冷泉麻子、行きまーす!!   作:わんたんめん

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第43話

作戦は、いくつか悶着はあったけどなんとか決めることができた。

ありきたりかもしれないけど、多分急造チームではあまり凝った作戦は難しいと思うから隊をたんぽぽ、あさがお、ひまわりの三つに分けて、お姉ちゃん率いるひまわり小隊に中央高地を占拠してもらい、残り二つの小隊はその高地の両翼から進撃することにした。

うまくいくかは分からないけど、現状ではこれが一番みんなにやりやすいと思う。そろそろ試合が始まる。気を引き締めていかないと・・・・。

 

 

同時刻ーーー

 

 

 

「・・・・動くか。もう試合も始まっているだろうし、視線も感じなくなった。」

 

俺は病室から出ると周りを気にしながら階を降りていく。俺の入っていた病室はそれなりに高いところにあったのでな。

二階あたりまで降りていくと空き病室に潜り込む。事前の下調べでここが空いているのは調査済みだ。

病院の医師や看護師に見つかると面倒極まりないため、さっさとやらせてもらう。

俺は病室の窓を全開にして、窓枠に手をかけると目の前の病院の木に向かってジャンプした。

枝が折れる音などが辺りに響くが、なんとか比較的太い枝にしがみついて落ちるのだけは回避する。

そして、そのままゆっくりと木から降りる。

シャアからの連絡だとそろそろいるはずなんだが・・・・。

 

「Hey!Ms.レイゼイ!!」

 

名前を呼ばれた方向に振り向くとそこには一人の女子生徒が待っていた。

緑色のアメリカ風のパンツァージャケットに身を包んだその女子生徒はサンダース所属の生徒だ。

 

「君が、会長に頼まれた生徒か?」

「そっちの会長、というよりケイ隊長直々のお願いだけどね。それよりも今は時間がもったいない。Follow me。着いてきて。ヘリを用意してあるから。」

「・・・感謝する。」

「サンダースに着いたらそのままギャラクシーに乗って。出発準備は整えてあるから。」

「了解した。」

 

俺はそのサンダースの生徒に連れられてヘリに乗り込む。

みほ、頼むから持たせておいてくれ・・・!!

 

 

 

 

「か・・・・会長・・・!!い、今のは・・・!!」

 

陣地で試合の映像を見ていた桃の顔がこちらを振り向くが、私はそれを気に留めずにすぐさま地図を開く。

試合は左翼を担っていたあさがお小隊が戦闘を始めたが、こちらの当初の目的である中央高地の制圧は難なく終わりそうだった。

しかし、まさに制圧が完了しそうだったその時、ひまわり中隊が謎の砲撃に晒された。

その砲撃のせいで黒森峰のパンター二輌が撃破され、正面と左翼を突破した大学選抜チームの挟撃に合い、中央高地を放棄した。

その撤退途中、プラウダのIS-2とKV-2とT-34/85が殿を務め、IS-2がいくつか敵のパーシングを撃破していたが、最終的に撃破され、プラウダ勢はカチューシャだけが取り残されてしまった。

だが、何より考えねばならんのは先ほどの謎の砲撃だ。

爆発の威力や範囲を鑑みるに明らかに戦車のものではない。さながら艦砲射撃、いやそれ以上かもしれん。

そんな代物まで持ち込んできた役人に悪態をつきながらも今は地図と睨み合いをする。

 

(・・・砲弾の着弾角度はほとんど直角に等しかった。ならば仰角はおそらく40度以上はあるはずだ。そこから鑑みるに・・・今の砲撃は・・・)

 

私は今の材料からできる限りの答えを導き出した。あれほどの威力を持っている以上、車体もかなり巨大なはず・・・。地図を見ても推定射程距離は10キロ近い。

とすれば、考えられるのは・・・・。

 

「自走臼砲・・・・!!」

「じ、自走臼砲・・・っ!?あれはオープントップのはずですので、戦車道での使用は不可能では・・・!?」

「・・・役人がなんらかの改造を施している可能性がある。どこまでここを潰したいのだ、文科省の奴らは・・・!!」

 

歯噛みしながら映像を再度見つめると西住君たち大洗連合は遊園地に戦場を移すようだ。

その際、BT-42と八九式とクルセイダーを別途小隊として、先ほどの砲撃の正体を探るらしい。

だが、おそらく先ほどの砲撃の正体を見つけたところで、おそらくソイツの周りには防衛部隊がいるはずだ。とてもではないが、それを切り抜けられるとは思えん。

 

「会長・・・やはり西住に人員を回してもらうべきだったのでは・・・?私、これ以上は・・・!!」

「・・・もう少し、もう少しだけ待ってはくれんか?」

「で、ですが!!」

 

桃がまさに限界といった表情を挙げた瞬間、辺りに飛行機のエンジン音が響き始める。この音は・・・!!

 

「来たかっ!!」

「か、会長っ!?何が来たんですかっ!?」

「最後にして、最強の援軍だ。」

 

私と桃が陣地から空を見上げるとそこにはサンダースのギャラクシーが写り込んできた。

 

「ぎ、ギャラクシーっ!?で、ですが今更あの戦車を持ってきたところで、我々には人員が・・・!!」

 

そのギャラクシーは後部ハッチを開きながらこちらの陣地に近づくと戦車を1輌降ろし、再び空へと舞い上がった。

ギャラクシーから降ろされた戦車は土煙を上げながら徐々にスピードを落としていき、最終的にこちらの目の前で止まった。

その戦車の正体は、イギリス製の巡航戦車、『彗星』の名前を持つ、『コメット巡航戦車』だ。性能は大洗女子学園の中でトップを誇る。

硬さや火力はポルシェティーガーに劣るだろうが、スピードは随一だ。

その速度、およそ50キロだ。

 

そして、そのコメット操縦席のハッチから顔を出した人物に桃は目を丸くする。なぜなら絶対に来れないと思っていた人物がそこにいたからだ。

 

「な・・・・っ!?お前は・・・!!冷泉っ!?入院しているんじゃなかったのかっ!?」

「抜け出してきたに決まっている。」

「そ、それに怪我とかは・・・!?」

「サンダースの生徒に鎮痛剤を打ってもらった。もちろん合法のものを使っている。」

 

そこには患者服のアムロがいた。ありえない人物の登場に驚きを隠せないと言った表情をしながら涙を浮かべていた。驚いているのか、泣いているのかどっちかにしてくれないか?

まぁ、それは置いておいて、アムロは桃に対し軽く手をふると私に厳しい表情を向ける。

 

「シャア、状況は?」

「はっきり言って、劣勢だ。このままではこちらが敗北する。」

「・・・・わかった。すぐさま出よう。お前のことだから許可は取っているのだろう?」

 

そう言われ、私は表情を緩ませる。当然だ。何しろ私が画策したことだからな。ぬかりはない。だが、その前にやることがある。私はアムロに袋を投げ渡す。

アムロはそれを掴むと、不思議そうな表情をする。

 

「これは?」

「お前のパンツァージャケットだ。いつまでも患者服では示しがつかんし、何より前のはお前が血だらけにして使えんよ。」

「そういえばそうだったな・・・。わかった。」

 

そう納得し、袋からパンツァージャケットを取り出したアムロは表情を固める。

そして、微妙に顔をひくつかせながらこちらを睨みつけてくる。私はそれに軽い笑みだけを返しておく。

 

「おい・・・・。よりによってどうしてこれを・・・?」

「お前に似合うと思ったからだが?」

 

奴の手には青を基調とし、両肩辺りに黒のライン、それに襟裏は赤、として、腕には大洗の徽章が入った服が握られていた。

つまるところロンド・ベルの徽章を大洗の校章に変えただけのロンド・ベルの制服であった。

 

「いや、似合うとか似合わないの問題ではないのだが・・・・。」

「お前にはそれが一番しっくりくるだろう。それとその服以外はないぞ。」

 

私がそういうとアムロは困った表情をしながら考える素ぶりを見せる。

しばらくすると観念したのか疲れた顔でコメットの中へと戻っていった。

再び顔を出してくると服はしっかりと着ていたが、何か思いついたような表情を上げると私に視線を向け始める。

 

「そういえば、お前にはないのか?」

「・・・・・質問の意図を理解しかねるな。」

 

ちっ・・・・勘のいい奴め・・・・。

私は視線を背けながら奴の顔を見ないようにする。あまり、あれは着たくないのになぜか作ってしまった。私自身、よくわからん。

 

「そういえば会長。冷泉が着ているのとは別に袋があったような気がするんですけど、あれは一体・・・?」

 

・・・桃の奴。余計なことを・・・。アムロが確信した顔つきになってしまっているではないか・・・。

 

「やはり、あるんだな?」

「・・・・・はぁ、分かった。私もアレを着るとしよう。」

 

アムロにこれ以上の言い逃れができないと感じた私は観念した様子で髪に手をかけ、今まで編んでいたツインテールを解いた。

髪型をツインテールから普通のロングに戻したため、重力に従って垂れ下がる。

 

「か、会長?どうして髪を解いたんですか?」

「・・・その方が見た目がいいからな。」

 

形は大きく違うとはいえ、またアレを着るのか・・・・。本当になぜ作ってしまったのだ・・・。ため息しか出んな・・・・。

 

「それで?まずはどうする?」

「出たところで連絡が取れるのは事情を知っているケイと自動車部のほかにはいない。ひとまずケイとコンタクトを取ろう。」

「分かった。」

 

私は割と忌々しさもあるあの服・・・・ネオ・ジオンの総帥としての服(マント付き)を着るために少し席を外す。

あまり着たくないのだが・・・仕方ないか・・・・。

 

操縦手と通信手がアムロ、装填手が桃、そして、砲手兼車長を私が務めるコメットは陣地から出ると私はすぐさまケイとコンタクトを取る。

 

「ケイ。こちら杏だ。聞こえるか?」

『その声・・・!!間に合ったのねっ!?』

「ああ。なんとかな。それはそれとして、そちらの状況はどうなっている?」

 

通信機の向こう側からケイの感激といった声が聞こえる。私はそれを聴きながら大洗連合チームの状況を尋ねる。

ケイから聞いたのは以下の通りだ。

 

・ 砲撃の正体はカール自走臼砲

・それの撃破に向かったBT-42、クルセイダー、八九式らどんぐり小隊は取り巻きのパーシング三輌の撃破はしたもののカールそのもの撃破には至っていない。

・ 現在は遊園地で各個撃破の方針をとってなんとか持たせている。

 

「なるほど。大方の事情は理解した。カールの撃破はこちらに任せてほしい。」

『・・・頼んだわね。アレがいてもらうとかなりこっちとしては面倒だから。』

「そちらもな。現状私達に入ってくる情報は君からのしかないのでな。」

『そっちは任せて!』

 

私はそこでケイとの通信を切り、ケイから教えられたカールの位置を確認する。

カールはその巨体さ故に動くことはそれほどできないはずだ。

 

「アムロ、この地点に向かってくれ。」

「了解した!」

 

アムロが操縦するコメットは普通の戦車より倍近いスピードでカールの元へ向かった。

流石だな、初めて触るコメットをここまで完璧に乗り回すか。

 

程なくして件のカール自走臼砲がいる地点にやってきた。

アムロはコメットをカールから見えないように稜線の影に止めた。

 

「ここから狙えるか?」

 

アムロはこちらを振り向くと試すような口調でそう聞いてきた。

桃は驚愕といった表情をしながら私を見つめる。まぁ、はっきり言っておくとーー

 

「余裕だな。動いているならともかく相手は動きもしない木偶の坊だ。」

 

そういいながら稜線の影からカールに照準を合わせる。まぁ、照準からは見えないが、砲弾の落ち方や気配などを読めば、造作もない。

 

ドゥンっ!!

 

 

放たれた砲弾は最初こそはカールの頭上を通り抜けるほどの高さだったが、落ちることも考慮した砲弾は吸い込まれるようにカールへと向かっていき、その薄い装甲をぶち抜いた。

 

「・・・・確認するか?」

「見るまでもない。と言いたいところだが、一応、な。」

 

私が軽く指を指すと心配そうに見えないはずの砲弾の行方を案じている桃の姿があった。

アムロはその姿に納得を示しながらコメットを稜線の影から出す。

 

「ほ、本当に当たっている・・・!!」

 

カールがしっかりと白旗を上げている様子を見て、桃の表情は驚きを通り越しているようだ。表情にそれほど動きがない。

 

「ケイか?こちら杏だが、カールの撃破を確認した。」

『Really!?なら良かったわ!!』

「そちらはどうなっている?」

『そうねぇ・・・。今はちょっと追われているところ・・・あ。』

「どうかしたか?」

『っ!!やられたわっ!!誘い込まれたっ!!』

 

ケイの焦り声にこちらも少しばかり厳しい表情をする。

 

「状況は?」

『単純に言えば、みんなの動きが誘導されて、一箇所に集められたわ!!このままじゃあ殲滅される!!』

「っ!!場所はっ!?」

『遊園地の野外音楽堂!!』

「アムロっ!!すぐさま遊園地に向かえ!!西住君達が窮地に陥った!!」

「ちっ!!了解した!!」

 

アムロは悪態をつきながらコメットを急加速させて遊園地へと向かった。

間に合うか・・・?いや、間に合わせてみせるさ!!

 

 

 

「あー!!走り足りないですわー!!」

 

どうも皆さま、はじめましての方ははじめまして。わたくし聖グロリアーナ女学院一年生の『ローズヒップ』ですわ。

わたくしはどんぐり小隊の一員として、少しほど前に謎の砲撃の正体であろう『カール自走臼砲』を見つけましたわ。

継続高校のおかたに取り巻きのパーシング三輌を任せて、わたくしと大洗の八九式で『殺人サーブ作戦』なるものを敢行致しましたわ。

しかし、結果は八九式でクルセイダーを飛ばすのは無理があったのか、カールにこれっぽちも届かせることも叶わず、クルセイダーと八九式はカールの砲撃で崩れた橋の下敷きになってそのまま両方揃ってアウトになりましたわ。

今は撃破判定の出てしまったクルセイダーの中で喚き散らして・・・失礼、アッサム様に怒られてしまいますわ。お怒りをブチまけていました。

 

「こうなったら、回収車でも乗り回して・・・ってあれは・・・?」

 

クルセイダーから出てくると目に留まったのはとんでもないスピードで疾走していく1輌の戦車。それはわたくしの乗っているクルセイダーよりも早かったと言っておきますわ。

あの戦車は確か・・・。

 

「イギリスの、コメット・・・ですわよね?」

 

そのコメットはわたくし達には目にもくれずに稜線の向こう側へと消えて行きましたわ。

それの速さは速さに自信があるわたくしが、速いと感じてしまうほどにでしたわ。

 

「一体どこのお馬さんの骨が・・・・?」

 

呆気にとられていたわたくしはそうぽろっと言葉をこぼす事しか出来ませんでしたわ。

 




さて、諸君。役者は揃った。そろそろ『Main Title』の時間だ。

準備は、いいかな?

最終章、見たいですか?(モモチャンズリポートのあとがき要参照)

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