生徒会室の前に着くと部屋の中から言い争う女性の声が聞こえた。
主に言い争っているのは、沙織と生徒会広報の河島 桃。それに副会長の小山 柚子。そして、最後の一人は・・・ああ、思い出した、一度沙織と顔合わせをした五十鈴 華か。
生徒会室での言い争いはヒートアップしていく。会話を盗み聞いていると、内容はやはり西住をどうにか戦車道に履修させたいようだ。生徒会の奴らは。それを沙織と華が職権乱用だとして抗議しに来ているようだ。
・・・杏の声が一切届いてこないのが気になるが。
西住は、だいぶ思い詰めているようだ。扉越しでも彼女の感情が流れ込んで来る。
「・・・このままだと君たちはこの学園にいられなくなるが、それでも構わないかね?」
俺の中で怒りが込み上がった。シャアの奴、西住に脅しをかけたな・・っ!!
ふざけるなっ!!そこまで堕ちたか、シャア!!
居ても立っても居られなくなった俺は生徒会室の扉を蹴破り、杏を含めた生徒会に怒りの視線を向ける。
突然の出来事に小山と河島は呆気に取られた表情をしている。
「シャアっ!!貴様ほどの男がなんて器量の小さい!!」
「やはり来たか。アムロ。だが、大洗が保たん時が来ているのだ。それをわかるんだよ。」
「貴様の理屈などっ!!なぜそこまで西住に戦車道を強要させるっ!!彼女が戦車道について何かしらの負い目を感じているのは、わかっているはずだ!!」
「ああ、分かっているとも。だが、彼女個人の事情に構っていられるほど時間は待ってくれんのだよ。」
「っ・・・!?貴様ぁ!!」
奴の言い分に俺は思わず駆け出しそうになった。そのまま行けばおそらく、奴に殴りかかっていただろう。だがーー
「冷泉さん!!やめてっ!!」
西住の悲痛な叫び声が生徒会室に響く。突然の介入に俺の駆け出しそうになった足も途中で止まった。西住は意を決したような目で宣言した。
「私、やります!!戦車道、やります!!」
突然の宣言に沙織と華は驚いた表情をする。杏と小山 柚子はホッとした顔を上げ、河島 桃はなぜかへなへなと腰を抜かしたように座り込んでしまった。
しかも涙目で。
「西住、いいのか?君はおそらく、戦車道に何かしらトラウマを抱えているのだろう?」
「う、うん。でも冷泉さん、あのまま行ってたらすごいことをしそうだったから・・、思わず・・。」
西住にそう言われ、俺は苦い顔をした。図らずもだが、結果的にシャアの計画にのせられてしまったのだからな。
俺は居心地の悪さから生徒会室から出ようとしたがーー
「麻子、少し待ってくれないか?話したいことがある。」
杏の言葉に怪訝な顔をしながら振り向く。西住達も不安気な顔をしている。
「君達も教室に戻ってくれて構わない。それと、西住君。このような手段をとって申し訳なかった。」
杏はそう言うと立ち上がり、西住に対して頭を下げて謝罪した。
「えっ、い、いや。謝られることはありませんよ。私もやるといった以上、全力を尽くしますので。」
「・・そう言ってもらえると助かる。」
西住達は生徒会室から退室していった。その際、俺に対して不安気な視線を向けていたが、俺がぎこちない笑顔で返すと、少しばかり表情を緩めて扉を閉めた。
「・・・それで、話とはなんだ?生徒会長に歯向かった私を退学させるか?」
「はは。私にそれほどまでの権力はないさ。」
「よく言うよ。全く。」
「か、会長〜。なぜさっきまであんな剣幕で言葉をぶつけていた者とそんなに普通にはなせるんですかぁ〜?」
河島 桃が杏に涙声で問いかける。気持ちが落ち着いたことでわかったが、コイツは俺に対して恐怖の感情を向けている。・・・怖がらせてしまったか。
「それで、なぜ西住にあそこまで強要させたんだ?それに戦車道履修者に対する高待遇もだ。あれはやってほしいと言っているようなものだぞ。」
「そうだな・・。やはりお前には話しておいた方がいいだろうな。」
杏はそう言うと俺に事の顛末を話してきた。
内容はいずれも衝撃的なものであった。
「大洗が、廃校・・・?馬鹿なことを言うな。ここには生徒だけで9000人いるんだぞ。」
「残念だが、事実だ。文科省の者どもは本気でここを潰しにきている。」
「それに廃校されたくなければ戦車道の全国大会で優勝しろなど、無理にも程があるっ!!」
「だが、この無理難題を熟さなければ、大洗に未来はない。」
杏にそう言われ、俺はため息をつきながらソファに座り込んだ。
「お前があそこまで強硬な手段をとった理由が分かったよ。」
「やはりお前ならわかってくれると思っていたよ。」
「私だってここが廃校になるのは困る。祖母はあまり動くことが叶わないと思うからな。」
「この話は基本的には他言無用にしておいてほしい。戦車道を取ってくれた者にこの学校の未来がかかっていることを伝えるには早すぎるからな。」
「そうだな。わかった。」
シャアの言っていることは正しい。いきなりこの学校の未来を託されたと言われても困惑するだけだろうだからな。
「あの・・・一つ聞いてもいいですか?会長。」
「ん?どうかしたかね?小山君。」
「先程冷泉さんと言い争っていた時、お互いを別の名前で呼び合っていたような気がするんですけど・・。」
・・・・不味いことになった。そういえば思い切り杏のことをシャアと呼んでしまっていた。いや、奴も俺のことをアムロと呼んでいたな・・・。
軽く視線を杏に向けると奴も困った顔をしている。
「・・・・あだ名だ。私と麻子はそれなりに付き合いがあったのでな。」
「なるほど、幼馴染だったんですか。それであれば納得です。」
杏がそう言うと小山は納得したという顔をした。解決、でいいのか?
「それよりもだな。まずお前が戦車道を履修してくれるとは思わなかったぞ。」
「・・・私だって一人の学生だ。単位が得やすくなるのであればそれに越したことはない。それにーー」
少々気恥ずかしいため、視線を逸らしながら言う。
「遅刻日数が、減るのはこの上なく有り難いからな。」
「・・・・中々邪な理由で履修するのだな。」
「言うなっ!!私だって出来れば遠慮したかったんだ!!」
杏に微妙な視線を向けられ、思わず顔を赤くしてしまう麻子なのであった。
最終章、見たいですか?(モモチャンズリポートのあとがき要参照)
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見たいです
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見たくないです