冷泉麻子、行きまーす!!   作:わんたんめん

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さて、始めるか。戦車のスペックを度外視したチート機動を・・・。

個人的な推奨BGM

『UNICORN』か『RX-0』

『Main Title』ではないのかと思ったそこの貴方。多分次回はそうかもしれないっす。


第44話

「っ・・・・。どうしよう、作戦を利用されちゃった・・・・。」

 

野外音楽堂に各分隊が集まってきているのが見えたところでようやく相手の意図が掴めたが、もうその時点では遅すぎた。

今、私達大洗連合は野外音楽堂に誘導されて、包囲殲滅を受けようとしていた。

 

野外音楽堂に押し込まれた他のみんなの目の前には大学選抜のパーシングやチャーフィーがこちらに砲塔を向けて、今にも発射しそうな感じだった。

なるべく、分散させないように固まって行動していたのだけど、それを逆に利用されてこの有様だ。

 

「に、西住殿・・・、かなりまずいですよ・・・。」

「ここで一気に数を減らされたら・・・。こちらがかなり不利になります。」

「まだここでやられてたら数の差が・・・・。」

 

囲まれているみんながやられてしまえば、こっちに残っているのは私達とお姉ちゃんとエリカさんとカチューシャさんの4輌しかいなくなる。

 

「西住さん・・・。どうするの?」

 

入院している麻子さんの代わりにⅣ号の操縦手をやってもらっている小山さんがこちらをみてくる。

こちらだって打開策は探している。だけど、この状況ははっきり言ってどうしようもない。

何か、包囲されていない車輌からの介入が必要。それはわかりきっている。

でも、フリーになっている車輌はⅣ号を含めても少数だ。向かったところで対処されるのは目に見えている。

 

(だけど、このままじゃ……………)

 

辺りを見回してもお姉ちゃん達を除けばほとんどの戦車が音楽堂に集められている。何かケイさんがずっと通信機に手をかけているように見えたが、その理由を考える余裕はなかった。

考えても考えても見えてくるのはこちらが包囲殲滅される様子しか思い浮かばないことに徐々に心の中で不安が占めていく。

 

「ここまで・・・・なのかな・・・・。」

 

つい零してしまった言葉がⅣ号の中で伝染していく。

Ⅳ号の中でみんなが辛気臭い顔をしてしまい、目の前の絶望に打ちひしがられそうになる。

内心では諦めたくない。だけど、目の前の現実が私達の最後の可能性を押し潰そうとした時ーー

 

『貴方は、そこで諦めるの?』

 

突然、女性の声が聞こえた。耳からではない、頭に直接響いてくるような感覚だった。

私はその現象に驚きながら、目を見開いた。いつのまにか自身の周りに緑色の光で輪郭が形成された一羽の鳥がいた。その鳥はよくみてみると白鳥のようにも見えた。

思わず周りの反応を見るが、自身の現象に気づいているようには見られなかった。

私はその声に応えるように心の中で呟く。

 

(こんな状況になってしまえば・・・勝ち目は・・・)

『勝ち目があるかないか、そんなことは些細な問題よ。貴方が諦めたくないかどうか。それだけで道は開けるわ。』

 

女性の妙に確信めいた声に思わず私は聞き返してしまう。

 

(道が開ける、ですか?どうして貴方はそんなに確信めいたことを・・・・)

 

質問を途中で切らしてしまったのは、その女性の笑い声が聞こえたからだ。

口元に手をあてて笑うというより微笑んでいるみたいに。

 

『そうねぇ・・・・。貴方の心のそばにいる人のせいかしら。』

 

私の心のそばにいる人・・・?

同じⅣ号の乗員である優花里さんや華さん、それに沙織さんか小山さんのことだろうか?

 

『違うわ。なら言い方を変えるわね。貴方が一番思いを寄せている人よ。』

 

私が思いを寄せている人・・・?まさか、そんなはずがない。あの人は絶対に来れない筈だ。本人だってそう言っていた!!

 

『それは別にあの人自身が言ったことではないでしょう?その言葉に従うかどうかは彼、いいえ彼女次第。』

 

その女性に言われたことで自身の先入観を情けなく思う。

そうしている間に再び女性のクスクスといった笑い声が響く。

 

『まだ諦めるには早いわ。むしろ、これからよ。何故なら貴方にはーー』

 

 

『赤い彗星』と『白き流星』がついている。

 

 

その言葉を最後にその女性と思われる緑色に輝く白鳥は囲まれているみんなの後ろにそびえ立つ壁に溶けるように消えていった。

 

今の声は一体なんだったんだろう・・・?赤い彗星と白き流星・・・?

誰のことを指しているんだろう?

 

『ハーイ!!各車輌、なんか辛気臭い顔になっているけど、まだ諦めるにはまだまだよ!!そうね、こんな言葉を知っているかしら?』

 

ありえない現象に呆けていると通信機からケイさんの声が聞こえてくる。その声色に沈んだようなものは感じられず、むしろ気合い十分、と言った具合だ。

 

『ヒーローは遅れてやってくる!!』

 

ケイさんがダージリンさんの十八番である格言のようなものを言った瞬間、みんなの後ろにそびえたつーーちょうどさっきの緑色の白鳥が溶け込んだ辺りの壁の上部が爆発音と共に粉々に粉砕された。

突然の出来事に思わず目を疑うがしっかりと耳に聞こえてくるものがあった。

それは戦車のエンジン音、この音の正体は確か、ロールスロイス製の600馬力の出力を持つ、『ミーティアエンジン』。

 

土煙が晴れてきて、破壊された部分が見られるようになるとその部分を凝視する。ちょうどそこから1輌の戦車が飛び立った。それは紛れもなく、会長に見せてもらったコメット巡航戦車だった。

そのコメットは空中で一度、77mm砲の火蓋を切った。その砲弾は一輌のパーシングの上部装甲を完全に打ち抜き、撃破判定を上げさせる。

空中なんていう極めて不安定な環境で敵戦車を撃ち抜ける人物など、一人しか思い浮かばない。

そのコメットは空中で姿勢を崩すことなく綺麗に着地すると、そのまま大学選抜チームの包囲網にたった一輌で突っ込んでいった。

その様子に大学選抜チームは呆気にとられていたのか少しばかり遅れてそのコメットに砲撃を集中させる。

普通であればあっというまにやられるがそのコメットは一発も被弾することなくその砲弾の雨を切り抜けると一輌のチャーフィーに向かって突進を仕掛け、その直前で急ブレーキをかける。

何故止まったのかは分からなかったが、コメットはその反動で車体後部が浮き上がる。

だけど、次の瞬間、私はそのコメットの操縦手を確信した。

コメットは車体後部がまだ浮いている中、残りの地面についている無限軌道で超信地旋回を行い、勢いよく回転をつけ、浮いている車体後部をチャーフィーに側面からぶつけた。

さながら格闘技でいう胴回し回転蹴りのようなものを食らったチャーフィーはコメットとの重量差もあって吹っ飛ばされ、何回か車体を転がし、砲塔を下にして、白旗を上げた。

その様子に私含め、全員が目を白黒していたと思う。あのコメットを待っていたと思われるケイさんでさえ目を丸くしているんだから。

するとコメットのキューポラから誰かが出てきた。

その人物は会長だった。だけど、いつものようなツインテールは下ろして、髪を後ろでまとめて、額が見えるくらいのオールバックになっていた。

 

『各車輌、こちらに続け!!』

 

会長が着ているマントを翻しながら全車輌にそう通達すると、みんなすぐに本調子に戻ったのか先に包囲網を離脱したコメットに続いて大学選抜チームの包囲網を抜けていった。

 

というか、会長の服、どうしちゃったんですかっ!?すごく赤くて煌びやかなんですけどっ!?

 

 

「戦車で格闘戦を仕掛けるか。流石だな。」

「まだ追っ手はふりきっていないぞ。無駄口を叩くのはこの状況を脱してから言ってくれ。既にかなりやられているぞ。」

 

周りを確認すると、カールの砲撃に晒されたのか頭数がかなり減っているように見えた。

シャアから援軍のことを教えてもらったが、各校の隊長格は残っているものの、少なくともマチルダⅡ、サンダースのアリサが乗っていたシャーマン、アリクイさんチームの三式、カモさんチームのルノーB1bis、そしてカバさんチームのⅢ突がどうやら撃破されているようだ。

 

「それもそうだな、桃。装填だが、君の限界を超えてもらう。」

「・・・・と、言いますと?」

「そうだな、5秒以下で装填を終えてくれ。それ以上は我々のスピードについてこれんだろう。」

 

シャアの言葉に河嶋は数瞬、呆けた表情を浮かべると、すぐさま驚愕といった表情に変える。

 

「えっ!?5秒以下ですか!?それって実質・・・」

「ほぼ4秒で仕上げろ。」

 

河嶋は死んだような顔になるが、それくらいのスピードでやってもらわなければこっちが困るんだ。というよりこれでも妥協している方だ。本当であれば2秒、遅くとも3秒で仕上げてほしいのが本音だ。

 

(・・・・さようなら、私の両腕・・・・。)

 

・・・・河嶋が自分の両腕を見ながら妙に達観した顔になっているが、まぁいいだろう。

 

『麻子さん!!麻子さんですよね!?そのコメットに乗っているのは!!』

 

通信機からみほの声が聞こえてくる。その声色には嬉しさと不安さが入り混じったような感じだった。

その声はシャアにも聞こえていたらしく、こちらに視線を送っている。

 

「姿を見せてやったらどうだ?代わりの運転はやろう。」

「・・・わかった。」

 

シャアと入れ違いの形で俺はコメットのキューポラから外へと出て、砲塔の上で立ち上がる。

俺はコメットの後ろを走っているⅣ号を見ると、ちょうどみほがキューポラから顔を出していた。

そして通信機に手をあてて、みほの声に応える。

 

「ああ。その通りだ。流石だな、みほ。」

『・・・・本当に来てくれたんですね・・・。』

「まぁ・・・あくまで医師の言ったことだからな。それに従うかどうかは別問題だ。」

 

 

お互いに顔を見合わせて笑顔を浮かべていると、そこに砲撃が打ち込まれる。

視線を向けると追っ手のパーシングやチャーフィー、それにT28重戦車が追ってきていた。その様子を見て、すぐさまコメットのキューポラに飛び込みながら、みほとの通信を続ける。

 

『ハーイ。遅刻人さん?元気にしてる?』

 

通信機にケイの声が入っている。彼女はシャアが根回しをしてくれたから準備してくれたのだろう。

 

「すまない。貴方には色々助けられた。」

『礼は言わなくていいわ。その代わりーー」

「ああ。私の全力をかけてやらせてもらう。」

『分かっているならOKよ。』

『ちょっと!!マコーシャ!!貴方、入院していたんじゃなかったのっ!?』

 

ケイとの通信が切れると今度はカチューシャの声が飛んでくる。声質から見るに怒っているように感じる。

 

「おちおち、病室のベッドの上で寝ているわけには行かないからな。」

『もう!!せっかく貴方なしで試合に勝って、貴方の鼻を明かしてやろうって思ったのに!!』

「それはまた今度だな。」

『冷泉さん、貴方がなぜそのコメットに乗っているのかはこの際聞きませんわ。』

 

カチューシャの癇癪を適当に遇らうと、今度はダージリンからの通信が入る。

まぁ、コメットはイギリス戦車だからな。彼女には何か思うものがあるのかもしれない。

 

『私は貴方に純粋な敬意を払いますわ。自分が傷つきながら、それでいて、まだみんなのために立ち上がれる貴方を。』

「よしてくれ。私はそんなできた人間ではない。ただ、自分にできることがこれぐらいしか思いつかない、思慮の浅い人間だ。」

『それでもですわ。貴方は目の前の巨悪に悠然と立ち向かった。それだけでも十分に尊敬されるに値しますわ。』

「それは貴方だって同じことだ。むしろ、貴方こそ敬意に値する人間ではないのか?」

『私は力を持つものとして当たり前のことをしただけですわ。』

「・・・・ノブレス・オブリージュ。そういうことなんだな?」

『そういうことですわ。』

『あのー、すんません。ウチのドゥーチェがなんか言いたいことがあるんで次いいっすかー?』

 

ダージリンとの会話をしているとそんな声が割り込んでくる。

確か、彼女はアンツィオのペパロニだったか。

 

『ゔおおおおおおおー!!!!冷泉ー!!!ごめんなー!!!お前の見舞いにも行けずじまいでー!!!』

 

突然のアンチョビの泣き声に思わず通信機から耳を離す。

心臓に悪いからいきなりの大声はやめてくれないか・・・。

シャアも苦笑いをしてしまっているではないか。

 

「まぁ、その、なんだ。貴方には貴方のやるべきことがあったのだろう。こうして来てくれただけでも感謝しきれないさ。」

『見てろよー!!!絶対活躍してみせるからなー!!!』

 

はは・・・。すごいアグレッシブな奴なんだな。アンチョビは・・・。

まぁ、ノリと勢いが売りのアンツィオに居れば、自然とそう染まってしまうのかもな・・・・。

 

『・・・・まさか、貴方まで来るとはな・・・。』

 

ん?この声は・・・。まほか。

 

「まぁ、居ても立っても居られなくなった、というのが正直なところだ。」

『貴方に言いたいことはすでにほかの隊長に言われてしまったから、これだけを伝える。』

『みほを頼む。』

「・・・・・任された。」

 

各隊長との通信を終えると再度、みほに向けて通信を行う。

 

「みほ、私達も君の作戦指揮下に加わる。どうするんだ?」

『相手のほとんどが園内に入ってしまったので、プランFで行きます。』

 

みほのその言葉に俺は申し訳ない気持ちになる。なぜならーー

 

「みほ、私は作戦会議に参加していない。プランFと言われてもどんな作戦なのか全容を掴むのは無理だ。」

『あ、ご、ごめんなさい!!すっかり忘れてました!!』

 

俺にそう謝ってくると、みほはざっくりとだが、作戦の概要を伝えてくれる。

なるほど、分散して各個撃破を狙うのか。

 

「ひとまず、こちらはみほ達についていけばいいんだな?」

『はい!!この先の垣根でできた迷路で敵を撹乱します。』

「・・・・シャア、この先の迷路、ノールックでやれるな?」

 

コメットの中でシャアと運転を代わりながらそう伝えるとシャアは無言で頷いた。

 

「みほ、入ってきた車輌はこちらで抑える。そっちは迷路を突き抜けることだけを意識してくれ。」

『・・・いいんですか?』

「迷路の中は視界が不明瞭だ。何かの手違いで君がやられるとそれこそこちらの敗北だ。」

『・・・わかりました。でも、絶対に危ないことはしないでくださいね!!約束ですよ!!』

「わかっているさ。無理なことはしない。」

『・・・・そう言って、自分のことを蔑ろにしていたのはどこの誰なんですか。』

「・・・・手痛いな・・・。」

 

みほからの指摘に乾いた笑いを浮かべながら、垣根でできた迷路へと入っていく。

迷路を適当に進んでいくと、みほ達のほかに3つほどの気配を感じる。

迷路の角にたどり着くとシャアが砲塔を気配を感じる方へと向けた。

そして放たれる砲弾は、垣根を貫きながら入ってきた大学選抜の車輌へと一直線に向かっていった。

河嶋が死に物狂いで装填を行い、シャアがその後に撃つという単純作業を数回繰り返すと3輌のうち2輌を行動不能にさせる。

 

「・・・一輌仕留め損ねたか?」

「角度が悪かったかもしれんな。ここは退くとしよう。種がわれた以上、2度も同じでは通じんだろう。」

「了解した。」

 

シャアの指示に従って、俺たちは迷路から離脱する。

 

 

「うっそでしょ・・・。完璧にこっちの位置把握されてたじゃん・・・。天性の勘とかそういうレベルじゃないわよ・・・。」

 

Ⅳ号と途中参戦してきたコメットを追って垣根で形成されていた迷路に侵入するとこちらはろくに敵の位置を把握できなかったっていうのに向こうのコメットはまるでこちらの位置を完璧に把握しているかのようにこちらに攻撃を仕掛けてきた。

自分の乗っているパーシングは当たりどころがよくてやられなかったけど、その他はみんな一撃でやられている。

 

「殲滅戦ってことは、あのコメットもやらなきゃいけないんだよね・・・。」

 

ここはアズミとメグミの二人を連れてきて当たった方がいいかなぁ・・・・。

多分、あのコメット、絶対やばい。それしか言えないけど、とにかくやばい。

ここにきて初めてルールが殲滅戦だっていうのを恨んだわよ・・・。

さっきの乱入してきた時もそう、戦車で格闘戦みたいな芸当するなんて聞いたことないし、見たこともない。

 

「・・・・これはまた予想外の強敵・・・・。」

 

まさか、高校生にあんな芸当を見せられるとはね。

 

 




多分今年最後の投稿です

そして、この前、お気に入り三千人突破しました!!
まさかここまで読んでいただけるとは少しも思っていませんでした!!
ありがとうございます!!

あと少しですが、最後までお付き合いいただけると有り難いです!!

最終章、見たいですか?(モモチャンズリポートのあとがき要参照)

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