冷泉麻子、行きまーす!!   作:わんたんめん

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季節ネタと最近流行りの謎理論をねじ込んで見た。


第41話

「その、だな・・・お見舞いに来ていただいたのは分かるのだが・・・。敢えて聞かせてほしい。どうしてここに?」

「・・・・・・。」

 

き・・・気まずい・・・。突然俺の病室にみほの母親である西住 しほが入ってきたかと思うと、備え付きの椅子に座ったまま黙りこくってしまった。

俺が質問してもこの通り、これといった反応がない。

だが、入ってきたときの彼女の疲れた表情を察するに何か訳ありで俺の元を訪れてきたのは確かだ。

しばらくお互い何も話さずに俺だけが気まずい表情をしているとーー

 

「・・・・私は間違っていたのかもしれない・・・。」

「え・・・・?」

 

とてつもなく重かった彼女の口が開いた。俺は反射的に質問をしようとしたがなんとか押しとどめて聞き手の側に専念する。

 

「私は去年、みほの・・・あの子の行いを否定した。西住流の理念は勝利至上主義、いかなる犠牲を払ってでも勝利すること。それはあの子の優しい性格と合わなかった。」

「・・・・。」

 

俺は黙ってそれを聞いていた。彼女の独白とも取れる心情の吐露は終わってなかったからだ。

 

「だけど、それは特殊カーボンという絶対的な安全の元だからこそできることだった。そして、今回、貴方という怪我人を出してしまった。」

「それは・・・こちらの整備不良が祟った結果だ。あとは私の運がなかっただけだ。そちらに落ち度はない。」

「でも、黒森峰が、西住流が貴方を傷つけたことに変わりはない。娘を追いやり、そして人を死地に追いやるという最悪の形で。」

 

そういうと彼女は乾いたため息をはいた。そして、その表情は呆れているようにみえた。おそらく、娘の気持ちを分かってやれなかった自分自身に。

 

「あの子は何も間違っていなかった。人が人を思いやるのは当然。なのに私はそれをいらないと断じて、それなら、あの子に戦車道をやらせるんじゃーー「待った。それ以上はやめておいた方がいい。」

 

俺は彼女の言葉を無理やり遮った。彼女の今溢そうとした言葉は親子の絆を引きちぎるものだったからだ。ましてやーー

 

「貴方が話そうとしていることは、何より西住の、貴方の娘のこれまでを、全て否定する言葉だ。自暴自棄にならないでほしい。」

「でも、あの子の優しい性格は戦車道にはーー」

「合う合わない、そんなのは些細な問題だ。確かにみほは性格上は戦車道との相性はそれほど良くないだろう。だが、これだけは絶対に言える。彼女は戦車道をやり始めたことを絶対に後悔はしていない。」

 

そうでなければ、試合に勝ったあと、仲間に囲まれて笑顔を浮かべるはずもないからな。それにーー

 

「それに、貴方のやってきたことも間違ってはいない。いや、娘の接し方に関しては大幅に間違えていると思うがな。」

 

呆けた顔をする西住 しほを置いておいて、俺は話を進める。

 

「貴方には西住流の師範としての顔がある。それを周囲の人々にも見せなければならない以上、そう簡単に崩すことはできないだろう。だが、貴方にはどう抗いても切っても切れない顔がある。みほの母親としての顔だ。」

 

俺は西住流の二人、みほとまほの不器用さを鑑みて、あることがわかった。

不器用さは彼女、西住 しほから受け継いだんだ。

そうじゃなければ、これほど娘との仲が拗れることなんてないだろうしな。

 

「貴方は『西住流の師範』として、みほの行動を叱責したのだろう。だが、それと同時に彼女の行動を『母親』として受け止めなければならなかった。」

 

母親と師範というある時は矛盾した対応を取らねばならない二面性に板挟みになっていた彼女はいつしかどちらか一片にしかその表情を表に出すことができなくなったのだろう。それが師範としての顔。だが、それではいずれ家族との仲がどうしようもないラインまで及んでしまう可能性がある。

 

「母親と師範、二つの顔を使い分けるのは難しいと思う。だが、それでも家族に惨いことをするようなことはしないでほしい。後悔後先に立たずということわざがあるが、まさにその通りで、そうなってからでは遅い。私のように言いたいことも言えずに先立たれるのはかなり辛いものがある。」

「・・・貴方の家族は・・・?」

「・・・・私が小学生になったばかりの頃に交通事故でな。二人とも、私にはもったいないほどの父親と母親だった。」

「・・・・ごめんなさい。」

 

まぁ・・・俺の場合は既に経験してるがな。親父や母親とは結局喧嘩別れのような形で、それきりだ。サイド7の外に放り出されて酸素欠乏症を発症した親父は技術者としても見る影がなくなり、母親とは俺が戦っていることに理解を示してくれず、あとはどうなったのかは分からない。

 

「それと話は変わるが、別に私は勝利至上主義が一概に悪いと言っているわけではない。まぁ、ただのもの考えようだがな。」

「も、ものの考えよう・・・?」

「勝利至上主義といっても私の中では二種類ある。一つはいかなる犠牲も問わないただ勝利へと邁進する方、こちらが貴方のいう西住流の理念だろう。そして、もう一つはあらゆる方法を使い、どんな形や過程でも勝利さえ納めてしまえばそれでいい。要は終わりよければ全て良し、だ。こちらは個人的な所感だが、みほのやり方だと思う。貴方から見ても彼女のやり方には色々思うものもあったのではないだろうか?」

「・・・否定はしないわ。西住流らしくないとは何回かは。」

「彼女は彼女なりに西住流を通そうとしたんだ。言うならば、彼女の、西住みほとしての『西住流』と言った具合か。」

「・・・・やり方は人それぞれ、と言ったところなのね。」

「そういうことになる。その・・・これは私が言うことではないのだろうが。

みほと少しだけでもいいから話してやってくれないか?」

 

俺は意を決してそう尋ねてみた。肝心の彼女の表情は少々、沈んだものであった。

む・・・・やはり彼女の中ではだいぶ引きずっているようだな・・・。

 

「それは・・・・、私は・・・あの子と話す資格は・・・・。」

「資格なんかは貴方がみほの母親であることだけで十分だ。それに、彼女も貴方と話すことを望んでいる。それに彼女、一回大泣きしたぞ。貴方と姉であるまほに見捨てられたと思ってな。」

「う・・・・。」

 

思い出すのは聖グロとの親善試合のあとと黒森峰との決戦の前日。屋台を回っていたときとみほが家に泊まりにきた時だ。彼女はまぁ、優先順位こそはあったもののはっきりと母親との和解も望んでいた。

俺はそのみほの願いを届けようと思う。

その時だった、病室のドアが開かれたのは。

 

「い、家元、失礼しますっ!」

「ち、蝶野教官?」

 

病室のドアを開いて現れたのは蝶野教官だった。いったいなぜ、彼女がここに・・・。それに、家元?彼女は師範ではなかったか?

 

「あ、元気してる?」

「え、ええ。まぁ・・・。」

「本来なら見舞いの品とか持ってくるべきなんだろうけど、今回は別件だから、ごめんね。」

「いや、そんなに無理に持ってくる必要はありませんよ。」

 

急いできたのか若干、息を切らしながらだった蝶野教官に俺はやんわりと遠慮のアピールをしておく。教官は彼女に用があるようだしな。

 

「それで?突然どうしたの?」

 

師範、というか家元としてのスイッチに切り替えたのかキリッとした表情をしながら西住 しほが教官に尋ねる。

 

「実は、大洗女子学園が廃校の危機に晒されています。そこで、家元にどうか抗議の声を上げていただきたく、ここに来ました。」

 

それを聞いた西住 しほは割と驚いた表情をしていた。

・・・・・まさかとは思うが、知らなかったのか?

 

「失礼。こんなことを聞くのはアレなのだが。貴方はまさか知らなかったのか?大洗の廃校の件。」

 

そう聞いてみると彼女は何やら気まずそうに視線を逸らし始めた。

・・・図星か。新聞はともかくネットではだいぶ記事が上がっているのだがな・・・。

ん?ネット・・・・あぁ、そういうことか。口には出さんが、彼女、パソコンの類が苦手だと予想する。

 

「・・・・大洗が来年の大会に出てこれないとすると、黒森峰が叩き潰すことが出来なくなるわね。」

 

まぁ、確かにそうだな。黒森峰にとっては勝ち逃げされるも同然のことか。

 

「それに、みほや、貴方が全力を賭けて守ろうとした学校だもの。母親としてあの子の笑顔を奪わせる訳には行かないわ。」

 

今度は俺が面食らった表情をする羽目になった。まさか彼女から母親という言葉が出てくるとは思わなかったのか蝶野教官もかなり驚いた表情をしている。

 

「・・・・なに、蝶野?そんなに私の口から母親という言葉が出るのが珍しい?」

「い、いえ、滅相もございませんっ!?」

 

教官は青い顔をしながら顔を横にブンブンと振っていた。そんなに彼女が怖いのか・・・・。

 

「・・・・存外に答えは簡単なものだったのね。ありがとう。」

 

そう言って、西住 しほは表情を穏やかな笑顔に変える。その表情はまさに母親のものであった。

 

「私自身、大したことはしていない。」

「ところでなんだけど、貴方、みほと同じ年の割にはかなり大人びているわよね。」

「ま・・・まぁ、自覚はある・・・ます。」

「今更取ってつけたような敬語ね。」

 

・・・・そういえば、思い返してみれば彼女と話しているとき最初こそは敬語を使っていたが途中から完全に素になっていたな・・・・。

 

「まぁ・・・貴方は貴方で大変なことがあったから、これ以上の詮索はしないわ。それで、蝶野?私は文科省に向かえばいいのね?」

「そうなります。既に大洗の会長と日本戦車道連盟理事長が文科省へと向かっています。」

 

 

どうやらシャアはシャアで裏方でだいぶ動いているようだな。連盟理事長に西住流の家元がバックについているのであれば、文科省も真面目な対応を取らざるを得ないだろう。

 

「わかりました。私もすぐに文科省へ赴きます。」

 

そういうと西住 しほと蝶野教官は俺の病室から出て行った。

さて、後はシャアに任せて、俺は寝るとしよう。最近、暇だから寝る事くらいしかやることがない。

というか、ふと思ったのだが、俺は西住流の主要人物全員に説教をかましていないか?

 

 

 

 

結論から言おう。なんとか条件を取り付けることには成功した。

文科省に理事長と共に訪れると程なくして蝶野教官と西住流の家元、西住 しほが到着した。

その三人を伴って私は役人に殴り込みを仕掛けた。連盟の理事長や西住流の家元が来るとは思わなかったのか、終始役人は困惑顔でこちらに当たっていた。

まぁ、西住 しほがプロリーグの設置委員長に就かないなどと色々と文科省にとっては困ることをちらつかされれば役人としたらたまったものではないだろう。

そして、何というか、先ほどの西住 しほには何か鬼気迫るものがあった。

特にそれが顕著に現れたのは役人が『大洗はまぐれで優勝した』と言葉を零したときであった。

それを聞いた瞬間、彼女は怒気を含んだ言葉で

 

「戦車道にまぐれなし。あるのは実力のみ。」

 

と言い放った。その言葉は彼女にとって何よりの娘二人の戦いぶりを侮辱するものであったのだろう。

彼女も西住流の家元と同時に一介の母親であったということだな。

そして、その怒気に充てられたのか、ついに役人が大学選抜に勝てば廃校を取り消してもいいと漏らした。

少しばかり早まったかもしれんが、とりあえず私はそこで役人に書面でそれを約束させた。

口約束では約束にならんようなのでな。しっかりと、今回は書面でやらせてもらった。無論、文部科学大臣にも署名してもらった。これで、約束を反故にされるということはないだろう。

ただ、先ほど少しばかり早まったと言った通り、懸念材料が残ってしまったのは事実だ。あれ以上引き延ばすとどうなるかわからなかった以上、ああするしかなかったが。

戦車の規定数といった試合内容の細部まで約束を取り付けることはできなかった。

それに、できれば文科省との間にはあまり禍根を残したくはない。

一応、無理やり言うことを聞かせることはできる。だが、このボイスレコーダーはあくまで最終手段だ。これには役人が私に廃校を告げに来た時の言葉が入っている。

まぁ、願わくは使わないことを祈るしかないがな。使うとなったら容赦なく使うが。

ひとまず仮宿舎に戻るとしよう。

私はここまで力を貸してくれた三人にお礼を述べながら、仮宿舎へと向かった。

 

仮宿舎に戻るとちょうど桃がパイプ椅子が山積みになったリヤカーを疲れ切った表情をしながら引いていた。

あれは、確実に山積みになったパイプ椅子が崩れるな・・・・。

そう思ったのもつかの間、あまりの重さ、それともこの数日間で体が疲弊しきっていたのか、桃がバランスを崩した。それと同時に山積みになっていたパイプ椅子が崩れそうになる。

 

くっ・・・・!!間に合うかっ!?

 

私は全速力で桃の元へ駆けつけ、咄嗟に彼女の両脇を掴み、リヤカーから離れさせる。バランスを崩しながら行ったため二人揃って地面に叩きつけられるが、パイプ椅子の下敷きになることはなんとか防げた。

 

「全く・・・・。無茶をする・・・・。大丈夫か?」

 

私は息を整えながら桃に語りかける。当の本人は呆けた顔をしていた。

 

「あ・・・・。会長・・・・?」

「まぁ、今は会長でもなんでもないがな・・・。とりあえず、柚子を呼んでくれんか?」

 

そう桃に言ったものの、彼女が最初にやってきたのはーー

 

「か、会長ぉぉぉぉーーーー!!!!」

 

目に大粒の涙を溜めながら飛びついてきた。まぁ・・・色々あったのだろうな。私がいない間にも。とりあえずこのまま柚子のところへ向かうとするか。

 

「会長・・・・!!おかえりなさい・・・・!!」

「柚子、来て早々で申し訳ないが、戦車道履修者に放送をしてくれ。講堂に集まれとな。」

「はいっ!!わかりましたっ!!」

 

放送室にいた柚子にそう伝えると彼女は嬉々とした声色で戦車道履修者に講堂に集まれという旨の放送を始める。その間も桃は大泣きをしていた。ええい、泣き止まんかっ!!

 

そして、講堂に向かうと既に各チームが集まっていた。しかし、何故か風紀委員たちのカモさんチームだけ見当たらない。

 

「園達風紀委員はどうした?」

「そ、それが、今まで風紀を正してきた反動というかなんというか・・・。大洗が廃校と伝えられてからすっかり荒んでしまって・・・。」

 

まさに申し訳ないといった桃の表情に私は軽く頭を抱えた。

はぁ・・・面倒だな・・・・。

 

「・・・・私が連れ戻してくる。誰か場所を知らないか?」

「確か・・・飼育小屋できゅうり食べてましたよ。ヤンキー座りで。」

 

一年生の澤君の通り、飼育小屋に向かうと本当に園たちがヤンキー座りできゅうりを貪り食べていた。

もはや風紀委員としての見る影もないな・・・・。

 

「あ・・・かいちょーだー。」

 

後藤のその声にため息をついていると、それでこちらの存在に気づいたのか園が荒んだ目でこちらを見てきた。

 

「集合をかけているんだが?」

「うぃーす・・・・。」

 

だいぶ重症だな・・・・。こちらが言っても碌に動こうとしないな・・・。

こんな様子をアムロが見たらどう思うだろうか・・・。

おそらく・・・『情けない奴っ!!』とか言うだろうな。

 

「まったく、せっかく廃校が取り消しになればまた君たちに風紀委員を頼もうとしたのだが、この様子では無駄足だったか?」

 

そう言った瞬間、園たちの目が変わった。まさしく寝耳に水といった感じの表情だった。

 

「えっ!?廃校、どうにかなったんですかっ!?」

「それは、これからのみんなの頑張り次第だ。まぁ、君たちに無理に立ち上がれとは言わんよ。その様子では逆にこちらにとって不利益となってしまうからな。邪魔にしかならん。そこで河童らしくきゅうりを貪っているのも一つだ。」

 

そのままその場を後にしようとしたがーー

 

「待ってっ!!」

 

園に呼び止められ、再び彼女らの方を振り向く。その目には先ほどの荒んだものはなかったが、少し意地悪をするか。

 

「どうかしたか?先ほども言ったが、別に無理強いをするつもりは一切ない。そこできゅうりでも食べているといい。もっとも他のチームはどうだかは知らんがな。」

 

そういうと園は黙りこくってしまう。さて・・・どうする?

しばらくお互い無言の時間が続くとーー

 

「やってやろうじゃないのこの野郎!!ゴモヨ、パゾ美、行くわよっ!!」

 

一転、表情を強気のものに変えると困惑気味の後藤と金春を連れてヅカヅカと歩いて行った。

 

「フッ、その表情を見たかった。あれならなんとかなるだろうな。」

 

風紀委員たちのその様子を見ながら私も後に続いて講堂へと戻っていった。

 

 

「さて、みんな長く留守にしてしまって申し訳ない。今一度確認するが、揃っているな?」

 

講堂のステージに立って、この場に集まってくれたこれまでの仲間たちを見下ろす。

病院送りになっているアムロを除いて、そこには確かに全員揃っていた。

 

「試合が決まった。これに勝てば文科省は廃校を取り消してくれる。前回は口約束だったが、今回は、この通り書面にしっかりと約束させてきた。」

 

約束のことが記された書類を見せると履修者たちの間で喜びの声が上がる。

 

「そ、それで試合相手は・・・・?」

「・・・・大学強化チームだ。簡単に言えば、黒森峰の大学版といったところか。」

 

質問をしてきた西住君にそう答えると秋山君と一緒に驚きの表情をした後難しい表情をする。やはりある程度知っているようだな。向こうは経験がこちらより豊富だ。大方、いや必ず苦戦を強いられるといっても過言ではあるまい。

 

「それでもやることは変わらん。いつも通り、君たちの戦車道を見せて、我々の学園艦に戻ろう。」

「会長ー。隠してることはあとないんですよねー?」

 

カエサルにそんなことを言われてしまう。ははっ、信頼されておらんな・・・・。

 

「隠し事はない。それだけは言っておこう。」

「よーし!!みんなやるぞー!!」

『おーっ!!』

 

バレー部の磯辺の掛け声に便乗してみんなが手を上に掲げる。

士気は高いようだな。

ただ、隠し事はないが、懸念はだいぶある。西住君には詳細な試合内容が伝えられる前に教えておくか。

 

「西住君。」

「あ、会長。その、ありがとうございます。みんなのために動いてくれて・・・。」

「それが会長としての私の責務だ。それはそれとして、君はこの試合についてどう思う?」

「・・・・はっきり言って不安しかありません。こちらが8輌に対して向こうがいくつ出してくるかわかりませんし。」

 

流石は西住流といったところか、状況が見えている。

なら、これを伝えても問題はないか。

 

「・・・これは私の推測だが、向こうは30輌を出してくるだろう。それも殲滅戦でな。」

「30輌・・・それに殲滅戦ですか・・・!?」

「ああ、文科省は現在プロリーグの設立に躍起になっている。予行演習として、プロリーグの規定数である30輌でくる可能性が高い。それにこちらを確実に潰しにかかるのであれば数の差が浮き彫りとなる殲滅戦で試合を仕掛けてくるだろう。」

「それは・・・かなり厳しいですね・・・。ただでさえこちらは戦力が少ないのに・・・。」

「・・・はっきり言ってしまうとこのまま行けば、私と桃は出れないだろう。」

「え・・・・どうしてですか?」

「・・・戦車道の規定では三名以下で戦車に乗ってはいかんのだろう?」

 

その私を聞いた西住君は思い出した表情をした。

 

「そ、そうでした・・・!!となるとどこかのチームから人数を回さないと・・・!!」

「いや、そこまでする必要はないし、重く考える必要はない。」

 

そういうと西住君の肩に手を乗せながらこう伝える。

 

「1輌で10輌ほどやれば3輌で済む。」

「え、ええ〜・・・・?」

 

・・・まぁ、そのような困惑顔だろうな。普通は。

 

「冗談だ。だが、先も言ったがそこまで重く考える必要はない。仮にそうなったことも考えて、手は打っておくつもりだ。」

「そ、そうなんですか?」

「ああ。だが、君には突然の状況を任せることになる。行けるか?」

「・・・やります。冷泉さんと約束しましたから。」

「そうか。どうやら、君の中では彼女の存在はかなり大きいようだな。」

「ふえっ!?」

 

そう思ったことを口に出してみると西住君は顔を真っ赤にした。

・・・この反応は・・・どう考えても恋する乙女そのものだな・・・。

少しカマをかけてみるか。

 

「まぁ・・・応援してるよ。ちなみにどこまで進んでるんだ?」

「ま、待ってください会長!?れ、冷泉さんとは、その・・・!!」

「ん?私は人物を指定した覚えはないのだが、なぜそこで麻子の名前が出てくる?」

 

ニヤニヤしながらそういうと西住君が顔をさらに赤らめて下を向く。

 

「ず・・・ずるいです・・・!!」

「嵌めたことは謝ろう。それでどうなんだ実のところ。」

「・・・・一緒に寝たくらい、です。あとは手を握ったり・・・。って、何言わせるんですかぁ!!」

 

これ以上おちょくるのはやめておくか。

さて、一度アイツに釘を刺しておくか。私は携帯電話を取り出すとアムロに電話をかける。

 

 

 

 

携帯からバイブ音が鳴り響く。俺が言えたことではないが、病院では基本的に携帯を使ってはいけないらしい。

そして、その電話の主は、シャアからだった。

 

「もしもし?何か用か?」

『いやなに、大人しくしているのかと思ってな。』

「一応、な。視線を感じる以上、おいそれと動くわけには行かないからな。」

『ほう、視線か。』

「ああ。少し前から妙にこちらを見てくる視線が増えてな。おそらく文科省の奴らだろうな。」

 

少し外に目を向けると病室の外からこちらの様子を伺うように見てくる視線を感じた。ちなみに扉は閉めているからシャアとの電話が見られることはない。

だがおそらくこれはーー

 

『・・・監視か。』

「・・・そう考えるのが妥当だろう。だから行動しようとしてもあの手この手で抑えにくるだろう。」

 

まったく、これでは軟禁されていた時を思い出す・・・。

あの時は文字通り腐っていたからな・・・・。

 

『そうか・・・。それもそうだが、お前はやはり監視がなければ動くつもりだったな?』

「・・・・ああ。そうだよ。」

 

やはりシャアにはある程度見透かされていたか。おそらくこの電話も釘を刺しておくためにしてきたのだろう。

 

『少なくとも試合当日までは大人しくしておけ。日付や詳細はまたあとで教えるが、当日にもなれば奴らもお前が動かないと思って手を引くだろう。』

「・・・わかった。その日までは大人しくしておく。」

『くれぐれも早まらんようにな。』

「ああ。そちらは頼んだぞ。』

『まぁ、お前が動かなければ私としても試合に出れないのでな。お前の気持ちがどうであれ、どのみち連れて行くつもりだったがな。』

「・・・・そうか、お前と河嶋の二人しかいないのか。」

『・・・・そういうことだ。試合にはお前の力が必要だ。ちなみにこれは西住君たちには言わないでほしい。過度な期待をかけさせる訳にはいかないからな』

「わかった。」

 

シャアとの電話はそこで終え、俺は大人しくベットの上で不貞寝を始める。

・・・・面倒なことになってきたな・・・。まさか一般人に監視をつけるとはな・・・。

 




次にお前は『アムロとシャアなら一人で10輌を余裕でやりそう』という!!

最終章、見たいですか?(モモチャンズリポートのあとがき要参照)

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