼んでいるということは、確かに仲直りができたのだろう。そうであれば、俺としては本望だ。

そう思って、軽い笑みを浮かべているとーー

 

「アンタっていう人は・・・・!!!筋金入りのバカなのっ!?」

 

突然、エリカが顔を怒りで染めながら、俺に指を指してきた。

 

「否定は、しないさ・・・。自分の対応がどう考えても、間違えているのは分かっている・・・。だが、いつまでも君たち二人の仲がこじれているのは見るに耐えなかったのでな・・・。」

「っ・・・・!!だったら、自分の命がどうなってもいいってわけなの!?」

「・・・・そこら辺はどうなのだろうな・・・。」

「なら、絶対に生きてなさいよっ!!それくらい、やってみなさいよ・・・!!そうじゃないと・・・せっかくわだかまりが解けたのに後味が悪くなるじゃない・・・・!!」

 

目に涙を溜めながら俺にそう言ってきた彼女。ふむ、思っていたより人に優しくなれるのだな・・・。

 

「冷泉さん・・・!!絶対に、絶対に生きてください・・・!!お願いです・・・!!」

 

そこは、病院の執刀医の腕次第だな・・・。そう言おうとしたが、どうやら体力がかなり限界に近いようだ。

だが、せめて、これだけは彼女に届けたい。息を切らしながら俺はその彼女の目を見つめる。

 

「西住、まほ・・・。」

「な、なんだ・・・?」

「・・・・過ちは繰り返すな・・・。貴方に・・・みほと同じ轍を歩んで欲しくはない・・・。辛いことを一人で抱え込むな・・・。誰にだって甘える相手が必要だ・・・。それは貴方にだって例外では・・・ない。」

「だが・・・私は・・・!!私などに、甘える相手など・・・!!」

「貴方だからこそだ。それだけは言える。貴方のような抱え込むような性格の持ち主は拠り所というか、吐き出す場所が無ければ、すぐに潰れる・・・。」

 

最後に彼女にそれだけ伝えると蝶野教官にお礼の意思を示しながら10式戦車に担ぎ込まれる。

俺を乗せた10式戦車はエンジン音を響かせながら病院へと向かった。

さて、俺も気力を振り絞るとしよう。約束した手前、コロっと死ぬ訳にはいかないからな。

 

最終章、見たいですか?(モモチャンズリポートのあとがき要参照)

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