さて、そろそろ劇場版ですね・・・。どう選抜チームを調理してやりましょうか・・・。(暗黒微笑)
「暇だ・・・・。先ほどまで飽きるほど説教を受けていたにも関わらず、それがいざ終わってしまうと、味気ないと感じてしまうほどに暇だ・・・・。」
各隊長からーーそういえば、思い返してみればアンチョビだけいなかったがーーとりあえず身が縮こまる思いで説教を受けた。
ただ、特にまほなんだが、彼女に関しては笑顔を浮かべながら説教されたため、怒っているのか、笑っているのかはっきりしなかった。
あれか、彼女は実は真性のサディストなのか・・・?
まぁ、それは置いといて、先ほども行った通り、現在俺はかなり暇を持て余している。
溜まりに溜まった見舞いの品を減らそうにも主治医から固形物はまだ口にしないでほしいと釘を刺されているため、それは叶わない。
祖母も帰ってしまったため、病室には誰もおらず、外から聞こえるカラスの鳴き声だけが今の時刻が夕暮れという哀愁漂う空気を余計に増幅させる。
どうにかして暇を潰そうと模索していると、病室の扉が開かれた。
他に来客があっただろうか?あるとすればアンチョビ辺りだと思いながら扉の方に視線を向ける。
そこいたのは薄緑色のドリルヘアーをしたアンチョビではなくーー水色のジャージに身を包んだ三人組と茶色い軍服のようなものを着用した人物であった。無論、面識はない、はずだ。
まさか初対面の人という想像もしていなかった人物の来訪に俺は少しの間言葉を失ってしまう。
「・・・・誰だ?君たちは。」
「ほ、ほらぁ・・・。やっぱり帰ろうよ、ミカぁ・・・。すっごい変な目で見られてるよぉ〜・・・・。」
ブロンド色の髪を二つ結びでおさげにしている女の子が隣の『ミカ』と呼ばれたジャージと同じ水色のチューリップハットを被り、何故かカンテレ、だったか?それを軽く爪弾いている女の子に詰め寄る。
しかし、そのミカという女の子は表情を崩すような素振りは見せず、手にしていたカンテレを軽く爪弾くとーー
「周りの視線など、それほど大事なものなのかい?」
・・・・コイツ・・・厚かましいと思う。
冷めた目を向けていると、隣にいた茶色い軍服のようなものを着た女の子が敬礼をしてきた。
「突然の訪問、申し訳ありません!!自分は知波単学園、戦車隊隊長を務める『西 絹代』と申します!!此度の大洗女子学園の優勝、誠に素晴らしきものでした!!」
「中々肝が座っているねぇ〜。それじゃあアタシも便乗しようかね。継続高校のミッコだよ。よろしく。」
「えっと・・・同じくアキですぅ・・・。その、突然押しかけてしまってごめんなさい・・・。」
「私は『名無し』だよ。どうしても呼びたければ、ミカだ。」
俺は名乗ってきたアキという女の子に視線を向ける。この子からは苦労人オーラが出ているように感じる。
俺はこの押しかけ人たちをどうすればいいんだ?
「・・・冷泉 麻子だ。それで、こんな怪我人に何の用だ?」
「いえ、私自身は挨拶程度と軽いお見舞い品をお届けするだけだったのですが・・・。継続高校の皆さんとバッタリと。」
バッタリと、か。そもそもこの子たちはどこで俺の病室の番号を・・・?
少し尋ねてみるか、俺のプライバシーにも関わるからな。
「そういえば、どこで私の部屋番号を聞いたんだ?」
「ああ、これは失礼しました。こちらが一方的に知っているだけで確かに冷泉殿と私は初対面ですね。大洗女子学園の会長である角谷 杏殿から教えて頂きました。」
「風に誘われてね。それと、そこのお見舞いの食材たちが囁くんだ。私に食べてほしいってね。」
ふむ、この知波単学園の隊長は大丈夫だな。しっかりと合法的な手法を取ってきている。
まぁ、シャアのヤツから連絡の一つくらいはよこせと言っておきたいが今は置いておく。
問題はこっちの継続高校の方だ。・・・・・・・・・コイツ、厚かましいってレベルではないな。厚顔無恥の『こ』の字も知らないな。
なんだその身も蓋も無い理由は。だが、それとそれはして、少々どうしようか迷っていた代物があったからな。
よし、ならコイツに悟られないようにやるか。
「・・・・要するにお見舞いの品をたかりにきたわけだな?」
「たかりに来た訳じゃないさ。食材たちの声を聞いただけさ。」
「言葉の綾だな。そもそも、何故たかりに来たんだ?」
俺とミカの間に何やらただならぬ雰囲気を察したのか、表情を慌てているものに変え始めたアキを見る。彼女にはすまないが、理由を聞くまではこちらとしても引くに引けん。
少しの間飄々とした態度をとっているミカを睨んであるとーー
グゥゥ〜
と、中々間の抜けた音が響いた。音の発生源を辿っていくと、お腹をさすっているミッコの姿があった。
「・・・・・単純にお腹が空いていたからきたのか?しかし、飲食店もあるはずだが・・・。まさかとは思うがそういったのを買う金もないのか?」
「うう・・・・そうなんです・・・・。」
顔を赤らめながら恥ずかしそうにするアキの様子を見て、俺は困った顔をしてしまう。
まったく、そんな理由であれば最初から素直に言えばいいものを・・・。
仮にそうしていたとしても最初はいい印象は受けないがな。
「まぁ・・・、色々もらいすぎてどうしようか困っていたのは事実だからな。
渡してくれた人には申し訳ないが、そのまま捨ててしまうというのはさらに申し訳ない。しょうがないから少しやるよ。」
「えっ!?いいんですかっ!?」
「ああ。だが、今回だけだからな。普通はいきなり現れて見舞いの品をたかりにきた奴など、相手にするのも面倒だがな。」
「あ、あはは・・・。本当にごめんなさい・・・。」
頭を下げているアキを置いておいて、俺は適当な見舞いの品を探す。
まぁ、ミカにあげるのはこれで確定だとして・・・。
適当に果物などいいか。どういうのがあったかな・・・・?
「知波単学園の隊長はどうする?持っていくか?」
「アハハ・・・・私は結構です。彼女らほど食に飢えている訳ではないので・・・。」
微妙な顔をあげる彼女の様子を見て、それが普通だろうなと思いながら見舞いの品の選定をする。
とりあえず、アキとミッコには果物の類でいいか。贈り物としてもらった果物のバスケットの中身を適当に入れ替えながら二人に手渡す。
「ええっ!?いいんですかっ!?こんなに貰ってっ!?」
「ああ、気にすることはない。さっきも言ったが来た理由はどうであれ、この量は流石に私一人では持て余してしまうからな。」
「へぇー、結構気前がいいんだね、アンタ。」
「正確に言えば食べられないといった方が正しいな。主治医から固形物は止められているんだ。」
「確か、大腸辺りを怪我しているんでしたっけ?」
「ん?そこまで情報が出回っているのか?」
「ええ、そうですね。今回の一件は戦車道界隈でかなり話題になっています。なにせ安全を謳っている特殊カーボンで防護されている乗員が重傷を負ったのです。今回の一件を鑑みて、戦車道大会の運営委員会は救護班の設置や第三者による試合前の戦車の点検を考えているそうですよ。」
アキの発言に俺がそう尋ねると西がそのように答えてくれる。
何というか・・・。今更感が否めんな・・・。前回の全国大会の時点で置いておくという考えはなかったのだろうか・・・。
そう考えていると病室にカンテレの音が響く。どうやらまたミカが弾いたようだ。
「この世に絶対なんて言葉は存在しない。それは歴史が何回も証明してきた。どうして人間は同じことを繰り返すんだろうね?」
「それはそうだが、ここは公共施設だぞ。綺麗な音色だが、あまりのそのような音は鳴らさない方がいい。」
「それはそれとして、私にはまだかい?」
・・・・本当にマイペースな奴だな・・・・。
まあ、それは置いておいて、俺はため息をつきながらミカに白い箱を手渡した。
「これは、なんだい?」
「パイだ。手作りで作ってくれたのはありがたいが、先も言った通り、今の私は固形物がダメな身でな。食べられない私より食べたいと思っている君の方がいいだろう。食材の声が聞こえるのであれば、大方そう言っているんじゃないのか?」
「ふふっ、そうだね。このパイは私に食べてほしいと言っている。そう言われてしまえば、食べないわけにはいかないね。」
「なら、残すなよ。まぁ、お腹がすいてるのであれば残すはずもないか。」
「それじゃあ、私たちはそろそろ行こうとしよう。アキ、ミッコ、帰ろうか。」
「その、ありがとうございました!」
「じゃあ〜ね〜。」
俺が挙げた箱と果物のバスケットを大事そうに抱えながら継続高校の面々は帰っていった。
「ふぅ・・・・まさか初対面の奴に物をねだるとはな・・・。」
「あの・・・先ほどの箱、何が入っていたんですか?」
「パイなのは確かだ。そこについては嘘は言っていない。」
「あ、やはり嘘が含まれていましたか。」
「そうだな・・・。イギリスの食べ物はいくつか知っているか?」
「いえ・・・申し訳ありませんが、そういった外国の料理には疎くて・・・。」
「あの中に入っているのはスターゲイジーパイという料理なのだが、ざっくりというと魚の頭が突き出たパイだ。」
「・・・・・・はい?」
まぁ、何も知らなければそういう反応をするのが普通だな。イギリスの食文化は色んな意味で独特だからな。うなぎゼリーやスターゲイジーパイはその一例だ。
・・・フィッシュ&チップスなどちゃんと食べられるものもあるがな。
「グフぅっ!?」
「・・・・おーい、ミカー?大丈夫ー?」
「ふふっ・・・なんて声、出してるんだい・・・ミッコォ・・・!!」
あ、これ面倒くさいことになる奴だ。あの人から貰った魚の頭のぶっ刺さったパイをミカが口に入れた瞬間、吹き出した。
思わずパイの方を見ようとすると、これでもかと言うほどの匂いがそのパイから溢れて出ていた。
これは・・・紅茶の匂い・・・?ということは、これって聖グロの誰かの手作りってことだよね・・・?
一体誰なんだろう・・・ミカにあんな表情をさせるほどの劇薬を作る人は・・・。
「だからね・・・止まるんじゃないよ・・・!!」
一回ミカはああいうひねくれた言動を辞めた方がいいと思うんだ。うん。
多分、普通に言っていれば普通のをくれたと思うよ。あの人。
「で?味はどうだった?」
「・・・・殺人的な不味さだよ・・・!!クフっ。」
あ、ミカが落ちた。本当に死ぬほど不味かったんだね。
「っ!?今誰かがわたくしの料理の腕を褒めてくださったような声が・・・・!?」
「それだけは絶対にありえませんね。」
「ええ、むしろ何故紅茶をとりあえずありったけぶち込んだパイが何故美味しくなると思っているんでしょうね?」
「ねぇ、二人とも最近私に対して辛辣すぎじゃないかしら?」
次の日、朝起きるとそれほど時間を経ずに病院で支給される流動食を食べている。
何というか・・・。味気ないな・・・。まぁ、医者から止められている以上固形物を摂取するわけにはいかないがな。
その流動食を完食し、華が見舞いとしてくれた生け花を暇潰しとして、見ていると病室のドアが開いた。
誰が来たかは気配で分かっていた。
「だいぶ、暇を持て余しているようだな。」
現れたのは私服姿のシャアであった。奴にしては比較的ラフな格好だが、時刻はまだ10時を回った辺りだ。シャアが置いてあった椅子に座ったところで俺は奴に気になっていたことを尋ねた。
「学校じゃないのか?」
俺がそう質問すると奴は椅子の上で腹を抱えて笑い始めた。
俺が訳がわからないといった表情をしているとーー
「すまんすまん、お前の質問があまりに滑稽すぎてな。今日は土曜日だぞ。学校は休みだ。」
シャアにそう言われて、俺は初めて自身の時間感覚が狂っていることを自覚する。
まったく。病院内では変わらない日々を繰り返しているからか今日が何曜日だかを忘れてしまう。
「それで、最近はどうなんだ?みんなの様子は。」
「そうだな。お前がとりあえず一命をとりとめたことに安堵したのか、チーム全体の上の空といった雰囲気はなくなったな。」
「そうか。それはそれで良いのだが。ところでⅣ号は誰が動かしているんだ?」
「柚子に任せている。お前が戻ってこれない間に中々面白い試合の要請があったからな。」
そうか、小山に任せているのか。それはそれとして面白い試合とは一体何のことだろうか。
「簡単に言えば、大洗・知波単連合と聖グロ・プラウダ連合のエキシビションだ。」
「4つの学校でまとめて試合をするのか。それも合同チームを組んでか。」
「まぁ、私は出れないがな。操縦手にまわっても構わんがヘッツァーの砲手を桃に任せるわけにもいかんからな。」
「・・・・仕方ないか。砲手はずっとお前がやっていたからな。そういえば昨日知波単の隊長が来ていたな。いきなり来たから驚いたぞ。」
「ああ、そういえば彼女から教えてほしいとの連絡が来ていたな。彼女の性格から教えても問題はないと思ったが・・・。」
「まぁ、今となっては別にいいがな。ただ、連絡の一つくらいは寄越してほしいものだ。」
その後はお互いに和やかなムードで話し合いながらシャアは帰っていった。
その日はあとはこれといった来客は祖母以外は特になくしばらくは暇な日時を過ごした。
転機が訪れたのは、時期的にシャアが先ほど言っていたエキシビションが終わったほどの頃であった。
いつもみたいに暇を持て余しているも突然傍らに置いてあった携帯のバイブ音が響いた。
何事かと思って携帯を開くと、そのには西住からのメールが一通届いていた。
題名は『どうしよう』
妙な胸騒ぎがした俺はそのメールを開いた。そこにはとんでもない内容からが記されてあった。
『どうしよう。冷泉さん・・・。エキシビションが終わって学校に戻ってくると校舎に立ち入り禁止のテープが貼られてあって・・・。
そこにいた役人さんから大洗は8月31日をもって廃校するって言われて・・・。
私たち、どうすればいいの・・・?』
「大洗女子学園が・・・!!廃校だと・・・!!」
俺はその内容にただただ驚くしかなかった。
「すまない。角谷 杏だ。」
「急な頼みだが、やってもらいたいことがあるのだ。君に頼んでも構わないかね?」
「やってもらいたいことはーーーーーだ。」
「ああ、手段は問わんよ。こちらで、なんとか誘導はしておくが、大方勝手に出てくるだろうな。」
「そういう奴なのだよ。アイツはな。」
最終章、見たいですか?(モモチャンズリポートのあとがき要参照)
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